Claude Code の v2.1.289 〜 v2.1.296 には多数の変更が入りましたが、その中から実務への影響が大きいと思われるものを5つ選んで深掘りします。網羅的な変更点一覧は 前回の記事 にまとめてあるので、今回は「なぜ注目に値するか」にフォーカスします。
1. フックの onFailure: "block"(v2.1.295)
command / HTTP フックが「起動できない」「タイムアウトした」「想定外の終了コードで終わった」場合に、これまでは処理が素通りしていましたが、onFailure: "block" を指定するとそのアクションをブロックできます。
{
"hooks": {
"PreToolUse": [
{
"matcher": "Bash",
"hooks": [
{ "type": "command", "command": "./scripts/guard.sh", "onFailure": "block" }
]
}
]
}
}
なぜ注目に値するか
セキュリティや品質のゲートとしてフックを使う場合、「フック自体が壊れたら守りが消える」(fail-open)ことが弱点でした。onFailure: "block" により、ゲートを fail-closed に倒せます。あわせて v2.1.296 では、managed settings の PreToolUse フックが "continue": false で拒否してもターンが終わらない問題が修正され、v2.1.292 ではフック出力中の <system-reminder> タグがエスケープされるようになりました。フックを安全装置として使う土台が、この数バージョンで一気に固まっています。
また --debug でフックの command・plugin・結果・所要時間がログされるようになったため(v2.1.296)、遅いフックの特定も容易になりました。
2. サブエージェント制御の強化(v2.1.292 / v2.1.296)
-
Agent ツールの
effortパラメータ(v2.1.292): 指定した努力レベルでサブエージェントを実行 -
autoCompactWindow(v2.1.296): サブエージェントの frontmatter と--agents定義で指定でき、メイン会話より早く auto-compact -
CLAUDE_CODE_WORKFLOW_SUBAGENT_MODEL(v2.1.296): Workflow のエージェントすべてを 1 つのモデルで実行
---
name: log-summarizer
description: ログを要約する軽量エージェント
autoCompactWindow: 100000
---
なぜ注目に値するか
サブエージェントを多用すると、コストとコンテキストの管理が課題になります。調査系は軽いモデル・低い effort、設計系は重いモデル・高い effort といった使い分けを、プロンプトや設定で宣言的に書けるようになりました。後述の Haiku 5.5 と組み合わせると、大量並列のワークフローをかなり安く回せます。
3. Claude Haiku 5.5 の登場と料金改定(v2.1.293 / v2.1.296)
v2.1.293 で claude-haiku-5-5 が追加され、Anthropic API の既定 Haiku モデルになりました。1M コンテキストで、料金は $0.10 / $0.50 per Mtok(100K 超のプロンプトは $0.50 / $2.50)です。v2.1.296 では Sonnet 5.5 のキャッシュ読み取りも $0.20 → $0.10 / 百万トークンに下がり、/cost・ステータスライン・--max-budget-usd の見積もりに反映されます。
なぜ注目に値するか
第三者の紹介記事では、Haiku 5.5 は 2026年10月7日に公開された Anthropic で最速のモデルで、Haiku として初めて effort レベルを備えるとされています(Anthropic Releases Claude Haiku 5.5 | AI Catchup)。要約・分類・サブエージェントのような大量処理向けで、複雑なエージェント型コーディングの主力には Sonnet 5.5 / Opus 5.5 が引き続き適する、という位置づけです。Haiku 4.5 向けに書いたコードがそのままでは動かない可能性も指摘されており、モデル ID を固定している場合は移行時の確認が必要です。
4. MCP プロトコル 2026-07-28 の既定化(v2.1.292 / v2.1.295 / v2.1.296)
- ローカル(stdio)MCP サーバーは、全インストールで MCP プロトコル 2026-07-28 を既定でネゴシエーション(v2.1.292)
- claude.ai コネクタも同様(v2.1.295)
-
MCP_PROTOCOL_NEGOTIATION=legacyでオプトアウト - 新プロトコルを理解しない stdio サーバーは、1 回遅い接続になった後 7 日間記憶され、旧方式で待ち時間なく接続(v2.1.292)
- tool search 経由の MCP ツール説明の上限は 2,048 → 16,384 文字(v2.1.295)。先出しの説明と instructions の既定上限は 2,048 → 4,096 文字(v2.1.296)
# 問題が出る場合は旧方式に戻す
export MCP_PROTOCOL_NEGOTIATION=legacy
なぜ注目に値するか
Anthropic の発表では、2026-07-28 版は MCP を双方向・ステートフルなプロトコルからリクエスト/レスポンス型へ移すものと説明されています(Bringing MCP 2026-07-28 to Claude)。自作や社内の MCP サーバーを使っている場合、起動の遅さや接続エラーとして影響が出る可能性があります。エスケープハッチが用意されているので、アップデート後に MCP の挙動がおかしいときは真っ先に試せます。
5. Read の allow_large と Grep・各ツールの入力寛容化(v2.1.292 / v2.1.295 / v2.1.296)
- Read ツールに
allow_large(v2.1.296): 全体が必要でコンテキストに余裕があるとき、通常のサイズ上限を超えるテキストを 1 回で読める - Grep が
file_pathをpathの代わりに受け付ける(v2.1.292)。-l/-c/-rフラグ付きの検索も失敗せず実行される(v2.1.295) - Write・WebFetch・Read は、余計なパラメータを無視して呼び出しを失敗させない(v2.1.292)
なぜ注目に値するか
派手さはありませんが、「ツール呼び出しが入力の細かな違いで失敗して、1 ターン無駄になる」ことは日常的に起きていました。入力の揺れを吸収する変更が積み重なると、ターン数とトークンの節約になります。大きなファイルを諦めて分割読みする必要が減る点も、地味に効きます。
まとめ
| テーマ | 内容 |
|---|---|
| 安全性 | フックを fail-closed にできる onFailure: "block"
|
| コスト・並列実行 |
effort / autoCompactWindow / ワークフロー用モデル指定 |
| モデル | Haiku 5.5 と Sonnet 5.5 のキャッシュ料金改定 |
| 互換性 | MCP プロトコル 2026-07-28 の既定化(legacy で戻せる) |
| 使い勝手 | Read allow_large、ツール入力の寛容化 |
特に 1 と 4 は、アップデートするだけで挙動や互換性に関わります。フックを安全装置にしているチームは onFailure の指定を、MCP サーバーを自作しているチームは新プロトコルでの接続確認をおすすめします。