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Backlogの翻訳機能「Backlingo」を開発した話

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ストアから拡張機能をダウンロードして、無料でご利用いただけます。

Chrome/Edge

Firefox

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1. 課題と背景

オフショア開発を進める中で、Backlog(Nulab社)を活用したプロジェクト管理が、今や業界標準となっています。
直感的な操作性と洗練された機能により、国内外問わず欠かせないツールとして利用されています。

今も昔も変わらず、言語の違いによるコミュニケーションの問題に多くのチームが苦労しています。
日本語、英語、ベトナム語、中国語など複数言語が混在するBacklogのコメント欄は、円滑な意思疎通を妨げ、隠れたコストとして業務の生産性を下げ続ける要因となります。

翻訳の課題への取り組みは昔からされており、さまざまな工夫が多くのチームでなされてきました。翻訳サイトやAI翻訳を利用してコピペするのが、その代表例です。
しかし、技術がこれほど発展した現在においても、オフショア業務におけるコミュニケーションのストレスは完全には解消されていません。


2. 既存のアプローチと課題

これまでもBacklogの翻訳効率化は試みられてきました。その仕組みは主に「バックエンド翻訳」と「フロントエンド翻訳」の2つに分類できます。

バックエンド翻訳

Backlog APIとOpenAI APIを連携させ、自動翻訳を行う方式です。

  • 課題:
    • 翻訳の正確性がブラックボックス: 翻訳結果が正しいか判断できず、誤訳があってもすぐに手直しができません。
    • コスト負担: OpenAIなどのAPI利用料や、システム構築・運用のためのコストがかかります。
    • 機密情報の外部送信リスク: 実装によっては、機密情報が外部APIに送信されるリスクがあります。

フロントエンド翻訳

ブラウザ拡張やブックマークレットを通じてGoogle翻訳やDeepLを呼び出す方式です。導入が容易な反面、以下のような課題がありました。

  • 課題:
    • Markdown記法の保持が困難: メンション、コード、画像リンクなどが翻訳時に失われることがあります。
    • 機密情報の外部送信リスク: 翻訳サイトに機密情報を入力してしまうリスクがあります。
    • コメントが長文化: 翻訳文を含めることでコメントが長くなり、閲覧性が損なわれます。
    • 複数言語への同時翻訳が不可能: 同時に複数の言語に翻訳することはできません。

3. Backlingoの誕生

こうした課題を解決するために、Backlog専用に設計されたブラウザ拡張翻訳ツール 「Backlingo」 が開発されました。日々の翻訳業務を効率化することで、チーム全体の生産性を高め、より価値の高いコア業務に注力することを目的としています。

拡張機能紹介ページ

特徴

  • Markdownを保持したまま翻訳: メンション、コード、画像リンクなどの記法をそのまま維持して翻訳します。
  • 直接翻訳とプレビュー: コメントやWikiを直接翻訳し、その場でプレビュー表示。翻訳文の手直しや原文への復元、再翻訳も柔軟に行えます。
  • 最大5言語の同時翻訳に対応: 母国語を優先表示する設定も可能です。

利用方法

各ブラウザの拡張機能ストアからダウンロードして有効化するだけで、すぐにBacklogでの翻訳機能を利用できます。翻訳結果はBacklogのUIに自然に溶け込むように表示されます。

紹介動画


4. 機能と技術スタック

Backlingo は、以下の技術を用いて開発されています。

  • ブラウザ拡張: Chrome・Firefox拡張(Manifest V3)
  • DOM操作: MutationObserverによるBacklogのDOM解析と、UIへの翻訳結果の自然な挿入
  • 翻訳エンジン: Google Gemini
  • セキュリティ機能: 機密用語の置換処理

通信構造

Backlogページ ↔️ Chrome拡張 (ブリッジ通信) ↔️ Geminiタブ(翻訳処理)

これにより、BacklogのDOM構造を解析し、翻訳結果を自然な形でUIに組み込むことにこだわっています。


5. セキュリティについて

Backlingoは、以下の二重の仕組みでユーザー情報を保護します。

  1. Geminiの設定: 「アプリアクティビティ」をオフにすることで、翻訳履歴をGemini側に残さず、機械学習に利用されないようにします。
  2. 機密用語の置換: 拡張機能の「機密用語」設定により、コメント上の特定の用語を、翻訳前に置換して送信できます。(例: 日本銀行Company-A

これにより、「正確な翻訳をしながら機密情報は送らない」という課題解決の両立をしています。


6. リリースと反応

ベータテストの利用者からは、以下のようなポジティブなフィードバックが寄せられました。

  • 工数削減: 「翻訳作業時間が明らかに削減された。」
  • 理解度向上: 「母国語で確認できるため、理解度が増した。」
  • 誤訳減少: 「当事者同士が直接コミュニケーションできる場面が増え、レスポンスが速くなった。」
  • Markdown保持の利便性: 「Markdown保持機能が想像以上に便利で、今までの翻訳作業の負担の大きさを実感した。」

7. 今後の展望

Backlingoの展望

  • BacklogやGeminiのアップデートに追随し、継続的に更新を行います。
  • ユーザーからの改善提案や不具合報告を受け付け、機能改善を図ります。
  • 将来的には、他のLLMや業務ツールとの連携も検討します。

Nulab社への要望

Backlogをさらに強力なプラットフォームにするため、以下の点についてぜひご検討いただきたいです。

  • UIアップデートの事前告知: 拡張機能がUI実装に依存しているため、UI更新を伴うアップデートの予告があると大変助かります。
  • 外部拡張機能コミュニティへの公式支援: Backlogの盛り上がりをさらに加速させるため、コミュニティへの支援をお願いします。
  • 検索機能の強化:
    • コメント単位での検索・閲覧性向上: 検索結果画面でマッチ箇所をハイライト表示する機能があると、大幅に効率が上がります。
    • 検索マッチ精度の改善: 検索結果リストに、マッチした文字列の抜粋を表示していただけると、課題を開かずに内容を判断できるようになります。

8. まとめ

Backlingo のようなブラウザ拡張機能は、「小さな不便」を解消するツールかもしれませんが、それが多くの利用者の共通課題であれば、大きな価値を生み出すと信じています。

ブリッジSEの方々は、翻訳業務をツールに任せ、外国語のコミュニケーションに長けたディレクターや管理者、スペシャリストへとスキルアップを図る良い機会になるでしょう。

国際的なチームでBacklogをご利用の方は、ぜひBacklingoを試してみてください。皆様からのご意見やフィードバックをお待ちしております。
拡張機能紹介ページ・問い合わせ受付


BSM株式会社

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