この記事は、特定企業に依存しない一般的な「ロッカー運用 × 配送システム × ステータス同期」の事例として再構成しています。実在企業を特定できる情報は一切含まれていません。
はじめに
あるEC系企業のロッカー運用チームに所属していた頃の話です。
配達員アプリに 「荷物回収指示」 が頻繁に届くという問い合わせが多発しました。
しかし、配達員さんから返ってくる言葉はほぼ同じでした。
「ロッカーには荷物が無いのに、回収指示が来るんです…」
チームの一部では
「荷物がなければ無視してください」
という処理で片付けられていました。
しかしこれは危険です。
“誤通知の放置=バグ検知システムの死” を意味します。
この記事では、
- なぜ誤った回収指示が送られていたのか
- どうやって不整合を見抜いたのか
- なぜ現場では気づけなかったのか
を、技術的な視点から解説します。
1. 発端:配達員からの問い合わせ
問い合わせ内容はどれも同じでした。
- 「ロッカーに荷物が無いのに、回収指示が来る」
- 「空っぽなのに何度も回収通知が届く」
- 「行っても意味がないので困る」
しかしサポートチームでは深刻に扱われず、
- 「荷物がないなら無視してください」
という“運用対応”で終わっていました。
僕は直感的に「おかしい」と感じました。
2. ステータス履歴を追跡すると、不自然な挙動が発覚
ロッカー・配送管理・顧客アプリの
ステータス履歴を丁寧に確認 していくと、明らかな不整合を発見しました。
🟥 実際に多発していた“不整合”の例
| ログ項目 | 不自然な状態 |
|---|---|
| 荷物ステータス | 「顧客荷物受け取り済み」 |
| 操作したユーザー | 「配達員」 |
| ロッカー在庫状況 | 荷物は存在しない(空) |
| その後の挙動 | 回収指示が繰り返し送信 |
決定的だったのは、
顧客が受け取るはずの荷物を、なぜか“配達員が受け取った”ことになっている
という矛盾です。
これは明確に
複数システム間の状態同期が破綻しているサイン でした。
3. 推定された原因:
「荷物が消えた理由」をどのシステムも理解できていなかった
ステータス履歴を辿っていくと、こういう状況が見えてきました。
- 本来は顧客が取り出すべき荷物
- しかし実際には他の誰かが取り出していた
- しかし操作が正しく記録されていない
- 各システムが 別の“現実” を見始める
▼ 図:3つのシステムが“違う現実”を見ていた
ロッカー:荷物が無い
配送管理:荷物はロッカーにある
顧客アプリ:受け取り操作なし(未受取)
この三者の“認識のズレ”により、配送管理側は
「荷物ある → 受け取ってない → 回収指示!」
と判断し続けてしまっていました。
4. 回収指示が誤送信され続けた理由
ポイントはこれです:
ステータス不整合を“解消するトリガー”がどこにも存在しなかった
本来は、
- 顧客が受け取った
- 配達員が改修した
- 誤操作があった
などの正しい “理由付け” が必要です。
しかし各システムがそれを理解できず、
- ロッカー → 荷物ない
- 顧客アプリ → 未受取
- 配送管理 → ロッカーにあるはず
という矛盾が永続化してしまいました。
その結果、配送管理は
「受け取られていないのに荷物がある。じゃあ配達員に回収させよう」
と自動判断し続けたのです。
5. 真に危険だったのは「現場が報告しなくなること」
配達員さんはとにかく忙しい。
同じ誤通知が何度も続くと、
「また誤通知だろうし、報告しても意味がない」
と、誤通知を無視するようになります。
配達員さんには「誤通知でも必ず現地へ行く」という負荷がある
誤通知は単なるシステム問題ではなく、
現場の心理負担を確実に蓄積する“見えない負債” です。
以下は、誤通知が現場へどのような影響を与えるかを図示したものです。
こうした負荷が積み重なると、
- 誤通知に慣れてしまう
- 報告しても改善されないと思い込む
- 問題の早期発見が不可能になる
という 「静かな運用崩壊」 が始まります。
6. 最後は「正しい部署に投げた」だけで大ごとに
チーム内で取り合ってもらえなかったため、
僕は自分で担当部署を探し、慎重にチケットを起票しました。
「もし担当部署が違っていたら申し訳ありません。
ただ、ロッカー・顧客アプリ・配送システムの整合性に
深刻な問題がある可能性があります。」
すると数日後——
複数部署が即座に反応し、大規模調査がスタート。
他部署でも「なんか変」と思われていたものの、
全員が“点”でしか状況を捉えられていなかった のだと思います。
“点”がつながると、一気に全体像が見えました。
7. まとめ:状態不整合は見逃してはいけない
今回の経験から得た教訓は非常にシンプルです。
✔ 「問い合わせ」は全部、何かのバグの兆候
✔ ステータス不整合は早期に潰さないと運用崩壊
✔ 複数システムがある以上、“現実のズレ”は必ず起きる
✔ だから「順序 × 条件 × 人の動作」を総合して観察せよ
あなたの現場にも、
誰も気づいていない “静かな不整合” が潜んでいるかもしれません。
小さくていいから、気づいたら誰かに相談してみる。
それだけで、大事故を防げることがあります。