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対決!RTX 2080Ti SLI vs Google Colab TPU ~PyTorch編~

Last updated at Posted at 2019-05-23

RTX 2080Tiを2枚使って頑張ってGPUの訓練を高速化する記事の続きです。TensorFlowでは複数GPU時に訓練が高速化しないという現象がありましたが、PyTorchを使うとRTX 2080Tiでもちゃんと高速化できることを確認できました。これにより、2GPU時はTensorFlowよりも大幅に高速化できることがわかりました。

前回までの記事

ハードウェアスペック

  • GPU : RTX 2080Ti 11GB Manli製×2 SLI構成
  • CPU : Core i9-9900K
  • メモリ : DDR4-2666 64GB
  • CUDA : 10.0
  • cuDNN : 7.5.1
  • PyTorch : 1.1.0
  • Torchvision : 0.2.2

前回と同じです。「ELSA GPU Monitor」を使って、GPUのロードや消費電力をモニタリングします(5秒ごとCSV出力)。

結果

10層CNN

10層CNNの詳細は初回の記事を参照してください。縦軸に訓練時間、横軸にバッチサイズを取ったものです。

barplot_0_time.png

「TensorFlow_ch_first」はこちらで書いたTensorFlowかつchannels_firstとしたケースです。「TensorFlow_ch_last」はchannels_lastのケースで、TensorFlow/Kerasのデフォルトの設定はchannels_lastになります。

「1GPU, 2GPU」はRTX2080Tiの数で、2GPUの場合は、TensorFlowはmulti_gpu_modelを使い、データパラレルとして並列化させています。PyTorchの場合は、

    if use_device == "multigpu":
        model = torch.nn.DataParallel(model)

このように同じくデータパラレルで並列化させています。大きいバッチでデータのないところは、OOMになってしまうため測っていない場所です。

このグラフから以下のことがわかります。

  • 小さいCNNかつ1GPUでは、必ずしもPyTorchが最速とは限らない。むしろTensorFlow、特にchannels_firstにしたTensorFlowのほうが速いことがある。
  • TensorFlowとPyTorchの差は、小さいCNNではバッチサイズを大きくすると縮まっていく。
  • ただし、PyTorchでは2GPUにしたときは明らかにTensorFlowよりも速くなるバッチサイズ512以降では、Colab TPUよりもFP32で既に速い
  • PyTorchのほうが大きいバッチサイズを出しやすい。TensorFlowの場合は、1GPUではバッチサイズが2048のケースがOOMで訓練できなかったが、PyTorchの場合は1GPUでバッチサイズ2048を訓練できる。

Wide ResNet 28-10

こちらはWide ResNet 28-10の訓練時間を比較したものです。

barplot_1_time.png

  • 大きいCNNかつ1GPUでは、PyTorchとTensorFlowの訓練時間の差はほとんどない。特にTensorFlowでChannels firstにすればPyTorchかそれ以上の速さは出せる。
  • しかし、複数GPUになると、明らかにPyTorchのほうが速くなる。TensorFlowのGPU並列化が何かおかしい。
  • ただし、WRNのような大きなCNNのでは、PyTorch+2GPU+FP32ではまだColab TPUに勝てなかった
  • PyTorchの場合、TensorFlowのできなかった1GPUでのバッチサイズ256、2GPUのバッチサイズ512を訓練することができた。なぜかPyTorchのほうが訓練できるバッチサイズが大きい

PyTorch個別の結果

今回やったPyTorchだけの結果を表します

1GPU・10層CNN

バッチ 1エポック[s] 2~中央値[s] 訓練時間 精度
128 15.86 13.90 0:23:15 0.8915
256 12.72 12.29 0:20:28 0.8900
512 13.60 11.33 0:18:53 0.8837
1024 16.52 10.93 0:18:17 0.8860
2048 15.50 10.80 0:18:03 0.8639

1GPU・WRN

バッチ 1エポック[s] 2~中央値[s] 訓練時間 精度
128 111.89 110.42 3:03:57 0.8743
256 105.71 105.47 2:55:48 0.8011

2GPU・10層CNN

バッチ 1エポック[s] 2~中央値[s] 訓練時間 精度
128 16.07 11.92 0:20:04 0.8896
256 8.96 9.00 0:15:00 0.8912
512 8.74 7.80 0:13:01 0.8816
1024 9.52 7.24 0:12:05 0.8814
2048 8.34 7.05 0:11:45 0.8688

2GPU・WRN

バッチ 1エポック[s] 2~中央値[s] 訓練時間 精度
128 72.75 70.58 1:57:38 0.8559
256 58.43 60.83 1:41:22 0.8109
512 59.01 56.49 1:34:14 0.7695

精度比較

一応、フレームワークやデバイス間で精度の差があるか確認しておきましょう。

barplot_0_accuracy.png

barplot_1_accuracy.png

精度の明確な差はこのデータだけではなさそうに思えます。明確に議論するならケースごとにもう少し試行回数を増やして精査しないといけません。

GPUログ

1GPU・10層CNN

gpu_10 Layers CNN.png
目につくのは「Memory Usage」です。TensorFlowのケースではモデルが大きかろうが小さかろうが、確保できるだけめいいっぱいメモリ確保しているのに対し、PyTorchではモデルに見合ったサイズしかメモリ確保していません。TensorFlowのGPU最適化やっぱりおかしいんじゃ。

1GPU・WRN

gpu_Wide ResNet 28-10.png
TensorFlowのケースよりGPUロードの振れ幅が大きくなっていますが、これはエポックの終わりで一瞬だけ計算しない時間があるからです。訓練ループを書いているせいもあるかもしれません。

2GPU・10層CNN

multigpu_10 Layers CNN.png
2GPUの場合は、GPUごとに同じ動きになっていてわかりやすいです。

2GPU・WRN

multigpu_Wide ResNet 28-10.png
TensorFlowのときにあった、GPUロードの1枚目と2枚目の不均一性は解消されました。これなら自然ですし、速度も出るはずです。

まとめ

RTX 2080Ti SLI環境の場合、次のことがわかりました。

  • FP32の精度では、1GPUの場合、TensorFlowとPyTorchの速さはあまり変わらない。TensorFlowでchannels_firstにするとPyTorchの速度を上回ることもある
  • ただし、2GPUにするとPyTorchの完勝になる。TensorFlowでは逆に遅くなってしまう。
  • 10層CNNのような小さいモデルでは、2GPUのPyTorchにすると、FP32の精度を保ちながらColab TPUより高速化できる。
  • ハードウェアが同一なのに、PyTorchのほうが大きなバッチサイズを訓練できることがある。
  • PyTorchはモデルの大きさに応じてGPUメモリを専有する。TensorFlow/Kerasは大きいモデルだろうが小さいモデルだろうが、デフォルトでは確保できるだけ確保していて、GPUの最適化がおかしい。

PyTorch with テンソルコアでどれだけ速くなるかは次回に書きたいと思います。

コード

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