今年のはじめ、こんな記事を書きました。
なるほどなるほど、会話したい側がとりあえず相談したり、とりあえず電話したほうが早いと感じるのは「相手が言語化コストを負担してくれるから」ということ。
で、すぐに会話してくる人というのは”要求を整理して言語化する”という、「仕事の超重要プロセスをこちらに丸投げしてくる人」ということだと。
出典:Qiita.「「仕事を任される人」のチャットには特徴があって、決まってこれ。」(1/22)- https://qiita.com/haihaikazuma/items/570cc29f0cc4e6f10a4f
「コミュニケーションコストはめちゃくちゃ重い。でも、それを自分が引きうけることで、仕事の主導権をにぎることができるよ(上司から仕事を奪えるよ)」という話でした。
で、この内容にくわえて、仕事を任される人のチャットに特徴があることを見つけました。それが本稿のタイトルである、チャットスタンプの使い方です。
結論からまいりましょう。
「仕事を任される人」の多くは、相手から連絡(チャット)がきたときに、既読を意味するスタンプですばやくリアクションをしています。
─── こういうやつとか。
⏳(しばらくお待ちください)
─── こういうやつです。
👀(確認しています)
チャットに気づいてから 30 秒以内 ─── それくらいのスピードでリアクションし、相手の「見てもらえてるかな」というモヤモヤを素早く解消するのです。相手のコミュニケーションコストを下げる、ひとつのテクニックです。
"いい印象" を積みあげよ
とある作業をしているとき、こんなメッセージが届いたとします。
お客さんに、定例会のリスケ連絡を送っておいてもらえる?
さて、最初にどうしてあげるのがよいでしょう。
① 対応していた作業を、キリいいところまで進める。
② 依頼のとおり、リスケ対応をする。(すぐに対応)
③ チャットに「既読」を意味するスタンプをおす。
私は、ここで ③ を選択すべきだと考えています。なぜなら、なにかリアクションをするまで、メッセージを送った相手が不安に感じているかもしれないからです。
「連絡はしたけど反応がきていない」ということは、ボールが相手の手元にとどいておらず、いわば宙ぶらりんの状態です。で、このとき、投げ手と受け手、どちらに責任があるかと聞かれたら、まぁ投げ手なワケじゃないですか。
それで、「ボールを受けとったよ!」という、既読のリアクションがないと、投げ手には心理的な負担が残ってしまいます。これは「コミュニケーションコストが高い状態」です。
Image:Google AI Studio.「投げたひとに責任がある状態」
反応があるまでずーっと、頭のかたすみで「見てもらえてるかな、急ぎの用事なのだけど…」とモヤモヤすることになり、脳は疲れ、リソースを消費します。
「べつにわずかな負担じゃない?」と思うでしょうか。それは間違いではありません。負担はそんなに大きくないでしょう。けれど、終わったあとの印象は全然ちがいます。(負担の大きさはあまり関係なく、負担をかけてしまったとことが問題なのです。)
リアクションが早いひとには "いい印象" が積みあがります。「いつも反応がはやくて助かる。気軽に仕事をまかせやすい。」と思われます。
リアクションが遅いひとには "悪い印象" が積みあがります。「あいつは反応が遅いことがある。急ぎの仕事は振りにくい。」と思われます。
(個人の好感度にも関わってくる気がします。重要な指標かなと。)
この「リアクション速度の差」による「仕事の任せられやすさ」は、プロジェクトに複数のメンバーがいるときに真の効果を発揮します。リアクションが早い A さんと、リアクションが遅い B さんがいるとき、仕事は A さんに頼みますよね。手元のボールをはやく手放したいですから。
A さんはプロジェクトをコントロールする機会を得ることが増えます。もし、仕事の内容がお客さんへの連絡であれば、お客さんも A さんをプロジェクトの重要人物だと思うことでしょう。少なくとも、やりとりをしたことのない B さんよりは、A さんのほうを親しく思うはずです。
これは仕事のできるできない、仕事のクオリティの良し悪しなど、「能力の問題」ではありません。ただのフットワークの問題です。仕事においては「リアクションが早いひとの方が好かれる」という、極ふつうの話です。
その好かれるためのリアクションが、スタンプひとつでできるんだったら、それはリアクションしたもん勝ちだと思いませんか?
即時反応プレッシャーと防衛線
ここまで読んで、「リアクションを素早くするくらい、あたりまえのこと過ぎてワロタ」という意見があるかもしれません。これ仕事の話ですからね。逆に「リアクションを遅らせるひとが "おかしい"」というあつかいを受けるのかもしれません。
しかし、これは全員があたりまえにできることではありません。
じっさいは、かなり難しいことです。
なぜか。
すでに述べたように、受け手がメッセージを既読にした時点で、ボール(仕事)は自分の手元にわたったことになります。それはいわば、作業開始の合図です。
ここで、すぐに依頼を対応できるのであれば問題はありません。しかし、じっさいには別のタスクで手がふさがっていたり、より優先度のタスクがあったりして、すぐに動けないときがあります。そんなとき、「既読にしたのに対応が遅い(仕事が遅い)」と思われるのが怖いのです。
そうなると、即リアクションをためらってしまいますよね。─── このプレッシャーに耐えることができるひとが、意外と少ないのです。
ボールを受け取っていない状態をキープすることで、自分の心にほんのすこし余裕を持たせることができます。仕事をまだ受け取っていない。少なくとも、そういうことにできるからです。これはズルをしているというよりも、自分のペースを守るための防衛線に近い…
もちろん、ずっと既読をつけないまま放置するつもりもないでしょう。対応できるタイミングが来たときにきちんとリアクションもするし、対応もします。ただ、読んだ瞬間に生まれる「自動的に仕事がスタートされるような感覚」は疲れます。
あえて既読をつけないという選択も、したくなるものです。
─── ということで、「素早いリアクション」はコミュニケーションコストを減らす。仕事を円滑にすることができ、その結果は自分に返ってくる。そんな話でした。
「連絡に対してリアクションをしろ」なんていうと、あたりまえの話に聞こえるかもしれませんが、じつは貴重なスキルなのかもしれません。意識して実行すると、知らずのうちに頼られる存在になっているかもしれません。ぜひともお試しください。
上司にもやって欲しい
言いたいことはすべていってしまったので、最後に「上司にも素早いリアクション(スタンプ)を意識して欲しいなー」ということを書いて終わろうと思います。
上司が素早く👍のリアクションをしてくれるだけで、部下は「自分の仕事をきちんと見てくれている」と実感できますし、「この進め方で大丈夫なんだ」と安心できます。
スタンプのリアクションだけでも、部下は「助かるー」になる。
逆に、反応が遅いと、不信感とまではいかなくても、ちょっとした気づかい、不満というほどでもないが、ふとした心配がうまれ、すれ違うことになるかもしれません。
一番最悪なのは、「上司もいそがしいもんな」と思われ、状況報告の回数を減らされることです。部下が気をつかって、良かれと思って減らす報告回数をケースがあります。こまめな報告をやめ、まとめて伝えてくるようになるのです。
🙂この方針で作業をやりますね。
→OK
😄作業やりました!
→Thank you!🤟
これはよいでしょう。最高です。
それが、こうなるかもしれません。
😄この方針で作業をやっときました。
→その方針は困る。
🥲やりなおします
→Sorry……💦
こういうこと、現場でかなり多く発生していると思っています。プロジェクトも最初のほうは、上司も部下もきちんと報告し、リアクションを残すでしょう。ですが、時間が経つにつれて慣れて、だんだん反応が遅くなりがちです。
それで、なにか問題が発生したときに、上司は「あいつに任せておけば大丈夫だと思ってたのに」と勝手に期待はずれのあつかいをし、部下は「あの上司はあまり仕事をみてくれない」と感じてしまいます。
リアクションの意識で減らせることだと思います。
以上です。