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一番分かりやすい OpenID Connect の説明

Last updated at Posted at 2017-07-23

はじめに

過去三年間、技術者ではない方々に OpenID Connect(オープンアイディー・コネクト)の説明を繰り返してきました※1。 その結果、OpenID Connect をかなり分かりやすく説明することができるようになりました。この記事では、その説明手順をご紹介します。

※1:Authlete 社の創業者として資金調達のため投資家巡りをしていました(TechCrunch Japan:『APIエコノミー立ち上がりのカギ、OAuth技術のAUTHLETEが500 Startups Japanらから1.4億円を調達』)。

2017 年 10 月 23 日:『OpenID Connect 全フロー解説』という記事も公開したので、そちらもご参照ください。

説明手順

(1)「こんにちは! 鈴木一朗です!」
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(2)「え!? 本当ですか? 証明してください。」
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(3)「はい! これが私の名刺です!」
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(4)「それでは証明になりません。名刺は誰でも偽造できてしまうので。」
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(5)後日、鈴木一朗さんは新しい名刺を持参しました。「こんにちは! 鈴木一朗です! 会社の『署名』入りの名刺を持ってきました!」
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(6)「確認しますのでお待ちください。」
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(7)名刺を受け取った人は、名刺を発行した会社に問い合わせます。「株式会社●●さん。」
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(8)「はい。何かご用でしょうか?」
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(9)「御社が発行した名刺についている『署名』が本物かどうか確認したいので、『公開鍵』をください。
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(10)「はい、どうぞ。」(公開鍵を渡します。)
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(11)公開鍵を用いて名刺についている署名を検証します。その結果→→→「株式会社●●様が発行された名刺であることを確認できました。」
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公開鍵については、書籍『暗号技術入門』の説明が分かりやすいので、そちらを参照してください。

(12)ここで、『発行者の署名付き名刺』という概念が登場しました。
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(13)この概念に相当するものを『ID トークン』と呼びます。
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ID トークンの技術詳細は『[前編] IDトークンが分かれば OpenID Connect が分かる』で解説しています。

(14)名刺にその発行者がいるように、ID トークンにもその発行者がいます。
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(15)ID トークンの発行者のことを『OpenID プロバイダー』と呼びます。
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(16)ID トークンを受け取る側をクライアントアプリケーションと呼ぶとしたとき、OpenID プロバイダーとクライアントアプリケーションの関係を簡単に説明します。
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(17)OpenID プロバイダーが ID トークンを生成し、
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(18)クライアントアプリケーションに対して、ID トークンを発行します。
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(19)先の図では、OpenID プロバイダーがいきなり ID トークンを生成してクライアントアプリケーションに発行するという流れでしたが、実際は、ID トークンを発行する前に、発行してよいかどうかをユーザーに確認します。 発行する場合は、ユーザーが本人であることも確認します。つまり、ユーザーの『認証』をおこないます。
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(20)まず、クライアントアプリケーションが OpenID プロバイダーに対して ID トークンを要求します。
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(21)すると、OpenID プロバイダーは、クライアントアプリケーションに ID トークンを発行してよいかユーザーに尋ねます。 同時に、ID トークンを発行する場合は、ユーザーに本人確認情報の提示を求めます。 つまり、ユーザーの『認証』をおこないます。
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ユーザー認証方法の典型例はユーザー ID とパスワードの提示ですが、認証には他にも様々な方法があります。

(22)ユーザーが ID トークンを発行することを了承し、本人確認情報の提示も適切に行われれば、
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(23)OpenID プロバイダーは ID トークンを生成し、
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(24)クライアントアプリケーションに ID トークンを発行します。
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(25)さて、今ここで黄色い楕円で囲った部分ですが、
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(26)これは、ID トークンの要求とその応答を表しています。
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(27)そして、この部分を標準化したものが『OpenID Connect』です。 OpenID Connect の詳細は、技術文書『OpenID Connect Core 1.0』で定義されています。
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(28)ところで、OAuth 2.0 の図(『一番分かりやすい OAuth の話』参照)と OpenID Connect の図、似ていると思いませんか?
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(29)それもそのはずで、双方の処理フローが似ているのは、OpenID Connect が OAuth 2.0 の拡張仕様だからです。 OAuth 2.0 はアクセストークンを発行するための処理フローを定めていますが、それを流用し、ID トークンも発行できるようにしたのが OpenID Connect なのです。 これについて、OpenID Connect のウェブサイトでは、「OpenID Connect 1.0 は OAuth 2.0 プロトコル上のシンプルなアイデンティティーレイヤーである」と説明したり、「アイデンティティー・認証と OAuth 2.0 を足したものが OpenID Connect である」と説明したりしています。
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(30)OAuth 2.0 と OpenID Connect のこのような関係から、何が起きるかといいますと、「OpenID プロバイダーが認可サーバーを兼ねる」ことが多くなります。
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(31)ということは、クライアントアプリケーションは、ID トークンとアクセストークンの発行を両方同時に要求することも可能です。
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(32)クライアントアプリケーションからのリクエストを受けると、OpenID プロバイダー兼認可サーバーは、クライアントアプリケーションに ID トークンとアクセストークンを発行してもよいか、ユーザーに尋ねます。 また、発行する場合には、ユーザーに本人確認情報の提示も求めます。
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(33)ユーザーが ID トークンとアクセストークンの発行を了承し、本人確認情報の提示も適切に行われれば、
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(34)OpenID プロバイダー兼認可サーバーは、ID トークンとアクセストークンを生成し、
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(35)クライアントアプリケーションに対して ID トークンとアクセストークンを発行します。
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(36)さて、最後になりますが、そもそも ID トークンは何のためにあるのでしょうか? それは、ユーザーが認証されたという事実とそのユーザーの属性情報を、捏造されていないことを確認可能な方法で、各所に引き回すためです。 一ヶ所で(=一つの OpenID プロバイダーで)ユーザー認証をおこない、発行された ID トークンを引き回すことができれば、別の場所で何度もユーザー認証を繰り返す必要がなくなります。 短く言うと、『ID 連携』ができます。

説明は以上です。

このあとの説明手順

ID トークンの概念が理解できたので、技術的な話に進みましょう!

おわりに

基本的には、OpenID プロバイダーになるつもりがなければ、OpenID Connect を実装する必要はありません。 しかし、OpenID FoundationFinancial-grade API ワーキンググループが策定した Financial-grade API 仕様では、条件によっては OpenID Connect のハイブリッドフローのサポートが必要となります(『世界最先端の API セキュリティー技術、実装者による『FAPI(Financial-grade API)』解説』参照)。 これは、より高いセキュリティーが求められる認可サーバーは、OpenID プロバイダーになるつもりがなくても OpenID Connect のサポートが求められるという意味です。 今後ますます OpenID Connect が重要になってきますね。

追記(2020-03-20)
この記事の内容を含む、筆者本人による『OAuth & OIDC 入門編』解説動画を公開しました!

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