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疲労感と孤独感いっぱいのリモートワークからの脱却

Last updated at Posted at 2021-06-27

1. はじめに

私のチームは2019年までは、同じフロアでチーム4人が集まって、ペアプログラミング/モブプログラミング中心で開発し、チームで情報を共有しながらお互いに助言し合って開発していました。
アジャイル開発のチームとして、わりと良い感じにコミュニケーションを取りながら開発できていたと思います。

しかし2020年に、コロナの影響で、突然チーム全員がリモートワークに変わり、それは崩壊しました
チーム全員がリモートワークの初心者のため、リモートワーク初日は大変な事になりました。
今まで同じフロアで気軽に声をかけあっていましたが、それができなくなり、初日は「楽しくない」開発でした。
翌朝に、皆で初日の感想を話し合った結果、全員が疲労感と孤独感を感じており、今までの楽しかった開発が、一変してしまいました。
こんな状態で、この先、リモートワークを続けていけるのか、皆、とても不安を感じていました

2. 楽しい開発を取り戻すために

リモートワーク2日目の朝、各自が感じた感情を話してもらいました。
その結果、以下の内容が共有されました。

  1. リモートワークは意外と疲れる
  2. リモートワークだと気軽に話しかけにくい
  3. リモートワークは孤独感を感じる

初日は、ペアプログラミングもモブプログラミングも行わなかったこともあり(理由は最後に記載)、ビデオ通話をしたのは朝会の時だけであり、全員がとても強い孤独感を感じていました。

普段同じフロアにいると「感じたことを共有」する機会は多いですが、リモートワークに慣れていないとそれがしづらくなるため、意識的に「感じたことを共有」する機会を設けた方が良いと思います(感じたことを共有するのは、その後も継続)。
そうでないと「自分だけがリモートワークをストレスに感じているのかな」などのように不安に思ってしまいます。自分が感じていることと同じことを他の人も感じていると分かれば安心します。

なりより、皆がマイナスの感情を感じていると分かれば、皆で改善策を検討することができます。これが最も重要な点です。

実際、このようなマイナスの感情をプラスの感情に変えるために、皆で次々に施策を考えて実施しました。
施策の中には、イマイチなものも何個かありましたが、とにかく色々とやってみて、皆で楽しい開発を取り戻すように試行錯誤していきました。
以降に、その中でオススメの施策を厳選して紹介します。

3. 意外と疲れるに対する施策

3.1 積極的に休憩をとる

オフィス家具は体への負担を最小限にするように作られていますし、慣れていない環境は疲れやすいため、リモートワークは意外と疲れます
そのため、適度に休憩を入れて、ストレッチしたり、固まった姿勢をほぐしたり、意識して休憩を入れることにしました。
(「リモートワーク 休憩」でググると多くの方々が、その方が良いという知見を公開しています)

3.2 良い椅子とクッション

これはお金がかかるので、一部のメンバーのみとなりますが、リモートワークの疲れを軽減するために、椅子とクッションが重要ということで、一部のメンバーは椅子とクッションを購入しました。
特に、椅子に関しては、毎日8時間以上利用するものなので、多少高額であっても、疲れにくい椅子にする価値は大いにあると思います。

4. 気軽に話しかけにくいに対する施策

4.1 毎日1回以上Zoomのビデオ通話を誘う

今までは席が近いので気軽に話しかけられたけど、リモートワークだと気軽に話しかけにくいという問題を解消するために、最初のうちは毎日1回以上Zoomのビデオ通話に誰かを誘うことをルールにしました
この施策が一番効果的でした

このルールによって、ビデオ通話に誘う敷居が凄く下がりました。同じフロアで「今ちょっと良いですか?」と話す感覚にだいぶ近づきました。
以下は例です。tsuzuki_t くんの分報チャンネルに、一番後輩の minoura_a さんがペアプロを誘っている所です。
image.png

ビデオ通話を気軽に使うことの有効性は、以下の記事にある通り、とても大きいため、それを実施する敷居を下げることは大事です。
マイクロソフトのリモートワークが得意な人を観察して気づいた、たった一つのポイント

4.2 シームレスに通話開始できる状態にする

ビデオ通話を気軽に行うようになった後に、思ったことがありました。
ビデオ通話のたびにヘッドホンを付け外しするのは面倒ということです。
これは、もしかすると、ビデオ通話自体が面倒に感じてしまう可能性もあります。
また、長時間ヘッドホンしていると疲れてきますし、長時間のイヤホンは外耳炎のリスクがあると言われています。

そこで、私のチームは皆、スピーカーフォンにしました
これにより、ヘッドホンを付け外しすることもなく、スピーカーフォンをパソコンのそばに置いておくだけで、いつでもすぐに「シームレスに通話開始」ができるようになりました。
image.png
私は「Anker PowerConf S3 スピーカーフォン」というものを購入しました。
スピーカーフォンの検索結果

4.3 「今から通話いいですか」をすっ飛ばして通話する

皆がスピーカーフォンになった数ヶ月後、さらにもっとシームレスに通話開始できないか、試行錯誤しました。
その結果、チャットでの「今から通話いいですか」をすっ飛ばして通話開始する方法に行き着きました
これは、チームメンバー全員が、いきなり話しかけられても大丈夫なくらいに気の置けない仲になっている必要があります。その条件を満たしていれば、よりスピーディーにビデオ通話を開始できます。
ZoomとDiscordの両方のやり方を紹介します。

<Zoomでのやり方>
まずZoomのブレイクアウトルームを、図のように人数分、作成します。
その際に[参加者によるルーム選択を許可]にチェックを入れます(下図の赤枠)。
通常時は、そのルームに、チームメンバー1人ずつが待機します。
話しかける時は、その人のルームに入って、いきなり話しかけるという方法です。
Zoomのブレイクアウトルームはミーティング終了後に停止するため、私のチームでは朝会の時にブレイクアウトルームを開始しています。
image.png

<Discordでのやり方>
まずボイスチャンネルを、図のように人数分、作成します。
通常時は、そのチャンネルに、チームメンバー1人ずつが待機します。
話しかける時は、その人のチャンネルに入って、いきなり話しかけるという方法です。
image.png

5. 孤独感を感じるに対する施策

5.1 分報でリアクションし合う

リモートワークは孤独感を感じやすいという問題を解消するために、分報でのコミュニケーションを強化しました。
分報とは、Slackなどの社内チャットツールを使い、自分専用チャンネルで「今やっていること」や「困っていること」をつぶやくプラクティスです。詳細は以下を参照ください。
分報で各自の作業を可視化したら、メンバー間の協力が加速された話

具体的には、同じフロアにいた頃よりも、少し多めに「今やっていること」をつぶやき、「実装完了!」などのつぶやきに対して「いいね」や「すごい!」などのポジティブな絵文字リアクションを積極的に付け合うことにしました。
下図のような感じです。
image.png

原則として、他の人の分報は「読むのも読まないのも自由」なので、「たまたま読んだ場合には積極的に絵文字リアクションを付けよう」という試みです。
皆で励ましながら開発している感じが出るので、孤独感は軽減されました。

ちなみに、はてな社内のSlackでは、カスタム絵文字が2000個以上あり、絵文字リアクションは積極的に行われています(以下の記事参照)。
はてな社内のSlackには、カスタム絵文字が2028個!

5.2 (補足)メンバーが分報に投稿してくれない時の対応

分報の補足です。私は他の会社の人から、時々、以下のような質問をもらうことがあります。
人により全くつぶやかなくなってくるのですが、そういうことないでしょうか?

これに関しては、メンバーが分報をつぶやくメリットを感じれば、つぶやくようになります。
例えば、不具合調査中の分報に対して「そこに気付くなんて凄い!」「その想定は素晴らしい!」などのポジティブフィードバックをしたり、そのタスクを進める上での助言をすれば、分報を書くことで「褒められるし、仕事が効率的に進む」というメリットを感じて投稿するようになります。

5.3 Zoomの通話は顔が見える状態にする

チームで話し合った結果、ビデオONにすることに全員が抵抗なかったため、基本ビデオONにしています。
ビデオOFFだと、何かを検討する会議などでは、相手がどう思っているのか(困っているのか、楽しんでいるのか)、声や文字だけだと情報が少なくて、適切なコミュニケーションができないリスクがあります。
また、心理学的にも、顔を見る回数が増えるほど、その人に親しみを持ちやすいと言われているため、楽しく開発するチームを作るためにも、ビデオONが有効です。
(ただ、ビデオONにしたくない人もいると思うので、無理強いするのは良くないと思います)

5.4 チャットは語尾に気を付け、あえて冗長性を持たせる

文字だけの情報だと、冷たく感じてしまいやすいので、語尾をやわらかくして、冷たく感じないように気を付けています。特に、先輩から後輩への指示・指摘のメッセージが気を付けるべきポイントです。
例えば、何かを直してほしい時に「XXXを直して」と書くより「XXXの修正をお願いできますか?」の方が受け手のイメージは良いです。陽気な感情を表すために、絵文字を使っても良いです。

時には、以下のような冗長なコミュニケーションも大切です。
この冗長性が、感情を共有することに繋がり、楽しさになります。
image.png

5.5 リモートワークだからこそペアプロ/モブプロ

孤独感を感じやすいリモートワークだからこそ、ペアプログラミングとモブプログラミング(以下、ペアプロ/モブプロ)を行います。
私のチームメンバーは全員、ペアプロ/モブプロについて、オフィスでリアルに行うよりも、リモートワークの方がやりやすいと感じています。ドライバー交代は画面共有する人を変えるでけで済みますし、モブプロに必要な大きなディスプレイも必要ないため、リモートワークの方が便利です。
(ただ、ディスプレイは複数あった方がいいので、ディスプレイを2つ持っていない人はこちらの方法を用いました)

ペアプロ/モブプロのメリットはたくさんありますが、リモートワークにおける最大の効果は「楽しい」ことです。ペアプロ/モブプロがどれだけ楽しいのかは、以下の記事に書いてあります。
物語風で分かる、早くて楽しいモブプログラミング

一緒にワイワイ会話しながら物ができていくことは、とても楽しく感じます。そして、機能が動作した時の達成感を、メンバー皆で共感できます。「楽しい」というのは、とても大事なことで、楽しい時間はとても集中して取り組むため、高い生産性で開発できます。
また、モブプログラミングで開発しているチームは、開発中の議論でお互いの考え方の理解が深まることで、心理的安全性も高くなる傾向があると思います。

ペアプロ/モププロの効果は、以下の記事を参照ください。
ペアプロ・モブプロでメンバーが驚くほど成長した話

ちなみに、リモートワークで初めてペアプロ/モブプロを行うと2時間やっただけでも「凄く疲れる」と思うかもしれませんが安心してください。リモートワークでなくてもペアプロ/モブプロは疲れます。決してペアプロが合わなくて疲れているわけでなく、誰でも疲れるものだと思います。
疲れるということは、それだけ頭を使って集中して仕事をしているということです。実際、その時間で作ったものの出来栄えは良いものになっていると思います。

ペアプロ/モブプロの頻度に関しては、私のチームでは全員が1日に1回以上やることを推奨しています。
ペアプロ/モブプロに適したタスクの特性を全員が理解した上で(対応方針が複数あり、手戻りが発生しやすいタスクほど適している)、事前にいつやるかの計画は立てずに柔軟に実施しています
ペアプロ/モブプロに出たり入ったりも柔軟に行っています。

5.6 ニックネームで呼び合う

ファーストネームまたはニックネームで呼び合うことで互いの距離感を縮めることができます(心理学的にも、その効果があると書いている書籍もあります)。
厳密には、私のチームはリモートワークになる1週間前から呼び方を変えましたが、変えて良かったと思います。名前は毎日何度も呼ぶので、離れているからこそ、呼び方で親近感を高めることは有効になります。
急に呼び方を変えるのは恥ずかしいですが「チームビルディングとして大切なこと」という認識で、皆で取り組めば問題ありません。2週間くらいで慣れます。

呼び方を変える上で、注意する点は2点あります。

  • 本人が呼ばれたい名前を自分で決めることが大事です。普段プライベートで呼ばれているニックネームがあれば、それを使うのが無難です。そういう候補が無ければ、ファーストネームが良いと思います。名字で「小島さん」と呼ぶより「優介さん」と呼ぶ方が距離が縮まります。
  • ニックネームは後輩から呼ばれる時の呼び方も合わせて決めましょう。後輩からは「さん付け」したニックネームでないと呼べないため、それを明確に決めないと定着しません。
    (例)先輩からは「まこっちゃん」、後輩からは「まこっさん」

6. その他の施策

6.1 ポジティブフィードバック

ポジティブなフィードバックは、心理的安全性を高めたり、メンバーの成長を加速させる意味でも大きな効果があると言われています。
そのため、私は絵文字アクション以外でも、毎日10回くらいZoomミーティングやSlackで「その観点で考えるなんて凄い!」「さすが!その通り!」「その想定は素晴らしい」などのポジティブフィードバックをしています

ポイントは「結果」に対してでなく「行動」を褒めることです。
褒める行動の例をいくつか紹介します。

  • 早めに報告・相談された時に毎回褒める
    • 報告内容がグダグダでも、早めに報告してくれたことは必ず褒めます。すると、早めに報告・相談する行動が定着して、手戻りが無くなります。
  • 以前に指導した通りに実行できたら褒める
    • 複雑な問題を分解して考えようとする、結論から話すなど、行動が改善された時は必ず褒めます。
  • なんとなく判断したのでなく、ロジカルに判断したら褒める
    • メソッドの名前をなんとなくでなく根拠を持って決めたなど、たとえ判断結果が間違っていても、自分なりに根拠を持ってロジカルに判断したならば褒めます。

6.2 (補足)褒めるのが苦手という場合の考え方

ポジティブフィードバックの補足です。私は他の会社の人から、時々、以下のような質問をもらうことがあります。
「褒めるのが苦手なんですけど、褒めるためのコツってありますか?」

実は、私も昔は褒めるのが苦手でした。
それが変わったきっかけは、いろんな事を自分の責任と考えるようになったことです。
例えば、せっかく早めに相談してくれた時に褒めないことで、その後、早めに相談してくれず、大きな手戻りがあったら、それは私の過失だと思います
また、褒めないことで、仕事の達成感ややりがいが低くなったとしたら、それも私の過失だと思います。
つまり、自分が褒めないことで、手戻りが起きたり、メンバーが楽しく開発できなくなったりすると考えたら、苦手とか言ってる場合じゃなく、褒めざるを得なくなったというのが実情として有ります。

6.2 質問形式での雑談

朝会の最後に、お互いをもっと知るための雑談をするようにしています。
本来は、雑談時間を設けなくてもいつでも雑談できる雰囲気作りが重要ですが、リモートワークに慣れていないうちは、雑談する機会を定期的に設けてリモートでの雑談に慣れることも大切です。

お互いを知るために、1人が質問を考えて、皆がその質問に回答する形式としています。
(例)「最近購入したQOLを上げるグッズは?」「もし1ヶ月休みになったら何をする?」
これを繰り返すことで、お互いの相互理解が深まります。

なお、リモートの雑談は、下図のように、自分のプライベートをカメラで見せられるため、その人をより知ることに活用できます。
image.png

6.3 1人でもリモート参加なら全員リモート参加する

チーム外のメンバーと会議をする際は、リモートワークではないメンバーと会議することもあります。
1人でもリモート参加なら、参加者全員が個別のマシンで参加した方が良いです。
以下の記事にその旨が書かれています。
効果的なリモート会議にするためのプラクティス
リモートワークを取り入れる方法

6.4 その他に試したもの

その他にも、色々な施策をやってみました。
前提として、チームのコンテキストによって、同じ施策でも合う/合わないがあります。
以下は、私のチームではあまりうまく活用できませんでしたが、別のチームならば、効果的に活用できる施策かもしれません。

まとめ (現在はどうなったのか)

上記に挙げた様々な施策を実施できたのは、先人の方々が公開してくれている様々な知見のおかげです。それら先人の方々に感謝します。

そのおかげで、私のチームは、疲労感と孤独感いっぱいのリモートワークから早々に脱却し、毎日楽しく快適にリモートワークで開発できるようになりました
その他にも、チームの皆で楽しく開発する施策を色々実施して、生産性も倍増しました。詳しくは以下を参照ください。
1年以上かけて生産性倍増+成長し続けるチームになった施策を全部公開

今回、紹介した施策のうち、1つでも参考になるものがあれば幸いです。

なお、オンラインでの交流という観点で、私は発表初心者向けのコミュニティを運営しており、毎月LT大会を開催しています。オンラインでの発表に少しでも興味がありましたら、ぜひご参加を検討ください。
Serverless LT初心者向け - connpass

この記事はエンジニアによるマネジメントの対象記事です。

Twitterでも開発に役立つ情報を発信しています → @kojimadev

初日にあえてペアプロ/モブプロをしなかった理由はこちら

初日は、ペアプログラミングもモブプログラミングも行わなかったこともあり(理由は最後に記載)、ビデオ通話をしたのは朝会の時だけであり、全員がとても強い孤独感を感じていました。

上記の件について補足します。
もともと私のチームは、以前からペアプロ/モブプロを行っていましたが、リモートワーク初日だけは、適当な理由をつけて、あえてやらないようにしました。
最初から、ある程度、リモートワークが楽しくできてしまうより、うまくいかない方が、皆の改善しようという想いが強くなると考えたからです。
だから初日だけは、私は他メンバーに対して、分報へのリアクションやポジティブフィードバックをほぼしませんでした。
その結果、全員が想像以上に孤独感を感じて「なんとかしなくちゃ」という意識を持ち、皆で改善案を考えることができました。
(もちろん後日、メンバー全員にネタばらしをして謝りました)

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