導入
最近「テキスト分析」という言葉をよく目にする。なんとなくカッコよさそうだけど、具体的に何をするのかはピンとこない。AIとかビッグデータとかに出てくるから、どうせ数式と英単語だらけで難しいんだろうな……と身構えていた。
でも、いざ少し調べてみると「単語を数える」「似ている言葉をまとめる」みたいな、けっこうシンプルな発想から始まっているらしい。コーヒー片手に整理してみた学習メモをここに残しておく。
コーパス(Corpus)って何?
まず前提として出てくるのが「コーパス」。
これは たくさんの文章や会話を集めて検索できるようにしたデータの山 のこと。
たとえば「犬」という単語がどういう文脈で使われているのかを調べたいとき、辞書だけでは足りない。小説やSNS投稿、記事など実際の用例を大量に集めて「犬ってこんなときに使われやすいよ」というデータベースにする。それがコーパス。
トークン分割(Tokenization)
次に出てくるのが「トークン分割」。
要するに文章を 意味のある最小単位(トークン) に切り分けること。
英語なら単語ごとに区切るのが基本。
日本語だと「私はリンゴを食べる」を「私 / は / リンゴ / を / 食べる」と細かく区切る。この作業は「形態素解析」に近い。
切り分けたあとにやっておくと便利な前処理もある:
- テキストの正規化:句読点を消したり、大文字小文字をそろえたり。
- ストップワード削除:”the”や”a”のように、あまり意味を持たない単語を省く。
- n-グラム:1単語だけじゃなく「I have」みたいに2語以上の組み合わせも単位にする。
- ステミング:”power”, “powered”, “powerful”を全部「power」にまとめる。
こうしてシンプルにしたデータを使うと、その後の分析がだいぶやりやすくなる。
分析その1:頻度分析
もっとも直感的なのがこれ。
どの単語がどれだけ出てきたかを数えるだけ。
たとえば日記の文章から「カフェ」「コーヒー」「エスプレッソ」がやたら出てくるなら、書き手はカフェ好きかもしれない。単純だけど、文章の主題を探る入口になる。
分析その2:テキスト分類
次は「テキストをグループ分けする」方法。
たとえばレビューをポジティブ(肯定的)とネガティブ(否定的)に分けるとき。
- “great”, “tasty”, “fun” → ポジティブ
- “terrible”, “slow”, “substandard” → ネガティブ
こういうルールを学習させて自動で分類する。
ここでよく出てくるのが ロジスティック回帰 という仕組み。名前は難しそうだけど、ざっくり言えば「条件に応じて確率的に0か1かを決める仕組み」くらいの理解でいい。
分析その3:意味的な関係性(セマンティックモデル)
ここから少し高度になる。
単語同士の「意味の近さ」を数値で表す方法だ。
例えば:
- “dog” → [10, 3, 2]
- “cat” → [10, 3, 1]
- “bark” → [10, 2, 2]
- “meow” → [10, 2, 1]
- “skateboard” → [3, 3, 1]
このとき「dog」と「cat」は数値の並びが近いので、意味的にも近いと判断できる。逆に「skateboard」はまったく違う場所にあるので無関係とみなされる。
実際には数百〜数千次元のベクトルで表現されるので、人間の頭では直接イメージできないけれど、コンピュータはこの「ベクトルの距離」を計算して意味を推測している。
NLP(自然言語処理)のタスク例
こうした仕組みを使って、いろいろなタスクが可能になる。たとえば:
- キーフレーズ抽出:文章から重要な言葉を抜き出す
- 名前付きエンティティ認識:人名や地名を識別する
- 感情分析:ポジティブかネガティブかを判定
- 要約:長い文章を短くまとめる
- 翻訳:言語をまたいで意味を変換
- 会話型AI:人間の言葉を解釈して返答
映画のレビューを一瞬で「面白い派」と「つまらない派」に仕分けたり、ニュース記事を数行で要約したり。普段何気なく使っている検索エンジンやAIチャットも、この辺の技術が詰まっている。
Azure AI Languageでできること
クラウドサービスを使えば、自分で複雑なアルゴリズムを組まなくても、この分析を体験できる。
Microsoft Azureの AI Language では、以下のような機能が提供されている:
- 名前付きエンティティ認識(人・場所・イベントなどを特定)
- エンティティリンク(Wikipediaとつなげる)
- 個人情報の検出(電話番号や住所などのマスク処理に使える)
- 言語検出(英語、日本語、中国語…など)
- 感情分析・オピニオンマイニング
- 要約生成
- キーフレーズ抽出
つまり「セマンティック言語モデルを自分で作る」のではなく、すぐ使えるAPIとして提供してくれている。これは便利。
Hands-onで試せる
ありがたいことに、Azure AI Languageを体験するための手順がまとめられているGithubサイトがある。
実際に触ってみると「ニュース記事を一瞬で要約」とか「人名と場所だけピックアップ」といった体験ができる。
👉 Azure AI Language Hands-on(公式ラーニング)
まとめ
今回の学習メモをざっくり整理すると:
- コーパス:文章データの集合体
- トークン分割:文章を単語レベルに分ける前処理(正規化やストップワード削除も大事)
- 頻度分析:単語の出現回数を数えて主題を探る
- テキスト分類:ポジティブ/ネガティブなどに分類
- セマンティックモデル:単語同士の意味的な近さを数値ベクトルで表す
- NLPタスク:要約、翻訳、感情分析など幅広い応用あり
- Azure AI Language を使えばAPIとして手軽に体験可能
数式や理論に深入りしなくても、「テキストを分解して、数を数えて、意味を近さでつなぐ」――そんなイメージがあれば十分入口に立てる。