Affinity by Canvaが発表されてもうすぐ1週間になろうとしている。
無料化のインパクトは大きく、反響がSNSに多数上がっているが、インストールトラブルなどよくある質問がいくつか見えてきた。
私も全てを把握できているわけではないのでごく一部の解説にとどまってしまうが、可能な範囲で下記にまとめたので助けになれば幸いである。
Windows版で起動直後に落ちるのですが
記事投稿日現在、SNSで最も目につくトラブルである。
初期バージョンにありがちな不具合(インストーラに起因、ようこそ画面が落ちてしまうようなファイルを置いてしまっている?)と考えられる。
公式からも一般的な解決策が示されているが、そのほかにSNSで解決策が多数寄せられていたので以下にまとめてみる。
- 公式(AffinityがWindowsでクラッシュするのはなぜですか?)
- GPUドライバを最新にする
- Ctrlキーを押しながらアプリを起動→ユーザーデータをクリアウィンドウで、ハードウェアアクセラレータを無効化のみを選択→アプリはハードウェアアクセラレータを無効化して起動
- SNSで寄せられた解決策
- 設定ファイルを削除
- ユーザー→(ユーザー名)→.affinity
- ユーザー→(ユーザー名)→AppData→Roaming→Affinity
- どちらの場所もバージョン別のフォルダとなっているため、旧バージョンを入れている人は3.0のフォルダのみ削除すること
- インストーラを変える
- MSIX形式のみうまくいった人、MSI/EXE形式のみうまくいった人の両方が見られる。もしうまくいかなかったら、もう一方のインストーラで試してみる。
- アンインストール時、旧バージョンの認証情報が消えることがある。再認証をすればよい。
- ようこそ画面を出さずに起動する
- 落ちる原因がようこそ画面にあると考えられるので、ファイルから直接開いてしまえば起動する。エクスプローラで任意の画像ファイルを右クリック→プログラムから開く→Affinity。
- 設定ファイルを削除
(追記:2025/11/6にバージョン3.0.1が公開。Discord掲載のリリースノートによると、Windows版に関して起動の問題やようこそ画面のテンプレートに関するバグが修正されたとのこと。改めてダウンロードしてお試しを。)
Windows版はどのインストーラを使えばいいの?
上記のように、Windows版のインストーラは4種類用意されているが、
- x64かARM64か
- MSIXかMSI/EXEか
の組み合わせとなっている。
1については使用しているPCのCPUによって選ぶ必要がある。
ARM系のみARM64を、それ以外はCore iなんちゃらでもRyzenなんちゃらでもx64を選べばよい。
2については、最近のOSではMSIXが推奨されている。
ただし、インストール先のフォルダを細かく設定したい場合はMSI/EXEを使うことになる。
加えて、現時点では前述の通りインストーラに不具合があるため、一方のインストーラでしか正常に起動しない場合がある。
なお、公式ヘルプの説明は以下のリンクから。
一度認証したらオフラインでも使えるの?
公式発表によると、「無料の Canva アカウントでライセンスをダウンロードして有効化するには、オンラインになっている必要があります。それ以後はオンラインである必要はありません。オフラインの期間が長くなってもかまいません」とある。

しかし、私が使用している限りではほぼ1日1回のペースで認証が行われている。
他のアプリでも裏ではこの程度の頻度で認証作業を行っているのかもしれず、認証ダイアログを出すだけでも良心的と言えるのかもしれないが、目につく認証回数の多さは気になるところだ。
RedditではPCの日付を1年後にしたところ起動しなかったという報告もされており、何か月も認証せずオフラインで使用するということはできないのかもしれない。
画像や線がギザギザしているのですが
表示がギザギザしているという質問も度々見かける。
これは、画像ファイルを開いたり、単位がピクセルのプリセットで新規作成をしたりした場合、ピクセルスタジオが呼び出され、デフォルトがピクセルビューモードになっていることが原因である。
ツールバーからベクター表示モードに切り替えれば解決する(メニューから操作する場合、表示→モード→ベクター)。

なお、ピクセルスタジオでも最初からベクター表示モードにしたい場合は、編集→設定→ユーザーインターフェースと開き、「画像のデフォルト設定をピクセル表示」をオフにする。

縦書きはできますか?
現時点で公式に対応する予定はないとのこと。残念。
ただし擬似的に縦書きを行うことはできる。
フォントが限定されるが、縦書き用にフォントファイルを調整したものがスタジオスズメから配布されている(90度回転した状態で組まれるので、テキスト枠を90度回転させる)。
また、1文字複数行の疑似縦書きをする際でも、タイポグラフィ→すべての代替文字の中から、縦書き用文字に置き換えることができる(MS書体など、昔に作られたTrueTypeフォントなどは対応していない)。CS5の解説も参考に。
ペンタブレットを使うのですが、手ぶれ補正はありますか?
手ぶれ補正は、ペイントブラシツールなどのツールバーで表示される、スタビライザをオンにすることで使える。
右側のアイコンで、ロープモードとウインドウモードを切り替えることができる。

カラーパレットが少ない、用紙サイズにB判が無い
これは従来のAffinityから言われてきたFAQだが、他社製品に比べて初期搭載のカラーパレットが少ない、用紙サイズにJIS B判が用意されていないということがある。
カラーパレットについてはAffinity用に作られた各種カラーパレットファイルがTooo-Nの開発室で配布されている。
JIS B判については、自分でプリセットを作るほか、Tooo-Nの開発室で配布されているテンプレートを使う、あるいはPetitBrainが配布しているガイド・トンボ付きのフォーマットデータを使う方法がある。いずれも前バージョン用だが、Affinity by Canvaでも使用可能だ。
なお、Affinity by Canvaでテンプレートを使うには、ようこそ画面→自分のテンプレート→フォルダの右の+アイコン→テンプレートフォルダを指定、の手順で準備する(実際にはテンプレートフォルダを見に行くだけ、ただし現在フォルダ内に複数ファイルがあっても先頭のファイルを開いてしまうバグがあるので注意)。
数値指定を細かくできないか?
線幅のpt指定や、サイズのmm指定をする際など、小数第1位までしか指定できないように見える。
これは設定で小数第1位までに制限されているためであり、設定を変えることで桁数を増やすことが可能だ。
編集→設定→ユーザーインターフェース→ユニットタイプの小数点の位置

なお、先日Affinityでピクセル単位の描画をするにはを記事にしたが、ピクセルの小数点の位置を0にするという方法で整数値にすることもできる。
ただし記事で紹介した方法でも十分実現可能なため、整数指定しかできないデメリットも踏まえつつ設定するか検討してほしい。
他社製品とキー操作が異なる
会社の違うソフトであり、ある程度の割り切りは必要。
ただし、Affinityには強力なショートカットカスタマイズ機能があるため、その気になれば他社製ソフトのキー操作にかなり近づけることができる。

汎用的なフォーマット(PDF、PNG、SVGなど)の書き出しは問題がないの?
Affinity無料化で印刷現場が混乱する…みたいな投稿も一部には出ているが、書き出したPDFファイルが問題だったという投稿は私がSNSを観察した範囲では見かけていない。
X(Twitter)で「affinity pdf おかしい」と検索しても数件程度。
facebookのAffinity User Group Japanで「pdf」の過去投稿検索をしても、検索できた範囲で不具合報告が数件程度であった。なおこのグループにはPDF入稿のノウハウが複数投稿されているので、Affinityを使った入稿を考えている方は参加をおすすめする。
今後ユーザーの増加により、Affinity書き出しのPDF品質について検証がなされることを期待する。
一方、書き出したPNGファイルやSVGファイルがよろしくないという投稿は時々あり、特にSVGはwidth, heightがともに100%決め打ちで出力されてしまうため、一部アプリケーションで読み込む際に問題となるようだ。この件に関してはテキストエディタなどで当該部分を修正すればよい。
情報が少なくて申し訳ないが、本格的な使用の前に情報収集することをお勧めする。
公式のチュートリアルは無いの?
Affinity V2までのチュートリアルは旧アプリ別にYouTubeチャンネルが用意されている。
英語だが、Affinity by Canvaでも十分役に立つ内容となっている。
- ベクター(Affinity Designer) https://www.youtube.com/channel/UC6wX4Z3FIGUhyVbtCCwd4FA
- ピクセル(Affinity Photo) https://www.youtube.com/channel/UCQZN-kIrZUQyoTnexM3jJAw
- レイアウト(Affinity Publisher) https://www.youtube.com/channel/UCnw-cXN3oqAg7YXZVMKN0dA
書籍のおすすめは?
紙の書籍として出版社から発売されているものは、Affinityの教科書[V2対応]、Affinity Photoによる画像補正・編集入門 2.1対応、AFFINITY PHOTO クリエイター教科書 [V2対応版]がある。
その他、同人誌や電子書籍として、Affinity Suite vol.01~03、はじめてでもできる!う・わ・さのデザインソフト Affinity Designer 2 の使い方、簡単!Affinity Publisherで文書作成、これ1冊で完結!AFFINITY Designer2/Photo2などが発行されている。
なお、レイアウト(Affinity Publisher)関連の書籍が少ないが、Affinity ForumでMikeTO氏が401ページの私製マニュアル「Expert Guide to Affinity Publisher」を無料公開しており、先述のAffinity User Group Japanでこの日本語訳が公開されている。
サポート窓口は?
Affinityの ヘルプ→フィードバックを送信 は返信先の入力欄が無いため、要返信のサポートして使えるかは疑わしい。
したがって、基本的にはWebから問い合わせをすることになる。
フォームの場所が非常にわかりにくいが、以下のリンクから問い合わせフォームを開くことができる。
