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OpenCVAdvent Calendar 2021

Day 3

OpenCVの新しい顔検出を試してみる

Last updated at Posted at 2021-12-02

この記事で紹介している新しい顔検出がOpenCV 4.8.0からアップデートされYuNet v2(202303)になります。
APIに変更は無いのでソースコードは修正の必要は無く、モデルを差し替えるだけでそのまま利用できると思います。ただし、各種閾値などのパラメーターは調整が必要になる可能性があります。
詳しくは該当のPull Requestを参照してください。
https://github.com/opencv/opencv/pull/23020
https://github.com/opencv/opencv_extra/pull/1038

この記事はOpenCV Advent Calendar 2021の3日目の記事です。

新しい顔検出/顔認識のAPI

OpenCVでは従来からHaar-like特徴量を用いたカスケード型分類器による顔検出やResNet10ベースのSSDモデル(OpenCV Face Detector)による顔検出が提供されてきました。

cascade = cv2.CascadeClassifier("haarcascade_frontalface_default.xml")
boxes = cascade.detectMultiScale(gray_image)
model = cv2.dnn_DetectionModel("opencv_face_detector.caffemodel", "opencv_face_detector.prototxt")
model.setInputSize(300, 300)
model.setInputMean((104.0, 177.0, 123.0))
_, _, boxes = model.detect(image)

OpenCV 4.5.4から新しく顔検出/顔認識のAPIが実装されました。

これらのAPIをサンプルプログラムとともに紹介していきます。
この記事ではまずYuNetによる顔検出を紹介します。長くなるのでSFaceによる顔認識は別の記事で紹介することにします。

YuNetによる顔とランドマークの検出

YuNetは非常に高速に動作する顔検出モデルです。
顔を囲むバウンディングボックスと右目、左目、鼻、右口角、左口角の5点のランドマークを検出することができます。
サンプルプログラム全体は以下で公開しています。

モデルを準備する

ここでは以下の学習済みモデルを利用します。リンクからダウンロードしてください。

モデルを読み込む

学習済みのモデルファイルを読み込み、顔検出器を生成します。
cv2.FaceDetectorYN.create()にはYuNetの学習済みのモデル、入力画像サイズを指定します。
入力画像サイズはあとから指定することもできます。そのため、ここでは暫定的に(0, 0)としています。
(第二引数は構成ファイルを指定しますが、ここではONNXフォーマットのモデルを利用するため不要です。)

# モデルを読み込む
face_detector = cv2.FaceDetectorYN.create("yunet.onnx", "", (0, 0))

NOTE

OpenCVのPython APIにはcv2.*_create()という名前のクラスのインスタンスを生成するAPIが出てきます。たとえば、cv2.AKAZE_create()cv2.SIFT_create()などですね。C++ APIではcv::Ptr<T>を返すcv::AKAZE::create()cv::SIFT::create()に対応します。
これらはドキュメントではcv2.*_create()という形で記述されていますが、C++ APIと対比してみると少し不自然ですね。
実はこれらのcv2.*_create()cv2.*.create()のようにも書くことができます。cv2.*_create()よりもcv2.*.create()の方がC++ APIのcv::*::create()に近く自然な形ですね。
このあたりは好みなのでどちらかお好きな方をご利用ください。

# どちらでもよい
face_detector = cv2.FaceDetectorYN_create("yunet.onnx", "", (0, 0))
face_detector = cv2.FaceDetectorYN.create("yunet.onnx", "", (0, 0))

入力サイズを指定する

cv2.FaceDetectorYN.setInputSize()で入力画像の大きさに合わせてサイズを設定します。ここでは単純に入力画像のサイズを指定しています。
ここで指定したサイズに合わせて出力結果のバウンディングボックスやランドマークの座標が出力されます。
高速化のため縮小した画像を入力をする場合は、出力結果に元画像のサイズと入力画像のサイズの比率を掛けて調整してください。

# 入力サイズを指定する
height, width, _ = image.shape
face_detector.setInputSize((width, height))

顔を検出する

cv2.FaceDetectorYN.detect()に画像を入力して顔を検出します。
戻り値は成功/失敗の結果(True/False)と顔検出の結果(バウンディングボックス、ランドマーク)です。
顔検出の結果(バウンディングボックス、ランドマーク)はリストで帰ってきます。
顔が検出できなかった場合はNone Objectで帰ってくるので、ここでは後ほどfor文で扱いやすいように空のリストを代入しています。

# 顔を検出する
_, faces = face_detector.detect(image)
faces = faces if faces is not None else []

顔を描画する

ここでは検出した顔のバウンディングボックスとランドマークを描画します。
顔検出の結果(バウンディングボックス、ランドマーク)は顔ごとにリストになっているので、for文で取り出していきます。
顔検出の結果は15要素のリストで、最初の4個の要素がバウンディングボックスのX座標、Y座標、幅、高さです。次の10個の要素がランドマークの右目、左目、鼻、右口角、左口角のX座標とY座標が順に並んでいます。最後の要素が信頼度です。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
バウンディングボックス ランドマーク 信頼度
X座標 Y座標 高さ 右目 X座標 右目 Y座標 左目 X座標 左目 Y座標 鼻 X座標 鼻 Y座標 右口角 X座標 右口角 Y座標 左口角 X座標 左口角 Y座標 信頼度
表1. 顔検出の結果

・バウンディングボックス

バウンディングボックスを取り出すには、list(map(int, face[:4]))のように最初の4個の要素をスライスしてint型にキャストします。
このように取り出したバウンディングボックスをcv2.rectangle()に指定して描画します。

box = list(map(int, face[:4]))

・ランドマーク

ランドマークを取り出すには、list(map(int, face[4:len(face)-1]))のように4つめの要素から最後の手前の要素まで10個の要素をスライスします。これも同様にint型にキャストしておきます。
このままでは扱い難いのでnumpy.array_split()でランドマークの数に分割します。これで[[x, y], [x, y], ...]のようにランドマークごとに分割できました。あとはfor文で1つずつランドマークを取り出してcv2.circle()で描画します。

landmarks = list(map(int, face[4:len(face)-1]))
landmarks = np.array_split(landmarks, len(landmarks) / 2)

・信頼度

信頼度を取り出すには、face[-1]のように最後の要素を取り出すだけです。
float型の値なので文字列に変換してcv2.putText()で描画します。

confidence = face[-1]
confidence = "{:.2f}".format(confidence)

すべての結果を取り出して描画するとこのようになります。

# 検出した顔のバウンディングボックスとランドマークを描画する
for face in faces:
    # バウンディングボックス
    box = list(map(int, face[:4]))
    color = (0, 0, 255)
    thickness = 2
    cv2.rectangle(image, box, color, thickness, cv2.LINE_AA)

    # ランドマーク(右目、左目、鼻、右口角、左口角)
    landmarks = list(map(int, face[4:len(face)-1]))
    landmarks = np.array_split(landmarks, len(landmarks) / 2)
    for landmark in landmarks:
        radius = 5
        thickness = -1
        cv2.circle(image, landmark, radius, color, thickness, cv2.LINE_AA)
        
    # 信頼度
    confidence = face[-1]
    confidence = "{:.2f}".format(confidence)
    position = (box[0], box[1] - 10)
    font = cv2.FONT_HERSHEY_SIMPLEX
    scale = 0.5
    thickness = 2
    cv2.putText(image, confidence, position, font, scale, color, thickness, cv2.LINE_AA)

実行結果

サンプルプログラムを実行すると以下のように顔が検出され表示されます。
YuNetは入力サイズによっては1.41[ms]で処理できるようです。めちゃくちゃ速いですね。1

yunet.jpg
図1. 実行結果 (FDDBより引用)


【おまけ】OpenCVの実装の気に入らないところ

新しい顔検出APIが追加されましたが、手放しで喜べるばかりではありません。
私が個人的に気に入らないところは以下の通りです。

  1. objdetectモジュールに実装されている
    cv::FaceDetectorYNはdnnモジュールの機能をYuNetによる顔検出用にラップして実装されています。
    dnnモジュールではそのようなタスク別のAPIをHigh Level APIと呼んでおり、すでにオブジェクト検出やクラス分類などがdnnモジュールに実装されています。
    しかしながら、cv::FaceDetectorYNはobjdetectモジュールに実装されています。個人的にはこれをdnnモジュールに移行してHigh Level APIとして実装し直すべきだと思います。

  2. 出力結果がユーザーフレンドリーではない
    cv::FaceDetectorYN::detect()の出力結果はバウンディングボックスとランドマークと信頼度が一緒になって帰ってきます。
    この記事で紹介したようにユーザーが1つ1つ結果を取り出さなくてはならずユーザーフレンドリーではありません。
    dnnモジュールに実装されているHigh Level APIでは、たとえばオブジェクト検出ならクラスID、信頼度、バウンディングボックスが別のリストになって帰ってきます。
    これは結果を取り出すのが簡単でユーザーに優しい設計です。どうせラップするならこれくらいしてほしいですね。

このあたり時間があったら実装してPull Requestを投げる予定なのでOpenCV 5.xではこの記事の内容は変わってるかもしれないです。

  1. https://github.com/ShiqiYu/libfacedetection#cnn-based-face-detection-on-intel-cpu

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