本記事は 生成AIセキュリティ by ナレコム Advent Calendar 2024 の8日目の記事です。
本Advent Calendarは、国内で唯一の技術領域 責任あるAI の MVP受賞者 を中心に、生成AIを含めたAIやデータを企業が利活用するときに気をつけるセキュリティやガバナンスを中心に紹介します。
概要
2024年4月19日版(第1.0版)に発行されたAI事業者ガイドラインが2024年11月22日に新バージョン 第1.01版が発表されました。
本記事では、変化の早い生成AIに対して、AI事業者ガイドライン検討会で更新された新バージョンと旧バージョンの違いに注力して紹介いたします。
2つのバージョンの主な変更点は以下となっております。
1. リスクに関する認識の深化
2024年11月22日版では、AIの利用に伴う新たな社会的リスクについての認識がより具体的に示されています。特に、生成AIによる知的財産権の侵害や偽情報の生成といったリスクが強調され、これらに対する対策や考慮が求められています。これに対し、2024年4月19日版では、AIの進展とその影響についての一般的な説明が中心であり、リスクに関する具体的な言及は少なかったため、リスク管理の重要性がより明確にされました。
2. 人間の尊厳と多様性の強調
2024年11月22日版では、AIの利用において人間の尊厳を尊重し、多様な背景を持つ人々がそれぞれの幸せを追求できる社会の実現が強調されています。この理念は、AIの利用が単なる効率化や利便性の追求にとどまらず、社会全体の幸福に寄与することを目指すものであり、より包括的な視点が加わっています。一方、2024年4月19日版では、AIの技術的側面やビジネスモデルの再構築に焦点が当てられており、社会的な価値観に関する言及は相対的に少なかったため、より人間中心のアプローチが求められるようになっています。
これらの違いは、AI技術の進展に伴う社会的な課題に対する理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用を促進するための重要な指針となっています。
「はじめに」章での違い
追加内容は、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用を促進するための重要な指針となっています。
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新たな社会的リスクの具体化:
2024年11月22日版では、生成AIに関連する新たな社会的リスクが具体的に挙げられています。特に、知的財産権の侵害や偽情報・誤情報の生成・発信といったリスクが強調され、これまでのAIでは見られなかった問題が浮上していることが述べられています。 -
人間の尊厳と多様性の強調:
新バージョンでは、AIの利用において人間の尊厳を尊重し、多様な背景を持つ人々がそれぞれの幸せを追求できる社会の実現が強調されています。これにより、AIの利用が単なる効率化や利便性の追求にとどまらず、社会全体の幸福に寄与することを目指す姿勢が明確になっています。
第1部 「AIとは」章での違い
追加内容は、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用を促進するための重要な指針となっています。
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生成AIの普及とその影響:
新バージョンでは、生成AIの普及が特に強調されています。生成AIは、文章や画像などを生成する能力を持ち、これにより多くの人々がAIを様々な用途に容易に活用できるようになったことが述べられています。この技術の進展により、企業はビジネスモデルの再構築に取り組むようになり、個人も自らの知識をAIに反映させることで生産性を向上させる動きが加速しています。 -
新たな社会的リスクの認識:
2024年11月22日版では、AI技術の利用範囲の拡大に伴い、特に生成AIに関連する新たな社会的リスクが具体的に挙げられています。知的財産権の侵害や偽情報・誤情報の生成といったリスクが強調され、これまでのAIでは見られなかった問題が浮上していることが述べられています。このように、AIがもたらす社会的リスクの多様化と増大が進んでいることが明確にされています。
第2部 「AI により目指すべき社会及び各主体が取り組む事項」章での違い
A. 基本理念 の違い
追加内容は、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用を促進するための重要な指針となっています。
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多様性と包摂の強調:
新バージョンでは、多様な背景や価値観を持つ人々がそれぞれの幸せを追求できる社会の実現が強調されています。AIはこの理想に近づくための強力なツールとして位置づけられ、適正な開発と展開によって社会の在り方を変革する必要があるとされています。 -
持続可能な社会の構築:
2024年11月22日版では、AIの活用によってビジネスやソリューションを生み出し、社会の格差を解消し、地球規模の環境問題や気候変動に対応する持続可能な社会の構築が求められています。科学技術立国としての責務が強調され、AIによってその科学的・技術的蓄積を強化することが期待されています。
B. 原則 の違い
追加内容は、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用を促進するための重要な指針となっています。
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原則の再構成:
- 新バージョンでは、「人間中心のAI社会原則」を土台としつつ、OECDのAI原則などの海外の諸原則を踏まえて再構成されたことが強調されています。これにより、国際的な基準を意識した原則が明確に示されています。
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社会的リスクの低減:
- 各主体は、AI活用に伴う社会的リスクの低減を図るために、安全性や公平性を確保することが重要であるとされています。また、個人情報の不適正な利用を防ぐためのプライバシー保護や、AIシステムの脆弱性に対するセキュリティ確保が強調されています。
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透明性とアカウンタビリティの強化:
- 各主体は、システムの検証可能性を確保し、ステークホルダーに対して適切な情報を提供することで透明性を向上させ、アカウンタビリティを果たすことが求められています。これにより、AIシステムの信頼性が高まることが期待されています。
C. 共通の指針 の違い
追加内容は、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用を促進するための重要な指針となっています。
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法令遵守の強調:
新バージョンでは、AIシステム・サービスの開発・提供・利用において、憲法や知的財産関連法令、個人情報保護法などの関連法令を遵守することが強調されています。また、国際的な指針や検討状況にも留意することが重要であるとされています。 -
社会との連携の重要性:
各主体は、社会(政府・自治体及びコミュニティを含む)と積極的に連携し、社会の分断を回避し、全ての人々にAIの恩恵が行き渡るための教育・リテラシー確保の機会を提供することが期待されています。これにより、新たなビジネスやサービスの創出、持続的な経済成長の維持、社会課題の解決策の提示が促進されることが強調されています。 -
バリューチェーン全体での取り組み:
各主体は、AIの品質向上のためにバリューチェーン全体で連携し、AIシステム・サービスの特性、用途、目的及び社会的文脈を踏まえた自主的な取り組みが求められています。これにより、AIのリスクを最低限に抑えつつ、最大限の便益を享受することが期待されています。
第3部 「AI 開発者に関する事項」章での違い
追加内容は、AI開発者がより倫理的かつ責任ある開発を行うための重要な指針となっており、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まることを目指しています。
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リスク管理の強化:
新バージョンでは、AIライフサイクル全体にわたるリスクを特定、評価、軽減するための具体的な措置が強調されています。特に、導入前や市場投入前に適切なリスク管理を行うことが求められ、リスク軽減のための緩和策を文書化し、定期的に更新することが重要とされています。 -
透明性とアカウンタビリティの向上:
AI開発者は、AIシステムの開発過程や意思決定に影響を与えるデータ収集、使用されたアルゴリズムについて、第三者が検証できるように文書化することが求められています。これにより、透明性を確保し、アカウンタビリティを向上させることが期待されています。 -
イノベーションの機会創造への貢献:
AI開発者は、AIの品質や信頼性、開発方法論の研究開発を行い、持続的な経済成長や社会課題の解決に貢献することが期待されています。また、国際的な議論やコミュニティへの参加を通じて、AI開発の国際化や多様化を推進することも強調されています。
第4部 「AI 提供者に関する事項」章での違い
追加内容は、AI提供者がより倫理的かつ責任あるサービスを提供するための重要な指針となっており、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まることを目指しています。
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リスク対策の強化:
新バージョンでは、AI提供者がAIシステムを実装する際に、人間の生命、身体、財産、精神及び環境に配慮したリスク対策を講じることが強調されています。これにより、AIシステムがもたらすリスクを適切に管理し、社会に与える影響を最小限に抑えることが求められています。 -
透明性と説明責任の向上:
AI提供者は、AIシステムの動作状況や不具合の原因、対応状況などの情報を利用者に提供し、透明性を確保することが重要とされています。また、AIシステムの更新内容やその理由についても説明する必要があり、これにより利用者の信頼を得ることが期待されています。 -
サービス規約の整備:
AI提供者は、利用者向けにサービス規約やプライバシーポリシーを明示し、利用者がそれを遵守するよう促すことが求められています。これにより、利用者がAIシステムを適正に利用できるようにサポートします。
第5部 「AI 提供者に関する事項」章での違い
追加内容は、AI利用者がより倫理的かつ責任ある利用を行うための重要な指針となっており、AI技術の進展に伴う社会的課題に対する理解が深まることを目指しています。
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安全を考慮した適正利用の強調:
新バージョンでは、AI利用者がAIシステムを安全に適正に利用するための具体的な留意点が強調されています。特に、AIシステムの動作状況や出力結果に対する理解を深め、適切なデータの利用や不適切な入力を避けることが求められています。 -
透明性と説明責任の強化:
AI利用者は、AI提供者からのサポートを得て、AIの能力や出力結果について説明を求められた場合に適切に対応することが期待されています。これにより、利用者がAIの利用に関する理解を深め、より効果的な活用が可能となることが強調されています。 -
データの正確性とプライバシー保護の重要性:
AI利用者は、提供されたデータの正確性や最新性を確認し、個人情報を入力する際の留意点についても注意を払う必要があります。特に、個人情報の不適切な入力を避けるための注意喚起が行われています。
まとめ
2024年4月19日版(第1.0版)から2024年11月22日版(第1.01版)への更新では、AI事業者ガイドラインにおいて新たな社会的リスクの具体化や人間の尊厳、多様性の強調がなされました。特に、生成AIによる知的財産権の侵害や偽情報の生成といったリスクが明示され、これに対する対策が求められています。また、AIの利用が単なる効率化にとどまらず、社会全体の幸福に寄与することを目指す姿勢が強調されています。これにより、AI技術の進展に伴う社会的課題への理解が深まり、より倫理的かつ責任ある利用が促進されることが期待されています。