最初に明記しておきます。私はここで取り上げる製品や標準の開発者ではありません。公開情報と報道をもとに、個人エージェントまわりの標準化の動きを整理した記事です。時点は 2026 年 10 月 27 日です。
1. MCP の 2026-07-28 改訂:プロトコル層がステートレスに
Model Context Protocol(MCP)の 2026-07-28 改訂で、プロトコル層がステートレスになりました。おもな変更点は次のとおりです。
- 必須だった
initialize/initializedのハンドシェイクが廃止された -
Mcp-Session-Idヘッダーも廃止され、各リクエストがプロトコルバージョン、クライアント情報、ケイパビリティを自己完結的に運ぶ - その結果、通常のラウンドロビン負荷分散が使えるようになり、スティッキーセッションやセッション状態の共有ストレージが不要になった
- ツール/プロンプト/リソースの一覧はキャッシュ可能になり、ゲートウェイが MCP ヘッダーでルーティングや認可を行える
注意点として、ステートレスは「エージェントが状態を持てない」という意味ではありません。ブラウザセッションやジョブ、承認状態といった業務側の状態は、プロトコルの暗黙のセッションに頼らず、明示的なハンドルで表現する設計に寄せる、という話です。リモート MCP を本番運用する際の前提が変わるので、サーバーを公開している人は移行ガイドに目を通す価値があります。
2. 現実は「複数バージョンの併存」
改訂が出ても、世の中のサーバーが一斉に追随するわけではありません。現在、 2025-03-26、2025-06-18、2025-11-25、2026-07-28 が併存しています。
- 2026 年 10 月 16 日、Red Hat の MCP ゲートウェイが一般提供(GA)になり、1 つのエンドポイントで 4 バージョンをクライアントごとにネゴシエーションする構成が示されました
- 実地の確認方法は単純で、
initializeリクエストに対してサーバーが返すprotocolVersionが「実際に合意したバージョン」です。自分が要求した値ではなく、返ってきた値をログに残すことが推奨されています - あわせて、
tools/listの内容が呼び出し間で安定しているか(listChangedケイパビリティ)も記録しておくと、障害の切り分けが楽になります
「MCP 対応」と一口に言っても、どの改訂で合意できるかはサーバーごとに違います。利用側はフォールバック前提、提供側は対応バージョンの明示が、これからの作法になりそうです。
3. AAIF に 4 プロジェクトが追加(10 月 22 日)
2026 年 10 月 22 日、AGNTCon + MCPCon North America(サンノゼ)で、Agentic AI Foundation(AAIF)に 4 つのプロジェクトが新たに加わると発表されました。
| プロジェクト | 提供元 | 内容 |
|---|---|---|
| Agent Skills | Anthropic | エージェントに作業手順を教えるテキスト記述の標準形式 |
| Open Responses | OpenAI | LLM インターフェースのオープンな API 仕様 |
| OpenEnv | Hugging Face | コンテナ化された強化学習環境 |
| OpenSandbox | Alibaba | エージェントの実行範囲を制限するサンドボックス |
AAIF は Linux Foundation 傘下の基金で、2025 年 12 月に Anthropic、Block、OpenAI が共同で設立し、MCP、goose、AGENTS.md の 3 プロジェクトから始まりました。今回の追加でホストするプロジェクトは 10 になり、メンバーは 300 組織を超えたと報じられています。Anthropic によれば、Agent Skills は公開スキル 100 万件、インストール約 2 億 8,000 万回、70 以上のプラットフォームが統合済みとのことです(同社発表に基づく数字です)。
4. ビルダーへの含意
-
スキルが「持ち運べる資産」になった:
SKILL.mdを中心とするフォルダ形式が財団の標準になったことで、特定ベンダーの中に閉じない形で手順知を配布できます - ツール設計はステートレス前提に:リクエスト単体で完結する設計にし、状態は明示的なハンドルで渡すほうが、新旧どちらのホストでも動きやすくなります
- バージョン合意を軽視しない:接続先ごとに合意バージョンとツール一覧の安定性を記録する運用が、静かな事故を防ぎます
「どのモデルを使うか」と同じくらい、「どの標準の上に作るか」が効いてくる段階に入ったと感じます。
参考リンク
- Stateless MCP 2026: Agent Migration Guide(LLMFly AI、Medium): https://medium.com/@llmfly/stateless-mcp-2026-agent-migration-guide-043d87ff8cf2
- Three MCP protocol versions are live at once(telegra.ph): https://telegra.ph/Three-MCP-protocol-versions-are-live-at-once-Here-is-how-to-see-which-one-a-server-really-speaks-10-22
- AAIF Explained: Anthropic, OpenAI Donate AI Agent Standards(Digitech Info): https://digitechinfo.net/agentic-ai-foundation-aaif-four-new-projects/
- AI agents in October 2026: where they stand(Brandon Ta): https://www.brandon-ta.com/blog/ai-agents-where-they-stand-october-2026/