正直、MCPが業界標準になった今、「次は何?」がよく分からないままズルズル時間を使ってる人が多いと思う。自分もそうだった。
並列でエージェントを走らせるオーケストレーターを自作して5.9倍高速化した経験から言うと、MCPだけでは足りない壁が確実にある。今回はその壁の正体と、Googleが2025年に出した「A2A Protocol」が今どこまで来ているのかを、一次情報を全部当たって整理した。
ぶっちゃけ「Anthropic派のエンジニアにとって都合の悪い話」も含む。けど見て見ぬ振りしても仕方ないので書く。
この記事の3行結論
- MCPは「エージェント↔ツール」の戦い。次は「エージェント↔エージェント」を扱うA2Aが2026年の主戦場
- A2Aは2025年4月Google発表→2025年6月Linux Foundation→2026年3月にv1.0.0達成。もう仕様レースは終わってる
- AnthropicはA2Aに公式言及ゼロ。Claude Codeで開発者の手元を取りに行く戦略に振り切った
この記事でわかること
- MCP公式ロードマップ2026の中身(一次情報・URL付き)
- A2A Protocolの正確な仕様・主要パートナー・成熟度
- AnthropicとGoogleで戦線が分かれた理由
- 実装するときに参考になる日本語情報源
- 個人開発者が今すぐ取るべき3つのアクション
対象読者
- Claude Code / Cursor を実務で使っているエンジニア
- 自前でMCPサーバーを書いた、または書こうとしている人
- マルチエージェント運用に手を出している人
- 2026年の技術選定で「MCPの次」を見極めたい人
目次
- なぜいま「MCPの次」を考える必要があるか
- ① MCP 2026公式ロードマップの中身
- ② A2A Protocolとは何か
- ③ AnthropicのスタンスとMCP寄贈の意味
- ④ 実装するときに参考になる日本語情報源
- ⑤ 個人開発者が今すぐやるべき3つのアクション
- まとめ
なぜいま「MCPの次」を考える必要があるか
去年の今頃、MCPは「Anthropicが出した何か新しい仕様」程度の認識だった。それが今や日経xTECHの「ITインフラAWARD 2026」グランプリに選ばれている(出典)。1年半でここまで一気に来た。
ただ、自分でMCPサーバーをいくつか書いて、Claude Codeから複数のエージェントを叩く運用を試してみると、MCPの守備範囲を超える壁にすぐぶつかる。
[Agent] ←→ MCP ←→ [Tool / Data]
MCPはこの「1エージェント↔1ツール」の通信を標準化しただけ。実務で詰まるのは大体ここから先だ。
- エージェントAが調査→エージェントBに「これ書いといて」と渡したい
- 数日かかる長期タスクを、回線切断とか再起動を跨いで動かしたい
- 自社で作ったエージェントから、他社のエージェントを叩きたい
このあたりを真面目に作ろうとすると、自前でJSON-RPCもどきを書くか、LangGraph的なフレームワークに乗るかになる。けど標準化された仕様があれば一番ラク。それを担うのが2026年に入って急に注目され始めたA2A Protocolだ。
① MCP 2026公式ロードマップの中身
公式ロードマップ:blog.modelcontextprotocol.io/posts/2026-mcp-roadmap/(公開: 2026年3月9日)
優先4項目が出ている。これを「自分の使い方にどう響くか」で読み解いていく。技術用語で並べても「で、何?」になるから、誰向けのアップデートかをはっきり書く。
1. Transport Evolution: MCPサーバーを公開したい人向け
今のMCPサーバーって、セッションを内部で持つから1台でしか動かないんだよね。これがステートレス化されて水平スケール対応になる。あと.well-knownでサーバーの能力を自動広告できるようになる。
自分の使い方への影響:
- 自作MCPサーバーを社内・社外に公開したい人 → 本番運用が現実的になる。今までは「動いたらラッキー」だったのが「ちゃんと運用できる」になる
- ローカルでstdio経由でしか叩いてない人 → 当面は無関係
2. Agent Communication(Tasks): 長時間タスク派向け
Tasks primitive(SEP-1686)に**retry(自動再試行)とexpiry(結果の保持期限)**が入る。
これ、自前で書こうとすると地獄。「途中で切れたタスクどう復帰させる?」「結果いつまで持っとく?」を全部自前ハンドリングしてるエンジニア、けっこういるはず。標準仕様で来るのありがたい。
数分〜数時間かかる調査・コード生成・データ処理を投げる人は対象。短い同期リクエストしか使わないなら関係ない。
3. Governance Maturation: 仕様に貢献したい人向け
今は仕様提案(SEP)を出すとCore Maintainerのフルレビュー必須でボトルネック。これがWorking Group単位で独立採択できるようになる。
つまり「MCPコミュニティに何か提案したい」「特定領域のエキスパートとして関わりたい」人にはチャンスが広がる。普通のユーザーは結果として新仕様の追加が速くなる恩恵を受ける程度。
4. Enterprise Readiness: 大企業導入を視野にしてる人向け
監査ログ・SSO認証・ゲートウェイ動作・設定可搬性が来る。ただしコア仕様じゃなくて拡張として入る点に注意。「MCP本体使えば全部揃う」じゃなくて「拡張パックを入れて」になる。
金融・製造・公官庁のSI案件を抱えてる人には朗報。個人開発・スタートアップは当面無関係。
一言で
「個人の試運転から、本番のリモートサービスへ」をMCPは目指してる。
ロードマップ本文の原文:
"SEPs aligned with the priority areas above will move the fastest"
これが意味するのは、優先4項目に乗らないSEPは2026年中に来ない可能性が高いってこと。
よく見る誤解の訂正
- 「MCPがServer-as-agent化する」 → 公式に該当用語なし。Tasks primitive改善が中心
- 「2026年に新トランスポートが追加される」 → 既存(Streamable HTTP)の進化に集中、新規追加なし
- 「2026-XX-XX みたいな正式バージョン番号が決まってる」 → 未公表
ちなみに優先4項目から外れてるが議論は続いてる項目("On the Horizon")はこの辺:
- イベント駆動更新(Triggers)
- ストリーム/参照ベース結果型
- 認可強化
- 拡張エコシステム成熟
② A2A Protocolとは何か
ここが本題。A2Aを一言で言うと「他人が作ったエージェントを、中身知らずに頼める仕組み」だ。
例えば「翻訳エージェント(A社製)」「校閲エージェント(B社製)」「営業メール生成エージェント(自作)」が全部別フレームワークでも、A2Aを介せば統一された呼び出し方でやり取りできる。
仕様の基本情報
正式名称: Agent2Agent Protocol(略称: A2A)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表 | 2025年4月9日 Google Cloud Next |
| 通信プロトコル | HTTP, Server-Sent Events (SSE), JSON-RPC をベース。gRPC バインディング (a2a.proto) も提供 |
| 主要オブジェクト | Agent Card(JSONによるケイパビリティ広告), Task(ライフサイクル付き), Artifact(出力), Message/Parts(modality別コンテンツ) |
| 認証 | "OpenAPI の認証スキームと同等" のenterprise-grade authn/authz。v1.0でOAuth 2.0 device code / PKCE追加、implicit/password削除 |
| MCPとの関係 | 競合ではなく補完。公式に "A2A complements Anthropic's Model Context Protocol (MCP)" と明記 |
| 現在のバージョン | v1.0.0(2026年3月12日リリース) Linux Foundation配下で初の安定版 |
一次情報:
- 発表ブログ(2025年4月9日)
- GitHub a2aproject/A2A(★23.5k / Apache-2.0)
- Linux Foundation移管プレスリリース(2025年6月23日)
- CHANGELOG
設計5原則(公式)
- Embrace agentic capabilities — エージェントの能力を前提にする
- Build on existing standards — 既存標準(HTTP/JSON-RPC等)を活用
- Secure by default — デフォルトで安全
- Long-running tasks 対応 — 長期タスクが第一級
- Modality agnostic — テキスト・音声・動画問わない
5番目の「modality agnostic」は地味に効く。テキスト前提のチャットUIに引きずられず、音声/動画もオブジェクトで扱える設計になっている。
採用してる主要企業(50社超→LF移管時点で100社超)
公式発表で確認できる主要パートナー:
Atlassian, Box, Cohere, Intuit, LangChain, MongoDB, PayPal, Salesforce, SAP, ServiceNow, Workday
LangChainがいるのは納得。CohereがGoogleの標準に乗ってるのは少し意外。Salesforce/SAP/ServiceNow/Workdayあたりが揃ってるのが「これマジでエンタープライズ標準目指してるな」感ある。
そしてMicrosoftも公式SDKを提供している。Microsoft Agent Frameworkの Microsoft.Agents.AI.Hosting.A2A.AspNetCore でA2Aサーバーをホストできる(公式ドキュメント)。
つまりA2Aは「Google発・Linux Foundation管理・Microsoft採用」という構図ができている。Anthropicがいないのがポイント。
自分が触るべきタイミングの判断
ぶっちゃけ全員が今A2Aを触る必要はない。判断材料はこのへん:
| 状況 | A2Aを今触るべきか |
|---|---|
| 1人で1個のエージェントを動かしてる(Claude Codeで開発等) | 不要。MCPで足りる |
| 自分のサービスに外部エージェントを呼びたい | 触る価値あり |
| 複数エージェント連携を作ってる | 触る価値あり。自前プロトコル書くより楽 |
| 業務SaaS(Salesforce/kintone等)と連携したい | 状況次第。各社が公式提供を始めたら必須化していく |
③ AnthropicのスタンスとMCP寄贈の意味
ここが個人的に一番面白い。Anthropicって、A2Aに公式言及ゼロなんだよね。
確認した一次情報:
- Introducing MCP(2024-11-25)
- MCPをLinux Foundation配下AAIFに寄贈(2025-12-09)
- Multi-agent research system(2025-06-13)
- Dario Amodei "Machines of Loving Grace"
- Mike Krieger(CPO)AI Daily Brief Podcast(2025-12)
これ全部読み直したけど、A2Aの「A」の字も出てこない。
ただし、マルチエージェントの方向性は経営層が明言してる。Mike Krieger(CPO)が2025年12月のポッドキャストでこう言ってる。
「2025年は『assistants』、2026年は『collaborators』」
「taking action」「agent-to-agent interaction」「when agents will hire other agents and what that economy might look like」を重点領域として挙げる
「agents will hire other agents」って、A2Aがまさに目指してる世界観そのまんま。なのにGoogleが先に作ったA2Aには乗らない。
Anthropic engineering記事(2025年6月)でも、subagent協調の課題は明示してる。
"Currently, our lead agents execute subagents synchronously"
"subagents can't coordinate"
工学的問題として認識してるのに、解決手段としてA2Aに乗るとは言ってない。
自分の解釈
ここから先は推測だけど、辻褄が合うのはこういう絵だと思う。
- MCPはAnthropic自身がオーナーシップを手放した(2025年12月にLinux Foundationへ寄贈)。「ベンダー中立の標準」になった
- 同じことをGoogle主導のA2Aに対してはやらない
- AnthropicはClaude Codeという開発者体験の塊で勝負する
- エージェント間通信の標準化レースには参戦せず、製品の使いやすさで顧客を囲い込む戦略
要するに:
- Google: A2A標準化で生態系のハブを取りに行く
- Anthropic: Claude Codeで開発者の手元を取りに行く
主戦場が違う。どっちが勝つかはまだ分からないけど、自分はClaude Codeを毎日使ってるので、Anthropic路線が手元では勝つ気がしてる。生態系全体ではGoogleが取るかもしれない。
④ 実装するときに参考になる日本語情報源
「やってみよう」と思ったときに最初に当たれる日本語ソースを並べておく。実際に自分が漁ったやつ中心。
MCP関連で使える日本語記事
| 記事 | 主題 | こういうときに読む |
|---|---|---|
| Claude Codeで日常業務を爆速化(minorun365)(1,920いいね) | Claude Code + MCP業務自動化 | 「何ができるのか」を体感したい |
| MCPの仕組みを知りたい!(megmogmog1965)(181いいね) | MCP内部仕様・JSON-RPC解説 | プロトコルの中身を理解したい |
| MCPサーバを使ってみた・作ってみた(からあげ) | Cline+Docker、自作Git/GitHub MCP | 自作する前の全体像把握 |
| 自作MCPで社内API(kawabe0201) | 社内レガシーAPIをMCP化 | 業務システム連携の実装を始めたい |
| 問い合わせ対応 週8時間→30分(susie000720) | Notion×MCPナレッジBot | 社内Botを作りたい |
| Enterprise環境で動かない問題(namic) | プロキシ・証明書ハマり | 社内ネットワークで詰まったとき |
minorun365氏の記事が1,920いいねってのが日本のMCP需要の大きさを物語ってる。「Claude Codeすごいよ」記事はもう数で勝てない領域。
A2A関連の日本語記事(数が圧倒的に少ない)
これ以外の日本語の参考情報は限定的。実装するなら公式GitHubのa2aproject/A2AとMicrosoft Agent FrameworkのA2A連携ドキュメントを直接読むのが速い。
国内SIer・公式提供の動向
| ソース | 内容 |
|---|---|
| NTTデータ「AIエージェント時代のデータ活用」 | エージェント時代のデータ基盤論 |
| NECネッツエスアイ「AI Agent Ready」 | エンタープライズ向けエージェント導入 |
| サイボウズ公式 kintone MCPサーバー | kintone公式MCP |
サイボウズがkintone公式MCPを出してる時点で、日本でも標準化は進んでる。
実装で詰まるけど、日本語の解説が薄い領域
実際に手を動かすと以下で情報不足にぶつかる。心の準備として把握しておくと、ハマったときに「ああこれ日本語ないやつだ」と諦めて英語に行ける。
- A2AとMCPの併用設計
- マルチテナント本番運用(認可・レート制御・コスト管理)
- MCP可観測性(OpenTelemetry連携)
- プロンプトインジェクション対策の実装パターン
- Streamable HTTP移行・SSE廃止対応
ここに当たったら英語の公式ドキュメント・GitHub Issuesを当たるのが最短ルート。
⑤ 個人開発者が今すぐやるべき3つのアクション
ここまで読んで「で、自分は何すればいいの?」になってる人向けに、明日から動ける3手を置いておく。
アクション1: A2A Agent Cardを1個書いてみる
仕様を読み込む前に1個書くのが圧倒的に速い。Agent CardはJSONでエージェントの能力を広告する仕組みで、A2Aの中核概念。書けば「どういう抽象化なのか」が30分で体感できる。
git clone https://github.com/a2aproject/A2A.git
cd A2A
# READMEのGetting Started参照
アクション2: 既存のMCPサーバーをStreamable HTTPに移行する
2026年ロードマップ通り、stdio→Streamable HTTPの流れは確実。ローカルでしか動かないMCPサーバーを書いてる人は、いまのうちにリモート公開(OAuth付き)への移行を済ませると、複数クライアントから再利用できる。
ぶっちゃけ、stdio版のまま放置すると将来面倒なので、早めに移行しておく方が後で楽。
アクション3: Microsoft Agent FrameworkでA2A対応を試す
実務で.NET/Pythonを書いてる人は、Microsoft Agent Frameworkがすでに Microsoft.Agents.AI.Hosting.A2A.AspNetCore でA2Aサーバーをホスト可能。
公式ドキュメント: learn.microsoft.com/en-us/agent-framework/integrations/a2a
これでClaude Codeから外部のA2Aエージェントを呼び出す実験ができる。Anthropicが言及しないなら自分で繋げばいい。
まとめ
今日からやること
- 今日(5〜15分): MCP公式2026ロードマップを読む(原文)。優先4項目を頭に入れる
- 今週: A2A公式サンプルをclone→動かす。Agent Cardを1枚書いてみる
- 今月: 既存MCPサーバーをStreamable HTTPに移行。可能ならA2Aサーバーをホストして「Claude Code↔外部エージェント」連携を実験
この記事の結論を3行で
- MCPは標準化の戦いを終えた。次はエージェント間通信(A2A)と長時間タスク(Tasks)
- A2AはGoogle主導でv1.0.0達成。Anthropicは公式言及なし。標準化と製品体験で主戦場が分かれている
- 自分の使い方が「1エージェント+ツール」ならMCPの優先4項目だけ追えばよく、「複数エージェント連携」が視野に入るなら今のうちにA2Aを触っておくと、対応SaaSが増えてきたときに困らない
参考ソース:
MCP公式
A2A公式
Anthropic公式
- Introducing MCP(2024-11-25)
- MCP寄贈プレスリリース(2025-12-09)
- Multi-agent research system(2025-06-13)
- Dario Amodei "Machines of Loving Grace"
- Mike Krieger AI Daily Brief Podcast(2025-12)
日本語参考記事