概要
qwertyとキー配置の類似性が高く、ローマ字入力と英字入力の双方を効率化するオリジナルキーボードレイアウトを検討している。レイアウトにはバリエーションがあり、このバリエーションの総称をFMIX配列(または、シンプルにFMIX)と呼んでいる。
「オリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討」以降、オリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討7 - 追加レイアウトの検証までの結果を踏まえて、新たなレイアウトも加えて、スコアを計測し考えをまとめ直した。
基本的にqwertyの類似性が高いFMIX12f+系の配列の提案になる。なお、本記事は検討過程のデータのアーカイブ的な要素もあるので、直接言及がないレイアウトのスコアも掲載していたり、AIの誤認を避けるために詳細に書いたりしてることもあり、情報量が多い。基本的には、最後の解説と関連するレイアウトの画像、および、スコアを確認してくれれば十分。なお、検討7までの各記事のリンクは、「オリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討」から辿れる。
レイアウト
- 検討対象のレイアウトを掲載
- 数字はqwertyからのキーの入れ替え数
- qwertyとcolemakの中間的なレイアウトになっており、サフィックスの数値が小さいほどqwertyに近い
- サフィックスのRは、ローマ字入力専用を示す
- サフィックスの+は、記号数字入力最適化を施したことを意味する
- サフィックスのfは、qwertyと同様にfがキーボードの左側にあることを示す(人差し指打鍵とは限らない)
- 記号や数字は従来どおり方法でも入力可能にできるが、スコア計測のため削除したレイアウトを掲載
- IMEの状態に連動しIMEOnの場合はローマ字入力用レイアウト、IMEOffの場合は英字入力用を切りかえることを推奨するものとして説明
- IME連動が使えない、使いたくない場合は、英字入力用レイアウトを使い、少なくとも、か行をcで打鍵できるようにローマ字最適化を施すことを前提とする
- RShiftの位置をずらしたのはオプション(実際、筆者は変換キーにShiftを割り当てている)
- 掲載した記号数字入力レイヤーは参考配置で物理形状に応じてカスタマイズすべき、FMIXでは少なくとも長音を入力する-を打ちやすい位置に配置した記号レイヤーを設けるべき(筆者はqwertyのfの位置のキーで-を打てるようにしている)
FMIX14+(英字入力用)
qwldkyfup;
asrtghneio
zxcvbjm,./
FMIX14f+(英字入力用)
qwfdkylup;
asrtghneio
zxcvbjm,./
FMIX13+(英字入力用)
qwrlkyfup;
asdtghneio
zxcvbjm,./
FMIX13f+(英字入力用)
qwrfkylup;
asdtghneio
zxcvbjm,./
FMIX12+(英字入力用)
qwlrkyfup;
asdtghneio
zxcvbjm,./
- wasd維持
FMIX12f+(英字入力用)
qwfrkylup;
asdtghneio
zxcvbjm,./
- FMIX12+に対しfとlを入れ替え、fが左手の指で打つエリア,lが右手の指で打つエリアに配置されている
これにより、qwertyに対しては左右エリア間で移動したキーは、k,eだけとなる
それ以外は、左エリア内、右エリア内での入れ替え - 中段左中指の位置にdを配置するのは、もったいないない気もするが、全体のバランスは悪くない
- wasd維持
FMIX14R+(ローマ字入力用)
qwrdlyfup;
asktghneio
zxcvbjm,./
- FMIX14+と類似しており、IMEOff時はFMIX14+、IMEOn時はFMIX14R+という切り替えを行うのに最適
FMIX14fR+(ローマ字入力用)
qwrdfylup;
asktghneio
zxcvbjm,./
- FMIX14f+と類似しており、IMEOff時はFMIX14f+、IMEOn時はFMIX14fR+という切り替えを行うのに最適
FMIX13R+(ローマ字入力用)
qwdrlyfup;
asktghneio
zxcvbjm,./
- FMIX12+と類似しており、IMEOff時はFMIX12+、IMEOn時はFMIX13R+という切り替えを行うのに最適
FMIX13fR+(ローマ字入力用)
qwdrfylup;
asktghneio
zxcvbjm,./
- FMIX12f+と類似しており、IMEOff時はFMIX12f+、IMEOn時はFMIX13fR+という切り替えを行うのに最適
スコア(対数距離)
英字
| Layout | 英文 | ThinkPython | ThinkC++ |
|---|---|---|---|
| FMIX14R+ | 58.76 | 68.43 | 68.31 |
| FMIX14fR+ | 59.76 | 69.26 | 69.71 |
| FMIX13R+ | 59.02 | 66.80 | 66.33 |
| FMIX13fR+ | 59.36 | 67.37 | 67.22 |
| FMIX14+ | 64.40 | 71.75 | 72.38 |
| FMIX14f+ | 62.58 | 70.97 | 71.49 |
| FMIX13+ | 63.76 | 69.81 | 70.07 |
| FMIX13f+ | 62.65 | 69.83 | 70.07 |
| FMIX12+ | 62.76 | 69.01 | 68.80 |
| FMIX12f+ | 62.25 | 69.11 | 68.99 |
| 大西配列 | 55.55 | - | - |
| Colemak | 63.65 | 66.35 | 66.43 |
- Colemakや大西配列にも、記号数値入力レイヤーを設ければスコアは伸びる
- 大西配列、ローマ字入力用配列、FMIX14+以外は、僅差と考えている(FMIX14+が頭一つ抜けている)
- FMIXのスコアは、RShiftの位置をずらしている分だけ有利になっているかもしれない
ローマ字
| Layout | ローマ字 | ローマ字 (k→c) |
ローマ字 (拗音をh、や行をxで入力) |
ローマ字 (拗音をh、や行をxで入力,k→c) |
|---|---|---|---|---|
| FMIX14R+ | 73.54 | - | 74.19 | |
| FMIX13R+ | 73.66 | - | 74.31 | |
| FMIX13fR+ | 73.67 | - | 74.33 | |
| FMIX14+ | 71.27 | 71.98 | - | 72.64 |
| FMIX13+ | 71.27 | 71.18 | - | - |
| FMIX12+ | 69.95 | 71.39 | - | 72.05 |
| FMIX12f+ | 69.97 | 71.41 | - | 72.06 |
| 大西配列 | 74.62 | - | - | - |
| Colemak | 67.46 | 70.34 | - | 71.54 |
- 英字入力用レイアウトもローマ字テーブルのか行最適化(cと母音でか行を打つ)を施すことでスコアは改善している
- ローマ字入力用FMIXと大西配列のスコアは僅差
- 大西配列にローマ字テーブル最適化を施せば、さらにスコアが上がるかもしれない
算出方法、データ
オリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討2 - スコア算出方法およびオリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討6 - 英文技術文書の入力と記号数字配置最適化を参照。スコアが高いほど高効率。
解説
「オリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討」では「FMIX14(IMEOff時の英字入力)/FMIX14R(IMEOn時のローマ字入力)←ローマ字テーブル最適化」のIMEと連動した切り替えを勧め、検討6までの推奨は"FMIX12(IMEOff時の英字入力)/FMIX13R(IMEOn時のローマ字入力)←ローマ字テーブル最適化"のIMEと連動した切り替え、または、FMIX12(IME連動なし)であり、さらに記号数字位置最適化を施す(可能であれば)というものであった。なお、QMKのみでキーレイアウトをカスタマイズする場合はIME連動によるレイアウト切り替えは使えない。
検討7を踏まえ、本記事では記号数字位置最適化実施済みを示す+を使い、"FMIX12f+(IMEOff時の英字入力)時/FMIX13fR+(IMEOn時のローマ字入力)←ローマ字テーブル最適化"のIME連動切り替えを勧める。また、IME連動が実現できない場合には、FMIX12f+に対しローマ字テーブルを最適化(か行をcで打つ)したうえで、ローマ字、英字双方で運用することを勧めたい。これらのスコアは最良でないものの十分に高く、qwertyとの類似性が高いため移行や併用のコストが低い。
FMIX12+とFMIX12f+とでは、fがqwertyと同じ左側に配置されているFMIX12f+の方がqwertyに類似といえる。スコアに大きな差がないことから、検討8までの最新の見解としてFMIXの中ではFMIX12f+とFMIX13fR+(ローマ字テーブル最適化を含む)を勧めることとした。ただし、元記事に記載の通り、筆者は"FMIX14+(IMEOff時の英字入力)/FMIX14R+(IMEOn時のローマ字入力)/ローマ字テーブル最適化"のIME連動切り替えにすでに慣れており、移行したいがこちらのスコアが若干高いこともあって再移行せずにこちらを利用し続けている。結局、組み合わせを含め好みで選ぶべきものかもしれない。
なお、本検討ではFMIX12f+やFMIX13fR+などのローマ字テーブルを最適化状態でのスコア算出ができておらず、計測できればさらにスコアは向上する。
FMIX以外のレイアウトも含めた総合的な選択に関しては、従来からの主張に変更はない。普及率とスコアを総合的に考えるとColemakを選択するのが無難であり、qwertyからの移行のしやすさや併用を重視するならFMIX系のレイアウトを勧めることになる。日本語特化なら大西配列など別な選択肢もある。結局、万能レイアウトは存在しないので、各自が何を重視するかによってレイアウトを選ぶべきという結論になる。
なお、最新の検討結果はこの記事の結論と異なっている可能性がある。「オリジナルキーボードレイアウト(FMIX)の検討」から最新の検討結果を参照できるので、最新記事がある場合には確認してほしい。
付録
FMIXの英字入力とローマ字入力方法の組み合わせ
英字入力とローマ字入力とでキー入れ替えを3キー以内に抑える場合のレイアウトの組み合わせは以下の通り。
| 英字 | ローマ字 | 推奨度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| FMIX14 | FMIX14R | ||
| FMIX14+ | FMIX14R+ | 2 | |
| FMIX14f+ | FMIX14fR+ | ||
| FMIX12 | FMIX13R | ||
| FMIX12+ | FMIX13R+ | ||
| FMIX12f+ | FMIX13fR+ | 3 | |
| FMIX13 | FMIX14R | ||
| FMIX13+ | FMIX14R+ | 1 | |
| FMIX13f+ | FMIX14fR+ | ||
| FMIX14+ | FMIX14+ | 2 | IME状態検出が使えない場合 |
| FMIX12f+ | FMIX12f+ | 3 | IME状態検出が使えない場合 |
推奨度の値が大きいほど強く勧められる









