前回の小数表現が表、分数表現が裏…見習うべき人教社PEP-290学生計算器(関数電卓)に続き、中国の中学生向け計算器、deli DL-1728を取り上げる。
搭載機能の違う2機種を同一型番で販売
通分や素数判定ができる小学生計算器、deli DL-1726旧版の記事で小学生計算器のDL-1726が新旧2機種あると紹介したが、中学生計算器のDL-1728も2機種存在する。
左が高级款(上級モデル)、右が基础款(ベーシックモデル)の名称で販売されている。
ただしDL-1726とカラーリングを対応させると、左が旧版、右が新版と考えてもよさそうである。
背面のシールを見ると、左が2017年7月製造、右が2021年8月製造のようだ。
搭載機能が違うため、起動時のメニューも違う。
上級モデルが複素数、統計、方程式、表、行列とfx-375ES Aに近い機能が搭載されているのに対し、ベーシックモデルは統計機能しかない。
キー配列は上級モデルとベーシックモデルで若干位置の異なるものがあり、ベーシックモデルには複素数関連と積分・微分キーがない。[2ndF][MODE]が上級モデルはFUNCTIONになっているが、ベーシックモデルはSETUPになっている。
上級モデルの概要
Baidu Tiebaに上級モデルに関する投稿があった(なぜかメニューが8項目ある)。
機械翻訳を使ってざっと読んでほしいが、概ねここに書かれている通りである。
微積分機能が付いているものの、積分の演算速度はかなり遅い(あるいは精度が悪い)。
いくつか例を挙げると、
- $2\int_{-1}^{1}\sqrt{1-x^2} dx$ … DL-1728:約1分30秒、fx-375ESA:約1分、deli D991CN(EXクローン):約14秒
- $\int_{0}^{π}\sin^2(x)+\sqrt{x} dx$ … DL-1728:約56秒(誤差約8.4E-5)、fx-375ESA:約1分58秒(小数9桁まで誤差なし)、deli D991CN:約12秒(小数9桁まで誤差なし)
fx-375ESAと比べると性能の差は歴然である。
その他、搭載されているものに関しては概ねカシオES機と同様に機能する。
FUNCTIONメニューは複素数・統計・方程式・行列モードの時のみ表示される。
分数入力は分子→分母の順、先に帯分数の整数部や分子を入力してから分数キーを押すことは不可。結果は帯分数表示。
ルートやπも表示可能な範囲であればそのままの形で表示される(自然表示出力)。
度分秒入力はDL-1726やEX・CWクローン機と違い、全て ° の記号で表示される(結果表示は °, ′, ″ )。
[DR]キーでDeg/Rad切り替えメニュー、[F/S]キー([2ndF][(])でFix/Sci/Norm切り替えメニュー(Norm1とNorm2はESシリーズと同じ)が表示される。
上級モデルは小数出力モードがないため、自然表示(分数やルート表示)を小数表示にする際は一々[2ndF][(-)]([S↔D])と操作する必要がある。
ベーシックモデルのみの機能
ベーシックモデルはSETUPメニューが用意されている。
DL-1726新版と全く同じであるが、関数電卓としてはDecimal(小数出力)モードの存在がDL-1726より重要となるだろう。
順番は 1:Decimal(小数出力) 2:Math(自然表示出力) となっているが、Mathがデフォルトなのが惜しい。
分数入力は上級モデルと違い分母→分子の順、先に帯分数の整数部や分母を入力してから分数キーを押すことは不可。分数結果のデフォルトは帯分数表示(SETUPで仮分数に切り替え可)。
特筆すべき点はないが…
DL-1728の2機種を見たが、カシオES機等と比較して特筆すべき点はほとんどない。
強いてあげれば、統計モードの統計変数がALPHAキー入力に割り振られていること位か(ベースがカシオES機でありながら、この点はシャープの2行機に近い)。
演算速度が遅いため、上級モデルはカシオES・EXのクローン機で代替可能と考え、機能を削ったベーシックモデルを作ったとも考えられる。
ただし、deliがClassWiz CWクローンで機能を追加できたのは、こうしたカスタマイズモデル製造によるノウハウ蓄積もあったからではないだろうか。
deliの関数電卓の系譜という点でマニアは注目すべきモデルなのかもしれない。