前回のおさらい
前回は、LLMが「賢いけれど自社固有の意味を知らない」という弱点を抱えていること、そしてRAGだけでは関係をたどる質問に弱いことから、オントロジーが「AIエージェント用の意味のレイヤー」として再評価されている背景を解説しました。
最終回となる今回は、実際に現場で何をすればいいのかを具体的に見ていきます。
いきなり全社ヘビーウェイトはやめよう
「よし、うちも全社の業務概念をオントロジー化するぞ!」は、たいてい失敗します。理由は2000年代と同じで、範囲が広すぎるとコストに見合わなくなるからです。
現実的なアプローチは、1つのドメインから、軽量に始めることです。
スモールスタートの型
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対象業務を1つに絞る
例:営業の「案件管理」だけ、カスタマーサポートの「問い合わせ分類」だけ、など。 -
その業務で出てくる主要な概念を洗い出す
「顧客」「案件」「商談」「見積」「注文」のように、社内で意味がブレやすい言葉を優先します。 -
関係を定義する
「案件は複数の商談を持つ」「見積は承認されると注文になる」など、業務フローと連動させます。 -
AIエージェント/RAGに食わせる
ナレッジグラフの形にしてエージェントの「共有メモリ」として使ったり、クエリ生成のルールとして組み込んだりします。 -
効果を見て、隣のドメインに広げる
1ドメインでうまくいったら、少しずつ範囲を広げます。最初から全社を狙わないのがコツです。
覚えておきたい役割分担のイメージ
- ナレッジグラフ=関係の「データ」(実際の事実の集まり)
- オントロジー=その関係を読み解くための「文法・ルール」
この2つはセットで語られることが多いですが、役割が違います。オントロジーが「案件と商談はこう違う」という文法を定義し、ナレッジグラフがその文法に沿って実際のデータ(この案件、あの商談…)を格納する、というイメージです。
連載まとめ
- 昔のオントロジー=専門家が手作業で作る、厳密な学術的知識体系
- 今のオントロジー=LLM/AIエージェントに「うちの会社の意味」を教える、実務寄りの構造化レイヤー
- 背景にあるのは「LLMは賢いが企業固有の意味を知らない」「RAGだけでは関係をたどる質問に弱い」という2つの限界
- 実務では全社一気にではなく、1ドメインから軽量に始めるのが現実的な進め方
「オントロジー」と聞くと難しそうに身構えてしまいますが、今の文脈では「AIエージェントに配る、うちの会社の用語集+ルールブック」くらいに捉えると、グッと理解しやすくなるはずです。
全3回、お読みいただきありがとうございました。
- 第1回:オントロジーってそもそも何?
- 第2回:なぜLLM時代に再注目されているのか
- 第3回:実務では何をすればいいのか(本記事)
