はじめに断っておきます。私は Sakupa の開発者ではありません。MCP サーバーを調べていて見つけ、設計が面白いと思ったので、公式サイト・マニュアル・公開情報をもとに紹介する記事です。
きっかけ:「作れるのに、公開で止まる」問題
ChatGPT や Claude に「会社のホームページを作って」と頼めば、ページ自体はわりと簡単に生成されます。でも、その先が続きません。
- 公開するにはホスティングに登録して、管理画面の操作を覚える必要がある
- 独自ドメインを当てるには DNS の設定が要る
- 営業時間の変更のような小さな更新でも、結局はまた人の手を借りることになる
「作る」だけが AI で簡単になって、「公開と運用」が置き去りになっている。この隙間を、AI との会話の中だけで埋めようとしているのが MCP サーバー Sakupa です。個人的に「そこを MCP で解くのか」と思って調べ始めました。
面白いと思った設計 3 点
1. アカウント登録がない
Sakupa にはユーザー登録がありません。代わりに、サイトの管理権は自分の PC に保存される「管理クレデンシャル」で証明する設計です。公式マニュアルによると、クレデンシャルは ~/.sakupa/credentials/ に保管され、プロジェクト内の .sakupa/site.json には参照だけが残ります。
サービスごとに ID とパスワードが増えていく問題への、かなり思い切った回答だと思います。「アカウントがない=確認が甘い」わけではなく、ドメインの確認は DNS で、支払いは Stripe のホスト型ページで、と場面ごとに確認方法を分けている点も含めて、設計として筋が通っていると感じました。
2. 公開前に analyze が読み取り専用のチェックをする
Sakupa の公開フローでは、いきなりアップロードはしません。deploy の前に analyze というツールが出力フォルダをローカルで検査し、「公開される内容の一覧」と「公開すべきでないファイルへの警告」を返します。AI はそれを分かりやすい言葉で利用者に説明し、明示的な確認を取ってから公開する流れになっています。
削除やクレデンシャルの交換のような影響の大きい操作も、すべて「プレビュー → 確認 → 実行」の二段階です。AI に実作業を任せる場面が増えるほど、こういう「勝手に進めない」設計の価値は上がるはずで、ここは他の MCP サーバーにも広がってほしいパターンだと思いました。
3. 支払いを AI に触らせない
プランの確認・申込み・変更・解約に関するツールは、すべて Stripe のホスト型ページへのリンクを返すだけで、カード番号が会話に出てくることはありません。「リンクを作っただけでは契約は変わっていない」ことまでツールの返答に明示される仕様で、誤解のもとをなくす細かさが好印象でした。
また、recover という復旧ツール(この PC で作った無料サイトの取り戻しや、DNS による確認を経た復旧)があり、ローカルクレデンシャル方式の弱点である「PC を替えたら終わり」への答えも用意されています。旧クレデンシャルの失効可否は AI が代わりに判断せず、必ず本人が選ぶ仕様だそうです。
導入方法(公式情報より)
対応ツール(Claude Code / Claude Desktop、Codex、Cursor、VS Code、Gemini CLI など)の設定に、次の 1 ブロックを追加する形です。
{
"mcpServers": {
"sakupa": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@sakupa/mcp@latest"]
}
}
}
Claude Code / Codex / Gemini CLI 向けには公式プラグイン(myerwang/sakupa-plugin)もあります。導入後は AI ツールの完全な再起動が必要です(マニュアル記載)。
頼み方の例もマニュアルに載っています。
- 「Sakupa で、このサイトが公開に適しているか確認して」
- 「確認が取れたら Sakupa で公開して。公開前に必ず私に確認して」
ツール一覧(18 個、マニュアルより整理)
| 分類 | ツール | 役割 |
|---|---|---|
| プロジェクトと公開 | init |
初回準備(ローカルのみ、通信なし) |
analyze |
公開可否の読み取り専用チェック。不適切なファイルを警告 | |
deploy |
確認後にサイトを公開 | |
refresh |
無料サイトの有効期限を延長 | |
status |
接続状態・有効期限・ドメインの状態を表示(読み取り専用) | |
rotate |
管理クレデンシャルの交換(プレビュー後、旧クレデンシャルはすべて失効) | |
delete |
無料サイトの削除(プレビュー必須、復元不可) | |
| 契約と支払い | plans |
料金プランの公開カタログ(読み取り専用) |
subscribe |
選んだプランの Stripe 申込みリンクを作成 | |
billing |
実際の契約・更新予定・利用量の照合(読み取り専用) | |
change |
プラン変更・期末解約の Stripe 管理リンクを作成 | |
portal |
請求書・支払い方法の Stripe ポータルを開く | |
| ドメインと復旧 | bind |
独自ドメインの接続(DNS で確認し、active かつ HTTP 200 で初めて「公開」と案内) |
recover |
デバイス経路または DNS 経路でサイトを取り戻す | |
| 支援とアプリ | help |
ローカルのみで動く読み取り専用診断 |
support |
サポートチケットの起票(送信前に内容を本人が確認) | |
report |
help が推奨した場合に限る障害報告(プレビュー後に送信) |
|
apps |
アプリカタログ。第 1 弾はメールフォーム |
料金(公式の価格表より)
まず無料プレビュー(通常 30 日)で公開し、残したいサイトだけ月額プランに入る形です。プランはサイトごとの契約で、自動で上位プランに上がることはないと明記されています。
| プラン | 月額 | ストレージ | 転送量 | リクエスト | フォームメール |
|---|---|---|---|---|---|
| Free(プレビュー) | 0 円 | ― | ― | ― | 5 通/月 |
| Water | 200 円 | 100MB | 2GB | 2 万 | 50 通/月 |
| Personal | 500 円 | 300MB | 8GB | 10 万 | 200 通/月 |
| Share | 1,000 円 | 1GB | 20GB | 30 万 | 600 通/月 |
| Business | 2,000 円 | 2GB | 50GB | 80 万 | 2,000 通/月 |
月額 200 円からという価格もそうですが、「プレビューで確かめてから、残すサイトだけ払う」という順序自体が、小さな事業者向けに丁寧だと思いました。
注意点(公式情報の範囲で)
- 対象は静的サイトのみです。データベースやログイン機能のある Web アプリには使えません。
- すでに Netlify や Vercel の運用に慣れている人には、乗り換える理由はあまりなさそうです。あくまで「公開と運用の手間を、AI との会話だけで完結させたい」人向けの道具です。
- 比較的新しいサービスです(npm の初公開は 2026 年 7 月、公式タイムラインより)。導入を検討する場合は、まず無料プレビューで小さく試すのが無難だと思います。
「AI に作らせる」から「AI に運用まで任せる」への流れの中で、Sakupa の「アカウント不要」「公開前チェック」「確認なしに進めない」という設計は、一つの方向性を示しているように思います。同じ関心のある方の参考になれば幸いです。
リンク
- 公式サイト:https://sakupa.com/
- 製品ページ:https://sakupa.com/product/
- マニュアル:https://sakupa.com/manual/
- プラグイン:https://github.com/myerwang/sakupa-plugin
- npm:
@sakupa/mcp