プラクティス名(別名)
EAT (Executive Action Team、イート)
EATは大規模アジャイルフレームワークScrum@Scale(以下S@S)において、最上位で組織改善を担うチームです。スクラムチームでは解決できない課題を扱います。本稿ではEATの運営を1つのプラクティスとして紹介します。S@Sの全体像は公式ガイドを参照下さい。複数のスクラムチームが連携してプロダクト開発を行っている状況が前提となります。
プラクティスの目的・狙い
- 組織のプロセスを改善し、組織課題を解消する
- 組織全体へのスクラム定着を支援する
- 組織内の非アジャイル領域との調整/整合性を図る
どんな時に使うか
- 単一スクラムチームおよび複数チーム(スクラム・オブ・スクラム)では解決できない組織レベルの障害を解消したい時
- スクラムチームが自律的に活動できるように、組織のルールや環境を変えたい時
- 経営層と現場をつなぎ、経営戦略をアジャイルな実行へ結びつけたい時
実施手順
- EATの参加者を選出する(必要最小限に絞る)
・EATを運営する人(EATのSM)
・プロダクト全体の優先順位をつけられる人(EMSのPO)
・組織的な決定権を持つ人(CEO,CTOなど)
・財政や人事の権限を持つ人(CFO,CHROなど)
・セキュリティやコンプラに責任を持つ人(CISO,CLOなど)
・スクラムチームの代表(SoSM,SM,PO,アジャイルコーチなど)
※参加者は組織規模やS@Sの適用範囲によっても変わります - 各チームから挙がってきた組織課題をバックログ化し、優先順位をつける(変革バックログ)
- 定期的に対策検討/報告する場を設け、実施する施策を決定する
- 実行者に権限委譲し、施策が完了するまでフォローする
EATの具体的な活動例
組織改善・変革
- アジャイル変革のロードマップ策定
- 組織構造(チーム編成/部門)の見直し
- 権限委譲の促進
組織課題の解消
- チーム/部門間の調整不足解消、依存関係の緩和
- Dev / Ops / QA / Security の壁を取り除く、承認フローの簡素化
- 人事/評価や予算/調達の制度見直し
スクラムの普及・促進
- スクラムの価値観・原則が守られるように支援
- ルールやガイドの整備、学びのコミュニティ運営
- 教育/研修の提供、SMやPOの育成
継続的改善と成果確認
- プロダクト品質の指標をモニタリング(例:顧客満足度)
- 組織改善の指標を定義、効果測定(例:リードタイム、デプロイ頻度)
- 変革バックログの管理、優先順位見直し
経営との連携
- 経営戦略に基づく優先順位の調整
- 経営層への定期報告、フィードバック取得
- 新たな事業戦略に応じて組織の方針を見直す
アレンジ例
- EAT活動をスクラムイベントに倣って定例化する
| EAT会議名 | 具体的な活動例 |
|---|---|
| EATプランニング | 変革バックログから、今期取り組む施策を選ぶ |
| EATデイリー(or週次or隔週) | 改善状況や障害を短時間で共有する |
| EATレビュー | 改善施策の成果を経営層に報告する |
| EATレトロ | 組織変革の進め方をふりかえる |
| EATリファインメント | 変革バックログを整理し、優先順位を見直す |
アンチパターン
- EATがスクラムチームを管理する組織になってしまう
→上からの指示待ちになり、チームが自律性を失う
EATは障害物を食べる組織であって、スクラムチームを食べる組織になってはいけません。
参考情報
- Scrum@Scale公式ガイド
- 書籍『スクラムの拡張による組織づくり』
こぼれ話(私的コメント)
参考書籍によると「EAT」は障害物を最後に食べてしまう(eat)という意味を込めて「イー・エー・ティー」ではなく「イート」と発音するそうです。ただEATの活動内容を踏まえると、ただ出てきたものを食べるだけでなく、ガイドや研修を提供したりすることもあるので、現場に価値を届ける料理人の一面もあるのかな、と思います。
またEATと対になる概念として、EMS(Executive Meta Scrum)がありますが、EATとEMSは、それぞれスクラムチームのSMとPOの役割を組織全体へ拡張した場と考えると理解しやすいです。SMはチーム改善や問題解決に責任を負っていますが、それを組織全体に拡大するとEATになります。同じようにPOはプロダクト方針や優先順位に責任を負っていますが、組織全体でどのプロダクトにどれだけリソースを割くかを決定しようとするとEMSになる、といったイメージです。