はじめに
AIコーディングアシスタントの進化によって、C#スクリプトを書くこと自体は、もはや特別な行為ではなくなりつつあります。
頭の中にあるイメージを言葉にすれば、数秒後にはそれなりに動きそうなコードが目の前に現れます。
それは間違いなく革命です。
しかし、Unityでゲームを作っている方なら、きっとこう感じたことがあるはずです。
「……ここからが本番なんだよな」
本記事では、なぜUnity開発においてMCP(Model Context Protocol)が必要なのかを、単なる効率化の話ではなく、「もっと早く試したい」「もっと雑に作って、もっと磨きたい」という開発者の衝動の視点から掘り下げていきます。
対象読者
- Unity開発者
- AIアシスタント(Claude、GPT等)を開発に活用している方
- ゲーム開発のイテレーション速度を上げたい方
AIができること・できないこと
AIが得意なこと:スクリプト生成
// AIはこのようなコードをいくらでも生成できます
public class PlayerController : MonoBehaviour
{
[SerializeField] private float moveSpeed = 5f;
[SerializeField] private float jumpForce = 10f;
private Rigidbody rb;
void Start()
{
rb = GetComponent<Rigidbody>();
}
void Update()
{
float horizontal = Input.GetAxis("Horizontal");
float vertical = Input.GetAxis("Vertical");
Vector3 movement = new Vector3(horizontal, 0, vertical) * moveSpeed;
rb.velocity = new Vector3(movement.x, rb.velocity.y, movement.z);
}
}
この程度のコードであれば、もはや「書いてもらう」という感覚すら薄れてきました。
設計意図を伝えれば、AIはそれなりに整った構造で、破綻の少ないコードを返してくれます。
アイデアを思いついた瞬間に、とりあえず動く形が手に入ります。
これは間違いなく、創作のスピードを押し上げる力を持っています。
AIができないこと:Unityエディタ操作
一方で、Unity開発の現場に戻ると、現実が立ちはだかります。
| 作業 | 内容 | AIの限界 |
|---|---|---|
| Scene構築 | Hierarchy内のオブジェクト配置 | ファイル操作不可 |
| GameObject操作 | 作成・削除・親子関係設定 | エディタAPI呼び出し不可 |
| Component参照 | SerializeFieldへの参照設定 | Inspector操作不可 |
| 数値設定 | Transform、物理パラメータ調整 | 実行時の値変更不可 |
| Prefab化 | アセット作成・管理 | AssetDatabase操作不可 |
ここにあるのは、ゲームを「触れる状態」にするための作業です。
そして皮肉なことに、この工程こそが、試行錯誤のテンポを最も鈍らせます。
問題の本質:コードと設定の分離
Unityの設計思想は、とても健全です。
コード(ロジック) と 設定(データ) を分離することで、柔軟で安全な開発を可能にしています。
AIがいくら優れたコードを書いても、それを「動く状態」にするにはUnity Editorの操作が必要です。
この壁が、アイデアを試すスピードを鈍らせます。
スクリプトが完成しても、
- Sceneに置き
- 参照を繋ぎ
- 値を調整し
ようやく「試せる」状態になります。
この「試すまでの距離」が長いほど、人はアイデアを削り、妥協し、最終的には諦めてしまいます。
従来のワークフローの問題点
この流れは、一つ一つ見れば大したことはありません。
しかし、毎回これを繰り返すとどうなるでしょうか。
- 試行回数が減る
- 「あとでやろう」が増える
- 面白くなりそうな分岐を切り捨てる
つまり、可能性を自分で狭めてしまうのです。
MCPによる解決
MCPを導入すると、状況は一変します。
これは「自動化」の話ではありません。
思考と結果の距離を縮めるための仕組みです。
頭の中にあったイメージが、UnityのScene上にそのまま立ち上がります。
その瞬間、人はまた次のアイデアを思いつきます。
MCPで可能になること
1. Scene構築の自動化
「3Dプラットフォーマーの基本ステージを作って」
AIがMCPを通じて:
- 地面(Plane)を作成
- プラットフォームを配置
- ライトを設定
- カメラを配置
「まずは雰囲気を見る」という行為が、ほぼ思考と同時に行えるようになります。
2. GameObject操作
「Playerの子オブジェクトとしてWeaponHolderを作成して」
AIがMCPを通じて:
- 親子関係を設定
- 適切な位置に配置
- 必要なコンポーネントを追加
構造を考えることに集中でき、「作業」に意識を奪われません。
3. Component参照の設定
「PlayerControllerのtargetにEnemyを設定して」
AIがMCPを通じて:
- SerializeFieldの参照を解決
- 適切なオブジェクトを検索
- 参照を設定
ドラッグ&ドロップの迷いが消え、設計の意図だけが残ります。
4. 数値の調整
「移動速度を10に、ジャンプ力を15に設定して」
AIがMCPを通じて:
- Inspector上の値を変更
- 複数のパラメータを一括設定
「ちょっと速すぎるな」と感じたら、すぐ次の値を試せます。
アーキテクチャ
MCPは、AIとUnityの間に立つ翻訳者です。
言葉になりきらない意図を、Unityが理解できる操作に変換し、その結果をまたAIへ返します。
この往復が速いほど、人はもっと大胆に、もっと自由に試せます。
まとめ
| ポイント | 説明 |
|---|---|
| AIの限界 | コードは書けるが、Unityエディタは触れない |
| Unity開発の特性 | コード + 設定が揃って初めて成立する |
| MCPの役割 | その断絶を埋める |
| 効果 | 試行回数そのものが増える |
MCPは「楽をするため」の道具ではありません。
思い描いたゲームを、諦める前に形にするためのインフラです。
作るスピードが上がれば、人はもっと多くのアイデアを信じられます。
