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探さない・見に行かない・覚えない業務改善 ─ Tampermonkeyで作るマイクロSaaSの設計事例

Last updated at Posted at 2025-11-26

はじめに

社内で使っているSaaSやチケット管理ツール、

「8割は合ってるけど、肝心な2割が足りない…」

と感じたことはありませんか?

本記事では、 既存のチケット管理システムに「ちょい足し」する形で動く Tampermonkey 製のマイクロSaaS「ぷらすわんツール」 を紹介します。

  • 既存SaaSはそのまま
  • ブラウザ拡張(Tampermonkey)のみ追加
  • 社内API+Airtableを組み合わせて、「探さない・見に行かない・覚えておかない」業務フローを実現

という構成になっており、 「既存システムを壊さずに、現場のつらみだけをピンポイントで解消したい」 方の参考になればうれしいです。


背景:汎用チケット管理×ロッカーサポート業務のギャップ

舞台は、宅配ロッカーのシステムサポート業務です。

  • チケット管理ツール:全社共通の汎用ツール
  • ロッカー管理ダッシュボード:別システム
  • ナレッジ管理ツール:障害情報や手順書が集約されている
  • Airtable:テンプレートやベンダー情報のDBとして利用

この構成自体はよくあるのですが、現場目線では次のような課題がありました。

  • チケットのステータス(受付/調査・作業中/保留/解決)ごとに
    手作業で「検索」「コピー」「転記」を繰り返していた

  • 荷物IDからロッカーを特定するまでに
    複数のシステムを行き来する必要があった

  • ナレッジ管理ツールの情報量が増えすぎて
    テンプレートやベンダー情報を探すだけで時間が溶ける

  • 修理依頼メールは属人化しており、
    担当者によってフォーマットも内容もバラバラ

「フルスクラッチで新システム入れよう」は現実的ではありません。

そこで

既存の業務フローに便利さを一つプラスする

ことをコンセプトに、Tampermonkey で「ぷらすわんツール」を実装しました。


コンセプト:既存SaaSの“マイクロSaaS化”

「ぷらすわんツール」のコンセプトは3つです。

  • ✅ 既存システムの使い勝手を損なわずに、足りない機能だけを補完
  • ✅ ユーザーが自然に使える UI に統合し、学習コストを最小化
  • ✅ 「探さない・見に行かない・覚えておかない」業務にする

技術的な位置づけとしては、「既存SaaSを拡張するマイクロSaaS」 だと考えています。

  • チケット管理SaaS:基盤となるメインシステム
  • Tampermonkey:UIレイヤーでの拡張・自動化
  • 社内API / Airtable:バックエンド的に振る舞う小さなSaaS

大げさな再構築ではなく、
「一つの業務にフォーカスした小さなSaaS」 をブラウザ上に乗せるイメージです。

全体アーキテクチャ

ざっくり構成図はこんな感じです(抽象化した例):


実装した機能例4つと Before / After

① 受付ステータスの自動化

Before

  • 顧客から「荷物が見つからない」と問い合わせ
  • チケットに「荷物ID」が入るが、
    • 担当者が手で荷物IDをコピー
    • ロッカー管理ダッシュボードを開いて手入力検索
    • ロッカー特定後、チケットタイトルにロッカーIDを追記
    • ステータスを「調査・作業中」に手動変更

After(ぷらすわんツール)

  • チケット上の「荷物ID」を自動でリンク化
    • クリックすると該当ロッカーのダッシュボードへジャンプ
  • ロッカー情報は社内APIから取得し、ロッカーIDをチケットタイトルに自動追記
  • ロッカーIDが入ったタイミングで、ステータスを自動で「調査・作業中」に変更

「荷物IDを見つける → ロッカーを探す → ステータス変更」の3ステップがワンクリックに

② 調査・作業中ステータスの自動化

Before

  • 障害原因を特定したあと、
    • ナレッジ管理ツールから該当テンプレートを探す
    • ロッカー管理ダッシュボードから各種情報をコピペ
    • チケットとナレッジ管理ツール間を行き来しながら、履歴や修理スケジュールを手入力

After

  • チケット画面に**「テンプレート選択」UIを追加**
    • Airtableからテンプレート一覧/APIで取得
    • 選んだテンプレートを、チケットAPI経由で自動入力
  • ナレッジ管理ツールを直接開けるリンクも追加し、「検索」の手間を排除
  • トラブルシューティング履歴用の文字列を自動生成→クリップボードコピー
    • ボタン1回でナレッジ管理ツールへ遷移
    • 遷移先で Ctrl+V するだけで登録完了

③ システム障害時の修理依頼メール自動生成

Before

  • 修理依頼メールは
    • 過去メールを探してコピペ
    • あるいは Outlook テンプレから作成
  • 地域ごとにベンダーが決まっているが、
    • ナレッジ管理ツールでベンダー情報を見て人間が判断

After

  • チケット+ロッカー情報をもとに、メール文面を自動生成
  • Airtable に持たせた「エリア → 担当ベンダー」マスタから、送信先ベンダーを自動決定
  • 文面はクリップボードにコピーされるので、
    • 担当者は Outlook を開いて貼り付けるだけでOK

ここも「メールを送るシステム」は既存の Outlook のまま、
「宛先と文面を考える作業」だけをマイクロSaaS側で引き取っています。

④ 保留・解決ステータスでのナレッジ登録の自動化

Before

  • 作業完了後、
    • どんなトラブルシューティングを行ったか
    • ベンダーへの修理依頼とスケジュール
  • これらをナレッジ管理ツールへ何度も行き来しながら手入力

After

  • チケットのステータスが「保留」/「解決」に遷移したタイミングで、
    • 必要な情報をまとめて文字列生成
    • ワンクリックでクリップボードにコピー
    • 該当ナレッジの編集画面へ自動遷移
    • 遷移後は Ctrl+V で完了

🖼 ステータス連動UIの動作イメージ

以下は「ぷらすわんツール」が実際に動作している画面イメージです。

  • ① オペレーターがチケットのステータスを変更すると…
  • ② ステータスに応じて必要な“だけ”の機能(ボタン)が表示される

つまり、

  • 「受付」なら受付に必要な機能だけ、
  • 「作業中」なら作業に必要な機能だけ
    が UI に現れます。

これにより、
探さない・見に行かない・覚えない業務フロー
が実現されます。

ぷらすわんツールデモ.png

ポイントは、

  • @match で対象SaaSを絞る
  • ステータスごとに UI を出し分ける
  • 社内API / Airtable を裏側の“ミニBaaS”として使う
  • メインSaaSには一切手を入れず、ブラウザ上で完結させる

という点です。


工夫したポイント(マイクロSaaS視点)

1. ステータス連動で「出しゃばりすぎない」UI

  • ステータスごとに必要な機能だけを表示
  • それ以外のタイミングでは一切出てこない

「とりあえずボタン増やす」のではなく、
業務プロセスに沿って“必要なときだけ現れる UI” にしました。

2. 既存習慣を壊さない

  • ロッカー管理ダッシュボードを見る習慣は維持
  • メール送信も Outlook のまま

あくまで「見る場所」「送る手段」は既存どおりで、
そこに至るまでの「探す」「考える」「整形する」を自動化したイメージです。

3. DB を自分で持つことで「社内マイクロSaaS」に

  • テンプレート・ベンダー情報は Airtable をDBとして使用
  • Tampermonkey側はあくまでフロントエンド
  • Airtable が “小さなSaaS” として動く構成

これにより
「SaaS(チケット)× SaaS(Airtable)× Tampermonkey」
という形で、既存システムの上にマイクロSaaSを乗せることができました。


やってみて分かったこと・学び

  • 完全な新システムを作らなくても、
    「ブラウザ拡張+社内API」だけで現場のストレスはかなり減らせる

  • 汎用SaaSの“8割のカバー力”はそのまま活かしつつ、
    残り2割はマイクロSaaSとして切り出した方が設計しやすい

  • 「探さない・見に行かない・覚えない」を徹底すると、
    業務フロー自体の設計も自然とシンプルになる


導入効果(=定型業務のみを対象に定量評価)

今回の効果測定は、担当者によって作業時間のばらつきが大きくなる
「難度の高いケース」はすべて対象外とし、

誰が担当しても99%フローが変わらない“定型業務”のみ に絞って定量評価しました。

評価方法

  • 効果測定には、チケットのステータス遷移ログ を利用し、
    「開始 → 完了」までの平均処理時間の差分を統計的に算出しています。
  • 年間件数は、昨年度の同じ業務の実績値をベースにした保守的な仮定を使用。

結果

  • 作業効率:25〜50% 向上
  • 1件あたりの時間短縮:平均 約3分
    • (※ユーザーの体感ではなく、ログから取得した“実測値”)
  • 年間削減時間:約 2,100 分(= 35 時間)
    • 年間700件(前年実績ベース) × 平均3分

定型業務のみを対象にし、なおかつログを用いた客観データで算出しているため、
この値は「現実的かつ過大評価にならない範囲」での効果と考えています。


まとめ

本記事では、Tampermonkey を使って

既存のチケット管理ツールに「ぷらすわん」する
マイクロSaaS的な拡張ツール

を作った事例を紹介しました。

  • 既存SaaSはそのまま
  • ブラウザ拡張でピンポイントに業務フローを支援
  • Airtable+社内APIを“裏側のマイクロSaaS”として活用

という構成は、他の現場にもかなり応用が効くパターンだと思います。


おまけ:こんな人におすすめのアプローチ

  • 社内SaaSが「惜しい」状態で、あと一歩欲しい現場
  • 既存ベンダーに改修を頼むのが重たくて、まずは小さく検証したいチーム
  • フルスクラッチでシステムを作るほどではないけれど、
    業務改善の余地はあると感じている人

「マイクロSaaS」とは?

一般的にマイクロSaaSとは、

  • 小規模な1業務に特化した SaaS
  • シンプルで導入しやすい
  • 既存業務に“1つだけ”便利を追加する

という特徴を持つサービスを指します。

「ぷらすわんツール」は、
Tampermonkey × 既存SaaS × Airtable(DB)
という構成で、ブラウザ上に小さなSaaSを乗せた形になります。

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