はじめに
社内で使っているSaaSやチケット管理ツール、
「8割は合ってるけど、肝心な2割が足りない…」
と感じたことはありませんか?
本記事では、 既存のチケット管理システムに「ちょい足し」する形で動く Tampermonkey 製のマイクロSaaS「ぷらすわんツール」 を紹介します。
- 既存SaaSはそのまま
- ブラウザ拡張(Tampermonkey)のみ追加
- 社内API+Airtableを組み合わせて、「探さない・見に行かない・覚えておかない」業務フローを実現
という構成になっており、 「既存システムを壊さずに、現場のつらみだけをピンポイントで解消したい」 方の参考になればうれしいです。
背景:汎用チケット管理×ロッカーサポート業務のギャップ
舞台は、宅配ロッカーのシステムサポート業務です。
- チケット管理ツール:全社共通の汎用ツール
- ロッカー管理ダッシュボード:別システム
- ナレッジ管理ツール:障害情報や手順書が集約されている
- Airtable:テンプレートやベンダー情報のDBとして利用
この構成自体はよくあるのですが、現場目線では次のような課題がありました。
-
チケットのステータス(受付/調査・作業中/保留/解決)ごとに
手作業で「検索」「コピー」「転記」を繰り返していた -
荷物IDからロッカーを特定するまでに
複数のシステムを行き来する必要があった -
ナレッジ管理ツールの情報量が増えすぎて
テンプレートやベンダー情報を探すだけで時間が溶ける -
修理依頼メールは属人化しており、
担当者によってフォーマットも内容もバラバラ
「フルスクラッチで新システム入れよう」は現実的ではありません。
そこで
既存の業務フローに便利さを一つプラスする
ことをコンセプトに、Tampermonkey で「ぷらすわんツール」を実装しました。
コンセプト:既存SaaSの“マイクロSaaS化”
「ぷらすわんツール」のコンセプトは3つです。
- ✅ 既存システムの使い勝手を損なわずに、足りない機能だけを補完
- ✅ ユーザーが自然に使える UI に統合し、学習コストを最小化
- ✅ 「探さない・見に行かない・覚えておかない」業務にする
技術的な位置づけとしては、「既存SaaSを拡張するマイクロSaaS」 だと考えています。
- チケット管理SaaS:基盤となるメインシステム
- Tampermonkey:UIレイヤーでの拡張・自動化
- 社内API / Airtable:バックエンド的に振る舞う小さなSaaS
大げさな再構築ではなく、
「一つの業務にフォーカスした小さなSaaS」 をブラウザ上に乗せるイメージです。
全体アーキテクチャ
ざっくり構成図はこんな感じです(抽象化した例):
実装した機能例4つと Before / After
① 受付ステータスの自動化
Before
- 顧客から「荷物が見つからない」と問い合わせ
- チケットに「荷物ID」が入るが、
- 担当者が手で荷物IDをコピー
- ロッカー管理ダッシュボードを開いて手入力検索
- ロッカー特定後、チケットタイトルにロッカーIDを追記
- ステータスを「調査・作業中」に手動変更
After(ぷらすわんツール)
- チケット上の「荷物ID」を自動でリンク化
- クリックすると該当ロッカーのダッシュボードへジャンプ
- ロッカー情報は社内APIから取得し、ロッカーIDをチケットタイトルに自動追記
- ロッカーIDが入ったタイミングで、ステータスを自動で「調査・作業中」に変更
「荷物IDを見つける → ロッカーを探す → ステータス変更」の3ステップがワンクリックに
② 調査・作業中ステータスの自動化
Before
- 障害原因を特定したあと、
- ナレッジ管理ツールから該当テンプレートを探す
- ロッカー管理ダッシュボードから各種情報をコピペ
- チケットとナレッジ管理ツール間を行き来しながら、履歴や修理スケジュールを手入力
After
- チケット画面に**「テンプレート選択」UIを追加**
- Airtableからテンプレート一覧/APIで取得
- 選んだテンプレートを、チケットAPI経由で自動入力
- ナレッジ管理ツールを直接開けるリンクも追加し、「検索」の手間を排除
- トラブルシューティング履歴用の文字列を自動生成→クリップボードコピー
- ボタン1回でナレッジ管理ツールへ遷移
- 遷移先で Ctrl+V するだけで登録完了
③ システム障害時の修理依頼メール自動生成
Before
- 修理依頼メールは
- 過去メールを探してコピペ
- あるいは Outlook テンプレから作成
- 地域ごとにベンダーが決まっているが、
- ナレッジ管理ツールでベンダー情報を見て人間が判断
After
- チケット+ロッカー情報をもとに、メール文面を自動生成
- Airtable に持たせた「エリア → 担当ベンダー」マスタから、送信先ベンダーを自動決定
- 文面はクリップボードにコピーされるので、
- 担当者は Outlook を開いて貼り付けるだけでOK
ここも「メールを送るシステム」は既存の Outlook のまま、
「宛先と文面を考える作業」だけをマイクロSaaS側で引き取っています。
④ 保留・解決ステータスでのナレッジ登録の自動化
Before
- 作業完了後、
- どんなトラブルシューティングを行ったか
- ベンダーへの修理依頼とスケジュール
- これらをナレッジ管理ツールへ何度も行き来しながら手入力
After
- チケットのステータスが「保留」/「解決」に遷移したタイミングで、
- 必要な情報をまとめて文字列生成
- ワンクリックでクリップボードにコピー
- 該当ナレッジの編集画面へ自動遷移
- 遷移後は Ctrl+V で完了
🖼 ステータス連動UIの動作イメージ
以下は「ぷらすわんツール」が実際に動作している画面イメージです。
- ① オペレーターがチケットのステータスを変更すると…
- ② ステータスに応じて必要な“だけ”の機能(ボタン)が表示される
つまり、
- 「受付」なら受付に必要な機能だけ、
- 「作業中」なら作業に必要な機能だけ
が UI に現れます。
これにより、
探さない・見に行かない・覚えない業務フロー
が実現されます。
ポイントは、
- @match で対象SaaSを絞る
- ステータスごとに UI を出し分ける
- 社内API / Airtable を裏側の“ミニBaaS”として使う
- メインSaaSには一切手を入れず、ブラウザ上で完結させる
という点です。
工夫したポイント(マイクロSaaS視点)
1. ステータス連動で「出しゃばりすぎない」UI
- ステータスごとに必要な機能だけを表示
- それ以外のタイミングでは一切出てこない
「とりあえずボタン増やす」のではなく、
業務プロセスに沿って“必要なときだけ現れる UI” にしました。
2. 既存習慣を壊さない
- ロッカー管理ダッシュボードを見る習慣は維持
- メール送信も Outlook のまま
あくまで「見る場所」「送る手段」は既存どおりで、
そこに至るまでの「探す」「考える」「整形する」を自動化したイメージです。
3. DB を自分で持つことで「社内マイクロSaaS」に
- テンプレート・ベンダー情報は Airtable をDBとして使用
- Tampermonkey側はあくまでフロントエンド
- Airtable が “小さなSaaS” として動く構成
これにより
「SaaS(チケット)× SaaS(Airtable)× Tampermonkey」
という形で、既存システムの上にマイクロSaaSを乗せることができました。
やってみて分かったこと・学び
-
完全な新システムを作らなくても、
「ブラウザ拡張+社内API」だけで現場のストレスはかなり減らせる -
汎用SaaSの“8割のカバー力”はそのまま活かしつつ、
残り2割はマイクロSaaSとして切り出した方が設計しやすい -
「探さない・見に行かない・覚えない」を徹底すると、
業務フロー自体の設計も自然とシンプルになる
導入効果(=定型業務のみを対象に定量評価)
今回の効果測定は、担当者によって作業時間のばらつきが大きくなる
「難度の高いケース」はすべて対象外とし、
誰が担当しても99%フローが変わらない“定型業務”のみ に絞って定量評価しました。
評価方法
- 効果測定には、チケットのステータス遷移ログ を利用し、
「開始 → 完了」までの平均処理時間の差分を統計的に算出しています。 - 年間件数は、昨年度の同じ業務の実績値をベースにした保守的な仮定を使用。
結果
- 作業効率:25〜50% 向上
- 1件あたりの時間短縮:平均 約3分
- (※ユーザーの体感ではなく、ログから取得した“実測値”)
- 年間削減時間:約 2,100 分(= 35 時間)
- 年間700件(前年実績ベース) × 平均3分
定型業務のみを対象にし、なおかつログを用いた客観データで算出しているため、
この値は「現実的かつ過大評価にならない範囲」での効果と考えています。
まとめ
本記事では、Tampermonkey を使って
既存のチケット管理ツールに「ぷらすわん」する
マイクロSaaS的な拡張ツール
を作った事例を紹介しました。
- 既存SaaSはそのまま
- ブラウザ拡張でピンポイントに業務フローを支援
- Airtable+社内APIを“裏側のマイクロSaaS”として活用
という構成は、他の現場にもかなり応用が効くパターンだと思います。
おまけ:こんな人におすすめのアプローチ
- 社内SaaSが「惜しい」状態で、あと一歩欲しい現場
- 既存ベンダーに改修を頼むのが重たくて、まずは小さく検証したいチーム
- フルスクラッチでシステムを作るほどではないけれど、
業務改善の余地はあると感じている人
「マイクロSaaS」とは?
一般的にマイクロSaaSとは、
- 小規模な1業務に特化した SaaS
- シンプルで導入しやすい
- 既存業務に“1つだけ”便利を追加する
という特徴を持つサービスを指します。
「ぷらすわんツール」は、
Tampermonkey × 既存SaaS × Airtable(DB)
という構成で、ブラウザ上に小さなSaaSを乗せた形になります。
