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マイクロサービスにおけるメッセージストーム —— 雪崩から中央メッセージシステムへの救済

Last updated at Posted at 2025-09-26

はじめに

マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスは独立した兵士のように、自分の業務に集中して効率的に動きます。理論的には、分散設計によってシステムは柔軟に拡張でき、保守も容易になるはずです。

しかし……データを1つ変更するだけで、システム全体が「大爆発」することもあります。
そう、これが メッセージストーム(Message Storm) —— マイクロサービスで最も厄介な隠れた災害です。

イメージしてください:注文ステータスの更新1件 = 軍隊の大行進。1つのイベント = 雪玉が転がり続け、気づいたらシステム全体が大混乱。

今回は、なぜカスケード型のメッセージストームが発生するのか、従来の対処法の課題、そして「メッセージセンター」でどう解決できるか を解説します。


1️⃣ メッセージストームの現場

シナリオ再現

  1. 単一データ変更

    • ユーザーが注文 → 在庫減少 → 注文ステータス変更 → メッセージ発生。
  2. 下流システムへの伝播

    • メッセージキューが即時に通知:在庫システム、レコメンドシステム、リスク管理システム……各サービスが一斉に処理開始。
  3. カスケード発火

    • 下流サービスが処理中にDBアクセスや別のイベント生成 → さらにメッセージ連鎖。
    • 件数は指数関数的に増え、キューとDBに負荷集中。
  4. 結果

    • キューが溢れて火山のように積み上がる
    • CPU/IO がスパイク、レスポンスが遅延
    • サービスによってはダウン

つまり:データ1件の変更が雪崩となり、エンジニアは泣きながら火消しに追われる 😅


2️⃣ 従来の解決策(手作業バージョン)

メッセージストームを抑えるために、よく使われるのは以下の手法です。

レート制御 & バッチ処理

  • メッセージ生成速度を制御し、瞬間的な洪水を防ぐ
  • 短時間に発生した複数のイベントをまとめて処理

非同期処理 & 遅延キュー

  • 消費者を非同期で動かし、同期ブロックを回避
  • リアルタイム不要なイベントは遅延処理でピーク緩和

コンシューマー側の最適化

  • 冪等性設計:重複処理でもデータが壊れない
  • バッチクエリ & キャッシュ:ホットデータを事前にキャッシュ
  • 水平スケール:インスタンスを増やして負荷分散

データ更新のデバウンス

  • 短時間の繰り返し更新は1回だけ通知
  • 下流は最新バージョンのみ処理

問題は……これを各サービスごとに実装する必要がある点。コードが複雑化し、保守コストも爆増。しかも漏れやすい。エンジニアの心はすぐ折れます。


3️⃣ 集中管理型:メッセージセンター

そこで出てきたのがこの発想:
「全部のメッセージを中央の“郵便局”に集めて、そこでまとめて管理すればいいのでは?」

image.png

基本コンセプト

  1. 全ての業務メッセージを メッセージセンターのキュー に集約
  2. センター側で 重複排除、同じイベントは一度だけ処理
  3. 内部向け はリチェック・同期で一貫性確保
  4. 外部向け は最新データをまとめて配信
  5. メッセージフローや配信戦略は 設定で編集可能

メリット

メリット 説明
重複排除 1件につき1回だけ処理、カスケード連鎖を防ぐ
分離 内部/外部メッセージを分けて、コアサービスを保護
可制御 フローを編集可能、戦略を柔軟に調整
シンプル化 各サービスは業務だけに集中、同期・配信はセンター側に任せる
疎結合化 各サービスで複雑なレート制御やバッチ処理を実装する必要なし

メッセージフロー例

  1. 業務システム → メッセージセンター
  2. メッセージセンター → 内部システム(返却・同期)
  3. メッセージセンター → 外部システム(まとめて配信)

ポイント:生成、重複排除、分離、配信の全てを一括で管理する。これでメッセージストームを未然にコントロールできます。


4️⃣ 戦略まとめ

  • 短期的対策:小規模システムや緊急時 → レート制御・バッチ・遅延キュー・冪等性で凌ぐ
  • 長期的ベストプラクティス:中〜大規模では メッセージセンターを導入
  • 監視・設定と組み合わせて、可用性と柔軟性を確保

つまり、メッセージストームの本質は「ミドルウェアの性能」ではなく「設計の制御力不足」。分散防御より集中管理の方がスマートです。


5️⃣ まとめ

  • メッセージストーム = 単一変更が雪玉効果でシステム全体を巻き込む現象
  • 従来の方法は煩雑で保守コストが高い
  • メッセージセンター方式は集中・シンプル・柔軟
  • キーワード:統一入口・統一重複排除・統一配信・設定可能な戦略

技術ユーモアで締めるなら:メッセージセンターはマイクロサービスの「中央郵便局」。どんな雪崩でも、1通ずつ消化できます 😉


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