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■「面倒なこと」はメトリクスで見える化する

「面倒なこと」「困っていること」は自分が感じていることです。これを他人に伝えるにはメトリクスが有効です。
「面倒なこと」はメトリクスによって「無駄なこと」として客観的に示されます。
つまり、問題の改善を個人だけで行うのではなく、全員で取り組むべき課題として共有することができます。

■メトリクスとは

プロセス改善におけるメトリクスとは、様々な活動を定量的に計測し、指標化したものです。典型的には、各プロセスの工数、バグ件数、レビュー工数、作業成果物の規模などを計測し、見積りと比較したり、開発効率や品質を数値的に比較したりするのに利用されます。

■メトリクスは計画的に収集する

メトリクスの収集は重要です。ただし、収集するのには工数がかかります。不必要なメトリクスの収集は無駄なので、計画的に必要なものだけを収集すべきです。これはプロセス改善の重要なポイントです。
既に手持ちのメトリクスデータがあるのであれば、一度分析してみて、改善活動に役立つものであれば、正式に収集するように計画するのが良いでしょう。

■事例①:プロジェクトの振り返りをする

弊社では、勤怠と連動させるため、個人のプロセス毎の作業工数を毎日入力するようにしています。そして、プロジェクト完了時にプロジェクト完了報告書を作成します。その際に、ふりかえりとして計画時の見積りデータと実績データを比較し、考察をします。ただし、単に差異があるという報告では意味がありません。なぜ差異が出ているのか、計画時にそれは想定できなかったのか、今後はどういうことに気をつけたら良いかなどを考え、報告します。

見積りが完璧であることは稀で、顧客からの仕様変更の要望もよくあります。なので、差があること自体は大きな問題ではなく、差の原因がわかっているかが重要です。差の原因がわかれば、次回から改善できる可能性があるからです。

■事例②:無駄な作業を調べる

個人の工数は必要な場合、さらに詳細に入力できるようにしています。つまり、1つのプロセスの内訳を記載可能ということです。工数のプロセス分類には、開発プロセス以外に「社内業務」というプロセスもあるため、社内業務の内訳を入力することも可能です。

この詳細入力は、特定の課題を感じている時にのみ使っています。たとえば、「会議工数が多すぎるのではないか」とか、「コンパイルや静的解析のツールの待ち時間が長い」といった場合です。
こういったケースでは、1週間程度、その時間をメトリクスとして収集すると実態が見えてきます。これをベースに、上司に改善を提案します。

具体的な無駄な時間を示すことで、年間にすると○○万円のロスになっているという事実は説得力があります。その結果、「対策をして欲しい」という要求がより強く伝わります。
実際に、会議時間の短縮をしたり、夜間ビルド用の環境を構築したりといった改善に繋がりました。

■まとめ

プロセス改善は難しいものではありません。面倒なことを改善することがプロセス改善の出発点です。

よくある誤解として、「忙しいから改善できない」という考え方がありますが、これは逆の視点を持つべきです。「忙しいからこそ、改善して楽になろう」と考えましょう。改善活動は優先順位の高い活動であり、すべての業務の中で最も重要なものと言っても過言ではありません。

さらに、プロセス改善に自分以外の人が関わる場合は、メトリクスを活用しましょう。メトリクスは課題の必要性を示すだけではなく、改善の効果を示すためにも使えます。定量的な数値により、説得力が増します。
このような目的で使用するメトリクスは、短期間のデータでも十分です。統計的な分析や複雑な考察は必要ありません。
メトリクスは説得力を増すための道具として効果的に使いましょう。

以上、本投稿がプロセス改善のきっかけになればうれしいです。

プロセス改善をやってみよう(1/3) ~ 面倒なことはしたくない ~
プロセス改善をやってみよう(2/3) ~ プロジェクトでの課題を改善する ~
プロセス改善をやってみよう(3/3) ~ メトリクスを有効活用する ~

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