はじめに
現役の高校教員(数学)です。エンジニアではありません。
小論文の自習用ワークシートを、Claude Codeと一緒にWordで作りました。生徒用は両面2枚、教員用は1枚。4回分で計8ファイルです。
Claudeは「全ファイル、Word上で実測して2ページ/1ページに収まりました」と報告してきました。数字もそろっていて、完璧に見えました。
ところが、私が何気なく聞いた一言で、その「完成」が実は使えないものだったことが分かりました。
この記事は、AIの「収まりました」をどう受け取るか、という話です。
生徒の個人情報は含みません。教材の題材や出典も書きません。
環境
- macOS
- Microsoft Word(デスクトップ版)
- Claude Code
作ったもの
| 種類 | 中身 | ページ |
|---|---|---|
| 生徒用(自習) | 型の説明+練習問題+原稿用紙+セルフチェック表 | 両面2枚 |
| 教員用 | 解説と評価の観点 | 1枚 |
原稿用紙は、Wordの表で作っています。1ブロックが20マス×10行で200字。600字の課題なら3ブロック、400字なら2ブロック、100字なら1ブロックです。
1. 「2ページに収める」が制約だった
生徒用は「両面1枚(2ページ)」にしたいという条件を、最初に伝えていました。プリントの枚数が増えると、印刷も配布も面倒だからです。
ところが最初に出来上がったものを実測すると、600字の課題2本だけ3ページにはみ出していました。
Claudeはここで、原稿用紙のマスを縮めて2ページに収めました。マスの高さを6.3mmまで詰めたそうです。
その後、Wordで全8ファイルのページ数を実測し、「生徒用は全部2ページ、教員用は全部1ページ」と報告してくれました。
2. 私が聞いた一言
その報告を受けて、私はお礼を言い、ついでにこう聞きました。
原稿用紙って生徒が書けるくらいの幅かな?
深い意図はありません。ふと気になっただけでした。
Claudeの答えは、こうでした。
正直に言うと、600字版は2ページに収めるためにマス目を6.3mmまで縮めてて、これは書くには少し窮屈やと思う。市販の原稿用紙は大体7〜8mm。
ページ数という条件を満たすために、書きやすさを黙って犠牲にしていました。 報告の中には、そのことは一言も書かれていませんでした。
「収まりました」は嘘ではありません。実測もしています。でも、何と引き換えに収めたのかが抜けていました。
3. 直した中身
600字の2本だけ、マスの高さを7.6mmに戻しました。市販の原稿用紙と同程度で、他の回と同じ大きさです。
代わりに、ページ数が2ページから3ページに戻りました。
| マスの高さ | ページ数 | |
|---|---|---|
| 600字(2本) | 6.3mm → 7.6mm | 2 → 3 |
| 400字 | 7.6mm | 2 |
| 100字 | 8.0mm | 2 |
「1枚に収まる」を諦めました。生徒が書けない原稿用紙では、教材として意味がありません。
修正後は、Wordでページ数を測り直し、PDFに書き出して目視でも確認しました。
4. 実測がうまくいかなかった話
ここでもう1つハマりました。ページ数の実測は、AppleScriptでWordを操作して行っています(前に書いたWordのPDF化と同じ仕組みです)。
これが、終盤になって不安定になりました。
- 修正したはずなのに、古い内容を数えているのではと疑う場面があった
- 応答しなくなる/タイムアウトする
対処は、Wordを完全に終了してから開き直して測ることでした。古い文書をWordが持ったまま数えている可能性を切るためです(原因を特定できたわけではありません)。
なお、この作業の後、フォルダには ~$ で始まるWordのロックファイル(一時ファイル)がいくつも残っていました。Wordを自動操作すると、こういう残骸が出ます。
もう1つ、フォルダの整理が必要でした。方針を変える前に作った古い版の8ファイルが、消されないまま残っていたのです。中身を確認してから削除しました。AIに作らせると、ファイルはどんどん増えます。整理は、こちらから言わないとやってくれません。
5. ハマったポイントまとめ
| ハマり | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 600字の課題だけ3ページにはみ出した | マスの大きさに対して分量が多かった | 最初は詰めて対処(これが次の問題の元) |
| 「収まりました」と報告されたが書きにくい | ページ数を優先し、マスを6.3mmまで縮めていた | 市販品と比べて7.6mmに戻し、3ページを許容 |
| 実測値が信用しきれない | 古い文書を数えている可能性(原因は未特定) | Wordを完全終了してから開き直して測る |
| 応答しなくなる | Wordの自動操作が不安定 | 再起動して再試行。上限を決めて深追いしない |
| 古い版のファイルが残っていた | 方針変更時に消していなかった | 内容を確認してから削除 |
6. AIから「完成しました」と受け取るとき、聞く3つのこと
今回の件で、AIの成果物を受け取るときに聞くことが決まりました。教材に限らず、AIが作ったものなら何にでも使えます。
- 「何を優先して、何を犠牲にしましたか?」と聞く。 制約が複数あると、AIはどれかを黙って削って全部満たしたように報告します。「収まった」「動いた」の裏に、削ったものがないか確認する
- 人が使う寸法や量は、現物か市販品と比べる。 「条件を満たした」ことと「使える」ことは別です。字の大きさ、マスの広さ、文字数など、人の手や目が関わる数値は、基準となる現物と並べて見る
- 測った条件を確認する。 「実測した」と言われても、どの環境で、どの状態のファイルを測ったのかで結果は変わります。今回のように、古いファイルを測っていたことも普通にあります
今回、1と2は、私がふと聞いた一言で発覚しました。聞かなければ、6.3mmの原稿用紙をそのまま配っていました。
おわりに
AIの報告は、たいてい間違っていません。ただ、都合の悪いことは書かれません。書かなかったのではなく、聞かれなかったから答えなかった、という感じです。
なので今は、「完成しました」と言われたら、「何を犠牲にした?」と1回聞くようにしています。1回で済みます。
これで教材の原稿用紙は、ちゃんと書けるマスになりました。3ページのプリントになりましたが、書けない1枚より、書ける3枚の方が授業では役に立ちます。