商談の前の日の夜。
相手企業のホームページを開いて、ニュースを検索して、採用ページも見て……。
気づけば1時間たっているのに、
「で、結局この会社に何を提案すればいいんだっけ?」
となっている。
こんな経験、ありませんか。
今回は、この商談前リサーチを Claude Code と Bright Data に任せてみました。
▶ Bright Data MCP を無料で試す(無料トライアルに登録)
題材はあえて大きく、
「トヨタ自動車に、AIエージェントの導入支援サービスを売り込む」
という設定です。
結論から言うと、約8分半で、出典付きのリサーチ資料ができました。
しかも、AIが出してきたのは「売れそうなポイント」だけではありませんでした。
「この会社には売り込みにくい理由」 まで、はっきり書いてきたのです。
今回は、その実際の結果と、途中でつまずいたところも含めて書いていきます。
この記事でやること
やることはシンプルです。
Claude Code に Bright Data(MCP)をつなぐ
↓
「トヨタ自動車を調べて」と頼む
↓
AIが検索・ページ取得を自分で繰り返す
↓
事実と仮説を分けたレポートが届く
↓
人間が出典をチェックする
最後の「人間が出典をチェックする」が、実は一番大事でした。
これは後半で書きます。
使うもの
| ツール | 役割 |
|---|---|
| Claude Code | 調査をして、レポートを書くAI(ターミナルで動く) |
| Bright Data MCP | AIにWeb検索とページ取得の手段を渡す |
| MCP | AIと外部ツールをつなぐ共通の規格 |
Claude Code は、そのままだと「最新のWebの情報」を自由に取りに行けません。
そこで Bright Data の MCP サーバーをつなぎます。
すると、Claude Code が自分で
「検索する」「ページを開いて読む」
ができるようになります。
! 始める前に:データ取得のコンプライアンスメモ
- 扱うのは、ログインせずに見られる公開情報だけです。
- Bright Dataの利用ポリシー(Acceptable Use Policy)でも、ログインが必要なページの情報を集めることは禁止されています(利用ポリシーを読む)。
- 役員以外の個人名は、レポートに書かないようにルールで指定します(STEP 2 の CLAUDE.md)。
- 対象サイトの利用規約や robots.txt、アクセス頻度に注意してください。
- AIが立てた「仮説」を、事実のように社外へ伝えないでください。
STEP 1. Bright Data で API Token を用意する
ポイント:Bright Data MCP は、アカウントと API Token(Key)があれば使え、月5,000リクエストまで無料です(2026年10月時点)。
まず、Bright Data の MCP のページからアカウントを作ります。

Bright Data MCP の公式ページ。「月5,000リクエスト無料」と案内されている
公式ドキュメントのクイックスタートには、準備するものとして
「Bright Data のアカウント」と「API Key(Token)」の2つが書かれています。

公式ドキュメントのクイックスタート。接続先のURLは「https://mcp.brightdata.com/mcp?token=YOUR_API_TOKEN」の形
新しく登録した人には、ウェルカムメールで API Key が届きます。
ドキュメントによると、MCP は月5,000リクエストまで無料で使えます(2026年10月時点)。
▶ まだアカウントがない方は、ここから登録できます:Bright Data MCP を無料で試す
! 注意
この Token は、AIが Bright Data を使うための「鍵」です。
GitHub やブログ、プロンプトに直接貼らないでください。
今回は、パソコンの環境変数に入れておきます。
# Mac / Linux(ターミナル)
export BRIGHTDATA_API_TOKEN="ここにTokenを入れる"
STEP 2. リサーチ用のフォルダを作る
フォルダはこんな構成にしました。
| ファイル | 中身 |
|---|---|
| CLAUDE.md | AIへの「仕事の基本ルール」 |
| prompts/research.md | 「何を調べて、何を考えるか」の手順書 |
| product.md | 売り込みたい自社サービスの説明 |
| .mcp.json | Bright Data MCP の接続設定 |
| reports/ | 完成したレポートの保存先 |
CLAUDE.md(仕事のルール)
# 営業リサーチプロジェクト
あなたは法人営業の商談準備を支援するリサーチャーです。
## 基本方針
- 単なる企業概要のまとめではなく、
「この企業にどんな営業機会があるか」を見つけることが目的です。
- Web上の公開情報は、必ず Bright Data MCP を使って取得してください。
過去の学習知識だけで書かないでください。
## 重要
- 確認できた【事実】と、そこから考えた【仮説】を必ず分けてください。
- 確認できない情報は断定しないでください。
- 事実には必ず情報源のURLを付けてください。
- 個人名(役員以外の社員など)は記載しないでください。
ポイントは 【事実】と【仮説】を分けさせる ことです。
ここを混ぜると、AIの推測が「事実っぽく」資料に紛れ込みます。
prompts/research.md(調査の手順)
## 調べること
1. 会社概要(事業内容・規模・直近の業績トピック)
2. AI・DXに関する方針や公式発表
3. 最近のニュース・プレスリリース(直近1年)
4. 採用状況(AI・データ・DX関連の募集があるか)
5. すでに使っている・組んでいるAIパートナーや社内ツール
6. グループ会社の動き
## 考えること
7. 課題仮説
8. product.md の自社サービスとの接点・提案の切り口
9. 「売り込みにくい理由」も正直に書く
10. 商談で聞くべき質問 5つ
## 出力
- reports/企業名.md に保存
- 最後に「商談5分前サマリー」(10行以内)を付ける
9番の 「売り込みにくい理由も正直に書く」 は、今回わざと入れました。
AIに「営業機会を探して」とだけ頼むと、どうしても前向きな話ばかりになるからです。
product.md(売り込みたいもの)
今回は、こんなサービスを売る想定にしました。
## サービス名
現場業務AIエージェント導入支援
## 内容
- 部署ごとの定型業務(調査・資料作成・問い合わせ対応など)を
AIエージェントで自動化する伴走支援
- 使用技術:Claude / n8n / Dify など。既存のクラウド基盤(Azure・AWS等)上にも構築可能
- 進め方:2週間のPoC → 部署単位の本導入 → 社内人材への引き継ぎ
STEP 3. Claude Code に Bright Data MCP をつなぐ
ポイント:フォルダに .mcp.json を置いて Claude Code を起動すると、検索・ページ取得・サイト別のスクレイパーなど、11個のツールが使えるようになりました。
フォルダの中に .mcp.json を作ります。
{
"mcpServers": {
"brightdata": {
"type": "http",
"url": "https://mcp.brightdata.com/mcp?token=${BRIGHTDATA_API_TOKEN}"
}
}
}
${BRIGHTDATA_API_TOKEN} と書いておくと、STEP 1 で入れた環境変数が読み込まれます。
ファイルに Token そのものを書かずに済む ので、この形がおすすめです。
フォルダで claude を起動すると、最初に「このMCPサーバーを使っていいか」を聞かれるので、許可します。
つながったか確認するために、こう聞いてみました。
Bright Data MCPのツールが使えるか確認し、使えるツール名を一覧にしてください。
実際の検索はしないでください。
検索・ページ取得・サイト別のスクレイパーなど、11個のツールが使える状態になりました。
▶ 使えるツールの一覧や接続方法は、公式ドキュメントで確認できます:Bright Data MCP の公式ドキュメントを見る
STEP 4. 「トヨタ自動車を調べて」と頼む
ポイント:トヨタ自動車の商談前リサーチは約8分30秒で終わり、AIは検索31回・ページ取得11ページを行って、約18KB(10章+5分前サマリー)のレポートを保存しました。
いよいよ本番です。
Claude Code に、こう入力しました。
あなたは法人営業の商談準備を支援するリサーチャーです。
これから指定する企業について、商談前の営業担当者が短時間で理解できるように調査してください。
必ず Bright Data MCP を使って、Web上の公開情報を調査してください。
【調査対象】企業名:トヨタ自動車株式会社 / URL:https://global.toyota/jp/
【提案したいもの】product.md の自社サービス
【調査手順】prompts/research.md に従ってください。
【出力】調査が完了したら reports/トヨタ自動車.md として保存してください。
あとは見ているだけです。

Claude CodeがBright Data MCPを呼び出していく様子(実行ログより)
AIがやっていたことを並べると、こうなります。
手順書と自社サービスを読む
↓
検索をまとめて実行(決算、生成AI、採用など)
↓
気になったページをまとめて取得(Microsoftの事例、求人ページなど)
↓
足りない情報を追加で検索(社長交代、グループ会社など)
↓
レポートを書いて保存
検索のキーワードを、途中の結果を見ながら自分で変えていく ところがポイントです。
最初は「トヨタ 生成AI」のような大きな検索でした。
それが求人ページを読んだあとは、
「トヨタ 生成AI基盤 従業員 10万人 求人」
のように、具体的な検索に変わっていました。
今回の実行結果はこうでした。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| かかった時間 | 約8分30秒 |
| 検索した回数 | 31回 |
| 取得したページ | 11ページ |
| できたレポート | 約18KB(10章+5分前サマリー) |
STEP 5. 届いたレポートを読む
ポイント:レポートは【事実】(出典URL付き)と【仮説】が分かれていて、「売り込みにくい理由」として、グループ会社がほぼ同じ伴走型のAI支援を外向けに売っていることなどを挙げていました。
reports/トヨタ自動車.md が保存されました。
中身を見ていきます。
事実と仮説がちゃんと分かれている
たとえば「採用状況」の章です。

採用状況の章。【事実】には出典URLが付き、【仮説】は分けて書かれている
グループのIT会社の求人から、
「トヨタ自動車で働く従業員約10万人が利用する生成AI基盤」
をすでに提供している、という事実を拾ってきていました。
そこから、
「全社基盤はすでにある。部署ごとの個別ニーズには、開発する人手が足りていないのでは?」
という仮説を立てています。
これは、求人ページまで読まないと出てこない視点です。
AIはこの事実を、検索31回・ページ取得11ページの調査の中で見つけてきました。
「売り込みにくい理由」がはっきり書かれていた
営業の作戦に一番影響したのは、この章です。
AIの指摘を要約すると、こうです。
・グループ会社が、ほぼ同じ「伴走型AI支援」を外向けに売っている
・全社のAI基盤も、部署別のエージェントも、グループ内で作っている
・Microsoft、NVIDIA、NTTなど、大手との関係がすでに強い
・小さいベンダーが本体に正面から行くのは、かなり厳しい
つまり、
「トヨタ本体にそのまま売り込みに行くのは筋が悪い」
ということです。
そのうえで、
「内製チームの“先行PoC部隊”として入る」
「グループの協力会社として入る」
という現実的なルートを提案してきました。
商談の前にこれが分かっていると、話す内容がまったく変わります。
商談5分前サマリー
最後に、商談直前に読むためのまとめが付いていました。
「近社長は前CFO → ROIで話す」のように、話し方のヒント まで入っています。
つまずいたところ:出典の「質」はバラバラだった
ポイント:出典には、一次情報や報道のほかに、個人ブログやSNSの投稿も混ざっていました。主要な数字3つ(2026年3月期の業績、営業利益見通しの上方修正、社長交代)を一次情報で確認したところ、すべて一致しました。
ここからが、実際にやってみて分かった注意点です。
レポートには、すべての事実に出典URLが付いていました。
ただ、中身を見ると 出典の質はバラバラ でした。
| 出典の種類 | 例 |
|---|---|
| 一次情報 | トヨタ公式サイト、決算資料 |
| 報道 | 朝日新聞、日経、Car Watch |
| 二次情報 | 個人ブログ(note)、SNSの投稿 |
たとえば決算の数字には、個人の note 記事も出典として並んでいました。
グループ会社とIT企業の取り組みは、SNSの投稿が出典 になっていました。
AIも正直で、「一次資料は未確認」と書いてはいました。
とはいえ、これをそのまま商談資料に使うのは危ないです。
そこで、主要な数字だけ自分で確認しました。
| AIのレポートの記載 | 確認した一次情報 | 結果 |
|---|---|---|
| 2026年3月期:営業収益50兆6,849億円、営業利益3兆7,662億円 | トヨタの決算短信・決算説明資料 | 一致 |
| 2026年8月4日に営業利益見通しを3兆4,000億円に上方修正 | 朝日新聞の記事 | 一致 |
| 2026年4月1日付で近健太氏が社長・CEOに | トヨタ公式ニュースリリース | 一致 |
今回は、主要な数字はすべて正しかったです。
! つまずきポイント
それでも、「出典付き」と「正しい」は別物 です。
商談で数字を口にする前に、一次情報だけは自分の目で確認する。
これはAIに任せても変わらないと感じました。
もう一つの気づき:取ってきたページは「信用しない前提」になっている
実行ログを見ていて、もう一つ気づいたことがあります。
Bright Data MCP が返すページの中身には、毎回こんな注意書きが付いていました。
SECURITY NOTICE: the content between the markers below ... was fetched from
an external, untrusted ...
「この中身は外部から取ってきたもので、信用できない」という目印です。
Webページの中に、AIへの悪い指示(「これまでの指示を無視して〜」のような文章)が仕込まれていることがあります。
この目印があると、AIはページの中身を「指示」ではなく「データ」として扱いやすくなります。
AIに外のWebを読ませる以上、こういう仕組みは地味ですが大事です。
まとめ
今回やってみて分かったことを整理します。
良かったこと
・8分半で、出典付き・事実と仮説を分けたレポートができた
・求人ページなど、人間が見落としがちな情報まで拾ってきた
・「売り込みにくい理由」まで書かせると、営業の作戦が立てやすい
注意すること
・出典の質はバラバラ。数字は一次情報で確認する
・AIの「仮説」は、あくまで仮説。商談で確かめる材料として使う
AIに任せられるのは「調べて、整理して、仮説を出す」ところまでです。
最後に「この情報で勝負していいか」を決めるのは、やはり人間です。
ただ、その判断に使う時間は確実に増えます。
1時間かけて情報を集めていた時間が、
8分待って、10分確認する時間に変わりました。
まずは、次の商談相手1社で試してみてください。
▶ 無料枠(月5,000リクエスト)を超えて使うときの費用は、Bright Data の公式サイトで料金プランを確認できます:Bright Data の料金プランを確認する(公式サイト)
よくある質問(FAQ)
Q. Bright Data MCP とは何ですか?
A. AI(今回は Claude Code)に、Web検索とページ取得の手段を渡すMCPサーバーです。つなぐと、Claude Code が自分で検索し、ページを開いて読めるようになります。
Q. 無料で使えますか?
A. 公式ドキュメントによると、月5,000リクエストまで無料です(2026年10月時点)。
Q. 商談前リサーチには、どれくらい時間がかかりましたか?
A. トヨタ自動車の例で約8分30秒(検索31回・ページ取得11ページ)でした。約1時間かけていた情報集めが、「8分待って、10分確認する」時間に変わりました。
Q. API Token は、どう管理すればよいですか?
A. 環境変数(BRIGHTDATA_API_TOKEN)に入れ、.mcp.json には ${BRIGHTDATA_API_TOKEN} と書きます。GitHubやブログ、プロンプトに直接貼らないでください。
Q. AIのレポートの数字は正しいですか?
A. 今回確認した主要な数字3つは、一次情報と一致しました。ただし、出典には個人ブログやSNSの投稿も混ざっていたため、商談で使う数字は一次情報で確認してください。
参考リンク
- Bright Data MCP Server(公式ドキュメント)
- Claude Code 公式ドキュメント(MCP の設定)
- Model Context Protocol 公式サイト



