プラクティス名(別名)
EMS (Executive MetaScrum、メタスクラム)
EMSは大規模アジャイルフレームワークScrum@Scale(以下S@S)において、事業方針・プロダクト戦略を決定する組織・会議体です。本稿ではEMSの運営を1つのプラクティスとして紹介します。S@Sの全体像は公式ガイドを参照下さい。複数のスクラムチームが連携してプロダクト開発を行っている状況が前提となります。
プラクティスの目的・狙い
- 組織のビジョンに基づき、戦略的にプロダクトの優先順位を決定する
- リソース配分やリリース時期を調整する
どんな時に使うか
- 経営層やステークホルダーの要望を戦略的バックログに反映し、優先順位を確認したい時
- 戦略的バックログに基づき、各チームがどのテーマに取り組むかを決めたい時
実施手順
- チーフプロダクトオーナー(以下、CPO)を決める
※CPOはPOの中から選んでもよいし、別途専任者を立ててもよい - CPOがEMSを開催し、方針決定に必要な関係者を集める
・経営層
・主なステークホルダー
・各チームのPO(必要に応じて) - 戦略的バックログを更新し、優先順位を見直す
- 戦略ビジョンに基づき、優先順位の高いテーマと担当するチームを決める
- 必要に応じて予算/人員/リリース時期を見直し、チーム間の調整を行う
EMSの具体的な議題例
事業戦略
- 市場変化/競合/リスク
- 顧客満足度/利用分析(例:NPS、MAU)
- 成果指標(例:KGI、KPI)
プロダクト戦略
- 製品・サービスの優先順位(価値判断)
- 製品ビジョン/プロダクトゴール
- ロードマップ/リリースタイミング/MVP
リソース戦略
- 予算/人材/チーム編成
- 投資判断/技術負債とのバランス
- チーム間/部門間調整
アレンジ例
- 議題に「今月やめること」を加え、中止/後回しするものを明確にする(=結果的に、集中すべき価値にリソースを振り分けることができる)
アンチパターン
- EMSがEATに一方的に指示を出すような運営
※両者は上下関係では無く、相互に補完し合う関係です。詳細は末尾の比較表参照 - EMSとEATの参加者がほぼ同じなので、会議も一緒にする(→議題が混ざり、目的を見失う)
※本来、両者は目的が違うため、参加者も異なりますが、小さな組織では結果的に同じになることがあります
参考情報
- Scrum@Scale公式ガイド
- 書籍『スクラムの拡張による組織づくり』
こぼれ話(私的コメント)
公式ガイドではEMSはスプリント中に1回以上が推奨されています。ただ参加者にエライ人が多いので、スケジュール時点でそれが無理ゲーなこともあります。そもそもスプリント期間が何週間か?にもよりますが、現実的には週次or隔週or月次いずれかになりそうです。それ以上だとEMSの狙いである「短いサイクルで舵取りすること」が薄れてしまうため、なら通常の経営会議でよくない?ってなっちゃいます。
最後にEMSとEATの違いを表にまとめておきます。
| 比較観点 | EMS | EAT |
|---|---|---|
| 正式名称 | Executive MetaScrum | Executive Action Team |
| 定義 | プロダクト戦略・事業方針を決めるための組織(意思決定の場) | 組織とプロセスを継続的に改善するためのチーム |
| 目的 | 顧客に届ける価値を最大化する | 組織/チームのアジリティを最大化する |
| 関心事 | 何を作るべきか(What・Why) | どう実現するか(How) |
| 役割 | ビジョン策定、戦略立案、優先順位付け、投資判断 | プロセス改善、障害除去、組織能力の強化 |
| 成果物 | ビジョン、ロードマップ、戦略的バックログ | 改善施策、運営方針、ガイドライン、変革バックログ |
| 参加者 | CPO、経営層、ステークホルダー、(必要に応じてPO) | EATリーダー、経営層、ステークホルダー、(必要に応じてSoSM・CPO) |
| 主な議題 | 顧客、市場、プロダクト、事業戦略、リソース配分、製品ポートフォリオ | 組織、人材、プロセス、組織課題、権限移譲、チーム間連携 |