概要
監視・運用の仕事を通して「仕組みをもっと理解したい」という興味が生まれ、
やがてそれが“技術の面白さ”につながっていきました。
本記事では、現場で感じた限界をきっかけに、
どのように学びを広げ、手を動かしながら理解を深めていったのかを振り返ります。
前回の記事はこちら
➡ 第1回:なぜ「運用・監視」は軽視されるのか ─ 現場から始まったエンジニアのリアル
はじめに
監視・運用の仕事に少しずつ慣れてきた頃、
「このシステムはどうやって作られているのだろう」という疑問が増えていきました。
障害を検知して手順通りに対応することには慣れてきたものの、
なぜその障害が起きるのか、どうすれば防げるのかは分からない。
どこか、自分が仕組みの表面だけを触っているような感覚がありました。
その頃から、「自分でも環境を作ってみたい」と思うようになりました。
現場では学べなかったことを、自分で試す
仕事で扱うシステムの内部を理解したかったので、
自作PCを組んでLinuxを入れ、ネットワークの設定を試すようになりました。
最初はサーバが起動しても通信が通らず、
ネットワーク設定やルーティングの基本を理解していないことに気づきました。
そこで中古のスイッチやルータを使って構成を再現しながら、
通信経路やACL設定を一つずつ確認するようにしました。
設定を変えては試し、通らない理由を調べることの繰り返しでした。
少しずつ理解が進むにつれて、
「なぜ動かないのか」「どこで繋がるのか」が見えるようになり、
自分の中で仕組みが整理されていく感覚がありました。
「触って覚える」ことの価値
この経験を通して感じたのは、
知識ではなく、理解することの面白さです。
テキストやマニュアルを読むだけでは掴めなかったことが、
実際に手を動かして確認すると、
仕組みとして立体的に見えてきます。
操作することと、理解することは違う。
それを実感したのはこの頃でした。
「通す」から「守る」へ
ネットワークを理解していく中で、
通信が通ることだけが正解ではないと感じるようになりました。
その後の現場では、Firewall や IPS、WAF などのセキュリティ製品に触れる機会が増え、
「どう通すか」だけでなく「どう守るか」を意識するようになりました。
通信経路の設計とセキュリティのバランスを考えることは、
単なる技術ではなく“考え方の訓練”でもありました。
障害解析や閾値設定、脆弱性スキャンの自動化などを経験する中で、
一つの設定変更がシステム全体に影響を与えることを体感しました。
この経験が、後に設計や構築を行う際の視点を広げるきっかけになりました。
転職と環境の変化が補ってくれたもの
自分なりに理解が進んでいく中で、
「もっと違う環境を見てみたい」という気持ちが生まれました。
結果的に転職を重ねながら、
前職で足りなかった知識を次の職場で補っていくような形になりました。
運用、構築、設計と少しずつ関わる領域が広がっていき、
振り返ると自然とキャリアが“階段”になっていたように思います。
当時はただ「次の環境で成長したい」と思っていただけでしたが、
後から考えると、その選択が一つひとつ、自分の理解を補う経験になっていました。
ふり返って分かったこと
あの頃の試行錯誤がなければ、
構築や設計の仕事に携わったときに、
「なぜ動かないのか」「どこで止まるのか」を自分の言葉で説明する力は
身につかなかったと思います。
運用の経験があったからこそ、
「現場で実際に起きること」を想像しながら設計を考えられるようになった。
あのときに感じた小さな疑問や失敗が、
今の自分の土台になっています。
おわりに
キャリアを積むというと、
何か特別な成果や資格を思い浮かべがちですが、
実際は毎日の小さな疑問と行動の積み重ねだと思います。
“わからない”を埋めたい気持ちで動いた時間が、
後になって一番の学びになっていました。
次回は、「運用・監視」という原点に立ち返る ─ 現場と会社が描くキャリアの形
について触れていきます。