この記事は Photocreate Advent Calendar 2018 の 21日目です。
14日目以来の、スナップスナップのサービスデザインに携わっている@koiwaiです。
私が所属するカスタマーバリュー開発部は、「顧客体験価値の向上」をミッションに活動する組織です。エンジニア・デザイナー・ディレクター・PdMなど、多種多様なメンバーで構成されています。
今私がミッションとして取り組んでいることの一つに「ユーザーvoiceをサービスに反映させる仕組みや文化を作る」ことがあります。
その先駆けにもなった「ユーザビリティテストを内製で導入してみた話」について、今回は書きたいと思います。
##概要
- 1.想定している読者
- 2.きっかけ
- 3.個人的に感じていた課題
- 4.やったこと
- 5.よかったこと・得られたこと
- 6.今後改善したいこと
##1.想定している読者
以下のような方に少しでもお役に立てれば嬉しいです。
- 今はまだ組織に文化がないが、ユーザビリティテストを内製で導入したいと考えているPdM・ディレクター・UI/UXデザイナーなど
- 外注予算もなく実務経験もないが、ユーザビリティテストを実践してみたい全ての人
##2.きっかけ
新チーム体制で取り組んでいくことになったある日のこと。
サイトオーナーのPdMから
「改善することが山ほどあるのはわかっているんだけど、本当のことがよくわからない。課題の洗い出しをしてもらえないか?」と相談がありました。
そこで、個人的に後述の課題を感じていたことから、手段として以前から興味があった、ユーザビリティテスト の提案をさせてもらいました。
…と同時に、1から勉強して自力で形にする覚悟もしました。
##3.個人的に感じていた課題
これまでも、各分野のプロフェッショナルが、知見や経験を元にユーザーファーストなサービスを目指して取り組んできましたが、
- プロセスにリアルなユーザー視点が足りない。取り入れることで、更にユーザーファーストなサービスに近づけたい。
- 自分自身が、サービスを使いすぎて完全な熟練者になってしまった(きっと寝ながらでも注文できちゃう)ため、客観性と網羅性を担保できる手法で、課題を洗い出したい。
こんなことを考えていました。
##4.やったこと
特に、自分たちの視点から漏れている「新たな問題発見」を狙い、設計しました。
▼(1)提案・合意
▼(2)計画
▼(3)チーム内で共有
▼(4)評価設計
▼(5)実践(準備~実査~分析)
▼(6)分析結果をチーム内で報告
▼(7)意思決定
※各プロセスで仲間の協力を得ながら実施。
その後
(▼(8)プロトタイプで2サイクル目のテスト)
▼(5)実践(準備~実査~分析) テスト中
「うちの子の写真、どれかしら~」
▼(5)実践(準備~実査~分析) 事後インタビュー
「あの画面ストレスだったのよ~」
▼(6)分析結果をチーム内で報告 分析レポート
(マジメか)
※並行して、書籍やセミナーなどで積極的にインプットしました。(流れでライセンスも取得)
実践で迷うことはセミナーの講師に相談したり、そこで出会う経験者に他社事例を聞いたり、とりあえずトライ&エラーを繰り返して解消しました。
##5.よかったこと・得られたこと
###1) 大きな意思決定を支える材料の1つとなった
課題が整理できたことで、サービスとしての大きな意思決定や、課題の優先順位付けにつながるなど、意思決定を支える材料となりました。
###2) チーム内で共通の課題認識が持てたことで、議論がスムーズになった
「この画面では、ユーザーは✕✕という行動をしたいけど、●●がストレスになっていたんだよね。」「これは、△△という課題を解決しようとしているんだったよね。だったらA案にしよう。」など、ユーザー視点の課題をベースにしたコミュニケーションが増えました。
###3) チームメンバーの仮説に、更にリアルなユーザー視点が加わった
PdMの声
「自分たちの固定概念を崩せた。」
「リアルな顧客体験をイメージできるようになった。」
エンジニアの声
「ユーザーは、自分が想定していたよりもリテラシーが低いことに気づいた」
「実装の際、もっと考慮すべきことがあると思った」
デザイナーの声
「ユーザーのつまずきを直に体感し、想定外の動きも発見できた。」
「UIデザインを作る時に、想定するユーザー行動の引き出しが増えた。」
ディレクターの声
「これまで想像でしか立てられなかった仮説の実証ができた」
「Analyticsなどの数字では見えないユーザーの不快感がわかった」
###4) 他サービスを担当するチームから、勉強会の相談があった
他サービスを担当するチームから「こちらのサービスでも、ユーザビリティテストをやってみたいと話をしている。どうやるの?教えて!」と相談をもらい、勉強会を実施しました。
組織で関心が広まってきていることを嬉しく思いました。
##6.今後改善したいこと
今後改善したいことや、悩ましく思っていることを書きます。
(よい解決策を知っていたら教えてください)
- 関係者に課題を体感してもらうためには実査(テスト現場)への同席が一番だが、そこまで時間を割いてもらうのは非現実的。でも体感していないものは時間が経つと記憶が薄れてしまいがち。
- 結果報告の際、記録動画を見せて疑似体験をしてもらったり、その後のプロセスで必要に応じてリマインドするなど工夫したい。
- サービスの特性によってプロトタイプでテストできることには限界がある。
- その前提で、評価範囲を割り切って設計したり、使用ツールやファシリテーションの仕方で工夫したい。
- 「既存サービスの課題洗い出し」フェーズではなく「実装前の評価・改善」フェーズのユーザビリティテストは省略してもリリースはできてしまうので、納期まで余裕がないと優先順位下がりやすい
- (文化が出来上がればスケジュールに組み込まれるようになるか)
- ウォーターフォール型の開発プロセスには相性が悪そう(なイメージ)
##参考書籍・セミナー
HowToを学ぶのに役立った書籍・セミナー
- Web制作者のためのUXデザインをはじめる本(翔泳社)
- UXデザイン入門(日経BP社)
- UX+理論で作るWebデザイン(マイナビ出版)
- Webユーザビリティ/UX セミナー(ミツエーリンクス主催)
- UXDesignTrainingWeekendTokyo Webサイト編(POStudy主催)
- セルフユーザビリティテスト検定講座(UX DAYS TOKYO主催)
##さいごに
セミナーで知り合った方で
「ちゃんとUXデザインに取り組みたいけど、組織の雰囲気的に重要性を説明して理解してもらうのが難しい」と悩む方がいらっしゃいました。
その点でユーザビリティテストは、UXデザインプロセスの中でも、アウトプットに対してどの立場の関係者も関心を寄せやすい、比較的導入ハードルの低いものではないかと個人的には感じています。(色んな見方があるかもしれませんが、個人的には。)
まだ改善の余地はありますが、やって本当によかったと思っています。
これから導入されたい方には、最初のとっかかりとしてオススメです。
明日は@Takuya-Yamaguchi さんが「Adobe Max JapanでみたAdobeXDの進化」の記事をアップ予定です。
顧客体験価値の向上を一緒に目指してくださる方からの、ご応募をお待ちしております。