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AWS re:Invent Agentic AI Keynote(KEY002):主要アップデートまとめ

Last updated at Posted at 2025-12-03

はじめに

こんにちは。アジアクエスト株式会社 の足立です!

この記事では、AWS re:Invent 4日目に行われたキーノート
「The Future of Agentic AI is Here with Dr. Swami Sivasubramanian (KEY002)」
について主要なアップデートをまとめていきます。

概要

AWS re:Invent はAWS社が毎年ラスベガスで開催する世界最大級のテックカンファレンスです。
昨日、AWSのCEOである「Matt Garman」よりOpening Keynote の発表がありました。

AIに関するみっちり2時間に及ぶ発表 + LT10分の内容について、詳細はこちらにまとめています。

本日のKeynoteでは 「The Future of Agentic AI is Here(AIエージェントの未来)」 がテーマです。

発表者は、AWSのAgentic AI担当のVice Presidentである「Dr. Swami Sivasubramanian」のため、AIエージェントに関するさらなるアップデートが期待されます。

主要なアップデート

主なアップデートを紹介していきます。
結論から言うと、昨日のおさらい + 機械学習トレーニングの効率化・カスタマイズ に関する内容がほとんどで新機能の発表は少なめな印象でした。

1. Strands Agents の Typescript対応

個人的に最もインパクトがあると感じたのが、「Strands Agents のTypescriptへの対応」 でした!

image.png

「Strands Agents」とは、今年2025年の5月に発表されたAIエージェントを構築するためのオープンソースのフレームワークです。
モデル・ツール・プロンプト(コード)を定義するだけで、非常にシンプルな記述でAIエージェントを作れるのが特徴です。

これまで Strands Agents / LangGraph / Agent SDK などの人気のフレームワークでは Python が主流で、Typescript を使いたい場合はほぼ 「Mastra」 一択でした。今回のアップデートで「Strands Agents」も選択肢に加わった形です。

なぜTypescriptで開発したいのか?

  • フロントエンドで最も使われており、バックエンドやインフラまで開発できるフルスタック言語
  • 非常に人気があり情報が多いことから、AIを使った開発と相性が良い

Strands Agents は進化が非常に早く、6か月で500万回ダウンロードされるほど人気もあります。
今回のアップデートでStrands Agents が Typescript に対応したため、今後さらに開発者の増加とツールの進化が期待できそうですね!

2. Amazon Bedrock AgentCore に Policy / Evaluationsが追加、Memoryが強化

AIエージェントを本番稼働させるための基盤である「Amazon Bedrock AgentCore」に新たに 「Policy」「Evaluations」 が追加されました。

これらは昨日のOpening Keynote で発表された内容なので、簡単な説明に留めます。

ざっくりまとめると、以下のような機能です。

Policy:

  • AIエージェントの認可をコードの外から制御する機能
  • 「Cedar」というオープンソースのポリシー言語でアクセス許可ルールを定義できる
  • あらかじめ定めたルールの範囲内でAIエージェントを自律的に稼働させることが可能となる

Evaluations:

  • AIエージェントのパフォーマンスと品質を継続的に監視・評価する機能
  • 「正確性」「有用性」「安全性」「ツールの選択精度」など、13種類の組み込み評価指標を利用できる
  • 独自のプロンプトとLLMを使用したカスタム評価指標も作成可能

詳しく知りたい方は、みのるんさんの記事が分かりやすいためおすすめします。

また、AgentCore Memory の長期記憶戦略に 「Episodic memory(エピソード記憶)」 が新しく追加されました。

これまでの長期記憶戦略は以下の3つでした。

  • Semantic Memory:事実や知識を抽出・保存
  • User Preference:ユーザーの好みを抽出
  • Summary:会話の要約を生成・保持

これらの戦略では、抽出・構造化がメインだったのに対し、「Episodic memory(エピソード記憶)」 では、ユーザーとのやり取りから「背景・意図」「結果・評価」の分析を行い、成功・失敗パターンやベストプラクティスの「振り返り」をしてから保存することが大きな特徴です。

これにより、カスタマーサポートやトラブルシューティングなど、過去パターンから学習し練度を高めていくケースに有効に使うことができます。

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3. Amazon Bedrock にモデルカスタマイズ機能が搭載

Amazon Bedrock に新たに追加された 「Reinforcement Fine-Tuning(強化学習による微調整)」 は、モデルの精度を向上させるための強化学習によるカスタマイズ機能です。

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これまでAIモデルに対して企業独自のコンテキスト(文脈)情報を渡すには、システムプロンプトで命令を工夫する形でした。しかし、この方法はモデル自体は変わらないため、カスタマイズできることに限界がありました。

そこでモデル自体をトレーニングによって微調整する「Fine-Tuning」が行われます。ただし、この方法は報酬モデリング、最適化などに関する専門知識が必要となり、複雑で何週間もかかり、莫大なコストがかかっていました。

今回のアップデートで Bedrockから強化学習によるFine-Tuningを簡単に行えるようになりました。
専門知識や大量のラベルデータが不要である点が売りとなっています。

4. Amazon SageMaker AI

「Amazon SageMaker AI」は機械学習のトレーニングをフルマネージドで行うためのサービスです。このKeynoteでは主に 「モデルカスタマイズのサーバーレス化」「HyperPodへの新機能追加」 に焦点が当てられていました。

1. モデルカスタマイズのサーバーレス化(Serverless Customization)

これまでモデルの Fine-Tuning にはインスタンスの選定や管理が必要でしたが、インフラ管理を サーバーレスで実行できる ようになりました。

主要なモデル(Nova、LLama、Deepseekなど)に対応しており、カスタムしたモデルはBedrockにインポートして手軽に使えます。

機械学習に対してハードルを感じていた人にとっても取っつきやすい機能ではないでしょうか。

3章で説明した「Reinforcement Fine-Tuning for Bedrock」に比べるとやや専門家向きですが、学習手法やサーバー種類を選べるなど自由度が高いです。

2. SageMaker HyperPod の新機能

大規模言語モデル(LLM)の分散トレーニング環境である 「HyperPod」 に中断時間を削減しコスト効率を高める2つの機能が追加されました。

Checkpointless Training

従来は障害発生時に、直近の「チェックポイント(保存データ)」からやり直す必要があり、再開までに数時間かかることもありました。

「Checkpointless Training」は、クラスター同士が状態を確認し合うことで、分散クラスター全体でモデルの状態を継続的に保持する ため、障害が発生してもチェックポイントに戻る必要がなく、数分で復旧 できます。

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Elastic Training

「Elastic Training」はクラスター内の 「空きリソース(待機状態のGPU)」を自動的に検知 してトレーニングに参加させる機能です。

手動でジョブを組み替える必要がなく、自動的にスケールアップ・ダウンするため、高価なGPUリソースを無駄なく使うことができます。

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「Nova Forge」 との関係
昨日のOpening Keynote で「Nova」モデルを企業独自データでカスタマイズできる 「Nova Forge」 が発表されていました。この機能も実は SageMaker に遷移してトレーニングする仕様となっていたため、今後は機械学習に対する敷居も下がっていくのではないかと予想しています。

5. その他(Nova Act、Amazon Connect)

その他のアップデートとして 「Nova Act」「Amazon Connect」 を紹介します。

Nova Act

昨日発表されたブラウザタスク自動化モデル 「Nova Act」 がPlayground環境と合わせて紹介されました。

ブラウザのスクリーンショットをもとにモデルが思考し、ブラウザ上で必要なタスクを実行する機能です。スクリーンショットと思考過程がセットで保存されるため、実行結果の追跡が可能です。

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残念ながらPlayground環境は日本からはアクセスできず、SDKを使う必要があるようです。VS Code の拡張機能もあるようなので今後に期待です。

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Amazon Connect

既に発表済みの内容でしたが、以下のような機能を組み合わせることで、問い合わせ対応の自動化や事務タスクの効率化をしてくれます。
本発表でもデモを交えて紹介されていました。

  • Agentic Self-Service: 顧客との自動対話(Nova Sonicを使用)
  • Agentic Assistance: 顧客の感情分析やドキュメント作成をバックグラウンドで実行
  • AI-Powered Recommendations: リアルタイムデータを活用しながらユーザーの要求を予測
  • Observability: AIエージェントの操作の追跡

まとめ

いかがだったでしょうか。この記事では 「AWS re:Invent 2025 Opening Keynote」 の発表をもとに主要なアップデートなどを解説しました。

私個人としては、もっと新機能を期待していたため、モデルのカスタマイズやトレーニング効率化に焦点を当てた本発表は少し期待から逸れていたと感じました。

とはいえ、Strands Agents のさらなる人気の高まりや機械学習へのハードルを下げる効果を予感させる内容だったと思います。皆さんはどう感じたでしょうか?

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