前提
2025年にAIが盛んに騒がれている今になってもデータ活用に四苦八苦する事業会社を多く見てきました。結局のところ、適切なデータ整備がなければAI促進は頓挫するのは、ここの読者・住人ならご周知の通り。特に適切なデータが無い、データカタログの未整備、データ人材不足、データカルチャーなど根本的なところです。
そんなこんなで超絶ニッチ(dbt知人からは「地味だよね..」とまで言われた)だけど、個人的にはUnsung Hero(隠れたヒーロー)のような存在にじわじわ興味が湧き、Fivetranを触ったり調べたりする中で、色々自分なりに調べたビジネス寄りのハイレベル備忘録(2025年8月時点の情報)です。
Fivetran 要点
- データ同期の構築・管理を自動化するフルマネージドのデータ統合サービス。
- ELT(抽出・ロード・変換)方式に強みを持ち、SaaSだけでなくオンプレミスも含むシステム/サービスから700種類以上の多種多様なデータを自動で抽出・統合しし、クラウドDWHやデータレイクにロードするまでのデータパイプラインをノーコードで簡単に構築し、運用を自動化。
- 初回のみ全データを同期し、以降はCDCの仕組みを利用して増分データのみを取得することで、ソースDBへの負荷をかけず、データ統合を実現。
- スキーマ変更への追従も自動的に実施される。自動的にスキーマ構造が変更されるSaaSアプリケーションにおいては特に有効な機能であり、手動でのスキーマ管理作業が不要。
- 日本独自SaaSや特殊なデータ利用の場合は、Connector SDKを活用してPythonで独自Connector開発も可能。
- Transformations(データ変換処理) 機能により、必要な変換・整形処理を一元管理できる(Fivetran x dbtによるdbt pre-built packageにより容易に作業可能)。
- グローバル基準のEnd2Endセキュリティ準拠(SOC1、SOC2、ISO27001、GDPR、HIPAAなど)
- グローバルで6,600社が有料利用、2024年9月時点で収益$300m ARRを突破
- 2025 Databricks Data Integration Partner of the Yearをはじめ、SnowflakeやGoogle Cloudなど主要テック企業からAward受賞し、グローバルではモダンデータスタックを構成するディファクトスタンダードの存在。
- 2025年5月に買収したCensusによりリバースETLも可能。これにより、データウェアハウスに蓄積された加工済み・統合済みの信頼できるデータを業務系システムやマーケティングツールに自動で反映。結果、 即施策実行 → 効果測定のデータ利活用循環が生まれる。
Fivetranを非エンジニアにも分かる比喩表現で
テックに明るくない人にどんな価値提供をしているのか比喩で伝えたり、60秒以内で話すってことをいつも気にしており、Fivetranさん自身は以下のような表現です。
"Fivetran's mission to to make data as accessible and reliable as electricity."
(Fivetranのミッションは、データアクセスを電気を使うようにシンプルで信頼性の高いものにすることです。)
個人的にモダンデータスタックを俯瞰してみた場合にしっくりきた説明は以下です。
Fivetranは、まるで熟練の下ごしらえシェフが常にキッチンにいるような存在です。 食材の仕入れや下ごしらえを自動で行ってくれるので、料理チーム(データチーム)は本当に価値を生む料理づくりに専念できます。
いくら腕の立つ料理チームでも、食材が新鮮で、きれいに下ごしらえされ、すぐに使える状態でなければ、素晴らしい料理を作ることはできません。
Fivetranは、その陰の立役者として、最高水準の料理基盤(DataOps)を支えます。そしてその結果、これまでにない革新的な料理(AIや機械学習のような新しい価値)を提供できるのです。
Fivetranのビジネス価値(ハイレベル)
あれができます、こんな機能があります、というプロダクト(機能)売り説明ではなく、結局、自分にとって何が美味しいの?という観点が知りたいですよね。DXと呼ばれるイニティアティブは会社の経営戦略に沿って、「組織・人・プロセス・テクノロジー」から構成されることが多いため、以下のようにまとめてみました。主にCDOやデータチームリーダー向けの整理です。
| 観点 | 価値 | 内容 |
|---|---|---|
| ① テクノロジー基盤 | モダンデータスタックへの移行加速 | Fivetranによる自動化は、Snowflakeやdbtなどの選定効果を最大限に引き出す“土台”。クラウドネイティブな柔軟性を担保し、変化に強い基盤を構築可能。 |
| ② 非効率な手作業・属人化の排除 | 非効率な手作業・属人化の排除 | データ取得の作業時間を大幅に削減。運用リスクと属人化から脱却し、アジリティのある業務変革が可能に。 |
| ③ データチームの生産性 | データエンジニアの働き方改革 | データエンジニアが“連携作業”から“価値創出”に時間を使える状態に変革。平均で40〜60時間/月の工数削減を実現している事例もある。 |
| ④ データ人材・組織戦略 | 採用難とスキルギャップの解消 | Fivetran利用により、シニアエンジニアのスキルでなければ維持できなかったパイプラインを、少人数で安定運用可能に。人材不足の中でも再現性のあるデータ運用が可能に。 |
| ⑤ AI活用・経営インパクト | 全社的なAI活用の“前提条件”を作る | AIモデルを構築する前に、“正しいデータがある”状態が不可欠。Fivetranは、経営や事業側が“信頼できるデータ”に素早くアクセスできる状態を実現する。 |
価格体系とポイント
前提として、Fivetranの価格体系はMonthly Active Rows(月間アクティブ行数)に対する従量課金。MAR は Fivetran の使用量ベースの料金体系における重要指標で、特定の暦月にソースシステムから Destination に同期された一意のプライマリキーの数を指します。月の間に同じ行が何度更新されても、1 回しか課金対象になりません。Fivetran は増分更新により同期を行うため、処理対象は毎回変更のあった行のみです。
MAR による価格体系には以下のメリットがあります。
| 観点 | ポイント |
|---|---|
| コストの予測可能性 | 初回同期(Initial sync)以降は更新分のみが課金対象です。多くの場合、データ増分の規則性があるため TCO(Total Cost of Ownership)を予測しやすくなります。 |
| 同期頻度の柔軟化 | 同期を頻繁に行っても課金対象はアクティブ行なので、大きくコストが変動しません。ビジネス要件やログの蓄積要件に合わせ、最適なタイミング・頻度で同期を実行できます。 |
| 運用の安定化 | CPU やメモリなどのリソース制限を考慮する必要がないため、データ量が急増しても処理遅延や同期失敗を最小化しやすくなります。 |
- 追加ポイント(1):年間利用予定に基づくMARを事前契約し、以降は利用分を消費していくコンサンプションモデル。よって、予算超過することもないですし、必要に応じて追加MARを契約する流れです。
- 追加ポイント(2):料金モデルは対数的にスケールし、ボリュームが増加するにつれて自動でディスカウントが適用されます。データ量が10倍に増加しても、料金は2~4倍の増加に留まります。
データ活用による全社横断的なDX推進、新規事業(プロダクト)、AI利活用など様々なビジネスユースケースがあります。事業推進や利用者起点で考えてモダンデータ基盤を構築する際に、どのようなデータソース(Connector)をDesination(DWHやデータレイク)に接続すると、利用者(経営陣や事業部門)のニーズに応えらえるのか事前に整理し、概算費用を見積ることで費用感は掴めてくると思います。
その他テクニカル的なまとめ
Qiitaにて、@manabianさんが素敵な日本語情報を整理してくれていました。個人としても、こちらも参照して理解を深めましたので、要チェックですね。
フルマネージドなデータ連携:データ統合の自動化を実現する Fivetran の全貌
Youtube: How Fivetran Works: A Look Under the Hood
BGMや音声(英語)流れるので注意してね。


