はじめに
Salesforce開発でも、自然言語からコードやアプリを作る「Vibe Coding」という言葉を見かけるようになりました。
その文脈で登場しているのが、Salesforceの Agentforce Vibes です。
名前だけを見ると、Agentforceで業務エージェントを作る機能そのものにも見えます。ですが、ざっくり捉えると、Agentforce Vibesは Apex、LWC、Salesforceメタデータなどの開発作業を支援するAIコーディング機能 です。
この記事では、Agentforce Vibesとは何なのか、従来のEinstein for Developersと何が違うのか、Agentforce Vibes IDEやSalesforce DX MCP Serverとどう関係するのかを整理します。
本記事は2026年6月時点の公開情報と個人の整理メモです。利用可能な組織、権限、料金、利用モデル、画面や機能名は変わる可能性があります。最新条件は必ず公式ドキュメントで確認してください。
まず用語を分ける
Agentforceまわりは名前が似ているので、最初にざっくり分けておくと理解しやすいです。
| 用語 | ざっくりした意味 |
|---|---|
| Agentforce | 顧客対応や社内業務を実行するAIエージェントを構築・運用する仕組み |
| Agentforce Vibes | SalesforceアプリやAgentforceを開発する人向けのAIコーディング機能。VS Code拡張機能として提供される |
| Agentforce Vibes IDE | ブラウザで利用できるクラウドホスト型の開発環境。旧Code Builder |
| Salesforce DX MCP Server | Salesforce CLIや組織、メタデータなどにAIツールからアクセスするための接続口。2026年6月時点ではBetaとして案内されている |
つまり、Agentforce Vibes自体が業務を実行するエージェントというより、業務エージェントやSalesforceアプリを作る側を助けるツール と捉えると分かりやすそうです。
Agentforce Vibesとは
Agentforce Vibesは、Salesforce開発向けのAIコーディング機能です。
公式ドキュメントでは、Agentforce Vibes extensionはVS Code拡張機能として提供され、VS Code Marketplace、Open VSX、Salesforce Extension Pack、Agentforce Vibes IDEから利用できると説明されています。
単に「Apexを補完する」「LWCのコードを提案する」だけではなく、プロジェクトの内容やSalesforce組織の文脈を踏まえながら、自然言語で開発作業を進める方向に寄っています。
たとえば、次のような作業を支援するものとして整理できます。
- Apexコードの生成
- LWCの生成や補完
- Apexユニットテストの生成
- プロジェクトの解析
- ドキュメント改善
- 複雑な開発ワークフローの実行
- Salesforce CLIや組織情報を使った作業
従来のコード補完よりも、計画、実装、テスト、コマンド実行、デプロイまでを含む開発ワークフロー全体 を自然言語から扱うイメージです。
Einstein for Developersとの関係
個人的には、Agentforce Vibesを理解するときは、Einstein for DevelopersのDev Assistantから何が広がったのかを見ると整理しやすいです。
ただし、これは完全に別製品を横並び比較するというより、Einstein for Developers系の機能がAgentforce Vibesとして進化・リブランドされたもの と見た方が正確です。実際、公式ドキュメントのURLには einstein-for-devs が残っており、VS Code Marketplace上の拡張機能IDも従来の流れを引き継いでいます。
| 観点 | 従来のDev Assistantのイメージ | Agentforce Vibes |
|---|---|---|
| コード補完 | できる | できる |
| コード説明 | できる | できる |
| プロジェクト理解 | 限定的 | プロジェクト文脈を利用 |
| コマンド実行 | 主目的ではない | ワークフロー内で実行可能 |
| 複数工程の実施 | 限定的 | 計画から実装まで支援 |
| デプロイ | 基本的に利用者が操作 | ワークフロー内で支援 |
ポイントは、コードを1つ生成して終わりではなく、開発者と一緒に作業を進める相手 に近づいているところです。
たとえば、次のような依頼が考えられます。
取引先に関連する商談を一覧表示する
Lightning Web Componentを作成してください。
さらに続けて、次のような依頼もできます。
Apexテストも作成し、
テストを実行してエラーがあれば修正してください。
この場合、期待するのは単なるコード生成ではありません。どのファイルを作るか、Apexが必要か、テストはどう書くか、Salesforce CLIで何を実行するかまで含めて、開発作業を進めることになります。
どう動くのか
Agentforce Vibesの面白いところは、一般的な生成AIにApexを書かせるだけではなく、Salesforceの開発ツールや組織情報につながる点です。
ざっくり表すと、次のような関係です。
利用者は自然言語で「こういうLWCを作って」「テストも用意して」「デプロイして」と依頼します。
Agentforce Vibesは、その依頼をもとにプロジェクトを読み、必要に応じてSalesforce DX MCP ServerやSalesforce CLIを通じて、組織、メタデータ、コマンド実行へアクセスします。
この「AI」と「Salesforce開発ツール」をつなぐ部分が、単なるチャット型コード生成との違いになりそうです。
なお、Salesforce DX MCP Serverは、2026年6月時点ではBetaとして案内されています。記事や社内メモで扱う場合は、正式版前提で運用設計しない方がよさそうです。
Agentforce Vibes IDEとは
Agentforce Vibes IDEは、ブラウザで利用できるクラウドホスト型の開発環境です。旧Code Builderと考えると、以前からSalesforceのブラウザ開発環境を追っていた人にはつながりやすいと思います。
公式ドキュメントでは、Agentforce Vibes IDEはブラウザ上でVisual Studio Codeの柔軟性を提供するWebベースのIDEと説明されています。Salesforce Extensions、Salesforce CLI、GitHub連携が含まれ、Agentforce Vibes拡張機能もプリインストールされています。
整理すると、次のような特徴があります。
- ブラウザで利用できる開発環境
- Salesforceの設定画面などから起動する想定
- Salesforce組織と接続した状態で開発できる
- Salesforce Extensions、Salesforce CLI、GitHub連携が含まれる
- Agentforce Vibes拡張機能がプリインストールされている
- ローカル環境構築の負担を減らせる
一方で、Agentforce Vibes自体はVibes IDE専用ではありません。デスクトップ版VS Codeでも、Salesforce Extension Packなどを通じて同じAgentforce Vibes拡張機能を利用できます。
利用条件と課金まわり
2026年6月時点の記事としては、利用条件と課金まわりにも触れておいた方がよさそうです。
対応エディション
公式ドキュメントでは、Agentforce Vibes extensionはDeveloper、Enterprise、Partner Developer、Performance、Unlimited Editionsで利用可能とされています。一方、Group、Professional、Essentials Editionsでは動作せず、EU Operating ZoneとGovernment Cloudでは利用不可とされています。
ただし、EU Operating Zoneに該当しない通常のEU組織は標準条件で利用可能とされているため、「EUは一律不可」という意味ではありません。ここも2026年6月時点の情報として確認しておくのがよさそうです。
課金体系
公式のBilling Transitionページでは、2026年6月1日からDeveloper Edition以外の組織では無料の限定アクセスが終了し、継続利用にはFlex CreditsまたはUnmetered Platform Developer and Admin AI User permission set licenseが必要になると案内されています。
Usage and Billingページでは、メータード利用、アンメータード利用のどちらでも、組織でEinsteinを有効化しておく必要があると説明されています。
モデル構成も変わっています。Billing Transitionページでは、2026年4月13日にClaude Sonnet 4.5がProモデルになり、GPT-5 miniがフォールバックモデルになったと説明されています。以前はGPT-5が1日50リクエストまたは1MトークンのProモデルとして扱われていたため、ここは古い情報と混ざりやすいところです。
同ページでは、Agentforce Vibes ChatはProモデルから開始し、上限に達するとCoreモデルへフォールバックする二段階構成として説明されています。2026年6月時点では、ProがClaude Sonnet 4.5、CoreがGPT-5 mini、Inline AutocompleteがGPT-4.1という整理で読むのがよさそうです。
ただし、Usage and Billingページの表では、UnmeteredのIncludedモデルとしてGPT-5、PremiumモデルとしてClaude Sonnet 4.5 / Claude Sonnet 4.6が記載されています。また、Flex Creditのメータード利用ではGPT-5、Claude Sonnet 4.5、Claude Sonnet 4.6、Claude Opus 4.5が対象として挙げられています。Billing TransitionページのGPT-5 mini表記とは少し見え方が異なるため、モデルや利用条件を確認するときは、複数の公式ページを見比べるのが安全そうです。
もう少し正確に書くと、メータード利用ではAgentforce Platform Developer and Admin permission set licenseとAgentforce Developer and Admin Tools permission set、アンメータード利用ではUnmetered Platform Developer and Admin AI User permission set licenseが関係します。
Flex Creditsは、選択したLLMに応じたPrompt Usage Typeにもとづいて消費され、2,000トークン単位でカウントされると説明されています。Usage and Billingページでは、Agentforce Vibesの利用にGenerative AIとData Cloudが関係し、利用前にライセンスとクレジット計画をSalesforce担当者と確認することも推奨されています。
Developer Edition組織については、限定的な無料アクセスが残ります。公式のUsage and Billingページでは、110リクエストまたは1.5Mトークンのどちらかに達するまで、かつ初回利用後1か月の制限で、更新されないと説明されています。
なお、Billing Transitionページでは、5月31日までは月次枠、6月1日以降はDeveloper Edition向けの限定無料アクセスが残るものの、組織のライフタイム上限として更新されない、という流れで説明されています。読む時点でどの条件が適用されるかは確認が必要です。
このあたりは読者が実際に試すときにかなり重要です。記事を読んだ時点で条件が変わっている可能性もあるため、検証前に公式のBillingページを確認するのが安全です。
どんなことに使えそうか
実際に試すなら、いきなり大きな業務アプリを作るよりも、小さなLWCから始めるのがよさそうです。
たとえば、検証用の依頼としては次のくらいが扱いやすいと思います。
取引先責任者を検索し、
氏名、メールアドレス、取引先名を表示する
Lightning Web Componentを作成してください。
Apexは必要な場合のみ作成し、
テストコードも用意してください。
この題材なら、LWC、Apex、テスト、権限、デプロイをひととおり確認できます。
確認観点は次のようにしておくと、単なる「できた・できない」ではなく、開発支援ツールとして評価しやすいです。
- 実装前に計画を提示したか
- どのファイルを作成したか
- Apex、LWCの内容は妥当か
- CRUD/FLSが考慮されているか
- テストが成功したか
- デプロイまで実行できたか
- 手動修正がどの程度必要だったか
特にSalesforce開発では、CRUD/FLS、共有設定、プロファイルや権限セット、Apexテストなどを避けて通れません。AIが動くコードを生成したとしても、それが組織のセキュリティ要件に合っているかは別問題です。
使うときの注意点
Agentforce Vibesは便利そうですが、AIに任せる範囲が広がるほど、開発者側の確認も重要になります。
最低限、次の点は意識したいです。
- AIが生成したコードは必ずレビューする
- 本番組織をデフォルト接続先にしない
- 作業前にGitへコミットして差分を追えるようにする
- Apexテストを省略しない
- CRUD/FLSや共有設定の考慮を確認する
- 意図しないメタデータ変更がないか確認する
- 長い会話で前提が混ざっていないか確認する
- 利用量、プラン条件、データの扱いを確認する
特に、AIがコマンド実行やデプロイまで扱える場合は、便利さとリスクが同時に上がります。
「AIに作ってもらう」だけでなく、AIが何を変更したのかを開発者が説明できる状態にする のが大事だと思います。
まとめ
Agentforce Vibesは、Salesforce開発向けのAIコーディング機能です。
従来のコード補完だけではなく、プロジェクトの解析、実装計画、ApexやLWCの生成、テスト、コマンド実行、デプロイなど、開発ワークフロー全体を自然言語から支援する方向に進んでいます。
また、Agentforce Vibes IDEは旧Code Builderにあたるブラウザ開発環境で、Agentforce Vibes拡張機能がプリインストールされています。一方、デスクトップ版VS Codeでも同じ拡張機能を利用できます。
一方で、生成されたコードやメタデータをそのまま本番環境へ適用してよいわけではありません。Gitによる変更管理、コードレビュー、テスト、権限確認など、これまでのSalesforce開発で必要だった工程は引き続き重要です。
「開発者の代わりにすべて作るツール」というより、Salesforce固有の文脈を理解して一緒に作業するAI開発パートナーとして見るのがよさそうです。
日本語情報はまだ多くないので、Agentforce Vibes、Agentforce Vibes IDE、Salesforce DX MCP Serverの関係を整理するだけでも、Salesforce開発者向けの記事として価値がありそうです。









