はじめに
「Neonって何?Supabaseとどう違うの?」
Pythonを学び始めてWebアプリを作ろうとすると、必ず「データベースをどこに置くか」という問題に直面します。ローカルにPostgreSQLをインストールするのは面倒だし、本番環境とのズレも心配。そんな時に目にするのが「Neon」や「Supabase」といったクラウドサービスです。
この記事では、これらのサービスが「何を解決してくれるのか」を、図解を交えて徹底的に解説します。
この記事の対象読者
- Pythonでデータベースを使ったアプリを作りたい初心者
- 「Neon」「Supabase」という名前を聞いたが、違いが分からない方
- ローカルのPostgreSQLやSQLiteから本格的なクラウドDBへ移行を検討している方
この記事で得られること
- ローカルDB vs クラウドDBの違いと、クラウドDBを使うメリット
- NeonとSupabaseの根本的な違い(DBaaS vs BaaS)
- 手動セットアップ vs クラウドサービスの違い(As-Is / To-Be分析)
- あなたの状況に最適なサービスの選び方(Fit & Gap分析)
- Pythonからの具体的な接続コード
1. 前提知識の整理:ローカルDB vs クラウドDB
データベースの「置き場所」という問題
Pythonでアプリを作る時、データを保存する場所が必要です。選択肢は大きく2つあります。
| 種類 | 具体例 | イメージ |
|---|---|---|
| ローカルDB | SQLite, PostgreSQL(自分のPC) | 自宅に本棚を置く |
| クラウドDB | Neon, Supabase, AWS RDS | レンタル倉庫を借りる |
なぜクラウドDBが注目されているのか
ローカルDBには以下の課題があります。
- 環境構築が大変:PostgreSQLのインストール、設定、起動管理が必要
- 本番環境との差異:開発環境と本番環境でDBの挙動が違う
- チーム開発が困難:各メンバーのローカル環境を揃えるのが大変
- バックアップが自己責任:データ消失リスクを自分で管理
クラウドDBはこれらの問題を解決します。
DBaaS vs BaaS:2つのサービス形態
クラウドDBサービスには、大きく2つの種類があります。
| 種類 | 提供する機能 | 向いているケース |
|---|---|---|
| DBaaS | データベースのみ | 自前のバックエンド(Flask, FastAPIなど)がある |
| BaaS | DB+認証+ストレージ+API | バックエンドを書かずにアプリを作りたい |
2. Neonとは
一言で言うと
Neon(ネオン) は、 「サーバーレスに特化した、高機能なPostgreSQLデータベース」 です。
従来のPostgreSQLをクラウドネイティブに再設計し、「使った分だけ課金」「自動スケール」「データベースのブランチ」といった革新的な機能を実現しています。
Neonの3つの特徴
特徴1:自動スケール(Autoscaling)
- アクセスがない時は自動で停止(課金も停止)
- アクセスが来ると数秒で起動
- 負荷に応じてCPUとメモリが自動で増減
特徴2:ブランチ機能(Branching)
Gitでソースコードを管理するように、 データベースの状態を「枝分かれ」 させることができます。
- 本番データを含んだテスト環境を数秒で作成
- 各ブランチは独立しているため、本番に影響しない
- GitHubのプルリクエストごとにプレビューDBを自動生成可能
特徴3:コンピュートとストレージの分離
従来のデータベースは「計算(CPU)」と「保存(ストレージ)」が一体でした。Neonはこれを分離することで、柔軟なスケーリングを実現しています。
3. Supabaseとは
一言で言うと
Supabase(スーパベース) は、 「PostgreSQLを中核に据えた、バックエンド機能一式をパッケージ化したプラットフォーム」 です。
「Firebase(Google製のBaaS)のオープンソース版代替」として有名です。
補足:「SuperBase」と表記されることがありますが、正しくは「Supabase」です。
Supabaseに含まれる機能
| 機能 | 説明 | 用途例 |
|---|---|---|
| Database | PostgreSQLデータベース | データの保存・検索 |
| Auth | ユーザー認証・認可 | ログイン、OAuth連携 |
| Storage | ファイル保存 | 画像、動画のアップロード |
| Edge Functions | サーバーレス関数 | APIエンドポイント作成 |
| Realtime | リアルタイム同期 | チャット、通知 |
Neon vs Supabase:根本的な違い
| 比較項目 | Neon | Supabase |
|---|---|---|
| 主な役割 | 純粋なデータベース(DBaaS) | バックエンド一式(BaaS) |
| 含まれる機能 | PostgreSQLデータベースのみ | DB+認証+ストレージ+Functions+Realtime |
| スケーリング | 自動(サーバーレス) | プランに基づくインスタンス型 |
| 得意な用途 | 自前のバックエンドがある場合 | フロントエンドから直接DBを扱いたい場合 |
4. サンプルアプリのER図
この記事では、シンプルなブログアプリを例に説明します。
このような構造のデータベースを、ローカル環境で作るか、クラウドで作るか。次のセクションで比較します。
5. As-Is / To-Be 分析:従来のやり方 vs クラウドDB導入
ビジネス分析でよく使われる「As-Is / To-Be フレームワーク」を用いて、従来の課題とクラウドDB導入後の改善を明確にします。
As-Is(現状):ローカルPostgreSQL / SQLiteの課題
ローカルPostgreSQLの場合
SQLiteから移行する場合の課題
SQLiteは手軽ですが、本番環境には向きません。
| SQLiteの限界 | 具体的な問題 |
|---|---|
| 同時接続 | 複数ユーザーのアクセスでロックが発生 |
| スケーラビリティ | 大量データの処理に不向き |
| 機能制限 | 高度なSQL機能(JSON型、全文検索など)が限定的 |
| 本番運用 | Vercel等のサーバーレス環境では使えない |
現状の課題一覧
| カテゴリ | 課題 | 影響度 |
|---|---|---|
| 環境構築 | OSごとにインストール手順が異なる | 高 |
| 運用 | 起動・停止・バックアップを手動管理 | 高 |
| 本番移行 | 開発環境と本番環境の差異 | 高 |
| チーム開発 | 各メンバーの環境を揃えるのが困難 | 中 |
| コスト | 使っていない時間も常時起動 | 中 |
To-Be(あるべき姿):クラウドDB導入後
導入後の改善効果
| カテゴリ | 改善内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 環境構築 | ブラウザ上で完結(インストール不要) | ◎ |
| 運用 | 自動バックアップ、自動スケール | ◎ |
| 本番移行 | 開発=本番(同じ接続先) | ◎ |
| チーム開発 | 接続文字列を共有するだけ | ◎ |
| コスト | 使った分だけ(Neonの場合) | ○ |
Before / After 比較表
| 観点 | Before(ローカル) | After(クラウドDB) |
|---|---|---|
| 環境構築 | インストール+設定(30分〜数時間) | アカウント作成+DB作成(5分) |
| 起動・停止 | 手動でサービス管理 | 自動(または常時起動) |
| バックアップ | 自分でcronやスクリプトを設定 | 自動で定期バックアップ |
| 本番環境 | 別途セットアップが必要 | 同じ接続先を使える |
| チーム共有 | 各自がローカルにDBを持つ | 全員が同じDBに接続 |
6. 開発フローの違い(シーケンス図で理解)
実際の開発フローを、4つのシナリオで比較します。
(a) Pythonアプリからデータベースへ接続するまでの流れ
ローカルPostgreSQLの場合
Neon / Supabaseの場合
(b) 開発環境の構築フロー
(c) 本番デプロイ時のDB環境構築フロー
Vercelなどのプラットフォームにデプロイする際の違いを見てみましょう。
(d) Neonのブランチ機能を使った開発フロー
Neon特有の強力な機能「ブランチ」を使った開発フローです。
ブランチ機能のメリット
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 本番データでテスト | 実際のデータを使って新機能をテストできる |
| 安全 | 本番DBに一切影響しない |
| 高速 | ブランチ作成は数秒で完了(Copy-on-Write) |
| CI/CD連携 | GitHub Actionsと連携してプレビュー環境を自動構築 |
7. Fit & Gap 分析:どのサービスを選ぶべきか
「Fit & Gap 分析」を用いて、あなたの状況に最適なサービスを選びましょう。
主要サービスの概要
| サービス | 種類 | DBの種類 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Neon | DBaaS | PostgreSQL | サーバーレス、ブランチ機能 |
| Supabase | BaaS | PostgreSQL | 認証・ストレージ込み |
| Firebase | BaaS | NoSQL(Firestore) | Googleエコシステム連携 |
| ローカルPostgreSQL | - | PostgreSQL | 自己管理、無料 |
Fit & Gap 分析表
あなたの状況(左列)と各サービスの適合度を確認してください。
| 判断軸 | Neon | Supabase | Firebase | ローカルPG |
|---|---|---|---|---|
| バックエンドを自分で書く(Flask/FastAPI) | ◎ 最適 | ○ 可能 | △ やや複雑 | ○ 可能 |
| フロントエンドのみで完結させたい | △ 要追加実装 | ◎ 最適 | ◎ 最適 | × 困難 |
| SQLで複雑なクエリを書きたい | ◎ 最適 | ◎ 最適 | × 不可 | ◎ 最適 |
| 認証機能も一緒に欲しい | × なし | ◎ 標準搭載 | ◎ 標準搭載 | × なし |
| リアルタイム通信が必要 | × なし | ◎ 標準搭載 | ◎ 標準搭載 | × なし |
| コストを最小限に抑えたい | ◎ 従量課金 | ○ 無料枠あり | ○ 無料枠あり | ◎ 無料 |
| 本番DBと同じ環境でテストしたい | ◎ ブランチ機能 | △ 手動複製 | △ 手動複製 | × 困難 |
| Vercel/Next.jsとの相性 | ◎ 公式連携 | ○ 良好 | ○ 良好 | △ 要設定 |
選定フローチャート
Gap(不足・課題)の対処法
各サービスには弱点もあります。事前に把握しておきましょう。
| サービス | Gap(弱点) | 対処法 |
|---|---|---|
| Neon | 認証・ストレージ機能がない | Auth0、Clerk、AWS S3などを併用 |
| Supabase | サーバーレスではない(常時起動型) | 無料枠で小規模利用、またはNeonと併用 |
| Firebase | SQLが使えない(NoSQL) | SQLが必要ならSupabaseかNeonを選択 |
| ローカルPG | 本番環境との差異、運用コスト | クラウドDBへの移行を検討 |
8. 料金体系の比較(2025年12月時点)
注意:料金は変動する可能性があります。最新情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。
無料枠の比較
| 項目 | Neon | Supabase | Firebase |
|---|---|---|---|
| DB容量 | 500MB / プロジェクト | 500MB | 1GB(Firestore) |
| プロジェクト数 | 最大10個 | 最大2個 | 制限なし |
| 計算リソース | 共有CPU・自動スリープ | 共有CPU | 従量課金 |
| ファイルストレージ | なし | 1GB | 5GB |
| 認証ユーザー数 | なし | 50,000 MAU | 制限なし |
| データ転送 | 5GB/月 | 5GB/月 | 10GB/月 |
有料プランの比較
| プラン | Neon | Supabase |
|---|---|---|
| エントリー | Launch: $19〜/月 | Pro: $25〜/月 |
| チーム向け | Scale: $69〜/月 | Team: $599〜/月 |
| 課金モデル | 従量課金(使った分だけ) | 定額+超過分 |
放置した時の挙動(重要!)
| サービス | 放置時の挙動 | 復帰方法 |
|---|---|---|
| Neon | 5分で自動スリープ | 次のアクセスで自動復帰(数秒) |
| Supabase | 1週間で一時停止 | ダッシュボードで手動復帰が必要 |
| Firebase | 停止しない | - |
ポイント:個人開発で「たまにしか使わない」場合、Neonの自動スリープ&自動復帰は非常に便利です。Supabaseは手動で復帰させる必要があるため、放置しがちなプロジェクトでは注意が必要です。
9. Pythonからの接続方法
実際にPythonから接続するコード例を紹介します。
Neonへの接続(psycopg2)
import os
import psycopg2
# 環境変数から接続文字列を取得
DATABASE_URL = os.environ.get("DATABASE_URL")
# 接続
conn = psycopg2.connect(DATABASE_URL)
cursor = conn.cursor()
# クエリ実行
cursor.execute("SELECT * FROM users LIMIT 5")
rows = cursor.fetchall()
for row in rows:
print(row)
# 接続を閉じる
cursor.close()
conn.close()
環境変数の設定例
# .envファイル
DATABASE_URL=postgresql://username:password@ep-xxx.region.aws.neon.tech/dbname?sslmode=require
Supabaseへの接続(supabase-py)
Supabaseは専用のPythonライブラリを提供しています。
import os
from supabase import create_client, Client
# 環境変数から認証情報を取得
SUPABASE_URL = os.environ.get("SUPABASE_URL")
SUPABASE_KEY = os.environ.get("SUPABASE_KEY")
# クライアント作成
supabase: Client = create_client(SUPABASE_URL, SUPABASE_KEY)
# データ取得(SELECT * FROM users LIMIT 5 に相当)
response = supabase.table("users").select("*").limit(5).execute()
for row in response.data:
print(row)
環境変数の設定例
# .envファイル
SUPABASE_URL=https://xxx.supabase.co
SUPABASE_KEY=eyJhbGciOiJIUzI1NiIsInR5cCI6IkpXVCJ9...
Supabaseへの接続(psycopg2 - 直接接続)
SupabaseもPostgreSQLなので、psycopg2で直接接続することも可能です。
import os
import psycopg2
# Supabaseのダッシュボードから取得した接続文字列
DATABASE_URL = os.environ.get("SUPABASE_DB_URL")
conn = psycopg2.connect(DATABASE_URL)
cursor = conn.cursor()
cursor.execute("SELECT * FROM users LIMIT 5")
rows = cursor.fetchall()
for row in rows:
print(row)
cursor.close()
conn.close()
接続方法の比較
| 方法 | ライブラリ | 特徴 |
|---|---|---|
| Neon(psycopg2) | psycopg2 |
標準的なPostgreSQL接続 |
| Supabase(専用) | supabase-py |
認証・ストレージも同じクライアントで扱える |
| Supabase(直接) | psycopg2 |
生SQLを書きたい場合に便利 |
10. まとめ
NeonとSupabaseの違い
| ポイント | Neon | Supabase |
|---|---|---|
| 一言で | サーバーレスPostgreSQL | バックエンド一式 |
| 提供機能 | DBのみ | DB+認証+ストレージ+Functions |
| 課金モデル | 使った分だけ | 定額+超過分 |
| 強み | ブランチ機能、自動スケール | オールインワン、開発速度 |
どちらを選ぶべきか
Neonがおすすめなケース
- すでにバックエンド(Flask、FastAPI、Django等)を自分で書いている
- GitHubのPull Requestごとにプレビュー用DBを自動生成したい
- 使った分だけ課金にしてコストを最小化したい
Supabaseがおすすめなケース
- 認証(ログイン機能)やストレージも一緒に構築したい
- バックエンドのコードを極力書かず、フロントエンド開発に集中したい
- チャットアプリのようにリアルタイム通信が必要
次のステップ
- 試してみる:どちらも無料枠が充実しているので、まずはアカウントを作成してみる
- チュートリアルを実行:公式ドキュメントのQuickstartを試す
- 小さなプロジェクトで実践:ToDoアプリなど、小さなプロジェクトで実際に使ってみる
ローカルDBのセットアップに時間を取られていた方は、ぜひクラウドDBを試してみてください。環境構築のストレスから解放され、アプリ開発に集中できるようになります。
