こんにちは!KIYOラーニング株式会社でQAエンジニアをしている坪根です。
生成AIの活用、チームの中で「使う頻度の差」が出ていませんか?日常的に使う人がいる一方で、まだ業務に取り入れるきっかけをつかめていない人もいる——私たちQAグループでも、同じ状況がありました。
本記事はQAエンジニアからテスターまで、QAグループ全員が日々の業務で生成AIを当たり前に使う状態をどうやってつくったかという「全員に浸透させる」工夫についてまとめています。
「役割に関係なく全員が必ずやる業務」を入り口に選び、そこのハードルを徹底的に下げ、誰でも使える「型」を用意しました。
利用したツールはClaude Code+Notion+Backlogですが、工夫した点はツールに依存しません。
出発点:活用が進まない原因は「共通のハードル」
活用が進まなかった背景は個人の能力や意欲ではなく、以下の実務的ハードルでした。
- 使いどころが分からない
- 使い方が分からない
- 使った後どうするか決まっていない
つまり「浸透させる」とは、この3つのハードルを誰でも越えられるよう順番に取り除くことだと考えました。そこで以下を工夫しました。
工夫1:入り口を「全員が必ずやる業務」に絞った
浸透させるために、役割に関係なく全員が毎日やる業務をテーマに生成AI活用を推進することにしました。QAグループでその条件に当てはまったのが以下の2つでした。
- テスト対象製品の仕様調査(テスト中の「これって仕様?バグ?」の確認)
- バグ起票
この2テーマに絞ったことが、結果的に浸透のスピードを上げました。
工夫2:「いつ使い、使った後どうするか」を見せた
そこで仕様調査を例に「こういう時にこう使う」を示しました。特に効いたのが、調査後の判断を「①起票/②記録/③終了」の3パターンに固定し「調べたけど、これどうすればいいの?」を消したことです。※①②の具体的な型は工夫4で後述
工夫3:プロンプトを「穴埋め」まで下げた
一番大きなハードルだった「聞き方が分からない」には、(カッコ)を埋めるだけの質問テンプレートで対応。プロンプトを「ゼロから書くもの」から「穴埋めするもの」に変えました。依頼のコツは4要素だけ、と割り切って共有しています。
- 目的:知りたい結論
- 材料:対象ファイル・画面・API
- 条件:権限・設定・入力値
- 出力:欲しい形式
「専門用語が分からなくてもOK。画面名・ボタン名・やりたい操作・困っていることをそのまま書けば十分」と明言したことで、コードに普段あまり触れないメンバーも含め、誰もが同じやり方で使い始められました。
そのまま穴埋めで使える質問パターン10例(クリックで展開)
(カッコ)を自分のケースに置き換えて使えます。
-
導線:
(画面名)を開く導線を教えて。どのメニューから、どの権限/設定が必要? -
前提条件:
(やりたい状態:退会済み/管理者権限あり 等)を作る方法を教えて。どの設定をどこで変える? -
テストデータ:
(企業/ユーザー/コース 等)の作り方を手順で。最小構成も教えて -
期待仕様:
この操作をすると期待される結果は?「表示/保存/メール送信/権限エラー」など観点別に -
UIの条件:
(ボタン/項目)が表示される条件・されない条件を、理由つきで整理して -
バリデーション:
(入力項目)のバリデーション仕様を。OK/NG例とエラーメッセージも -
状態遷移:
(ステータス/フラグ)が変わる条件を一覧に。どの操作でどの状態へ? -
通知/連携:
(メール/通知/外部連携)が送られる条件・送られない条件を整理して -
例外・境界:
抜けやすい例外・境界条件を10個。権限違い/未設定/空/最大文字数/同時操作 など -
起票前の切り分け:
この現象について確認すべき点を、仕様どおり/設定不足/不具合の可能性で分けて
工夫4:「使った後の作業」も型化した
「一度使った」を「使い続ける」に変えるには、使った後の作業まで楽にする必要があります。面倒なままだと「自分でやったほうが早い」に戻ってしまうからです。仕様調査・バグ起票それぞれの出口を型にしました。
記録する場合:MCP経由でNotionに登録(クリックで展開)
複雑な調査結果は、手動コピペではなくMCP(Model Context Protocol)サーバー経由でNotionに記録します。「まとめ → 登録 → 共有」をエディタから離れず完結でき、コピペ往復が消えます。
紐付け先は用途で変えています(共有したいならテスト設計書の資料データベース、自分用なら個人ページ配下など)。タイトルや関連URLは自動入力に任せ、登録後に抜けもれを確認します。
起票する場合:スキルでドラフトを作る(クリックで展開)
バグ起票もスキルで「ドラフト → 確認 → 起票」を固定。参考になる既存チケットを「これを参考に起票して」と渡すだけでフォーマットを揃えてくれるので、ゼロから書くより圧倒的に速いです。揃える情報は、現象/期待値/再現手順/発生環境/参考情報の5つに統一しています。
ここまで楽になると「生成AIを使ったほうが速い」が体感でき、これが使い続ける一番の原動力になりました。
やってみて分かった効果と限界
効果(全員浸透という観点で)
- QAエンジニアからテスターまで、QAグループ全員が日常業務で生成AIを使う状態になった。活用の度合いのばらつきが大きく縮まった
- 各自がテスト中の不明点を自力で解決でき、開発者やQAエンジニアへの質問が減った
- 起票・登録のフォーマットが揃い、誰がやっても一定品質に。使い捨てだった調査結果がチームのナレッジになった
AIの調査結果は鵜呑みにせず、必ず実挙動で裏取りしてください。特に「表示条件」「状態遷移」は、古いコメントや仕様に引っ張られて誤ることがあります。
まとめ
生成AIをチームに浸透させるとき、つい「すごい活用事例」を探しがちですが、実際に効いたのは逆でした。
- 入り口を全員が必ずやる業務に絞る(仕様調査とバグ起票)
- プロンプトを穴埋めまで下げる(ゼロから書かせない)
- 使った後の作業まで型化する(使い続けられるようにする)
判断は人がやる前提のまま、活用にばらつきがある状態から、役割に関係なく全員が当たり前に使う状態へ移行できました。活用が進むかどうかは個人の資質ではなく、ハードルを取り除けるかどうかです。
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