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DelphiAdvent Calendar 2023

Day 8

Turbo Pascal 40 周年!

Last updated at Posted at 2023-12-07

はじめに

今年、2023/11/20 で 『Turbo Pascal』 が 40 周年を迎えました。めでたい。

Turbo Pascal 40 周年

Turbo Pascal が 40 周年を迎えたというのに、その子孫である『Delphi』を開発・販売している Embarcadero は静かなものです。先日リリースされた 『Delphi 12 Athens』 には Turbo Pascal 40 周年イースターエッグが隠されていたりしたものの、とてもセンスがない質素なものでした。

image.png

真ん中の奴は、『BYTE』誌 1983/11 (Vol.8 No.11) P.129 に初めて掲載された Turbo Pascal の広告です。左上のは恐らく『Turbo Pascal 7.0』です。右下が最新の Delphi。

Embarcadero の関係者も幾つかブログ記事を書いてはいますが...ちょっと寂しい感じがしますね。

寂しいので

Embarcadero さんが Turbo Pascal 40 周年記念で何かをやる感じがしなかったので、25 周年の時に 2008/11/1 から毎日投稿されていたブログ記事を、日付をなぞった形で Twitter (X) へ毎日流す事にしました。

そしたら途中で community.embarcadero.com の記事が読めなくなり 1、急遽 Internet Archive へのリンクも投稿するハメになりました。予約投稿が台無しです。

Turbo Pascal

高速なコンパイルとその価格によって、Pascal のデファクトスタンダードと言っても差し支えない位置に居たのが『Turbo Pascal』です。

1983 年当時に存在したものだけを揃えて『Turbo Pascal』を試してみると理解できると思うのですが、オーパーツにしか思えません。

image.png

・Turbo Pascal の歴史

ただ、『Turbo Pascal』はいきなり『Turbo Pascal』として世に出たのではなく、実際の所 OEM 製品でした。

元となった Pascal は 8bit コンピュータ用に作られ、その後 16bit バージョンが作られ、『WordStar』互換のエディタが組み込まれ『Turbo Pascal』となりました。この『Turbo Pascal v1.0』のリリース日が 1983/11/20 と言われています。

・Turbo Pascal のバージョン

製品としての『Turbo Pascal』はバージョン 1.0 ~ 7.0 が存在しました。ver3.0 までは CP/M (80/86) 版が存在しました。『Turbo Pascal 7.0』は日本未発売です。

image.png

『Turbo Pascal』は ver1.0~3.0 まではほぼ同じ使い方で、CP/M を切り捨てた ver4.0 ではドラスティックな変更が入っています。

・Turbo Pascal for Windows

ナンバリングに入っていない『Turbo Pascal for Windows 1.0』と『Turbo Pascal for Windows 1.5』という製品がありますが、これらは Windows 3.0 / 3.1 上で動作する IDE を持った Turbo Pascal です。

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『Borland Pascal with Object 7.0』は『Turbo Pascal for Windows 1.5』と『Turbo Pascal 7.0』の機能を併せ持ったスイート製品です。

・Turbo Pascal for the Mac

短い間ですが、Macintosh 用の Turbo Pascal も発売されていました (1986 年)。

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・Turbo Pascal のキーパーソン

Pascal コンパイラを開発したのは、後に Delphi、J#、C#、TypeScript 等の開発に携わる事になるアンダース・ヘルスバーグ氏です。

「エディタを買うと Pascal コンパイラが付いてくる」と言われるまでに評判の高かったエディタは Borland Ltd. の共同設立者 3 人のうちの一人であるモーゲンス・グラッド氏が書いたと言われています。

フィリップ・カーン氏は Borland International 社 (Borland のアメリカ法人) の創始者で、Turbo Pascal を販売していました。多分誤解されていますが、彼は Borland Ltd. の創始者ではありません。実の所、1983 年時点 (BYTE 誌に広告を出した時点) では、米国には不法滞在状態だったとも言われています。

また、彼はチューリッヒ工科大において Pascal の生みの親であるニクラウス・ヴィルト氏の下で学んでいたという経歴があります。

・日本国内での状況

日本国内での『Turbo Pascal』は、サザンパシフィック社とマイクロソフトウェア・アソシエイツ (MSA) が販売していました。

1989 年以降はボーランドジャパン社 (MSA 100% 出資。1992 年以降はボーランド株式会社) が Borland 製品を取り扱っていました。

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『Turbo Pascal for Windows 1.5』『Borland Pascal with Object 7.0』『Turbo Pascal 7.0 for DOS』は日本未発売となっています。

日本国内では CP/M がほぼなかった事にされているので 2、主に PC-98 シリーズ用の MS-DOS 版の評価が多く、CP/M-80 版の Turbo Pascal については評価が殆どないのが実情です。

・アンティークソフトウェア

ver1.0, 3.0, 5.5 の MS-DOS 版はアンティークソフトウェアとして Embarcadero 社が公開しています。

Delphi

『Delphi』は『Turbo Pascal』の子孫なので、コンパイラのバージョンは Turbo Pascal 1.0 からの通し番号ですし、Copyright も 1983 年から始まっています。

Delphi 1.0 のリリース日は 1995/02/14 です。

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image.png

コンパイラバージョンが Turbo Pascal 4.0 (VER40) からになっているのは、それよりも前の Turbo Pascal には条件コンパイル指令がないためです。

ISO 7185 Pascal

Pascal が ISO で規格になったのも 1983 年の事でした。最初の規格が ISO 7185:1983 で、改訂版が ISO/IEC 7185:1990 です。こちらも 40 周年ですね。

ISO 7185 に対応した処理系に『Pascal-P5』がありますが、これを Delphi でコンパイルできるようにした記事もあります。

その『Pascal-P5』の使い方についても記事があります。

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Turbo Pascal を動かす環境

Embarcadero が公開しているアンティークソフトはすべて MS-DOS 版です。公開されていないバージョンやプラットフォーム用の Turbo Pascal はアバンダンウエアとして扱う必要があります 3

アンティークソフトにマニュアルは付属しませんが、PUG BOOKS の『Turbo Pascal トレーニングマニュアル』を購入するといいでしょう (バージョン毎に出ています)。できれば『Turbo Pascal プログラミング・マニュアル』が欲しい所です。

Turbo Pascal 3.0 以前の使い方であれば、次の記事が参考になると思います。

・Windows

64bit Windows で動かす事もできます。

・RunCPM

CP/M-80 エミュレータが動くマイコンボードで動作させる事もできます。

image.png

スタンドアロンで動作する超小型 CP/M マシンを作る事もできます。

image.png

RunCPM は Windows 向けにビルドする事もできます。

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超高速で動作するコンパイラ環境と考える事もできます。

・PCEmulator (FabGL)

8086 エミュレータが動くマイコンボードの MS-DOS / CP/M-86 上で動作させる事もできます。

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・MSX

MSX の DOS は MSX-DOS といいますが、この MSX-DOS はほぼ CP/M-80 です。MSX-DOS ver2.0 (MSX-DOS2) は階層化ディレクトリ等の概念を持ち、MS-DOS ver2.0 の機能を取り入れてはいますがCP/M-80、MSX-DOS との互換性を保っています。

簡単に言えば、MSX-DOS 上で CP/M のプログラムが走ります。そう、CP/M 版『Turbo Pascal』もね。

image.png

もちろん、MSX-DOS 上で動かした『Turbo Pascal』でコンパイルされた実行ファイルも動きます。

素の CP/M-80 版『Turbo Pascal』でも設定変更だけで MSX-DOS 上で動くのですが、オランダとイタリアでは Borland 謹製 MSX 用『Turbo Pascal』が Philips 社から販売されていたようです。このためか、MSX 固有の機能を使うためのライブラリが幾つか存在するようです。

実は MSX も今年 40 周年でして、MSX0 (MSX プラットフォーム IoT デバイス) とかで盛り上がっております。

image.png

See also:

・SHARP PC-G850V + EborsyEEP

『SHARP PC-G850V』に『EborsyEEP』を接続すると、CP/M を動かす事ができます。そう、ポケコンで『Turbo Pascal』 が動作するのです!

image.png

その他にポケコンで Turbo Pascal というと、『CASIO PB-2000C』用に『DL-PASCAL』という Pascal があり、これが Turbo Pascal 5.0 互換らしい、という事を知りました。

Turbo Pascal に関係ありませんが、40 周年という括りなら、人気機種だった SHARP PC-1245 も今年 40 周年ですね。

image.png

See also:

おわりに

今年は Turbo Pascal 40 周年という事で、Turbo Pascal そのものを触ったり、Turbo Pascal の書籍を買って読んだり、Turbo Pascal が動作する環境を構築したりしていました。

Twitter (X) で謎の Turbo Pascal 推しをしていたのはこのせいだったんですね... (^^;A

  1. 突然記事が読めなくなった心当たりが一つだけあるっちゃーある。偶然だったらいいのだけれど (w

  2. 日本国内での CP/M の状況については『パソコン創成期 (青空文庫)』を読むとなんとなく解るかと思います。

  3. 怒られない範囲で使ってね、という事です。

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