AI Coding Agentの8月の動向
AI Coding.Infoというサイトを7月から運営しています。
これは、Claude CodeやGemini、あるいはCodexなど、AI Coding Agentに関する利用動向をGithubのリポジトリの情報から定点観測するサイトです。
AI Coding Agentの利用の判定として、以下のような条件で毎日調査を行っています。
- Githubの公開リポジトリを9,000リポジトリを毎日調査
- プログラミング言語毎のGithub スター数のTOP 300
- プログラミング言語は30種類から調査
- AI Coding Agent 16種類を対象
- 各種AI Coding Agentの利用するルールファイルがGithubリポジトリにある場合のみ、AI Coding Agentを利用していると判断
調査方法の変更
先月も調査記事を公開していました。
この1か月の更新により調査方法に変更がありました。
- 2025年8月9日 TOP100からTOP150へクロール対象を増加
- 2025年8月10日 TOP150からTOP200へクロール対象を増加
- 2025年8月14日 TOP200からTOP300へクロール対象を増加
以前は、3,000リポジトリを調査していましたが、今月になって、9,000リポジトリに増えています。一部、クロールエラーがあるため、グラフ上の実数とずれることがあります。
AI Coding Agentの利用率は3.1%
8月末のAI Coding Agentのリポジトリ利用率は3.1% で、前回の2.9%から、0.2ポイント増です。これは、調査したリポジトリの中で、何件がAI Coding Agentの利用の形跡が確認できたか。という数値になっています。8月中にはあまり大きな動きはありませんでした。今回、調査対象がOP 100からTOP 300に変え、比較的スター数の少ないリポジトリも調査対象に増えましたが、それほど利用実態に差はない。という結果になりました。
AI Coding Agentのプロダクト別のシェア
プロダクト別のシェアは以下のようになっています。
順位 | 製品名 | シェア率 |
---|---|---|
1位 | Claude Code | 33.2% |
2位 | Copilot Agent | 27.8% |
3位 | Cursor | 16.6% |
4位 | Codex CLI | 11.5% |
5位 | Gemini CLI | 6.7% |
今月のデータだけを見ると、利用のシェアにおいては、Claude CodeとCopilot Agentが一軍で、CursorとCodex Agentが二軍、次いでGemini CLIが使われている。という見解になります。
先月に比べてCursorのシェアが大きく落ちた。という見え方をしますが、これは調査手法の変更による影響が大きい。というのが私の意見です。先にも述べた通り、TOP 100で調査をしていた時期では確かにCursorのシェアが高かったのですが、TOP 300に変更した時期から、現在と似たシェア率となっています。そのため、スター数が上位のリポジトリではCursorが多く、下位では利用が少なかった。しかし、クロールの範囲を広げたことにより、下位のリポジトリで利用の多かった、Claude CodeやCopilot Agentが全体の割合として広がった。というのが私の見解です。
ただし、他のAI Coding Agentの成長がめざましい。というのも事実です。例えば、以下のツイートのようにCodex CLIのダウンロード数が非常に伸びた。というデータもあります。
ここでは、成長率という数字を定義し、確認してみます。これは9/1のリポジトリ利用数を8/18のリポジトリ利用数で割った値として計算しています。
製品名 | 8/18のリポジトリ利用数 | 9/1のリポジトリ利用数 | 成長率 |
---|---|---|---|
Claude Code | 104 | 124 | 1.19 |
Copilot Agent | 78 | 104 | 1.33 |
Cursor | 59 | 62 | 1.05 |
Codex CLI | 33 | 43 | 1.30 |
Gemini CLI | 23 | 25 | 1.13 |
この値からわかるように、Claude CodeやCopilot Agentは8/18時点でのリポジトリ利用数がCursorより大いにもかかわらず、成長率も上回っています。 そのため、現状の状況ではCursorがシェアの首位になるのは難しいということが分かります。また、Codex CLIやGemini CLIは、Cursorがリポジトリ数は上回っているものの、成長率は低いので、Cursorが順位を落とす可能性も見えます。仮に、成長率を固定して計算をすると、1か月後の9月にはCodex CLIはCursorをリポジトリ数で超える可能性があります。
先ほどのツイートでは、"npmのダウンロード数"をベースに話していましたが、"AI Coding.infoはAGENTS.mdのファイルが含まれているリポジトリの数"をベースに議論しています。最近、AGENTS.mdは色々なAI Coding Agentが横並びで対応するというニュースにもなりました。(そのため、AI Coding.infoに含まれるCodex CLIの利用リポジトリ数は若干誤差を含んでしまいました。)
AI Coding.info上の調査では、既にCodex CLIとGeminiでは、Codex CLIのほうが利用は多いです。 ただ、本当にGeminiを完全に上回っているか?というと僅差で、そこまで実際に差がある感じはしていないです。それは、先ほどの調査方法の話と、現時点では、Copilot AgentとClaude Codeの利用リポジトリ数が非常に多いため、それらを上回るぐらいの勢いでCodex CLIが伸びているか?といわれると、Claude CodeとCopilot Agentも相当早く成長しているので差があまり縮まっていない。という印象があります。
プログラミング言語別のAI Coding Agent利用状況
一番AI Coding Agentが利用されているプログラミング言語は「Typescript」、2番目が「Rust」、「Python」 です。 先月と今月であまり状況は変わっておらず、RustとPythonが先月と順位が入れ替わりました。4~6位あたりもあまり変わっていないです。C#、Go、Rubyというランキングになっていますが、それぞれが微妙に入れ替わった。という形で、それほど大きな動きがありませんでした。
ここにもクロール範囲による影響は出ていると思います。先月、AI Coding Agentの利用を確認できたリポジトリが、1つでもあるプログラミング言語は18個ありましたが、今月は24種類に増えています。それに加えて、企業を出自とするプログラミング言語でもAI Coding Agentの利用が増えているという傾向があります。例えば、Kotlin, Dart, Swiftです。このあたりの言語は難しさを感じており、あまりOSS的に学習できるデータが少ないため、AIの学習データが少ないのではないか。と思っていました。しかし、このような分野でもAI利用が進んでいるようです。個人的に、意外なところではPHPでも利用が増えています。最近、PHP界隈の人とお話をすることがあって、「PHP系のカンファレンスでは比較的AIの話が少なかった。」という話を聞いていました。私もPHPを書くことがあるのですが、古典的なMPAのようなPHP(htmlと<?phpが混在するようなコード)であれば、「比較的AIがコードを出力しにくいのではないか。」という先入観があったのですが、使われているケースもあるようです。(そのようなhtmlと<?phpが混在するコードは最近あるのかというとなさそうな気もしますが。)
AI Coding Agent利用リポジトリ数の1か月の推移
8月の推移を見てみましょう。8月9日から8月13日の間は、クロール範囲の修正があったために、大きく数字が変わっています。
これは前の章でも議論しましたが、8月9日以前はCursorの利用率が高かったですが、8月13日以降のクロール範囲が広がった後は、Claude CodeやCopilot Agentの利用率が高くなっていることが分かります。
また、クロール範囲の増加の影響はここでもみられており、今まで観測数が少なかったJunieを利用したリポジトリの数も増えています。最近では、比較的マニアックなTrae IDEやKiroなどのリポジトリも確認できています。
感想
先月に引き続き2本目の記事です。所感としましては、先月末にKiroが出てきたため、このあたりの数字が増えるかな。と思いましたが、OSSにはあまり影響はありませんでした。しかし、Kiroは意外なプロダクトに採用されており、割とメジャーなOSSとしては、storybookに採用されています。
一方で、GPT-5やgpt-ossの発表の影響もあるのではないか。と思いました。
こういった動きの時に、業界が激変するか!?と思ってウォッチするのですが、実はそこまで早くないかな。という印象もあります。こう見ると、意外とClaude CodeやGithub Copilotの牙城というのは非常に分厚いということが分かります。また、確かにダウンロード数や検索ボリュームなどはCodexが盛り上がっているように見えますが、その一方で、OSSへ波及し、普及するには一定のレイテンシがあるのだな。という認識の仕方もあります。したがって、データを見たり知見を見る際には、何を前提として議論しているのか。ということは非常に大切だと改めて感じました。