裏切り度スコア三部作 まとめ
── AI時代の統計探索は、どこまで「意味」に踏み込めるのか
本記事は、Qiitaで公開した以下3本の記事を貫く思想・分析フレーム・得られた示唆を1本に統合したまとめ記事である。
- Part1:AI時代の新しい統計探偵 — E-Stat全探索は「意外性」を殺す
- Part2:「裏切り度スコア」は裏切られた — 隣接県差異が炙り出した医療史と福祉哲学
- Part3:「隣と違う」は見えた。次は「だから何をすべきか」 — 合成指標と高齢化ステージ
単なるデータ可視化やランキングではなく、
「なぜそうなっているのか」「何が分岐点だったのか」「では何をすべきか」
まで踏み込むことを目的としている。
1. 問題意識:E-Stat全探索が抱える構造的限界(Part1)
E-Statのような公的統計ポータルは、AI時代において極めて強力な武器である。
一方で、全探索 × ランキングという王道アプローチには、致命的な弱点がある。
- 平均的で「順当」な結果しか出ない
- 外れ値は見えるが「なぜ外れたか」は見えない
- 意外性よりも再確認が量産される
そこで導入したのが、**「裏切り度スコア」**という発想だった。
裏切り度スコアの核心
「一般に期待される傾向」から、どれだけ裏切っているか
これは単なる偏差値ではない。
説明変数(常識)と結果(現実)のズレそのものをスコア化する試みである。
この時点でのゴールは、
- 「優秀/劣後」を決めることではなく
- 「なぜここが裏切ったのか?」という問いを生むこと
だった。
2. 発見:裏切り度は“県単体”では語れなかった(Part2)
Part1で一定の手応えを得た裏切り度スコア。
しかし分析を進める中で、想定外の事実に直面する。
裏切り度スコアそのものが、裏切ってきた
隣接県差異という視点
県単体で見ても説明できないズレが、
「隣の県と比較した瞬間」 に急に意味を持ち始めた。
- 医療資源が似ているはずの隣県で結果が真逆
- 高齢化率が同程度なのにアウトカムが大きく異なる
この差を丹念に追うことで浮かび上がったのが、
- 約460年にわたる医療史の積み重ね
- 自治体ごとに異なる福祉思想・制度設計
という、短期データでは絶対に見えない長期構造だった。
ここで裏切り度スコアは、
- 異常検知ツール
- 仮説生成エンジン
として本領を発揮し始める。
3. 進化:見えた違いを「意思決定」に変える(Part3)
Part2までで、
- 違いは見えた
- 背景も見え始めた
しかし、実務・政策・ビジネスにおいて最も重要なのは次の問いである。
だから、何をすべきなのか?
合成指標 × 高齢化ステージ
Part3では、個別指標の寄せ集めから一歩進み、
- 複数指標を統合した合成指標
- 高齢化を割合ではなく ステージ(進行段階) として捉える視点
を導入した。
これにより、分析は次のレベルへ移行する。
- 過去の評価 → 未来の戦略
- 説明 → 選択肢提示
結果として、
- 今は悪く見えるが将来伸びる自治体
- 現状は良いが構造的リスクを抱える自治体
といった戦略コンサル級の示唆が抽出可能になった。
4. 三部作を貫く思想
この一連の分析で一貫しているのは、次の姿勢である。
- AIに探索は任せる
- だが、問いを作るのは人間
- 数字の背後にある「歴史・思想・制度」を疑う
裏切り度スコアは万能指標ではない。
しかし、
「そのズレは、偶然ではない」
と気づかせてくれる入口として、極めて強力だと考えている。
5. 今後の展開(予告)
今後は以下の方向を検討している。
- 分野横断(医療 × 教育 × 産業)での裏切り度分析
- 市区町村レベルへの展開
- ビジネス・政策提言向けテンプレート化
統計は、もう「眺めるもの」ではない。
意思決定のために、物語を持たせる時代に入っている。