この連載について
「オントロジー」という言葉、最近また目にする機会が増えていませんか?
実はこの言葉、20年近く前の「セマンティックウェブ」ブームの頃にも一度流行りました。でも当時と今とでは、同じ言葉なのに使われ方も目的もかなり違います。
この連載では、全3回でこのテーマを扱います。
- オントロジーってそもそも何?(本記事)
- なぜLLM時代に再注目されているのか
- 実務では何をすればいいのか
第1回では、まず「オントロジーとは何か」を、当時の文脈からおさらいします。
一言でいうと「意味の地図」
オントロジーとは、ある業界や業務に出てくる概念と、その関係性を整理した設計図です。
例えば「ECサイト」というドメインなら、こんな感じです。
- 「顧客」は「注文」を持つ
- 「注文」は複数の「商品」を含む
- 「商品」は「カテゴリ」に属する
- 「返品」は「注文」に紐づく特殊なアクション
これを人間だけでなく、機械が読んでも誤解しないように厳密に定義したもの、それがオントロジーです。
なぜ厳密さが命だったのか(2000年代の話)
2000年代の「セマンティックウェブ」構想では、Webページに意味情報(メタデータ)を埋め込んで、機械が自動で情報を理解・連携できるようにしようとしていました。
このとき使われたのが、RDFやOWLといった技術で書かれたオントロジーです。当時のオントロジーには、こんな特徴がありました。
- 人間が手作業でコツコツ定義する(専門家が何ヶ月もかけて作る)
- 論理的に矛盾がないよう厳密に設計する(「公理」「制約」でガチガチに固める)
- 主な使い道は医療・学術・図書館分野など、専門知識の共有
正直、作るのも維持するのもかなり大変で、「専門家のための重い仕組み」というイメージが強い技術でした。
一度、下火になった
Webの世界では、結局このガチガチなオントロジーはあまり広がりませんでした。理由はシンプルで、コストに見合うメリットを実感しにくかったからです。厳密に定義するには専門知識と時間が必要なのに、使う場面が限定的だったんですね。
こうして「オントロジー」は、一部の専門領域(医療用語のSNOMED CTなど)を除いて、表舞台からはやや退いていきました。
次回予告
ここまでが「オントロジーの原点」です。
では、なぜ2026年の今、このやや古びた概念がまた注目されているのでしょうか? 次回は、LLMやAIエージェントが抱える意外な弱点と、それを埋めるためにオントロジーが呼び戻された経緯を解説します。
→ 第2回「なぜLLM時代に再注目されているのか」へ続く
