能書き
私的サーバー構築日誌:仕切り直しからの自宅サーバー構築の続きです。
目標
Unboundで手軽に家庭内DNSサーバーを実現します。
※DHCPサーバーよりも先にDNSサーバーを立てた方が良いです。
参考文献
- 自宅サーバー構築譚:LAN内DNSサーバー Unbound・Ubuntu 22.04 - Qiita
- 俺様サーバー構築記 - LAN内DNSサーバー Unbound @デスクトップパソコン(BIOS) - Qiita
- 自宅サーバを立てる際の家庭内名前解決の落とし穴 - Qiita
- Set Up Unbound DNS Resolver on Ubuntu 22.04/20.04 Server
- 第386回 Unboundでお手軽に家庭内DNSサーバーを作ろう - Ubuntu Weekly Recipe
- 2.5 内向きDNS - 2 Unboundのインストール - Unboundで内向きDNSを建てる - 純規の暇人趣味ブログ
- Unbound - ArchWiki
- Ubuntu 18.04 の systemd-resolved で local DNS stub listener の利用をやめる - Qiita
- Ubuntuで指定されているDNSサーバ 127.0.0.53
- ubuntu systemd-resolved で ローカルドメインの解決をする
- unbound.conf(5) - 日本Unboundユーザー会
- unbound-checkconf(8) - 日本Unboundユーザー会
既定の名前解決systemd-resolvedに関して。
- Ubuntu 18.04 の systemd-resolved で local DNS stub listener の利用をやめる
- Dnsmasq で おうち DNS on Ubuntu 20.04 LTS
余談。こんな事もあった模様。
家庭内ドメインとして .local はやめましょう。
準備
家庭内ドメイン
自分ちのドメイン名、何にしますか?
一番正しいのはお金を出して買う事です。維持費も掛かります。しかし月に缶ジュース1~2本分も出せば、結構良い奴を維持できます。
最近はレンタルサーバーと同時に契約すれば割安になるサービスもあります。
ただ、家庭内限定なら .home とかでも良さそうです。外部には公開できませんが、家庭内ですし。何より無料ですしね。会社だったら .corp でしょうか。
我が家は .home に決めました。
因みに .local は、空いている保証が無いのだとか。やめた方が良さそうです。
スナップショット
インストール前にスナップショットを撮りましょう。
sudo zfs snapshot tank/root/ubuntu@$(date +%Y%m%d_%H%M%S)_before_Unbound
起動
インストール
下記コマンドを実行。
sudo apt install -y unbound
インストールできたら/etc
をバージョン管理します。
cd /etc
sudo svn st
こうなりました。
$ cd /etc
$ sudo svn st
? apparmor.d/local/usr.sbin.unbound
? apparmor.d/usr.sbin.unbound
M group
M gshadow
? init.d/unbound
? insserv.conf.d
M ld.so.cache
M passwd
? rc0.d/K01unbound
? rc1.d/K01unbound
? rc2.d/S01unbound
? rc3.d/S01unbound
? rc4.d/S01unbound
? rc5.d/S01unbound
? rc6.d/K01unbound
? resolvconf
M shadow
? systemd/system/multi-user.target.wants/unbound.service
? systemd/system/unbound.service.wants
? unbound
相変わらずな感じです。
-
apparmor
はウイルス対策ソフトの一種と思われます。 -
ld.so.cache
はライブラリの場所のキャッシュ。 - アカウントとグループの追加(
group
とgshadow
とpasswd
とshadow
) - init.d関連とsystemd関連。
-
insserv.conf.d
も、よくわかりませんが、init.d関連のようです。
中身を調べると/etc/insserv.conf.d/unbound
というファイルなので、やはりUnboundにまつわる設定のようです。
-
-
unbound
は設定ファイルのディレクトリと思われます。 -
resolvconf
を調べるとディレクトリであり、/etc/resolvconf/update.d/unbound
というシェルスクリプトがありました。内容は理解できませんでしたが、Unboundにまつわる何らかのコマンドと思われます。
取り敢えず全部追加して更新。
sudo svn st | grep "^?" | cut -b9- | sudo xargs -I{} find {} -type f -or -type d -or -type l | sudo xargs -rt svn add
ちょっと警告が出ます(already under version control)が、こいつは無視して下さい。心配ならsudo svn st
で全部追加されてる事を確認すればOKです。
それからcommitします。
sudo svn ci -m"installed Unbound"
systemd-resolved の設定を変更
こいつはDNSの名前解決をするsystemdサービスです。 IP アドレス127.0.0.53
のポート53
で待ち受けています。言いたい事は山程ありますが、それは置いときましょう。以前は放置で問題無かったと思うのですが、今回は放置してはダメでした。対策しないとUnboundが起動しません。
systemd-resolvedを止める方法もあります。ただ、止めなくても何とかなるようですな。
今回は下記のように設定ファイルを修正しときます。
- DNSサーバーとして
172.16.1.2
(現在いじっているサーバーマシン)を指定する - 家庭内ドメイン .home を自動で補う
IPADDR=172.16.1.2
NETWORK=172.16.0.0/16
sudo sed -i -e"/^#DNS=/c DNS=$IPADDR" -e"/^#Domains=/c Domains=home" /etc/systemd/resolved.conf
sudo systemctl restart systemd-resolved
Unbound 設定ファイル
参考文献や上述の/etc
に追加されたディレクトリなどから判断して、主な設定ファイルは/etc/unbound/unbound.conf
です。この中身はinclude: "/etc/unbound/unbound.conf.d/*.conf"
というだけの恐ろしく単純な1行、及び英語のコメント。従ってオレオレ設定は/etc/unbound/unbound.conf.d
に適当なファイル名で置けば良いのでしょう。
今回は下記のように修正しました。
待ち受けるIPアドレスは、外部からの問い合わせも全部受けるなら0.0.0.0
を指定するのが一般的です。が、これを指定するとsystemd-resolvedと衝突して起動に失敗します。そこで172.16.1.2
(このマシンのIPアドレス)を指定する事にします。
もしIPアドレスを複数割り当てている場合には、その分だけinterface
行を増やせば良いようです。
cd /etc/unbound/unbound.conf.d/
cat | sudo tee home.conf >/dev/null <<___
server:
username: unbound
verbosity: 1
interface: $IPADDR
access-control: $NETWORK allow
root-hints: "/etc/unbound/unbound.conf.d/parent.hints"
include: "/etc/unbound/unbound.conf.d/machines.list"
hide-identity: yes
hide-version: yes
remote-control:
control-enable: no
___
sudo touch machines.list
ルートヒントは、世界的に使用されているグローバル標準 https://www.internic.net/domain/named.cache がある訳ですが。家庭内LANなのでプロバイダが指定してくる物を上位DNSとすれば十分かなと。
PARENTHINT=プロバイダ指定のDNSのIPアドレス
cat | sudo tee parent.hints >/dev/null <<___
. 3600000 NS ROUTER.HOME.
ROUTER.HOME. 3600000 A $PARENTHINT
___
Unbound の設定ファイルを修正したら、文法チェックのツールを実行しておきましょう。
unbound-checkconf
起動
unbound の設定変更時には、systemctl reload
では駄目でsystemctl restart
が必要のようです。権限がどうとか。
sudo systemctl enable unbound
sudo systemctl restart unbound
起動を確認。
systemctl status unbound
外の名前解決を確認。
nslookup example.com
Subversion 登録
一応大丈夫そうなので/etc
をコミットしましょう。
cd /etc
sudo svn st | grep "^?" | cut -b9- | sudo xargs -rt svn add
sudo svn ci -m"Unbound initial settings"
内向きDNS
これです。この為に、家庭内名前解決とか面倒臭い事をするんです。
設定
マシン名は/etc/unbound/unbound.conf.d/machines.list
に追加します。正引きと逆引きの両方が必要です。後は好きに設定して下さい。
cd /etc/unbound/unbound.conf.d/
cat | sudo tee -a machines.list >/dev/null <<___
local-data: "primary.home. 3600000 IN A $IPADDR"
local-data-ptr: "$IPADDR 3600000 primary.home."
___
文法チェック。
unbound-checkconf
確認
設定ファイルを読み込みます。
sudo systemctl restart unbound
ちょっと確認。別のマシンからnslookup
コマンドを実行してみます。
nslookup primary.home 172.16.1.2
外部のドメイン名(example.com等)も、引き続き名前解決できる事を確認します。
nslookup example.com 172.16.1.2
設定保存
cd /etc
sudo svn ci -m"DNS setting: primary"
設定:無線 LAN 親機
通常の家庭の場合、無線LANの親機がルータやDHCP等の設定も持っているでしょう。この内DNSを、我が家で言えば172.16.1.2
に向けるように設定します。
- DHCPサーバから通知するDNSサーバアドレスを設定
- DNSルーティング設定とかいう機能で、家庭内で解決する名前のドメイン毎に、Unboundを立てたサーバのIPアドレスを設定
これは機種によって異なります。それぞれのマニュアルを確認して下さい。
ウチは最近になって無線LANルーターを買い替えました。とある有名なゲーミングルーターが安売りしてたので飛びついたのですが、ちょっと失敗だったかも知れません。良いと思っていた機能が無くなってしまったので。その内の一つが、DHCPの設定としてDNSサーバーアドレスを指定する機能だったのでした。
仕方が無いのでクライアントマシン側で設定します。が、Windowsだとどうも上手くいきませんな。けど、ここに拘ってるといつまでも進みません。諦めました。
起動失敗への対応
私のマシンでは、マシン起動した際に、Unboundは起動に失敗します。
$ systemctl status unbound
× unbound.service - Unbound DNS server
Loaded: loaded (/lib/systemd/system/unbound.service; enabled; vendor preset: enabled)
Active: failed (Result: exit-code) since Sat 2023-08-26 19:58:08 JST; 3min 7s ago
Docs: man:unbound(8)
Process: 2072 ExecStartPre=/usr/lib/unbound/package-helper chroot_setup (code=exited, status=0/SUCCESS)
Process: 2075 ExecStartPre=/usr/lib/unbound/package-helper root_trust_anchor_update (code=exited, status=0/SUCCESS)
Process: 2078 ExecStart=/usr/sbin/unbound -d -p $DAEMON_OPTS (code=exited, status=1/FAILURE)
Process: 2079 ExecStopPost=/usr/lib/unbound/package-helper chroot_teardown (code=exited, status=0/SUCCESS)
Main PID: 2078 (code=exited, status=1/FAILURE)
CPU: 10ms
Aug 26 19:58:08 chihiro systemd[1]: unbound.service: Scheduled restart job, restart counter is at 5.
Aug 26 19:58:08 chihiro systemd[1]: Stopped Unbound DNS server.
Aug 26 19:58:08 chihiro systemd[1]: unbound.service: Start request repeated too quickly.
Aug 26 19:58:08 chihiro systemd[1]: unbound.service: Failed with result 'exit-code'.
Aug 26 19:58:08 chihiro systemd[1]: Failed to start Unbound DNS server.
/var/log/syslog
を良く見ると、待ち受けソケットのバインドに失敗するようです。
unbound[2078]: [1693047487] unbound[2078:0] error: can't bind socket: Cannot assign requested address for 172.16.1.2 port 53
問題はこの後。失敗した直後に再起動を試みてしまいます。その為、デフォルトで設定されている規定の回数を超えてしまい、Unboundの起動を諦めてしまうようですな。
そこでsystemdのドロップインファイルとして、再起動まで10秒待つ設定を入れます。待ち時間の「10秒」に根拠はありません。もっと短くても良いでしょう。またマシンによっても異なると思われます。
sudo mkdir /etc/systemd/system/unbound.service.d/
sudo cat <<___ | sudo tee /etc/systemd/system/unbound.service.d/unbound.conf
[Service]
RestartSec=10
___
sudo systemctl daemon-reload
ドロップインファイル/etc/systemd/system/unbound.service.d/unbound.conf
が利いている事を確認。
systemctl cat unbound
結果はこう表示されます。
$ systemctl cat unbound
# /lib/systemd/system/unbound.service
[Unit]
Description=Unbound DNS server
Documentation=man:unbound(8)
After=network.target
Before=nss-lookup.target
Wants=nss-lookup.target
[Service]
Type=notify
Restart=on-failure
EnvironmentFile=-/etc/default/unbound
ExecStartPre=-/usr/lib/unbound/package-helper chroot_setup
ExecStartPre=-/usr/lib/unbound/package-helper root_trust_anchor_update
ExecStart=/usr/sbin/unbound -d -p $DAEMON_OPTS
ExecStopPost=-/usr/lib/unbound/package-helper chroot_teardown
ExecReload=+/bin/kill -HUP $MAINPID
[Install]
WantedBy=multi-user.target
# /etc/systemd/system/unbound.service.d/unbound.conf
[Service]
RestartSec=10
マシンを再起動して、一発でUnboundの起動に成功している事を確認します。
sudo reboot
systemctl status unbound
うまくいっていたらSubversionコミットしましょう。まずは状況確認。
sudo svn st /etc
今回は、他に色々と操作を試みていたせいか、よくわからないファイルにも差分が出たようです。
$ sudo svn st /etc
? /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/snap-snapd-19993.mount
? /etc/systemd/system/snap-snapd-19993.mount
? /etc/systemd/system/snapd.mounts.target.wants/snap-snapd-19993.mount
? /etc/systemd/system/unbound.service.d
M /etc/zfs/zfs-list.cache/tank
M /etc/zfs/zpool.cache
まとめてコミットしておきます。
sudo svn st /etc | grep "^?" | cut -b9- | sudo xargs -I{} find {} -type f -or -type d -or -type l | sudo xargs -rt svn add
sudo svn ci -m"add a drop-in file of unbound; which has 'RestartSec=10'" /etc
仕舞い
これで、家庭内の名前解決が出来るようになりました。