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DelphiAdvent Calendar 2024

Day 8

【Delphi】Delphi 8 について

Last updated at Posted at 2024-12-07

はじめに

『Delphi 8』 についての概要です。

image.png

概要

製品概要です。

項目 説明
製品名 Delphi 8
コードネーム Octane
発売年 2003
発売元 Borland Software Corporation
ビルドバージョン 8.0
コンパイラバージョン 16.0
BDS バージョン 2.0
サポートプラットフォーム Windows (.NET)

前バージョンとの違い

  • .NET Framework 用 (CIL) コンパイラとなった (Win32 API ベースではない)
  • IDE が刷新された (Galileo IDE)
  • デスクトップレイアウトで Classic Undocked を選ぶ事で旧来のような分離型のレイアウトにする事が可能
  • [ツール | オプション] でフォームデザイナの埋め込みを解除すると旧来のような分離型のフォームデザイナを使う事ができる
  • コンポーネントアイコンに 16×16 / 24×24 / 32×32 が使えるようになった
  • ソースファイルを UTF-8 で保存する事が可能になった
  • Windows フォームアプリケーション (Windows Forms) と VCL フォームアプリケーション (VCL.NET: VCL を Windows Forms 上に移植) 対応のフォームデザイナ
  • リファクタリングができるようになった
  • ユニット名前空間が使えるようになった
  • 拡張識別子が使えるようになった。例えば 識別子.予約語と同じ名前 は許容されるようになった
  • 型 (クラス) のネストが可能になった
  • カスタム属性がサポートされるようになった
  • スタティックなクラスデータ (クラスプロパティなど)
  • 値型のサポート
  • 高度なレコード型 (Advanced Record) がサポートされた
  • sealed クラス
  • final メソッド
  • 可視性指定子 strict protectedstrict private が使えるようになった
  • BDP (Borland Data Provider) for ADO.NET
  • BDE.NET
  • dbExpress.NET
  • object 型はない
  • CLX フォームアプリケーションはサポートされない
  • XML サポートはない
  • WebBroker は使えない
  • 『IntraWeb for .NET』は付属しない
  • レポートツールとして『RaveReport』が使える
  • 何もかもが違う!!

その他

  • 初の .NET Framework 用 Delphi
  • Galileo IDE を採用した最初の Delphi
  • コマンドラインコンパイラは DCCIL.EXE
  • BDS (Borland Developer Studio) バージョンが 2.0 になっているが、1.0 は『C# Builder』
  • Win32 開発用に『Delphi 7.1』が付属する
  • ガリレオ IDE の拡張用に Delphi 8 の Win32 版コンパイラ (DCC32.EXE) が用意された 1
  • 従来の Delphi は Windows (Win32) のコントロールを VCL (for Win32) としてラッピングしたものだった。.NET Framework においては Windows Forms がネイティブであり、VCL.NET は Windows Forms 上に Win32 のコントロールを模倣したものなので、これはラッパーのラッパーという事になる
  • IDE 環境設定のレジストリエントリは HKEY_CURRENT_USER\Software\Borland にある
  • レジストリを変更する事によって、デフォルトのファイルエンコードを UTF-8 に変更可能
  • インストールに .NET Framework 1.1 が必要になった
  • .NET Framework 1.1 Service Pack 1 をインストールすると動作不良を起こす

image.png

画像は『Delphi 2006 for .NET』のものです 2

.NET Framework 1.1 Service Pack 適用時の問題

.NET Framework 1.1 Service Pack 適用時の問題の公式な解決方法は SP をアンインストールして製品付属の無印をインストールし直す事だったと思います。

次に

ついでなので、.NET framework 版 Delphi の系譜についてすべて列挙します。

Delphi 2005 for .NET

『Delphi 2005』付属の .NET コンパイラ。

項目 説明
製品名 Delphi 2005 for .NET
発売年 2004
発売元 Borland Software Corporation
ビルドバージョン 9.0
コンパイラバージョン 17.0
BDS バージョン 3.0
サポートプラットフォーム Windows (.NET)

『Delphi 2005』は

  • Delphi for Win32
  • Delphi for .NET
  • C# Builder

がセットになった製品です。

前バージョンとの違い

  • 多次元動的配列

その他

  • 『Delphi 2005』は『Borland Developer Studio 2005』という名前にすべきだったと思います。スイート製品に既存の単体製品の名前を付けたらダメでしょ!3

Delphi 2006 for .NET / Turbo Delphi for .NET

『Borland Developer Studio 2006』付属の .NET コンパイラと、単体製品である『Turbo Delphi for .NET』です。

項目 説明
製品名 Delphi 2006 for .NET / Turbo Delphi .NET
発売年 2005
発売元 Borland Software Corporation
ビルドバージョン 10.0
コンパイラバージョン 18.0
BDS バージョン 4.0
サポートプラットフォーム Windows (.NET)

『Borland Developer Studio 2006』は

  • Delphi for Win32
  • Delphi for .NET
  • C# Builder
  • C++ Builder

がセットになった製品です。これを単体製品としてバラしたのが

  • Turbo Delphi for Win32
  • Turbo Delphi for .NET
  • Turbo C#
  • Turbo C++

です。

前バージョンとの違い

  • 特になし (主にツール類の改良)

その他

  • ある意味フル機能で使える最後の Delphi for .NET
  • .NET Compact Framework の開発を無理矢理行う方法がある

Delphi 2007 for .NET

『CodeGear RAD Studio 2007』付属の .NET コンパイラ。単体製品はない。

項目 説明
製品名 Delphi 2007 for .NET
発売年 2007
発売元 CodeGear
ビルドバージョン 11.0
コンパイラバージョン 19.0
BDS バージョン 5.0
サポートプラットフォーム Windows (.NET)

『CodeGear RAD Studio 2007』は

  • Delphi for Win32
  • Delphi for .NET
  • C++ Builder

がセットになった製品です。

前バージョンとの違い

  • .NET Framework 2.0 対応
  • Windows Forms のサポートが打ち切られた
  • ジェネリックス対応 (Delphi 2007 for Win32 の方は未対応)
  • 任意の型の「空の値」または「ゼロ値」または「ヌル値」を返すジェネリック型関数 Default() が使えるようになった

その他

  • 最後の Delphi for .NET
  • Windows Forms のサポートがないため、前バージョンの完全な上位互換ではない
  • 『RAD Studio XE』以降で貰える旧バージョンの『RAD Studio 2007』には『Delphi 2007 for .NET』は含まれていない

旧バージョンに『Delphi 2007 for .NET』が含まれない理由は、Embarcadero によると、

「Delphi for .NET は旧製品であり、古い Delphi for .NET の使用は推奨していないため、この製品は無償の旧バージョンライセンスには含めていません。」

との事。

Delphi Prism

RemObjects Software 社の『Oxygene』(古い名前は『Chrome』) が Embarcadero に OEM 供給されたのが『Delphi Prism』です。

image.png

『Delphi Prism』は『Delphi for .NET』とは互換性がありません。.NET 向け Object Pascal の別実装と考えるべきでしょう。

  • RAD Studio 2009 ~ XE3 にバンドルされた
  • 単体製品もあった
  • IDE としては Visual Studio (Shell) が使われる
  • 『RAD Studio XE』以降で貰える旧バージョンの『RAD Studio 2009 ~ XE3』には『Delphi Prism』は含まれていない
  • .NET Framework 3.0 以降にも対応している
  • 『Oxygene』や『Oxygene』が含まれるスイート『Elements』は現在でも販売されている

image.png

おわりに

Delphi 8 (for .NET) に関してはとにかく情報がありません。私自身、『Delphi 8』はスキップしてしまったので、Delphi for .NET に関する情報は主に『Delphi 2006 for .NET』から得ています。

現在の Windows 環境へのインストールは困難です。

『Delphi 8 for .NET』は Microsoft に騙されて (?) 作っちゃった製品という感は否めないのですが、後の Delphi (for Win32) 製品にも導入された機能が先行して実装されていたりして、今思えば意欲的な製品ではありますね。境遇としては『Turbo Pascal for the Mac』に近いのかも。

Pacal には P-code という中間言語にコンパイルする処理系がありましたから、ある意味先祖返りと言えなくもないですね。

See also:

  1. IDE Integration pack for Delphi 8IDE Integration pack for C#Builder 1.0 に含まれている

  2. 『Delphi 8』は唯一購入しなかった Delphi なので、VM 環境を持っていません。

  3. 後に『Delphi for PHP』という愚を犯します。

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