はじめに
コロナの影響で、チーム全員がリモートワークに変わりました。
それまでは、同じフロアでチーム4人が集まって、ペアプロ/モブプロ中心で開発し、チームで情報を共有しながらお互いに助言し合って開発していました。
リモートワークになっても、それは継続できています。それは先人の方々が展開してくれた知見のおかげです。それら先人の方々に感謝します。
本記事では、私のチーム(私が中堅で、他3人が若手)で実際にとても役に立ったリモートワークでのチームビルディングのノウハウを紹介します。
本稿は2020年に書いた記事で、1年後の2021年にさらに内容をアップデートした記事を以下に投稿しました。よろしければ、以下を参照ください。
疲労感と孤独感いっぱいのリモートワークからの脱却
感じたことを共有
私のチームでは、私以外のメンバーはリモートワークが初めてだったので、全員リモートワークを始めてから2日目の朝に、初日に各自が感じたことを話してもらいました。
その結果、以下の内容が共有されました。
- リモートワークは意外と疲れる。会社に行って仕事するより疲れる気がする。
- 今までは席が近いので気軽に話しかけられたけど、リモートワークだと気軽に話しかけにくい。
- リモートワークは、ちょっと孤独感を感じる。
普段同じフロアにいると「感じたことを共有」する機会は多いですが、リモートワークに慣れていないとそれがしづらくなるため、なるべく意識的に「感じたことを共有」する機会を設けると良いと思います。
そうでないと「自分だけがリモートワークをストレスに感じているのかな」などのように不安に思ってしまいます。実は自分が感じていることと同じことを他の人も感じているが分かれば安心します。それに皆で改善策を検討することもできます。
実際、上記3点に対して、皆で改善案を考えて解消できました(以降で説明します)。
休憩は積極的に取る
オフィス家具は体への負担を最小限にするように作られていますし、慣れていない環境は疲れやすいため、リモートワークは意外と疲れます。そのため、適度に休憩を入れて、ストレッチしたり、固まった姿勢をほぐしたり、意識して休憩を入れることにしました(「リモートワーク 休憩」でググると多くの方々が、その方が良いという知見を公開しています)。
毎日1回以上Zoomのビデオ通話を誘う
今までは席が近いので気軽に話しかけられたけど、リモートワークだと気軽に話しかけにくいという問題を解消するために、最初のうちは毎日1回以上Zoomのビデオ通話に誰かを誘うことをルールにしました。
__この施策が一番効果的だった__と思います。
このルールによって、ビデオ通話に誘う敷居が凄く下がりました。同じフロアで「今ちょっと良いですか?」と話す感覚にだいぶ近づいたと思います。
以下は例です。tsuzuki_t くんの分報チャンネルに、一番後輩の minoura_a さんがペアプロを誘っている所です。
ビデオ通話を気軽に使うことの有効性は、以下の記事にある通り、とても大きいため、それを実施する敷居を下げることは大事と思います。
マイクロソフトのリモートワークが得意な人を観察して気づいた、たった一つのポイント
私のチームでは、Slackを用いているため、SlackとZoomの連携アプリを使うと、とても便利でした(詳細は以下の記事を参照)。
【5分で理解】SlackとZoomの連携方法や使い方、作業効率アップの秘密を紹介
分報とポジティブフィードバック
リモートワークは孤独感を感じやすいという問題を解消するために、分報でのコミュニケーションを強化しました。
分報とは、Slackなどの社内チャットツールを使い、自分専用チャンネルで「今やっていること」や「困っていること」をつぶやくプラクティスです。詳細は以下を参照ください。
分報で各自の作業を可視化したら、メンバー間の協力が加速された話
具体的には、同じフロアにいた頃よりも、少し多めに「今やっていること」をつぶやき、「実装完了!」などのつぶやきに対して「いいね」や「すごい!」などのポジティブな絵文字リアクションを積極的に付け合うことにしました。
下図のような感じです。
原則として、他の人の分報は「読むのも読まないのも自由」なので、「たまたま読んだ場合には積極的に絵文字リアクションを付けよう」という試みです。
皆で励ましながら開発している感じが出るので、孤独感は軽減されました。
なお、絵文字は、以下で簡単に作成できます。
絵文字ジェネレーター
ちなみに、はてな社内のSlackでは、カスタム絵文字が2000個以上あり、絵文字リアクションは積極的に行われています(以下の記事参照)。
はてな社内のSlackには、カスタム絵文字が2028個!
__ポジティブなフィードバックは、心理的安全性を高めたり、メンバーの成長を加速させる意味でも大きな効果がある__と言われています。そのため、私は絵文字アクション以外でも、毎日10回は、ZoomミーティングやSlackで「そこに気付くなんて凄い!」「さすが!その通り!」「その想定は素晴らしい」「その判断Good!」などのポジティブフィードバックをしています。
以下、参考記事の一例です。
リーダーになるすべての人に知ってほしい チームビルディングの極意
【ポジティブフィードバックの効果とは?】
朝会(デイリースクラム)
スクラムなどのアジャイル開発をしている場合、朝会でバーンダウンチャートとカンバンを利用しますが、それらを紙媒体で運用することもあると思います。実際、私のチームは紙媒体だったため、以下のように移行しました。
- バーンダウンチャートの紙
- 私の自宅に持って帰って、毎朝バーンダウンの紙を更新し、朝会でWebカメラでメンバーに見せています。
- カンバン
- Trelloに移行しました。
そして、当日の朝会前に各自がSlackに、朝会の報告内容を投稿しています。Slackのワークフロービルダーで作成したワークフローを用いると便利です(ワークフロービルダーの使い方はこちら)。
朝会の時間になると、Zoomのビデオ通話で、バーンダウンチャートやトレロのカンバンを見ながら実施します。
具体的な朝会の内容は、以下の記事を参照ください。
リモートワークでも生産性を上げる!スクラム創始者直伝の実践ノウハウを日本語化して入門者向けにまとめました。
また、朝会の最後に、ちょっとした雑談をするようにしています。本来は、雑談時間を設けなくてもいつでも雑談できる雰囲気を作っていくことが重要と思います。ただ、リモートワークに慣れていないうちは、雑談する機会を増やしてリモートでの雑談に慣れるためにも朝会で雑談しています。
雑談の重要性は、以下の記事でも紹介されています。
ホウレンソウからザッソウ(雑談・相談)へ
相手へのメッセージは語尾に気を付ける
文字だけの情報だと、冷たく感じてしまいやすいので、語尾をやわらかくして、冷たく感じないように気を付けています。特に、先輩から後輩への指示・指摘のメッセージが気を付けるべきポイントです。
例えば、何かを直してほしい時に「XXXを直して」と書くより「XXXの修正をお願いできますか?」の方が受け手のイメージは良いと思います。陽気な感情を表すために、絵文字を使ってもいいと思います。
その辺りのノウハウとして、以下の記事は参考になります。
トラブルを防ぎ生産性をあげるには?「チャットコミュニケーション」12の鉄則
リモートワークだからこそペアプロ/モブプロ
孤独感を感じやすいリモートワークだからこそ、ペアプロ/モブプロを行います。
Zoomで画面共有することで、同じ机で横に並んでやるのと、さほど変わりません。
ペアプロ/モブプロのメリットはたくさんありますが、リモートワークにおける最大の効果は「楽しい」ことだと思います。ペアプロ/モブプロがどれだけ楽しいのかは、以下の記事が分かりやすいと思います。
物語風で分かる、早くて楽しいモブプログラミング
一緒にワイワイ会話しながら物ができていくことは、とても楽しく感じます。そして、機能が動作した時の達成感を、メンバー皆で共感できます。「楽しい」というのは、とても大事なことで、楽しい時間はとても集中して取り組むため、高い生産性で開発できます。
また、モブプログラミングで開発しているチームは、開発中の議論でお互いの考え方の理解が深まることで、心理的安全性も高くなる傾向があると思います。
ペアプロ/モププロの効果については、以下の記事を参照ください。
ペアプロ・モブプロでメンバーが驚くほど成長した話
ちなみに、Zoomで初めてペアプロ/モブプロを行うと2時間やっただけでも「凄く疲れる」と思うかもしれませんが安心してください。Zoomでなくてもペアプロ/モブプロは疲れます。決してペアプロが合わなくて疲れているわけでなく、誰でも疲れるものだと思います。
疲れるということは、それだけ頭を使って集中して仕事をしているということだと思います。実際、その時間で作ったものの出来栄えは良いものになっていると思います。
ペアプロ/モブプロの頻度に関しては、私のチームでは1日に1~2時間程度、自分が主担当のアイテムに対して、他の人にペアプロかモブプロに入ってもらうことが多いです(時期により ばらつきがあります)。検討が必要な部分であるほど、ペアプロ/モブプロの効果は高くなるため、なるべくそういう部分をペアプロ/モブプロで行います。
経験的には、コードレビューで何件も指摘が出るような実装範囲は、ペアプロで一緒にやった方がトータルでかかる時間は少なくなると思います。
ニックネームで呼び合う
ファーストネームまたはニックネームで呼び合うことで互いの距離感を縮めることができます。
厳密には、私のチームはリモートワークになる1週間前から呼び方を変えましたが、変えて良かったと思います。名前は毎日何度も呼ぶので、離れているからこそ、呼び方で親近感を高めることは有効になります。
急に呼び方を変えるのは恥ずかしいですが「チームビルディングとして大切なこと」という認識で、皆で取り組めば問題ありません。2週間くらいで慣れます。
呼び方を変える上で、注意する点は2点あります。
- 本人が呼ばれたい名前を自分で決めることが大事です。普段プライベートで呼ばれているニックネームがあれば、それを使うのが無難です。そういう候補が無ければ、ファーストネームで良いと思います。名字で「小島さん」と呼ぶより「優介さん」と呼ぶ方が距離が縮まると思います。
- ニックネームは後輩から呼ばれる時の呼び方も合わせて決めましょう。後輩からは「さん付け」したニックネームでないと呼べないため、それを明確に決めないと定着しません。
(例)先輩からは「まこっちゃん」、後輩からは「まこっさん」
ファーストネームやニックネームで呼ぶメリットは以下を参照ください。
~目標達成し続けるチームづくり~ 仲間意識を高める呼び方
ファーストネームで呼び合うことのメリットって?
Zoomの通話は顔が見える状態にする
これも凄く大事と思います。
特に、何かを検討する会議などでは、相手がどう思っているのか(困っているのか、楽しんでいるのか)、声や文字だけだと情報が少なくて、適切なコミュニケーションができないリスクがあります。
チームメンバーとの距離を近くに感じる意味でも、顔が見える方が良いと思います。
1人でもリモート参加なら全員リモート参加する
チーム外のメンバーと会議をする際は、リモートワークではないメンバーと会議することもあります。
1人でもリモート参加なら、参加者全員が個別のマシンで参加した方が良いというのが、一般的な見解のようなので、そうしてもらっています。以下の記事にその旨が書かれていました。
効果的なリモート会議にするためのプラクティス
リモートワークを取り入れる方法
まとめ
私のチームで活用しているノウハウを紹介しました。他にも「こんな工夫をして効果的だった」などがあれば、コメント等で教えていただけると幸いです。
関連として、リモートワークに関するイベントに参加して得た知見を以下で公開しました。
各社のリモートワークを語る会に参加して得た知見
私は本稿のノウハウを用いて こちらのツール を作っています。
Twitterでも開発に役立つ情報を発信しています → @kojimadev