0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Affinityショックから考えるPrinting freedomの未来

Posted at

Adobeユーザーが漏らす障壁

きっかけは11月4日にアドビのカスタマーサポートが行った投稿だった。

「窓口が大変込み合っている」という本文もさることながら、添付されているリンクが「契約中のプランを確認する方法」「各種契約プランについて」「アドビプランの変更」の3つであったことから、Affinity無償化によるプラン変更・解約の問い合わせが殺到しているのではないかと憶測を呼んでいる。Xがトレンドニュース記事にしたほどだ。

もちろんこれは一因の可能性であっても憶測に過ぎず、他にもAdobe CCの大幅値上げ、契約期間内なのに突然ライセンス無効となる障害がここ数週間発生している、例年値引きがなされるブラックフライデーセールと時期が近いなど、考えられる理由がいくつか挙がっている。

とはいえ、Xでツイート検索するとAdobeサブスクプランを解約したというツイートが相次いでおり、ライトユーザーを中心にAdobeを解約→Affinityへの乗り換えが始まっていることが伺える(余談だが、未だにCS世代のソフトを使い続けていると投稿する人が度々見られ、そちらにも驚愕する)。

一方、Adobeサブスク解約の流れに否定的なAdobeユーザーの声も多数投稿されていることは言うまでもない。

彼らの言い分を見ていくと、特に印刷分野においてAdobeからAffinityへの乗り換えが難しい理由として、「機能的な不足」「ファイルフォーマット」「慣れ(印刷業者側の対応状況など)」を挙げるものが大半であることに気づくだろう。

もちろん、機能的な不足は今のところいかんともしがたいところであり、即AdobeからAffinityへの移行が行われるとは考えにくい。

だが、今までAdobeに無縁だった人々は気づいたのではないか。
要するに今までAdobeが寡占状態だったのは「ファイルフォーマット」が理由だったのではないかと。

印刷業界は劇的な変化を何度か経験してきた

印刷業界は活字の使用に始まり、それがしばらく続いた後、写植(手動・電算)を経て、汎用PCによるDTPへと移行してきた。

写植からDTPへの移行はある程度の年代以上の人であれば多くが知るところだろう。

写植は専用のシステムや職人の技を必要としたし、書体メーカーによっては電算写植の文字使用に従量課金をしていた。それがDTPの登場により、汎用のPCでレイアウトソフトを使って作業ができ、フォントも買い切りと、一気にコストダウンが図られることになった。

現状のAdobe vs Affinityの構図に何か似ている感じはないだろうか。

市場規模縮小と生成AIも変革を促す要因に?

ここからは部外者の戯言だと思って読んでもらえれば幸いだが、印刷業界の変革を促す要因はAffinity無料化だけではないだろう。すでにいくつかの兆候は見えている。

一つはネットやデジタル端末の普及に伴う印刷業界の市場規模、特に出版市場の縮小である。
日本印刷産業連合会が年次報告をPDFで公開しているが、p11の生産金額合計・構成比を見ると、2010年代初頭の4000億円前後から近年は3500億円前後へ縮小、中でも出版の占める比率は2008年から半減している。

市場規模の縮小はコストカットの圧力へとつながりうる。

そしてもう一つ、生成AIの登場である。
生成AIは現状でもスクリプトを書く能力がある。既存の出版物をもとにレイアウトのノウハウを学習することもできるはずだ。
それが当たり前となった時、高度な組版を実現するGUIは必須ではなく、高度な組版を実現するスクリプトとそれを解釈するインタプリタがあればよいのでは?という発想が出てきても全然おかしくない(Qiitaっぽい記事になってきた)。温故知新のようなレイアウトソフトである。
さらには、入稿マニュアルをもとに生成AIが入稿データをチェックすることで、印刷トラブルが減ることも期待される。

脱プロプライエタリなファイル形式が鍵か?

新しいAffinityのキャッチフレーズは「Creative freedom」である。
creativefreedom1.png
このCreativeの中には、Printing(印刷)も当然入ってくるだろう。

そのためには、Adobeのプロプライエタリファイル(PSD,AI,INDDなど)やPDF(ISO規格にはなっているものの、Adobe独自の拡張も行われている)に加えて、Affinityのプロプライエタリファイルによる入稿が流行ればよいのか。
そうではなく、オフィスアプリの文書形式がMicrosoft OfficeのOOXMLからLibreOfficeなどで使われるODFに置き換えられつつあるように、デザイン・組版分野でもODFをベースとしたオープンなファイル形式にしていくべきではないのか。

もしそれが実現した場合、ファイル形式においてAdobeの優位性は削がれ、オープン規格の共通基盤のもとで複数のデザインソフトがコストや使いやすさを競う環境が整う。

もちろん、すでに様々な入稿データ形式が入ってきて時にトラブルが起きている、新たな入稿データ形式が出てきたところで出力機材が変わらなければオペレーターの負担が増えるだけではないかと懸念が出るだろう。そうかもしれない。だが入稿データ形式や出力機材の変化次第では、ワークフローも劇的に変化する可能性がある。

5年後、10年後においてもAdobe一強の寡占が続くのか、あるいは他のデザインソフトと勢力が拮抗したPrinting Freedomの時代がやってくるのか。
その鍵は、もしかするとAffinity無料化を機に流入したクリエイターが握っているのかもしれない。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?