はじめに
『Delphi』 についての概要です。
概要
製品概要です。
項目 | 説明 |
---|---|
製品名 | Delphi |
コードネーム | Delphi |
発売年 | 1995 |
発売元 | Borland International |
ビルドバージョン | 1.0 |
コンパイラバージョン | 8.0 |
BDS バージョン | - |
サポートプラットフォーム | Windows |
前バージョンとの違い
言語的には 『Borland Pascal with Object 7.0』 と 『Turbo Pascal 7.0 for DOS』 が前バージョンに相当します。16bit Windows で動作するという意味では 『Borland Pascal 7.0 for Windows』 が前バージョンに相当します。
See also:
- 言語としては Object Pascal を名乗っている 1
- クラス型が追加された
- クラスライブラリとして VCL (Visual Component Library) が採用された
- 例外処理が行えるようになった
- 関数で Result 変数が使えるようになった
- MS-DOS アプリケーションは作れない
- 疑似コンソールアプリを作るための
WinCRT
ユニットが付属する - コマンドラインコンパイラ
DCC.EXE
が付属する - EXE パッカー
W8LOSS.EXE
が付属する - BDE (Borland Database Engine) が付属する
- C/S 版には帳票ツール『ReportSmith』が付属する
その他
- 元の名前は『Borland AppBuilder』
- 唯一の 16bit Windows 用 Delphi
- 32bit Windows にインストール可能
- 64bit Windows にインストール不可
- 実行形式バイナリ (
*.EXE
) は 32bit Windows でも動作する - 1994/10 に発覚した Pentium FDIV バグに対応。このバージョンのみ、バグ回避を行うコンパイラ指令がデフォルトで ON となっている (
{$U+}
) - 早期体験プログラム (EEP) は定員 500 名で抽選、有償で 12,360円 (税込)、最終製品を無償で受け取れるというものだった
- 『C Magazine』1995 年 10 月号には Delphi の記事があり、体験版が収録されていた
- 日本語の体験版もあった記憶が...?
- Delphi と Delphi Client/Server という SKU があった (英語版)
- 日本では Standard Edition という安価な SKU が用意された (29,800円)
- 後に日本では英語版の Delphi 相当の『Delphi and Database Tools』という製品が発売された (68,000円)
- VCL ソースコードは別売
- 『Delphi and Database Tools』は Delphi 2 ~ 4 のインストール CD 内にも収録されている
- Delphi 2 ~ 4 インストール CD 内の
DELPHI16\EXTRAS\MANUALS\
には Delphi 1 の言語ガイド (OBJLANG.PDF
) が含まれている - 『Delphi 1.0 Client/Server』はアンティークソフトウェアとして無償公開されている
- 1995 年の殆どの期間で『Windows 3.1』が最新版の Windows でした。『Windows 95』もこの年にリリースされています
英語版 | 日本語版 |
---|---|
(未発売) | Delphi Standard |
Delphi | Delphi and Database Tools |
Delphi Client/Server | (未発売) |
日本語版ではデータベース関連のローカライズが間に合っておらず、「DB 関係のツールがないのに同じ値段では売りにくい」という理由で安価な Standard Edition が設定されたらしい 2 のですが、結果的にはそれが良い結果に繋がったと思っています。
Windows 3.1 (16bit Windows) と Delphi (1)
『Delphi (1)』は Windows 3.1 で動作します。『Turbo Pascal for Windows』とは異なり、Windows 3.0 以前では動作しません。
項目 | 説明 |
---|---|
OS | Windows 3.1 |
CPU | Intel 80386 以上 |
Memory | 8MB 以上 |
Storage | 25MB 以上 (最小インストール時) |
Delphi の IDE (DELPHI.EXE
) を Windows 3.1 で動作させる場合には 386 拡張(エンハンスド)モードである必要があります。『Turbo Pascal for Windows』とは異なり、80286 機のスタンダードモードでは動作しません。
しかしながら、コマンドラインコンパイラ DCC.EXE
は 1MB 以上のプロテクトメモリさえあれば 80286 機でも動作します。
ちょっとしたアプリケーションならば、80286 機でもコマンドラインコンパイラで作れるのですが、スタンダードモードでは MS-DOS アプリを実行できないので、コンパイルのたびに Windows を終了させて MS-DOS に戻る必要があります。
そして EXE は Windows でしか動作しないので、アプリケーションを試すにはまた Windows を起動しなくてはなりません...面倒ですね。
Windows 3.x のモード
Windows 3.x には CPU に応じて次のようなモードがありました。
Windows モード | スイッチ | CPU | CPU モード | メモリ |
---|---|---|---|---|
リアルモード | /r |
8086 以上 | ・8086/8088 ・リアルモード (286) ・仮想 86 モード (386) |
EMS |
スタンダードモード | /s |
80286 以上 | プロテクトモード (286) | XMS |
エンハンスドモード | /3 |
80386 以上 | プロテクトモード (386) | XMS + 仮想メモリ |
モードは Windows 起動時に自動で最適なものが選択されますが、win.com
にスイッチを付けてモードを強制する事もできました。
Windows 3.1 ではリアルモードが廃止されています。
See also
- Microsoft Windows 3.x (Wiki)
- リアルモード (Wiki)
- プロテクトモード (Wiki)
- EMS (Wikipedia)
- XMS (Wikipedia)
- DPMI (Wikipedia)
- VCPI (Wikipedia)
32bit / 64bit Windows と Delphi (1)
Delphi (1) は 32bit Windows にそのままインストールできます。Vista 以降は色々と面倒くさい事があるので、Windows XP 以前へインストールするのがいいかと思います
64bit Windows では 16bit アプリケーションが動作しないので、64bit Windows にはそのままではインストールできません。
Delphi (1) の英語版は『DOSBox(-X)』上の Windows 3.1 (日本語版でも可) で動作させる事ができますが、Delphi (1) の日本語版はインストール時や IDE 起動時にエラーが出ます。
OS | Delphi | 仮想環境 |
---|---|---|
64bit Windows | Delphi 日本語版 / 英語版 | OTVDM (WINEVDM) |
32bit Windows | Delphi 日本語版 / 英語版 | 任意の VM |
Windows 3.1 | Delphi 英語版 | DOSBox-X |
Windows 3.1 | Delphi 日本語版 / 英語版 | VirtualBox VMware |
Windows 3.1 | Delphi 日本語版 / 英語版 | Neko Project 21/W (PC-98) |
Windows 3.1 での動作にこだわらないのなら VM の Windows XP (32bit) へインストールするのが最も簡単で便利です。
See also:
- Delphi 1.0 Client/Server が無償公開されたので Windows 10 (64bit) / 11 にインストールしてみる (Qiita)
- Delphi 1.0 Client/Server を Windows 7 の XP Mode にインストールしてみる (Qiita)
おわりに
始まりの Delphi です。書籍も多く出ていて、基本的な言語の構文を覚えるのなら Delphi 1 のもので充分な事もあります。
反面、製品マニュアルには『Turbo Pascal』や『標準 Pascal』に関する情報は載っていないので、効率のいいコードを書きたいのならそれらの情報も集めた方がいいと思います。
See also:
- Delphi タイムワープ – 1995 年と Delphi 神話の起源 (blogs.embarcadero.com)
- Delphi 1~4 でコンソールアプリケーションを作る (Qiita)
- Delphi と Windows の呼び出し規約 (Qiita)
- Delphi で基本的な図形を描画する (Qiita)
- Delphi のご先祖を辿る (Qiita)
- Pascal へのオブジェクト指向拡張の歴史と Delphi (Qiita)
- 'Look Back' on C# - BDL2046 (Youtube)
索引
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