概要
Amazon EC2 でインターネット向けにWEBサーバーを運用している場合、よくある仕様追加「このドメイン名でメール送受信したい」に対応。
Amazon EC2 からのメール送受信は公式では非推奨 1 。
前提
- ドメイン名(例えば example.tld)は既に取得済み、利用可能状態と仮定します。
- 実現までのプロセスはすべて AWS リソースを使います。
- ディレクトリーサービスの既存利用なしと仮定します。
(お金なくて検証できてない)
AWS リソース
AWS 製品
既存のディレクトリーサービスが存在せず Amazon WorkMail をミニマムスタート、かつ、AWS サービス内で完結する場合には以下が必要になります。
- Amazon VPC
- AWS Directory Service
- AWS Identity and Access Management (IAM)
- Amazon WorkMail
- Amazon Route53
AWS リージョン
Amazon WorkMail は、2017年8月現在、以下のリージョンで提供されています。
Code | Name |
---|---|
us-east-1 | US East (N.Virginia) |
us-west-2 | US West (Oregon) |
eu-west-1 | EU (Ireland) |
Amazon WorkMail を利用するリージョンで Amazon VPC ならび AWS Directory Service を利用開始する必要があります。
費用計算
請求金額見積もり
- Amazon VPC
今回のケースでは費用発生しません。 - AWS Directory Service
Amazon WorkMail にて Simple AD を利用する場合に限り無料となります。2
- AWS Identity and Access Management (IAM)
今回のケースでは費用発生しません。 - Amazon WorkMail
1ユーザーあたり1ヶ月につき 4 USD。 - Amazon Route53
1ホストゾーン(ドメイン名)につき 0.50 USD/月
100 万クエリにつき 0.400 USD
損益分岐点
Amazon WorkMail と Amazon EC2 (t2.medium) を12ヶ月運用で比較してみます。(US East (N.Virginia))
Products | type | price |
---|---|---|
Amazon EC2 | t2.medium のリザーブドインスタンス(1年全額前払) | 約 22.91 USD/月 |
Amazon EBS | gp2 50GB | 5 USD/月 |
Amazon WorkMail | 6ユーザー | 24 USD/月 |
Amazon WorkMail | 7ユーザー | 28 UDS/月 |
6ユーザーより大きなユーザー数で運用は Amazon EC2 リザーブドインスタンスの方が費用的に安価になりますが、これには冗長性等、考慮されていません。
耐障害性、可用性から考えても、この要件が発生した際には Amazon WorkMail を選択がベストプラクティスと言えます。
オペレーション
ドメイン名 example.tld によるメール送受信を実現するために以下を行います。
- Amazon VPC
- Simple AD 稼働のための Subnet を用意
- AWS Directory Service
- Simple AD によるディレクトリー作成
- AWS Identity and Access Management (IAM)
- 保管メールデータ暗号化に使用するキー管理のために AWS Key Management Service (KMS) を設定
- Amazon WorkMail
- Amazon Route53
- ドメイン名 example.tld のDNSレコード管理
Amazon VPC
デフォルトで用意されている VPC と Subnet でも開始可能ですが、Simple AD で利用する Subnet は public subnet である必要はありません。
private subnet (Route Table に Destination: 0.0.0.0/0 が存在しない、またはそれ以外)で可能です。
以下成果物です。要望あればキャプチャー添付。TBC。
Name | IPv4 CIDR | Availability Zone |
---|---|---|
simplead-a | 10.0.0.0/28 | us-east-1b |
simplead-b | 10.0.0.16/28 | us-east-1e |
AWS Directory Service
AWS Management Console より AWS Directory Service を選択し、Simple AD をセットアップします。
年々 Simple AD と AD Connector の取り扱いがざつにn……
セットアップ情報は例えば下記です。要件に合わせて読み替えます。
Directory details
Name | Value | remarks |
---|---|---|
Directory type | Simple AD | 固定値 |
Directory DNS | ad.example.tld | |
NetBIOS name | オプション・未記入 | |
Default administrative user | Administrator | 固定値 |
Administrator password | ******** | |
Description | オプション・未記入 | |
Directory size | Small |
VPC Details
Name | Value |
---|---|
VPC | 10.0.0.0/16 |
Subnets | simplead-a, 10.0.0.0/28, us-east-1b |
simplead-a, 10.0.0.16/28, us-east-1e |
Access URL
セットアップ完了後、Status: Creating から Active になれば利用可能です。
この時、Access URL を定義します。
これは Amazon WorkMail の Web メールのURLで利用します。
例えば example.awsapps.com です。
AWS Identity and Access Management (IAM)
保存されるメール暗号化のため、暗号キーを指定します。
ここではデフォルトの aws/workmail を使います。
Amazon WorkMail
上記までに事前準備が完了しているはずですので、ここでは Standard setup でセットアップします。
Organizations
セットアップ情報は例えば下記です。要件に合わせて読み替えます。
Name | Value | remarks |
---|---|---|
Available Directories | ad.example.tld | セットアップした Simple AD |
Master keys | aws/workmail | セットアップした KMS |
Create 押下後、Status が Creating から Active に変われば利用可能です。
Domains
セットアップした Organization のドメイン名を定義します。
Organization のナビゲーション Domains を押下してドメイン名を定義します。
ここで先に設定した Access URL(example.awsapps.com)も確認できます。
Amazon SES と同様、ドメイン名の確認(Verify domain)が必要になります。
次項の Amazon Route53 の Hosted Zone (example.tld)に表示される下記のDNSレコードを追加します。
Recode type | Hostname | Value | remarks |
---|---|---|---|
TXT | _amazonses.example.tld. | (指定された文字列) | Domain verification で利用します |
MX | example.tld. | 10 inbound-smtp.us-east-1.amazonaws.com. | 3 |
CNAME | autodiscover.example.tld. | 3 | |
CNAME | (指定された文字列)._domainkey.example.tld. | (指定された文字列) | DKIM セットアップ4 |
Users
同じく Organization のナビゲーション Users よりユーザー定義を行います。
ユーザー名、パスワード、メールアドレスを入力してセットアップします。
特記する箇所はないため、ここでは割愛します。
Amazon Route53
Amazon WorkMail のセットアップ、Domains で得たDNSレコード情報を Hosted Zone example.tld に登録します。
割愛します。
上記にて username@example.tld によるメール送受信が可能です。
クライアント
デスクトップ、モバイル
Microsoft Exchange ActiveSync プロトコルをサポートするので、以下のデスクトップ、モバイルのクライアントに対応。
- Mac Mail.app
- iPhone
- Outlook
その他要検証。TBC。
ウェブアプリケーション
AWS Management Console, Amazon WorkMail のナビゲーション Organization settings で用意されている Web Application https://(文字列).awsapps.com/mail よりログイン可能。5
その他留意事項
申請関連
サービス上限
以下、気をつけるべき箇所の抜粋です。
- 1ユーザーのメールボックスは 50GB
- 送信・受信ともに1メールは 25MB
- 1 日のユーザーあたりのメッセージ送信数 宛先に関係なく、1,000 件のメッセージ
- ユーザーのエイリアス(アドレス)は 100(ハードリミット)
Amazon SES
メール送信は Amazon SES 経由で送信されますが、WorkMail からの送信は課金対象となりません。
また API 経由では必要な送信制限解除申請(サンドボックスから取り外す)も必要ありません。
未記入事項
以下の機能については記載してません。to be continued.
- 移行
- ジャーナリング
- フロールール
- グループ、リソース
- 既存AD連携
出典
いつの日も AWS ドキュメントと FAQ は最強説。
-
EC2 解除申請済みの場合はこの限りではない
「安いは正義」に「WEBインフラにメールサービスを上乗せするなんて」で立ち向かう方への処方箋。 ↩ -
AWS Directory Service Other Directory Types Pricing – Amazon Web Services (AWS) ↩
-
Amazon SES での DKIM を使用した E メールの認証 - Amazon Simple Email Service ↩
-
Log On to the Amazon WorkMail Web Application - Amazon WorkMail ↩