はじめに
この記事は Cisco Systems Japan の有志による Advent Calendar 2025 のシリーズ 1 の
18日目として投稿しています。
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2018年: https://qiita.com/advent-calendar/2018/cisco
2019年: https://qiita.com/advent-calendar/2019/cisco
2020年: https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco (1枚目)
2020年: https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco2 (2枚目)
2021年: https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco (1枚目)
2021年: https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco2 (2枚目)
2022年: https://qiita.com/advent-calendar/2022/cisco
2023年: https://qiita.com/advent-calendar/2023/cisco
2024年: https://qiita.com/advent-calendar/2024/cisco
こんにちは
あっという間に12月で2025年も終わりに近づいてきましたね。
そして、アドベントカレンダーの季節にもなってきました。
と言うことで、今年もちょっとした記事を投稿させていただきます。
私事ではありますが、今年の5月よりコラボレーション部門からネットワーク部門へ異動いたしました。
このような経緯から、現在は新しい分野で日々勉強や挑戦を重ねながら、業務に励んでおります。
先週、弊社が開催した「Cisco Connect 2025 Japan」というイベントにおいて、「ネットワークとコラボレーションが創る未来のワークプレイス」というセッションに、コラボレーション部門のSEリーダーとともに登壇させていただきました。
https://www.cisco.com/c/m/ja_jp/events/connect.html
その中で、これからのワークプレイスには最先端のコラボレーションにより素晴らしい体験を提供し、人々が働きやすく協働しやすい環境を作ることが必要であり、その環境を支えるためにはセキュアなネットワークとそれを健全な状態で運用し続けることが不可欠であるとお話しさせていただきました。
このセッションを作っている時に、以前からコラボレーションとネットワークのテクノロジーは常に密接な関係にあったことを改めて実感いたしました。(当然ですが)
そこで本記事では、これまでの歴史を振り返るとともに、今後の展望も少し触れていきたいと思います。
(実はセッションの中で話をしたかったけど時間的に入れられなかった内容が中心です。)
技術概要を中心に執筆しておりますので、詳細な点にはあまり触れていないことをご了承ください。
テクノロジーの変革
振り返ってみると、ネットワークにもコラボレーションにとっても、新しいテクノロジーの変革があることで、ビジネスやコミュニケーションのあり方が大きく変わり、仕事や生活のスタイルにも影響を与えてきました。
1990年代にはインターネットが一般に普及し、Eメールでのコミュニケーションやインターネットを活用したビジネスが誕生しました。
2000年代にはモバイルの普及により、人々はあらゆる場所で好きな時間にコンテンツへアクセスしたり、仕事をしたりできるようになりました。このころ、「ユニファイドコミュニケーション」というソリューションも登場しました。
さらに、2010年代のクラウド技術の発展により、企業のシステムにおいてもクラウドのインフラを活用することで柔軟なシステム構成を可能にして、より安価に早くサービスの提供が可能になりました。また、クラウドから各種のサービス(Web会議など)を受けることも一般的になりました。
2010年代後半には働き方改革が進み、2020年初頭のコロナ禍以降はハイブリッドワークが浸透しています。
そして今、AIがますます私たちの働き方や暮らしを変えています。このAIの力をさまざまな場面で活用していくことが、今後の鍵になってくると言われています。
ネットワークのテクノロジーの変遷
ネットワークテクノロジーの進化とビジネス要件の変化
ネットワークテクノロジーは、ビジネスと生活を根底から支え、その進化は常にビジネス要件の変化と密接に結びついてきました。
2000年代初頭、企業が最も求めていたのは「高速、常時接続、大容量転送、安定性、そして無線LAN」といった基本的なネットワークインフラでした。
この時代には、広域イーサネットやインターネットVPNが広く普及し、企業間の安全かつ効率的な通信を可能にしました。
さらに、QoS(Quality of Service)の技術発展により通信品質が保証され、PoE(Power over Ethernet)の登場はデバイス(IP電話や無線アクセスポイントなど)の設置を容易にしました。
Voice、Video、IP-PBXといった技術の発展は、今日のコラボレーションツールのベースにもなっています。
無線LANも802.11b/a/g/n規格としてオフィスや家庭での利用が広がり始めました。この時期に現代のデジタル社会を支える強固な基盤が確立されました。
2010年代に入ると、ビジネス要件は大きく変化しました。「BYOD(Bring Your Own Device)、モビリティ、ビッグデータ、位置情報、セキュリティ/プライバシー」といった新たなキーワードが出てきて、企業はより柔軟でデータをより活用する働き方に対応する必要がありました。
これに応えるように、仮想化技術、SDN(Software Defined Networking)、NFV(Network Functions Virtualization)が登場し、ネットワークの柔軟性と管理性を飛躍的に向上させました。
クラウドサービス(IaaS/PaaS/SaaS)の普及は、ITリソースの利用形態を変化させ、モバイル通信は4G/LTEへと進化。IoT(Internet of Things)が本格的に注目され始め、SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)は広域ネットワークの最適化を実現しました。Wi-FiもWi-Fi5へと進化し、より高速な無線環境を提供しました。
この時期は、場所を選ばない働き方と、膨大なデータの活用がビジネスの推進力となった時代です。
そして現在、2020年代は「ハイブリッドワーク、ユーザー体験の向上、サイバー攻撃への対応、DX(デジタルトランスフォーメーション)、予測/予兆、自動運転」といった、より高度で複雑なビジネス要件に直面しています。これらを支える技術は、AI/ML(機械学習)とAIOps(AI for IT Operations)によるネットワークの自律運用、膨大なデータとテレメトリの活用による洞察、そして企業の社会的責任としてのサステナビリティへの対応へと広がっています。セキュリティ面では、ゼロトラストやSASE(Secure Access Service Edge)といった新たなモデルが標準となり、通信インフラは5Gおよびローカル5G、エッジコンピューティングによって、さらなる低遅延と大容量化を実現しています。Wi-FiもWi-Fi6, Wi-Fi7へと進化し、無線通信の性能がどんどん向上しています
そして、今後のネットワーク進化の核となるのは「AIとデータ」になると考えています。
2035年に向けて、ネットワークは単なる通信インフラではなく、AIのための基盤となり、またAIを活用することで
自律的に進化し、最適化される存在へとなっていくと考えられています。
予測/予兆、自動運転といった未来のビジネス要件は、AIとデータによって駆動される次世代ネットワークの上で実現されている思います。
コラボレーションのテクノロジーの変遷
音声をデータネットワークに統合
それでは、コラボレーションの世界の変遷もちょっと見ていきたいと思います。
音声を例にとると、1990年代後半頃まで、企業内の音声ネットワーク(電話網)はデータネットワークとは別々のネットワークを利用していました。
このころ、両方のネットワークを統合することにより、コスト削減や運用の効率化といったニーズが出てきました。
それに応えるように、音声データをIP化するVoice over IP(VoIP)の技術が普及することにより、音声をデータネットワーク上に流すことができるようになりました。
音声などのリアルタイムコミュニケーションのトラフィックは、パケットロスや遅延、ゆらぎが大きく品質に影響してきます。これらの品質を保つために、ネットワーク上のルータやスイッチなどのQoS(Quality of Service)の技術が進んだことにより、音声をIPネットワークで流すトールバイパスが普及してきたのもこの時代でした。
IPテレフォニーからコラボレーション
そして、2000年代の前半には、IP-PBXの登場やネットワークの広帯域化、QoS技術の発展もあり、End-to-EndでのIP-Telephonyを実現することができました。PBXの機能をIPネットワーク上に配置したのも画期的でした。
まさにPBXの呼制御の部分は呼制御サーバ(Ciscoの場合は Cisco CallManager、現: Cisco Unified Communications Manager(CUCM))が担い、電話機を繋ぐラインの部分にはPoE搭載のスイッチ(Catalyst Switchなど)、トランクの部分にはルータ(ISRなど)を使った音声ゲートウェイを配置し、電話機もIP電話にすることにより、End-to-EndでのIP-Telephonyが実現できました。
加えて、ボイスメールやEmailのインテグレーションなども含んだユニファイドメッセージングも普及しました。この頃、シスコではIPテレフォニーからIPコミュニケーション、そしてユニファイドコミュニケーションへと進化を遂げました。
余談ではありますが、2000年代初頭にCiscoはAVVID (Architecture for Voice Video and Integrated Data) というアーキテクチャを発表しました。このアーキテクチャは、音声・ビデオ、データを、ここで紹介している技術などを使って一つのネットワークで効率的な処理を実現するためのアーキテクチャとして画期的なものでした。(当時は、「AVVIDっていくらですか?」とも聞かれたのは良い思い出です。)
また、ビデオコミュニケーションもこの頃からビジネス・コミュニケーションとして一般的になってきました。(テレビ会議はこれとは別に非常に長く深い歴史があるので今回は割愛します。)ビデオテレフォニーの当初は、このようなカメラを電話機の後ろに繋いだPCにつけていたのは懐かしい思い出です。
その後シスコは、2006年に大型のテレプレゼンス(CTSシリーズ)をリリースし、2010年のTANDBERG社の買収を経て、現在では目的に合わせた多くのビデオ端末の製品群を提供しています。これらの製品はオンプレミス、クラウドの両方に対応しています。

2008年には現在の「コラボレーション」のソリューションへと進化し、現在に至っています。これは、2007年のWebEX Communications 買収 (現 Webex )による製品群の強化が大きく影響していたと記憶しています。
また近年では、IP-PBX自体がクラウド上に存在するようなクラウドPBXが2010年代後半から2020年代にかけて登場しています。これにより、ユーザーは自前で電話システムを持たずにクラウドからサービスを受けることが出来るようになりました。(Webex Calling etc)
そして、これからはAIを活用したコミュニケーションが、ますます効率的な働き方や豊か暮らしを発展させていくことになると考えています。
コラボレーションのAIについては、2年前のWebexOneの発表をqiita の記事にしているので、そちらもご覧いただければと幸いです。 まさにこの記事で書いていたことはどんどん実現して、更に進化を遂げています。
オンラインも交えたこれからの新しいコミュニケーションについて考えてみる - WebexOne 2023 での発表も踏まえて -
未来を見据えたワークプレイス
冒頭でもお話しした、「ネットワークとコラボレーションが創る未来のワークプレイス」というセッションでは、今回の話の内容を背景として、「未来を見据えたワークプレイス」というテーマで、ワークプレイスに求められる要件とその効果についてお話ししました。
ワークプレイスとは、お客様にその場所からサービスを提供するあらゆる場所として定義し、今日お話ししたセキュアネットワークやコラボレーション、そしてオフィスのより効率化を目指すスマートビルディング(センサーの活用、オフィスの可視化/分析)を組み合わせることで、未来に対応したワークプレイスが実現可能となります。これにより、スペースの有効活用、従業員満足度の向上、次世代への環境維持、そして健康や人々の幸せといった効果に繋がることをお話しさせていただきました。
詳細については、改めて別の機会にご紹介させていただければと思います。
さいごに
最後まで読んで頂き有難うございました ![]()
今回はネットワークとコラボレーションの技術のトレンド、そして歴史に焦点をあてて書いてみました。
今後も、セキュアで柔軟性の高い高品質なネットワークや、より高度な体験を提供できるコラボレーションは、働き方やより良い暮らしに欠かせないものであると改めて感じました。
それでは、少し早いですが、みなさまもお体に気をつけて、ゆっくりと楽しいクリスマス
とお正月
をお迎えくださいませ![]()
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