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Excel業務をDX化したい。あなたならどうする?

Last updated at Posted at 2025-12-22

Excel業務をDX化したい。あなたならどうする?

〜「脱Excel」でも「活Excel」でもない、現実的な落としどころ〜

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はじめに

Excel は嫌われがちです。

  • 「神エクセル」
  • 「誰も触れないマクロ」
  • 「壊したら怒られるファイル」

……でも正直なところ、Excel 自体が悪者なのではなく、使われ方が限界を超えているだけだと思っています。

私自身、Web / モバイルアプリ開発の現場で 「Excel業務をDX化してほしい」 という依頼を何度も受けてきました。

この記事では、次をエンジニア目線で整理します。

  • いきなり「脱Excel」しなかった理由
  • Excel 業務が壊れる典型パターン
  • 現場でうまくいった「現実的なDXアプローチ」

Excel業務が「詰む」瞬間

DX 化の前に、Excel 業務が破綻しやすいサインを整理します。

よくある限界パターン

  • マクロ(VBA)が属人化している(作者しか直せない)
  • ファイルコピー文化(最新版が分からない / 差分が追えない)
  • 同時編集できない(ロック、衝突、後追い修正)
  • 履歴が残らない / 監査できない
  • Web / API と連携しづらい(自動化が行き止まり)
  • 権限管理が雑(パスワード付きZip運用など)

この状態でよく言われるのが、

「じゃあ Web システムに置き換えよう」

ですが、ここに 大きな落とし穴があります。


なぜ「脱Excel」が失敗しやすいのか

Excel を完全に捨てて Web システム化すると、よく起きるのが次の問題です。

  • 現場が使い方を覚えられない(導入教育コストが急増)
  • 入力スピードが落ちる(キーボード中心の運用が崩れる)
  • 表計算・コピペ・行操作がしづらい(“手触り”が変わる)
  • 結局「Excel に戻される」(二重運用 → 破綻)

つまり、

UI/UX を捨てた DX は、現場にとっては退化

になりがちです。


私ならどうするか:結論

結論:ExcelのUIは残し、責務だけを分離する

実務で一番うまくいったのは、これでした。

  • Excel = 入力しやすいUI
  • システム = 正しく管理する裏側(データ・ロジック・履歴・権限)

実践:Excel業務DXの「分解」アプローチ

① Excelが担っている役割を分解する

Excel は、実は複数の役割を 1つで全部 担っています。
詰む原因は「押し込みすぎ」です。

役割 本来の適任
表形式UI Excel / ExcelライクUI
計算・ロジック バックエンド(サービス層)
データ保存 DB
共有・履歴 サーバー(ログ/監査)
権限管理 認証基盤(SSO等)

👉 全部を Excel に押し込んでいるのが問題


② UIは「Excelライク」を維持する

重要なのは、現場が慣れている“気持ちよさ”を捨てないことです。

  • 行追加
  • 列コピー
  • セル編集
  • 表計算感覚
  • キーボード中心の入力

ここを壊すと、DXは反発されます。

そのため、UIは次のどちらかを選びます。

  • Excel をそのまま使い続ける(UIとして再定義)
  • ExcelライクなUIをWebで再現(スプレッドシート的な画面)

③ ロジックとデータは外に出す(DXの本丸)

DX の本丸はここです。

  • 計算ロジック → サーバー側へ(共通化・テスト可能に)
  • データ保存 → DBへ(正・履歴・検索・集計)
  • 操作履歴 → ログ化(監査・原因追跡)
  • 同時編集 → 排他/楽観ロック等で制御

UIがExcel感覚のままでも、中身は“完全にシステム”にできます。


「活Excel」という選択肢

私はこの方針を 「活Excel」 と呼んでいます。

  • Excel を捨てない
  • でも Excel に依存しすぎない
  • Excel を UI として再定義する

構成イメージはこんな感じです。

[Excel / ExcelライクUI]
        ↓  API(送信/取得)
[業務ロジック(検証・計算・ルール)]
        ↓
     [DB(正・履歴)]
        ↓
 [ログ/監査/権限/通知]

進め方(現場でハマりにくい順番)

「全部作り直す」ではなく、壊さずに段階移行します。

  1. データの“正”を決める(どれが最新?どれが正?を終わらせる)
  2. 入力と保存を分離する(Excel入力 → DB保存)
  3. ロジックをサーバーへ移す(計算・バリデーション・ルール)
  4. 履歴・監査を入れる(いつ誰が何を変えたか)
  5. 同時編集・権限・運用を整える(現場の事故を減らす)
  6. 余力が出たら ExcelライクUIのWeb化(必要なところだけ)

DXで一番大事だったこと

技術よりも大事だったのは、これです。

❌ やらなかったこと

  • 「便利だから」という理由だけでの脱Excel
  • 現場を置き去りにしたツール導入
  • いきなり全部作り直すこと

✅ やったこと

  • 既存業務を壊さない(まずは“事故”を止める)
  • Excelの「気持ちよさ」を尊重する(反発を生まない)
  • 徐々にシステム側へ寄せる(段階移行で成功率を上げる)

まとめ

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  • Excel 業務の DX は 二択ではない
    • 脱Excel ❌
    • Excel温存 ❌
    • 責務分離 ◎
  • UI は Excel ライクでいい
  • DX の本質は「裏側」(データ・ロジック・履歴・権限)にある

おまけ:判断の目安(ざっくりチェック)

  • Excelの“気持ちよさ”が価値なら → UIは残す(活Excel)
  • 監査・権限・同時編集・外部連携が限界なら → 裏側を先にシステム化
  • 入力が複雑でルールが多いなら → ロジックを外に出す優先度が高い

「置き換える」より先に、分ける(分離する)
これが、現場で一番壊れにくいDXでした。

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