1.2棒(Bar)と梁(Beam)の違い
1.2.1 問題提起
有限要素法で骨組みをモデル化するとき、棒要素と梁要素のどちらを使うべきか迷うことがあります。
材料力学では別のものとして学んだはずでも、実際に解析モデルを作ろうとすると違いが少し分かりにくいです。
ここでは、棒要素と梁要素の違いを、どんな変形を表現できるのかという観点から整理します。
1.2.2 結論の先出し
ざっくり言うと、軸方向の引張りや圧縮だけを見たいなら棒要素、たわみや曲げまで見たいなら梁要素です。
違いは、どちらが高機能かというより、表現したい変形が何かにあります。
棒要素は軸力中心の部材向きで、梁要素は曲げを受ける部材向きです。
1.2.3 それぞれの定義と自由度
棒要素と梁要素の定義と自由度をまとめると表1.2.1のようになります。
表1.2.1 棒要素(Bar)と梁要素(Beam)の定義と自由度
1.2.4 典型的な使い方
棒要素は、部材が主に軸力だけを負担する構造に向いています。
代表的なのはトラス構造で、各部材が引張りと圧縮を受け持つような場合に使いやすいです。
建物のブレースやワイヤーのように、曲げ剛性をほとんど考えない部材にもよく使われます。
棒要素は節点でモーメントを伝えないので、曲げよりも軸力分布を知りたい問題に向いています。
梁要素は、部材が軸力に加えて曲げモーメントやせん断力も負担する構造に向いています。
たとえば、単純梁や片持ち梁、建物の梁や柱、ラーメンフレームなどです。
これらの構造では部材がたわみ、接合部でも回転やモーメントの影響が効いてくるため、回転自由度を持つ梁要素で表現するのが自然です。
たわみや曲げモーメント図を見たいときは、梁要素を使うのが基本です。
表1.2.2に棒要素(Bar)と梁要素(Beam)の典型的な使い方を示します。
表1.2.2 棒要素(Bar)と梁要素(Beam)の典型的な使い方
| 構造の例 | 向く要素 | 理由 |
|---|---|---|
| トラス橋 | 棒要素 | 軸力主体 |
| 建物のブレース | 棒要素 | 曲げを無視しやすい |
| 片持ち梁 | 梁要素 | 曲げが支配的 |
| 単純梁 | 梁要素 | たわみを扱う |
| ラーメン骨組 | 梁要素 | モーメント伝達あり |
1.2.5 よくある誤用例
棒要素と梁要素は、見た目がどちらも細長い部材を表すため、形だけ見て選んでしまいやすいです。
ですが、実際には何を伝える要素なのかが大きく違うので、選び方を間違えると結果の意味も変わってしまいます。
表1.2.3によくある誤用例をまとめてみました。
表1.2.3 よくある誤用例
要素は見た目ではなく、その部材にどんな力を負担させたいかで選ぶのが基本です。
迷ったときは、まずその部材が軸力だけの世界か、曲げまで含む世界かを考えると整理しやすくなります。
1.2.6 まとめとチェックリスト
棒要素と梁要素は、どちらも細長い部材を表すための要素ですが、表現できる変形が違います。
棒要素は軸力を対象とする要素で、梁要素はそれに加えて、たわみや曲げも表せます。
つまり、見た目が似ていても、何を知りたいかによって選ぶべき要素は変わります。
表1.2.4に確認したいことと向いているについてまとめてみました。
表1.2.4 確認したいことと向いている要素
| 確認したいこと | 向いている要素 |
|---|---|
| 軸力を見たい | 棒要素 |
| たわみを見たい | 梁要素 |
| 曲げモーメントを見たい | 梁要素 |
| トラスを表したい | 棒要素 |
| 梁や柱を表したい | 梁要素 |
| 部材の曲げに伴う回転を表したい | 梁要素 |
最初は迷いやすいですが、軸力だけの問題か、曲げまで含む問題かで考えるようにすると、棒要素と梁要素の使い分けはかなり整理しやすくなります。
まずは単純なトラスと単純梁をそれぞれ一度モデル化してみると、違いが感覚としてつかみやすいです。
次回予告
次回はトラス構造について説明します。
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