はじめに
最近、
「AIが仕事を奪う」
という話をよく耳にします。
実際、生成AIの進化は非常に速く、
- コード生成
- 統計解析
- レポート作成
- データ分析
など、多くの業務を支援できるようになりました。
私自身、20年以上メカ設計に携わった後、品質部門へ異動し、Python、統計、機械学習を学んできました。
当初は、
AIを学べば業務は大きく変わる
と思っていました。
しかし実際に業務へ適用しようとすると、別の壁にぶつかりました。
AIの性能ではありません。
組織の理解です。
今回は、その経験から感じたことを書いてみたいと思います。
AIはどこまでできるのか
現在のAIは、
- コード生成
- 統計解析
- モデル構築
- レポート作成
などを支援できます。
数年前であれば専門家しかできなかった作業です。
そのため、
「AIが進化すれば、人間は課題だけ出せばよくなる」
という考え方もあります。
しかし私はそうは思っていません。
AIが進化しても残る仕事
AIが進化しても、人間に残る仕事があります。
私はそれを
- 課題設定
- 判断
- 説明
- 責任
だと考えています。
AIは分析できます。
AIは提案できます。
しかし、
- 何を解決したいのか
- その結果を採用するのか
- なぜその判断をしたのか
- 結果に誰が責任を持つのか
は決められません。
これは今後も人間の仕事だと思います。
AIはなぜ課題設定できないのか
ここで一つ誤解があるように思います。
私が
「AIは課題設定できない」
と言うと、
今はできないだけで、そのうちできるのでは?
という反応を受けることがあります。
しかし私が言いたいのは性能の話ではありません。
AIには、
こうしたい
という意思がありません。
設計者には、
「もっと安定して搬送したい」
があります。
品質担当者には、
「市場不具合を減らしたい」
があります。
生産技術担当者には、
「設備停止を減らしたい」
があります。
しかしAIにはありません。
AIは目的を与えられて初めて動きます。
そのため、
課題設定は本質的に人間の仕事だと思っています。
しかし人間も簡単には課題設定できない
ここで面白いことがあります。
課題設定は人間の仕事です。
しかし、
AIを理解していない人は、
AI活用の課題設定ができません。
例えば、
「品質を改善したい」
というのは課題ではありません。
願望です。
課題として成立させるためには、
- どのようなデータがあるのか
- AIで何ができるのか
- AIで何ができないのか
- 何が予測可能なのか
- 何が予測不可能なのか
を理解する必要があります。
つまり、
課題設定をするためにもAI知識が必要
なのです。
AIに何ができないかが共有されていない
私が品質部門で感じたのは、
組織の中で
AIに何ができるのか
よりも、
AIに何ができないのか
が共有されていないことでした。
AIに詳しい人は、
AIは課題設定できないと言います。
一方で、
詳しくない人は、
「今はできないだけで、そのうちできるのでは」
と考えます。
その結果、
AIへの期待値が人によって大きく異なります。
私は、大企業ほどこの傾向が強いように感じています。
AIに詳しい人と、ほとんど知らない人に二極化し、
業務の中心となる忙しい人ほど、AIに触れる時間を確保しにくいからです。
そのため、
AIに何を期待するのか
どこまで任せるのか
何を人間が判断するのか
について、組織として合意形成しにくくなります。
個人が理解していても、組織が理解していなければ進まない
ここで重要なのは、
AIを理解している個人が一人いれば解決するわけではない
ということです。
例えば、
ある担当者がAIや統計を学び、
有効な分析方法を提案したとします。
しかし周囲がAIを理解していなければ、
- なぜその分析が有効なのか
- 結果をどこまで信頼できるのか
- どのようなリスクがあるのか
を評価できません。
すると、
提案は採用されません。
実際、私自身もAIや統計を学んだ結果、
技術的には実現可能であっても、
組織として評価できないために採用されない
という場面を何度も経験しました。
つまり、
AI活用の課題は個人のスキル不足だけではなく、
組織の理解不足でもあるのです。
だからDX担当が必要になる
組織全体がAIを理解できていない状態では、
実務担当者だけでAI活用を進めることは難しくなります。
そこで多くの企業は、
DX担当やデータ分析担当を設置します。
これは非常に合理的な方法です。
AIを理解している人材を集め、
組織全体を支援する役割です。
実際、現在の多くの企業はこの形を採用していると思います。
しかしこれは、
組織全体としてAIを理解できていないことの裏返しでもあります。
本来であれば、
課題設定
判断
説明
責任
を担う実務担当者自身が、
AIに何ができて何ができないのかを理解している方が望ましいはずです。
将来的にはどうなるのか
私は長期的には、
実務担当者自身がAIを理解する方向へ進むと思っています。
もちろん、
全員がデータサイエンティストになる必要はありません。
しかし、
- AIで何ができるのか
- AIで何ができないのか
- AIの結果をどのように評価するのか
を理解する必要はあると思います。
なぜなら、
課題設定
判断
説明
責任
は元々実務担当者が担っている仕事だからです。
おわりに
私は以前、
AIを学べばDXが進むと思っていました。
しかし今は少し違う考えになっています。
DXが進まない理由は、
AIの性能不足ではなく、
組織の中でAIへの理解が共有されていないことにあるのかもしれません。
AI時代に重要なのは、
- 課題設定
- 判断
- 説明
- 責任
です。
しかし、それらを適切に行うためには、
AIに何ができて、
何ができないのか
を理解している必要があります。
そして、その理解は個人だけでは不十分です。
組織として共有されて初めて、
AI活用は前へ進むのだと思います。
私は、
AIが進化するほど、
組織としてAIへの理解を深める必要があり、
その中心となる実務担当者には、
これまで以上にAIの知識が求められるようになる
と感じています。