先日、入力した分数がそのまま分数表示されてしまう事例がX上で話題になっていた(ツイートとそれをネタにした弊記事)。
一方で、分数入力しても分数表示できない事例もある。
以前、関数電卓の分数表示、意外な制約の記事で、$\frac{82850}{471}$はシャープ機で表現可、カシオ機で表現不可ということを示した(カシオCWのクローンであるdeli D992CN Proは表現可)。
Redditの事例では、$\frac{36480}{970200}$がTIの関数電卓で分数表示できないという話だった(TIは約分後の分母が3桁まで可)。
これら分数はアメリカ・中国のドットマトリクス型算数学習用電卓3機種(fx-55 PLUS、人教社PEP-190、deli DL-1726)で表現できるのか、試してみることにする。
帯分数は何桁まで可能か
まずはPEP-190でバグが発生した、整数部・分母・分子とも4桁の帯分数を試してみる。
いきなり全滅である。
しかしこれは仕方がない。カシオの関数電卓でもこの分数は表現できない。帯分数で現した時に区切り文字を含めると16桁となり、10桁を超えるからである。
では何桁まで可能なのか。まずは間違いなくできる整数4桁+分子1桁+分母2桁(帯分数では区切り文字含め計9桁、以下同様)の分数から。
結果表示が3者3様だが、どれも問題ない。
次に整数4+分子3+分母3(計12桁)。
PEP-190(帯分数のみ可)に加え、何と、fx-55 PLUSも表現できてしまうのである(手動約分モードなので仮分数のみ)。
さらにDL-1726も[F⇆D]ボタンで分数に変更可能だった。
シャープの関数電卓は仮分数のみ表示可。一方でカシオの関数電卓ではこの帯分数を分数表示することは不可能であり(帯分数で10桁を超える)、fx-55 PLUSの手動約分モードとDL-1726にはこの方針とは異なることがわかる。シャープの方針に近いのか、更に検証を進める。
なお、fx-55 PLUSの自動約分モードだとカシオ関数電卓と同じく分数表示不可である。
さらにもう1桁増やして整数4+分子3+分母4(計13桁)。
既約分数の答は先程と同じく仮分数で分子6+分母3になるのだが、fx-55 PLUSは分数にできなかった(約分前の分数を表示しようとするためだろう)。DL-1726は[F⇆D]ボタンで分数にできている。
なお、PEP-190は約分すると仮分数表示になるのが興味深い。
カシオの関数電卓が表現できない分数
帯分数にすると区切り文字を含め10桁を超えてしまう$\frac{82850}{471}$($=175\frac{425}{471}$)
PEP-190は4桁制限のため仮分数で入力できない。fx-55 PLUS(手動約分)とDL-1726は表示可能。fx-55 PLUS(自動約分)は表示不可。
一方、PEP-190は帯分数であれば入力可能で、仮分数表示も可能だった。後述する整数の割り算後に[F⇆D]を使って分数に直す方法も可能。
TIの関数電卓が表現できない分数
既約分数の分母が4桁となる$\frac{36480}{970200}$はPEP-190が入力不可、fx-55 PLUSとDL-1726は表示可能だった。
ただし、結果の分数は分子3+分母4とPEP-190でも表示可能であるため、整数の割り算を行った後で[F⇆D]を使って分数に直すことは可能。
いずれにしても分数表示の制約はある
以上、ドットマトリクス型算数学習用電卓の分数対応状況を見てきた。関数電卓とほぼ同じでありながら、それを超える範囲の分数も表現できており、ソフトウェアの違いを感じた。
しかし、基本的にはこれら電卓や関数電卓で桁数の大きな分数を表現できないと考えた方がよい。そうした分数を扱う場合はPCのソフトウェアやWebサービスを用いるのがよいだろう(関数電卓でもCASを搭載しているものであれば大きな桁数の分数を扱うことが可能かもしれないが、国内モデルにはない)。