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WiFi が不安定なときの確認事項(自宅・オフィス編)

Last updated at Posted at 2018-01-24

リモート時代のソフトウェア・エンジニアのための Wi-Fi 切り分けリストと基礎知識

Wi-Fi の調子が悪い。ちょっと見てくれる?

「通信はできるものの遅い」「WiFi の反応がない」と、ただのプログラマーなのにただの██屋と思われているのか、「みて欲しい」と言われたときの切り分けと説明のボキャブラリー集です。

もちろん、ここに記載している内容はインフラ屋さんから見れば基本中の基本で、より厳密に説明すると異なることもあります。しかし、ソフトウェア・エンジニアとして知っておきたい知識、つまり「●●を試してどうか」の切り分けと、解決した場合の「直った理由」(考えられる原因)をリストアップしています。

主に「物理的な切り分け情報」をメインに記載しています。ソフトウェアの設定に翻弄されるに潰す要素としてご利用ください。なお、無線 LAN のうち IEEE 802.11(俗に言う WiFi)に準拠した a b g n ac を対象にしています。

また、思い出したら適宜追加して行きますが、追加項目・修正事項があれば遠慮なく編集リクエストくださーい。

合わせて読みたい

銀の弾丸なんてない

まず、どのような対処をするにしても、大前提として再認識しておきたいのは「銀の弾丸なんてない」ということです。つまり「一発で全ての WiFi の不具合を治す方法はない」ということです。

電源の再投入が一番近いし、効果も大きいのですが「治して」はいません。根本的な原因を解決しないと必ず再発しますし、下手をすると機器を傷め(機器の寿命を縮め)、発生頻度が年々高くなります。

とは言え、👌お金 に余裕があるならば「金の弾丸」は存在します

ぶっちゃけ、こんな長ったらしい記事を読むより、プロバイダの再検討含め、配線からルーターまで「プロにお願いして総入れ替えした方が早いし、速い」です。まじで。もしくは、Wi-Fi をメッシュ型にし、LAN ケーブルも CAT6A に総入れ替えするなどでも激変します。

「WiFi が遅い」というのは「パソコンが遅い」のように、非常に抽象的かつ体感的なものです。

WiFi ルーターの再起動は、PC の再起動やデフラグと変わりはありません。WiFi の速度改善は、PC で言えば CPU 温度だったり、タスクマネージャーやプロセス一覧を見て不要な常駐アプリやサービスを探すようなものです。

つまり、「遅くなる理由」を考え「原因を追求」して逆算しながら、1 つ 1 つ懸念をつぶしていくことで総合的に対処するようなものです。正直、知識があっても面倒臭い作業なのです。

ルーターの正体
忘れがちなのですが、ルーターと言えどパソコンと同じです。分解してみるとわかりますが、HDD のない、複数 LAN ポートの付いた SBC に、メーカー独自のルーター・アプリを入れてるようなものです。つまり、遊んでいるパソコンに、ネットワークボード・WiFi ドングルなどを載せて、ファイアーウォールやルーティングのソフト(例えば pfSenseOPNsense など)を入れれば、高性能ルーターも自作出来ます。しかし、1〜2 万で買えるホームルーターの方が「色々と楽」というだけなのです。逆に言えば、その程度のスペックの「なんちゃって PC」をルーターにしているという認識も大事です。PC が不安定になる要素は、ルーターにも言えます。そして、その典型が放熱不足と電力不足です。

何が効くのか弾丸の種類を知る

経験上、ネットワークの遅延にはくせがあります。自分のネットワークの癖を見つけ出せれば、WiFi であっても必ず安定したネットワークになって行きます。

この記事では、そういった「切り分けのボキャブラリー集」の 1 つ(切り分けの要素をまとめたもの)として書いています。

とは言え、たくさんの要素があり、それらの組み合わせの問題であるため可能性は膨大です。当然、要素やパターンも一回で覚えられるものでもありません。この記事は「あー、それがあったか」的な使い方が良いと思います。そして、気になる用語や事項が出てきたら、さらに掘り下げてみてください。

モノの原則
パソコンであろうが、家電であろうが、家具であろうが、車であろうが「古いものを、長く使い続けるにはメンテナンスが必要で、安く済ませるためには知識が必要」です。そして、早く済ませるには経験が必要です。知識や経験を得る時間がない人は、プロにお願いして時間を買うしかありません。しかし、時間をかけて、試行錯誤して得た切り分けのノウハウは、末長くモノを使い続ける本当の意味でサステナブルなものだと思います。

切り分けに必要なポイント集

始める前のポイント

  1. 俺様ネットワーク図を書いておく。
    • 作業を始める前に「自分が認識しているネットワーク図」を書いておき、作業しながら校正していくことで、ボトルネックが見つかる。
  2. ネットワーク機器の情報を一箇所に押さえておく(型番・マニュアル・対応通信速度や IP アドレスなど)。
    • ネットワーク図にメモ書きでもよい。
    • 機器のマニュアルや同梱品はバインダーで整頓するよりも、機器ごとに付属品も一緒に A4 サイズのジップロックにまとめて入れておき、段ボールに入れて整理しておいた方がシンプルに管理できて実用性が高い。
  3. 自宅やオフィスの点検口内がどのようになっているか知っておく。
    • LAN がマンション・タイプの場合は、多くは風呂場などの点検口付近に基幹からの LAN ケーブルが引き込まれています。そこに、ルーターや各部屋の LAN くちに分配する Hub が設置されています。後付けでインターネットを引いた場合は、一般的に弱電盤付近に設置されることが多いです。

「点検口?」と思い、点検口の画像を見て「え?あれって居住者が覗いていいの?」と感じるかもしれません。スカートの中を覗くような背徳感と言うか。しかし、それはパソコンやサーバーの「筐体を開けて覗くのと同じ」です。
もちろん、そこに見える謎のケーブルやパイプなどは無闇に触ってはいけませんが、業者さんに限らず利用者が建物内部の状態をチェックことができ、経年劣化の早期発見につなげるためのものなのです。

ネットワーク図のコツ
コツとして、「雑記帳」として俺様専用のノートを用意しておき、あとから清書するつもりでメモ書きから始めることをオススメします。

「見開きを 1 日」として日付を付け、日記のように時系列に記録します。この時、過去のメモを修正したい場合は、新しい見開きに書き直します。多少スカスカでもノートを贅沢に利用するのがコツです。最初は面倒ですが、何度も書き直すことでトラブル時の勘所かんどころがつかめるようになります。

また、機器の型番やメーカーなどの普遍的・変わることがない情報は、ノートの最後のページから逆方向に記録しておくと勝手が良いです。

なお、このノートは「人に見せるものではない」と割り切ることが大事です。字の汚さや漢字などが気になり、最初からツールなどを使って綺麗に残すことを意識してしまうと試行錯誤の支障になります

特にツールのオブジェクト選択など「(この機器の記号はこれでいいのかな)」などと、他人への見栄えといった無駄なことに悩む時間が増え、バイアスがかかったり切り分け後の更新が面倒です。

確かに後続の人のために綺麗に残すことは大事ですが、何度も書き直したものの方が役に立ちます。ログと同じです。

時間がない場合に最初にできること

いざ WiFi 速度改善に取り組むと、意外なほど、意外なことに時間を食われます。そこで「前準備」的に先に以下を実施しておくと、後々の作業が格段に楽になります。

  1. 各部屋でインターネット速度テストを朝昼晩と実施して複数回ぶん記録しておく。
    ラズパイや眠っている PC があれば、ローカルで SpeedTest サーバを立てて、家内 LAN の速度測定もしておくと、プロバイダ側の速度に問題があるのかの役に立つ
  2. 後日ケーブルや機器交換がしやすいように、一旦、全ての機器を取り外し綺麗に配線・設置しなおしておく。
    その際、電源アダプターに本体の情報がない(アダプターを見ても、どの本体用かピンポイントにわからない)場合は、サインペンやテプラなどで明記しておく
  3. ルーターを工場出荷時に戻しファームウェアを最新にした後、WiFi アクセスポイント名とパスワードを別の新しい設定に変更し、各 WiFi 機器のネットワーク設定をクリアして再設定しておく
  4. 上記を行なう際に、機器情報をメモしておく

これらを事前に実施しておくだけでも、意外に効果があります。特に、電源や LAN ケーブルがスパゲティのように絡んでホコリまみれになっていたり、ルーターや HUB が所狭しと密集して設置されているものをスッキリとさせておくだけでも本格作業が格段に捗ります。

推測するな、測定せよ(脳内ネットワーク図に速度の濃淡が見えてきたらメッケもの)

我々の業界でも良く聞くフレーズです。計測データを元に「何が問題か」「どこに問題があるか」のカウンセリングを行い、まずは問題箇所を明確にしてから解決法を考え、解決法を 1 つ 1 つ実施して潰して行き「測定の前後によって判断せよ」というものです。

と言うのも、前述したように「WiFi が遅い」というのは体感的なものです。「プロバイダが提供している速度以上の速度は出ない」と頭では理解していても「月々うん千円も払っているのに」という気持ちが勝ってしまうものです。

しかし「遅いと感じているのは自分だけ」ということもあります。例えば同じマンションの他のファミリーは「特に不満はない」という場合や、有線だと問題なかったりする場合です。その場合のプロバイダ変更は(マンションにとって)正当性は弱いことになります。

これだけではありませんが、常に計測する習慣をつけることで、頭の中に自宅やオフィスのネットワーク図が出来上がり、どこらへんでデータの流れが滞っているのかといったものが見えてくるようになります。

そうすると、自然とネットでチェックする機器が絞れてくるので、後はセールなどで勢いで買い換えることです。(って勢いかーい Σ👋 バシッ)

注意するポイント

  • 3 大配慮ポイント

    1. 放熱
    2. 配線
    3. 電波干渉
  • ハード面

    1. 電圧(タコ足配線などによるパワー不足)
    2. 発熱(放熱不足による CPU などの熱暴走)
    3. 発熱(放熱不足によるコンデンサーの劣化
    4. 電源の極性(コンセントの向き)
    5. 電源ノイズ(によるパケット落ち)
    6. 干渉(複数ケーブルの隣接による漏話のパケット落ち)
    7. 干渉(電源とLANのケーブルの隣接による漏話のパケット落ち)
    8. 干渉(携帯電話の着信や SMS など、強いシグナルを頻繁に送受信している機器がある)
    9. 衝突(複数の AP が近すぎる)(AP = アクセスポイント。以下 AP)
    10. 衝突(2.4GHz帯の機器が多く混雑している)
    11. 距離(2.4GHzのつもりで5GHz帯を使っていて電波が弱くなっている)
    12. 切り替え(WiFi 規格混在による 802.11b/g/n/a/ac のアンテナの奪い合い)
    13. 切り替え(複数 AP 名が各々違うため、遠くの AP につながったまま)
    14. 切り替え(気象レーダーを検知して DFS が働き 5GHz が 30 分動かない)
    15. 経年劣化(ケーブル類のサビなどによるノイズ発生)
    16. 経年劣化(コンデンサーが破裂しそうになっている)
    17. 経年劣化(HUBなどで特定のポートが接触不良を起こしている)
    18. 断線(ケーブルがドアや扉などに挟まっており、実は銅線1本でかろうじてつながっている)
    19. 断線(壁内のケーブルがネズミに噛まれており、実は銅線1本でかろうじてつながっている)
  • ソフト面

    1. 同時接続(AP の瞬間・・同時接続数を超えており接続順番待ちが発生している)
    2. IP アドレス(DHCP と固定 IP でアドレスの奪い合いが発生している)
    3. IP アドレス(特定の時間のみ知らない DHCP サーバが起動しているなど)
    4. IP アドレス(IPv4 and/or IPv6 の割り当てに失敗している)
    5. IP アドレス(プロバイダが IPv4 only なのに IPv6 で外部接続をトライしている)
    6. MAC アドレス(起動するたびにランダムな MAC アドレスを割り当てる端末を使っている)
    7. データの流れ(WAN 側からのアクセス過多はないか)
    8. データの流れ(LAN 側からのアクセス過多はないか)
    9. アップデート(セキュリティ・アップデートのアップデート指示待ちによるブロック)
    10. アップデート(ファームウェアなど、アップデート後の再起動待ちによるメモリ不足)
    11. アップデート(ファームウェアのダウンロード/ダウンロードの失敗でリトライしている)
    12. アップデート(クライアント側でバックグラウンドでアップデートが始まっていただけ)
    13. 不要な AP の登録過多(移動中に無料 WiFi が登録されてたなど)
    14. 時刻(ルーターの本体時刻が合っていない)
    15. 認証(WiFiの再起動などにより、相互の接続やセッションの情報に不等号が発生している)
    16. 認証(AP/ルーターなどの NTP が正しく動いておらず接続の認証ファイルが無効になる)
    17. 認証(認証データの破損。AP/ルーターの暴走などによりセッション情報が壊れた)
    18. MTU 値(高いほど良いと聞いて、適正値に設定していない)
    19. バッファ容量(通信機器のメモリにゴミが溜まっている)
    20. バッファ容量(ルーターの DNS キャッシュがパンパン)
    21. 常駐アプリやサービスなどのプログラム側の不具合
    22. 名前解決(DNS か Bonjour か)
    23. ネットワーク設定(DNS/MTU などの設定変更)
    24. セッション(省エネモード、スリープやスタンバイからの復旧時に繋がらない)
    25. セッション(通信中に Wifi を再起動するとアプリを閉じないと繋がらない)
    26. OS の速度制限(Android など、従量制・定額制の通信設定が働いて速度制限されている)
    27. プロバイダー(プロバイダーや管理会社側の設定ミス。マンションタイプなどに多い)

疑うポイント

  1. 電源アダプターが同メーカーの他の類似機器のものと入れ替わっていないか疑う
  2. 熱暴走していないかを疑う
  3. 熱暴走によりメモリにゴミデータが溜まりバッファ容量が減っていることを疑う(∴ 再起動が必要)
  4. 機器でなく、配線やコンセントの電源系統を疑う
  5. ノイズが入ることでパケット落ちしている可能性を疑う(WiFiは電源ノイズが大敵
  6. 交流でもコンセントには挿す向きがある
  7. 機器側にも挿す向きがある
  8. LED照明と可変照明を疑う(そもそも LED はノイズを発して発光するため)
  9. タコ足すると本体の温度が上がる(∴ 熱暴走しやすくなる)
  10. 設定を疑う(ユーザーがよくわからない中で変更したなど)
  11. 自分のマシンだけで発生しているか疑う(ネットワーク全体でなく個別の問題)
  12. 最終的にプロバイダや管理会社すら疑う

メーカーのスペック

基本的にメーカーは嘘を言いません。しかし、また同様に「想定する範囲内で正しいことを言っている」とも言えます。

つまり、メーカーのスペック通りの速度や安定性、もしくは「再起動しなくても動く」というのは、すべて取り扱い説明書に書かれた想定範囲内での使用に限るのです。

ラズパイと UQ-Wifi で配信サーバー作ったwwww」と友達に渡したら「チョモランマの頂上から配信できなかった」と言われるようなものです。

また「ルータを手で触っても『思ったより暖かいな』くらいだったから大丈夫だと思った」というのも、プラスチック筐体で暖かいということは、本体基盤(特に CPU)は触われないくらい熱いということです。つまり「規定温度以上で常時運転していた」ということで、熱暴走だけでなく、コンデンサが膨張する原因にも繋がります。

これは意外に重要なので、取扱説明書にある使用条件は把握しておいた方がいいです。コールセンターに問い合わせるとしても、対応が長引くと使用条件を網羅しているか必ず確認されるからです。

便利なポイント

WiFi やネットワークの設定に翻弄される前に、まずは以下の 3 点の懸念事項を中心に「先に潰しておく」ことをおすすめします。

  1. 電源の極性を正確に合わせること。
  2. 消費電力の変化やノイズの多い機器と電源を一緒にしないこと。
  3. 本体温度を動作保証範囲内に収めること。

あると便利な道具

以下は、なくても良いのですが、あると便利なものです。

  1. Android 持ちなら WiFi Analyzer 系のアプリがチャンネル干渉や電波強度のチェックに便利
  2. テスター検電ドライバーがあればコンセントや電源の極性を簡単にチェックできるので便利
  3. LANポートと WiFi の付いた SBC

知っておくと助かる基礎知識

最大接続数の罠

「1 台の WiFi ルーターで、接続できる端末の台数には限界がある」というのは理屈だけでなく体感でも理解できているかたは多いと思います。コンシューマ向け(民間向け)の WiFi ルーターでは、ショッピング・モールのお客様の WiFi 接続に耐えられないということも。

WiFi ルーターには「最大接続数」と「瞬間同時接続数」の 2 つがあります

この 2 つの違いを知ることは重要です。なぜなら、メーカーがその数を濁したり(明記していなかったり)、販売店が言葉の柔術で微妙に使い分けたり・誘導するのに使われたりするからです。

「最大接続数」と「瞬間同時接続数」の違いを遊園地に例えると、「最大接続数」が「入場可能数」で、「瞬間同時接続数」が「乗り物の席数」みたいなものです。この 2 つの数が異なると「入れたのに乗れない」という「待ち」が発生するということです。

WiFi ルーターにおいて「最大接続数」とは「WiFi ルーターが割り当て可能な IP アドレスの最大数」です。

鋭い方は「DHCP の割り当て範囲数か」とお気付きかもしれません。

DHCP の仕組み上、割り当てられる台数は IP v4 の範囲であれば、いくらでも変えられます。これが、WiFiルーターのメーカーが仕様に「最大接続数」を明記しない(できない)理由です。

しかし、DHCP のセグメント(IP アドレスのグループ化と割り当て)設定をあえて変える一般家庭は多くありません。そのため、販売店や営業マンやアフィリエイト・サイトでは、デフォルトで設定されている割り当て範囲を「最大接続数」と、うたうことが多くあります。

また、複数台のマシンから速度測定サイトで測定を行ない「接続できている」という確認はできます。

しかし、スピードテストの仕組みは、クライアントがリクエストしたファイル・サイズとチャンク(分割)サイズに対して、サイト側がそのぶんのランダムなデータを送り返しているだけです。

つまり、ルーターが IP アドレスを割り当てられたなら通信はできてしまうのです。

対して「瞬間同時接続数」とは「その瞬間、同時に接続できる台数」です。そして、その台数を決めるのが「アンテナ数」です(最低でも送信用と受信用に 2 本のアンテナが必要ですが、メーカーによっては、送受信を 1 本として記載しているものもあります)。

WiFi ルーターは、このアンテナの接続先を高速に切り替えてデバイスとデータのやり取りをしているのです。

そのため「通信はできるものの、接続台数が多いとモッタリと感じる」のは、この接続待ちが発生しているからです。

では「ルーターがデータを送信する際、デバイスごとに接続して送り付ける」のではなく、ブロードキャスト(一斉送信)するかのごとく、複数デバイスのデータをまとめて送ってしまい、受け手がそのデータから自分の分のデータを抜きだせればどうでしょう。再接続時のオーバーヘッドが減ることになります。

この仕組みを取り入れたのが、WiFi の新規格 Wi-Fi6 で採用されている OFDMA という仕組みです。WiMAX などは、基地局との通信のやり取りはこの規格で動いています。

そのため、これから WiFi ルーターを決めるのであれば、「アンテナ数」と「Wi-Fi 6に準拠(OFDMA 対応)しているか」がポイントになります。

PING でパケット・ロス 0 % の罠

ping コマンドは、相手の端末が生きて(動いて)いるか確認する基本中の基本のコマンドです。そのため、普段使いしているかたも多いと思います。

体感的にも、明らかにパケット落ち(通信途中でデータが壊れてデータの再送が頻繁に発生)していると感じ ping を打つも、0.0% packet loss で「(あれ?んんん???)」となる方も多いと思います。

$ ping -c 5 yahoo.co.jp
PING yahoo.co.jp (182.22.59.229): 56 data bytes
64 bytes from 182.22.59.229: icmp_seq=0 ttl=51 time=7.949 ms
64 bytes from 182.22.59.229: icmp_seq=1 ttl=51 time=7.731 ms
64 bytes from 182.22.59.229: icmp_seq=2 ttl=51 time=7.081 ms
64 bytes from 182.22.59.229: icmp_seq=3 ttl=51 time=7.056 ms
64 bytes from 182.22.59.229: icmp_seq=4 ttl=51 time=6.199 ms

--- yahoo.co.jp ping statistics ---
5 packets transmitted, 5 packets received, 0.0% packet loss #← ここ
round-trip min/avg/max/stddev = 6.199/7.203/7.949/0.613 ms

「(カウント数が少ないからか)」と、カウントを多めにしても同じ。

しかし、おそらく この ping の情報が最初の重要な切り分けになると思います。

「なんか遅いのにパケット・ロスは 0 %」と言う場合、データの自動修復が働いている可能性があります。

なぜなら ping のパケット・ロス値は自動修復できなかったパケットで、再送依頼されたパケットの割合だからです。

ノイズや自動修復については「電源ノイズ」の項目でも説明していますが、TCP/UDP のパケットはある程度ハードウェアレベルで修復できるように設計されています。特に、「バースト」と呼ばれる突発的で一瞬のノイズのうち、弱いノイズに強いです。そして修復できない場合、TCP は再送依頼をし、UDP は依頼を破棄します。

昔なつかし音楽 CD を再生すると、表面に傷があるのに「再生できるもの」と「音飛びするもの」があったのを思い出してください。再生できるものがデータが自動修復された方で、音飛びする方がデータを修復できなかったもの、と考えると pingピン💡 と来ると思います。

また、再生できる方でも「傷が多いと最初の読み込みに時間がかかる」と体感した方も多いと思います。これは自動修復しながら再生する際に曲の途中で処理待ちにならないためにバッファして(ある程度データを先読みしてデータを溜めて)いるからです。

この感覚は動画のストリーミングでもあると感じると思います。

このことから、話しをまとめると以下のパターンが考えられるので、次の切り分け(どこが発生源が)を考えることになります。

  1. ping のパケットロスが 0 % なのに遅い → データ修復 可能 なレベルでノイズを拾っている
  2. ping でパケットロスが発生している → データ修復 不可能 なレベルのノイズを拾っている
  3. CPU や NIC(ネットワーク・カード)のチップが熱を持ちすぎて自動修復に時間がかかっている
付属ケーブルの罠(LAN ケーブルの長さとシールドと自作のススメ)

  • 今北産業
    1. なるべくピッタリの長さのケーブルを使うこと。アンテナと同じなので長いとノイズも拾う。
    2. ケーブルに悩んだらシールド付いてる「カテゴリー6A の STP タイプ」が 2021 年現在はリーズナブル現実的
    3. 「カテゴリー7」や最新の「カテゴリー8」は規格変更の可能性もあり、対応機器も少ないため速いがリスクを伴う諸刃の刃。

オフィスの場合、大は小を兼ねる的に誰が買ったのか分からない、長い LAN ケーブルが使いまわされることが多くあります。また、本体同梱品の LAN ケーブルが長かったので束ねたまま使い続ける、などです。

しかし、ケーブルの終端がきちんと加工された市販の 5 m の LAN ケーブルを束ねて使うより、自作した 5 cm・・ のピッタリの長さの LAN ケーブルを使った方が圧倒的にマシと言うことが多々あります。(逆に同じ長さ・種類なら市販の方がラクです)

ONU(光回線の終端装置)からルータへの接続ケーブルや、ルーターから Wifi ルーターや HUB など、機器と機器の中継に使うケーブルは短ければ短いほど良いです。結局 LAN ケーブルもアンテナと同じ銅線なので、長いぶんノイズを拾いやすくなるからです。

そのため、ケーブルの抜き差しが少ない箇所では、LAN ケーブルは「最低限の長さ」で「良いもの」にするのがベストです。さまざまな長さの LAN ケーブルが市販されているので、ちょうど良い長さのものがあれば予算内で「良いもの」を買うのが良いでしょう。

ここで言うケーブルの「良いもの」と言うのは、基本的に「適切なカテゴリー数」、「シールドの有無」、「作りがシッカリしているか」です。値段もそれに合わせて比例し、自作する場合、加工の難しさも比例します。

カテゴリー数は基本的に「速度」と考えて良いでしょう。カテゴリー数が高いほど速い速度に対応しています。そして、速度が速くなれば、なるほどノイズにシビアになっていきます。

LAN ケーブルにおけるカテゴリーは、厳密には、LAN ケーブルの規格です。

カテゴリーの見分け方はケーブルの側面に印字されています。ケーブルの表面を見ると、横文字で小さく「Cat5」「Cat6」といったカテゴリーの表記が等間隔でされているのが確認できると思います。

逆に、同梱品の LAN ケーブルでカテゴリ情報が印字されていないものは、後々予期せぬトラブルの元になるので、思い切って破棄しましょう。

20 年前は「カテゴリー5」が主流で、10 年前は「カテゴリー5e」、2020/02/23 現在は「カテゴリー6」「カテゴリー6A」が主流です。

実は、現在では「カテゴリー8」まで市販されています。「カテゴリー7」「カテゴリー8」は生まれたての規格で、他のカテゴリー同様に、マイナー・バージョンが出てくる可能性があります。

特に「カテゴリー8」に関しては、従来の RJ45(8P8C) と呼ばれるコネクタの形状を変える・変えないで、規格を制定する側とメーカーでせめぎ合っている最中です。

しかも、市販されている「カテゴリー7」「カテゴリー8」ケーブルは、大半がメーカーの独自規格(昔の RJ45 の形状に独自に戻したコネクタだったり、STP のシールドを付けないでコストを下げたりしたもの)なので注意します(使えちゃうけど)

また、LAN ケーブルを挿す端末側も、その速度と規格に準拠していないと行けません

と言うのも、LAN ケーブルはカテゴリ 6 以下であれば接続端子が同じ RJ45(8P8C)であるため「挿せば、とりあえず動いちゃう」ので「速くなるもの」と錯覚するのです。これは、カテゴリ 7/7A でも RJ45(8P8C)端子のタイプだと同じ錯覚を起こします。

LAN ケーブルは上位互換があります。つまり、1 ギガビットのネットワークカード同士を 10 ギガビット対応の「カテゴリー6A」のケーブルで接続はできますが、そのネットワークカード以上の速度は出ません。つまりケーブルが良くても本体以上の速度は出ません。

同様に、10 ギガビットのネットワークカード同士を 1 ギガビット対応の「カテゴリー5e」のケーブルで接続はできます。しかし、ケーブルの速度以上は出ません。つまり、ネットワークカードが良くてもケーブル以上の速度は出ません。

「アホか。当然じゃないか」と思うかもしれません。実は意外なことに、思っていた以上に、これを勘違いする人がいます。

確かにケーブル交換で速度改善されるケースは多いのですが、ネットワークカードが古いままなので「言われたほど改善しなかった」と言う場合です。通信速度の問題はケーブルだけではありません、問題の 1 つを潰したと言うだけです。

さて、次に重要なのが「シールドの有無」です。LAN ケーブルは、速度が速くなるほどノイズにシビアになるからです。

ケーブルにおけるシールドとは、電磁場を遮断するものです。具体的には、LAN ケーブル内にある配線の周りにアルミ箔や編み込みの銅線などで覆われたものです。LAN に限らずケーブルをカットした時に内部からアルミ箔やタイツみたいなものが見えたことはないでしょうか、アレです。

「シールドあり」のタイプを「STP ケーブル」と言います。「STP」の S はシールドの S です。2020 年現在、規格としてシールド(STP)を必須としているものは「カテゴリー7」系です。

そのため、「カテゴリー6A」を選ぶ場合も STP タイプを選んだ方がベストです。何はともあれ、予算が許すなら「シールド(S)付いてる(TSTP」と覚えましょう。

さて、筆者個人としてオススメしたいのが「1 度は自分で LAN ケーブルを自作してみる」ことです。

理由は「LAN 配線の仕上がりが綺麗だから」です。

これは美観の問題だけではありません。データの流れやメンテナンスの流れも綺麗になるためです。つまり、最適な長さにすることでノイズの削減だけでなく、保守の際にも把握しやすくなります。

ネットワークダウン時に、サーバの裏やルーター付近を見ると、埃のソースがかかったスパゲティー・コードをみてゲンナリした方も多いのではないでしょうか。その醜さのぶんノイズも拾っていると思って間違いないです。

LAN ケーブルの自作自体は難しくありません。理屈的には以下の 3 つをするだけです。

  1. ケーブルを切って中にある数本の線をほぐす。
  2. コネクターの溝に、ほぐした線を合わせて専用のペンチで圧着させる。(ちなみに、この圧着のことを「カシメる」と言います)
  3. 通電をテスターで確認する。

もちろん、最初は引っ張ると抜けてしまったり、配線がきちんとできてなかったり、接触不良したりと、返って不安定なものになります。しかし、子供でも作成できたので、数回懲りずにチャレンジすればコツが掴めてきます。

そして、一度自作できてから、Youtube などの HowTo 動画や、ググれば色々情報が出てくるので、そこから「なぜケーブルがねじれてるのか」「なぜストレートとクロスのケーブルがあるのか」といった知識を深めていけばいいと思います。

とは言え、初期コストが心配かもしれません。

簡易説明書入りの、必要なものが揃った LAN ケーブル自作工具セットも 2 千円からあるので、興味があるなら勢いで買ってしまった方が良いと思います。

工具セットに同梱されている説明書で、「ストレート」や「クロス」といった用語や配線の仕方に悩むかもしれませんが、最近のルーターや HUB は自動切り替え機能が付いています。ルーターとハブの仕様を確認してインターフェース欄に「ストレート/クロス自動判別」とあれば、どちらでも構いません。

下手な専門知識より先に、ケーブルの両端を説明書にある配線と同じ配線にして、テスターで通電することを優先した方がいいと思います。

練習には、すでにある長い Cat5a ケーブルを使うことをオススメしますが、ケーブルも大人買い(箱買い)すれば Cat6 STP 100m でも 8 千円くらいで購入できます。追加で買うケーブル・コネクターも、50 個の袋入りで 2 千円くらいの値段です。

1 万円もあれば家中のケーブルを作成できるので、おそらく個人用途では一生使い切らないかもしれませんが持っているだけでなんか嬉しいものです。一度成功すると「トイレにも LAN 引こう」とか無駄に考えてしまいます。

ちなみに「カテゴリー5(Cat5)」と「カテゴリー6(Cat6)」の速度以外の主な違いは、ケーブル内の配線数と、ネジレ防止用の軟骨のような十字の芯が入っているか否かです。Cat6 の方が配線数は多く、芯が入っているためケーブルが固めです。Cat5 に本数を増やして速度アップさせたのが Cat5e です。

メーカーによっては配線数だけ増やして、芯が入っていないフラットな Cat6 のケーブルもありますが、より加工が難しくなります。ドアや窓の隙間を通さないといけないと言った場合、芯の入ったしっかりしたケーブルで作成して、隙間は中継ケーブルなどを使った方がいいと思います。

留意するべき点として、市販のケーブルと自作のケーブルでのノイズの差があります。その差は、コネクタの加工クオリティです。

コネクタ内の剥き出しになっているケーブルの面積が多いほどノイズを拾いますし、そのぶん酸化しやすくサビてもノイズになります。また、圧着する際のコネクタの端子に触れるケーブルの面積が少ないほどノイズも増えます。つまり、綺麗に加工することが重要なのですが、何度か練習するといい感じになると思います。こればかりは練習です。

専門になると 5〜6 万するノイズ測定器付きの LAN テスターで仕上がり具合(ノイズの比率)をチェックしたりしますが、それはプロレベルです。そこのノイズにこだわるより、むしろスパゲティ状態を回避するのをメインとして自作にトライするだけでも、かなり違います。

美しい LAN 配線をググって見ると、どれも「流れがスムーズになるように配線している」のがわかると思います。美観より、LAN ケーブルをホースと見立てて、「水が波立たない・・・・・スムーズな配線はどれか」と想像しながら見るとピンとくると思います。

STP(シールド付いてる)ケーブルの誤解

4〜5 年以前までの家庭用ルーターの場合、STP ケーブルを使うとむしろノイズを拾ってしまうことが多くありました。シールドから拾ったノイズをルーターが逃さないものが多かったためです。

しかし、2021 年現在、最近のルーターや HUB であれば、次の 4 点を押さえておけば問題ないケースが大半です。

  1. 電源を指す向き
    アース側がちゃんとコンセントのアース側に挿さっているか。
  2. コンセント自体の配線
    コンセントのアース側がちゃんとアースにつながっているか。
  3. 電源系統
    冷蔵庫や電子レンジなどと違う電源系統になっているか。キッチンのブレーカーを落として一緒に落ちなければおk。
  4. 電圧と放熱
    タコ足配線していないか。本体温度が高くなりすぎていないか。

とは言え、STP ケーブルは高価かつ自作難度が高めなので、予算が許す範囲で以下の箇所から既製品を検討するのが良いと思います。

  • ONU やルーターなどの基幹から HUB につなげるまでの箇所(ボトルネックとなる箇所)
  • WiFi ルータと HUB の間(なるべく短いやつ)
  • 周りに他のケーブルが多い場所を通る箇所(束ねられてるなど)

以下は Cat6A ケーブルを使用した場合 STP がどの程度ノイズに影響があるか実測した動画です。Cat5 世代からすると随分進化したなぁと感じた動画です。

「有線 LAN はセキュリティが高い」の罠(無線 LAN と有線 LAN のセキュリティの違い)

実は、適切に設定された無線 LAN(WiFi)の方が有線 LAN よりセキュリティが高いのです。

また、必ずしも有線 LAN の方が無線 LAN より速いとは限りません

もちろん、安易な WiFi パスワードや暗号モードに WEP を使っていては意味がありません。また、良い LAN ケーブル(後述するカテゴリ数の高い LAN ケーブル)、速い HUB やルーターを使っていて、PC やマシンの LAN アダプターもその速度に対応していた場合は、有線 LAN の方が圧倒的に安定かつ速いです。

しかし、どちらが優れているわけではなく、各々の特徴を踏まえて両方を使うのが賢い選択になります。

有線 LAN の方がセキュリティ高いんじゃないの?

まず、一般的に「有線」LAN の方がセキュリティが高いと言われる理由に「傍受」があります。

これは「無線」LAN の場合、室外(家やオフィスの外)であっても無線が届くことが多いので、外から WiFi のパスワードを総当たりで時間をかけて調べることが出来るからです。確かに、これは事実です。

しかし、それ以上に失念しているのが「だからと言って、有線 LAN の方がセキュリティが高いわけではない」ということです。

落ち着いて考えてみればわかるのですが、有線 LAN にはパスワードがありません。つまり、LAN くちさえあればネットワークに入れてしまうのです。

関連業者さんが来て「LAN ケーブル貸して」とノートパソコンを社内ネットにつなげて NAS に直接データを落としていく小さなオフィスも多いのではないでしょうか。LAN のくちさえあれば繋がってしまうのです。

逆に言えば、天井裏や壁内に設置された HUB や、忘れ去られたエリアにあった LAN くちに数千円の WiFi ルーターでも挿してしまえば室外にも内緒で無線で飛ばせてしまえるということです。

アクセスポイントを隠す設定にして、ブリッジモードにした場合は、大抵の場合は気づかれません。(もちろんネットワークの簡単なノウハウで見つけることは容易です)

事実、下血(退社する人)が多い会社で、担当者がいなくなったと言うので(DB 移行の契約なのに)見てくれと言われチェックに伺ったところ、弱電盤に出どころ不明な携帯型の WiFi ルーター(有線-無線アダプタ)がぶら下がっていたことがあります。

警察に届けたところ、退社した社員が引き継ぎのために設置したことが発覚しました。退社後も引き継ぎと開発(仕上げ)を迫られ、出社も気まずいことから、こっそり WiFi ルータを設置して、夜な夜なノートを持っていってはビルの非常口の裏から作業していたそうです。

これはまだ良い(?)方で、某ホームセキュリティの会社の人が見積り(下調べ)が甘く、監視カメラ用の回線が引けないエリアがあるのが引き渡し直前に発覚し、それを誤魔化すために勝手に家の LAN につなげていたケースもあります。

上記の「便利なポイント」でも延べた「自宅やオフィスの点検口内がどのようになっているか知っておく」というのは、オフィスやマンションで LAN くちが壁内に設置されている場合、どこから引き込んで、どこで各 LAN くちに分配しているかを把握しておくということです。

これを把握しておくと「あ、ここにモバイル WiFi でも入れられたら外部に漏れるな」と気付けると思います。社内のインフラ担当者さんが、どれだけ気を使っているか実感出来ると思います。

不特定多数の業者さんが出入りするようなオフィスなどでは、むしろ無線 LAN に徹底して、有線 LAN くちに触ることができない状況を作るのがとても有効になります。

特に、最近の WiFi ルータには「ゲスト・モード」という、社内のネットワークを通さずにインターネットに接続出来るものが大半なので、来客や不安な機器(メーカー不明の監視カメラなど)を、つなげるのに活用できます。

さて、無線 LAN を嫌がる人の大抵の理由は「不安定だから」だと思われます。

そのため「(有線にしてもらえた方が問い合わせが減るのに...)」という気持ちが、セキュリティの話しと一緒くたにしてしまうのです。

しかし、この記事にあるチェック事項にもあるように、不安定な理由は、基本的に「ノイズの多い環境」か「つなげすぎ」だからです。電源にタコ足でつなげすぎたり、密閉されていたり、1 台のアクセスポイントに複数台のクライアントが「同時」に接続しすぎ、などです。

実は、家庭用 WiFi ルーターやアクセスポイントは、同時接続数がスペック上そこそこでも、「瞬間」同時接続数は意外なほど少ないのです。

コールセンターの新人さんや営業の人でさえ DHCP の割当可能アドレスのことを「接続数」と言っちゃうくらい誤解されています。iPhone、iPad、AppleTV、ネットTV、ノートパソコン、etc. の何台がストリームでつなげようとしているのか考えると、とても少ないと感じるでしょう。

また、無線 LAN を使うメリットにアップグレード時の「改修費用」と「景観」があります。

一度、壁内配線をしてしまうと LAN ケーブルの交換は大変になります。マンションや自宅の場合は特に改装に近い金額や手間が発生します。

「ケーブルを抜いて、新しいケーブルと入れ替えるだけでしょ」と思うかもしれませんが、ネズミの侵入防止のため壁内のケーブル配管は密閉されているため意外に交換は大変なのです。下手すると電気工事と同じくらいの手間になります。

すると、金銭的な面から壁の側面(表)に LAN ケーブルを這わせるという「美観」を損なうことになります。

オフィスの場合は気にならないかもしれませんが、自宅の場合、一気に見すぼらしさが増します。特に、業者さんに頼んでもケーブルモールで目くらましをするのがせいぜいです。しかも、こちらから言わないと、壁の色に合ったモールを使いもしません。本当に。

その点、無線 LAN の場合は機器を交換するだけで速度もセキュリティもアップグレード出来るので、802.11ac 以上が使える最新の WiFi であれば、WPA2-PSK/AES などの強いセキュリティにも当然のように対応していますし、下手な LAN ケーブル配線(CAT5e)より速度がでたりするのです。

ただ、速いタイプは 5GHz 帯であるため距離に弱いという弱点があります。そのため「以前(2.4 GHz 帯時代)より不安定になった」と感じることも無線 LAN を嫌がる理由にもなったりしますが、これも仕組みを把握すれば回避出来る問題で、ここで大事なのはセキュリティです。

いずれにしても、セキュリティの面で大事なポイントは「有線 LAN だからと言って安全ではない」という認識で、きちんと無線 LAN の仕組みを把握していれば「無線 LAN でも高速で安定した接続は確保出来る」という点です。

同じボルト数/アンペア数/接続くちのサイズのアダプタでも実は違うの罠

オフィスの引越しの際に AC/DC アダプターが一緒くたにされてしまい、同じメーカー同じ電圧でも実は本体の同梱品と違うアダプターを使ってしまっているということがよくあります。これが発熱や不安定な動作の原因になります。

「アダプターに記載されている電圧(V)、電流(A)、DC プラグ(本体側に挿す丸い円柱の挿しくち)のプラス・マイナスも同じで、同じメーカーだから」と使うパターンです。

テスターで測るとわかるのですが、実はアダプターの電圧はラベルの記載値より高い電圧が出力されているのです。

この電圧の差は、本体側の抵抗。つまり、本体で使われている CPU やファンなど、消費電力によって異なり、本体に挿して通電した際の平均電圧がアダプターに記載されているのです。

そのため、アダプターの OUTPUT の記載が同じでも、対応する本体の消費電力が違う場合はアダプターの実出力電圧も違うのです。

通常、この差は A(アンペア数)に現れるのですが、それは電圧(V)が高い場合です。「メーカーの純正品を使って欲しい」というのは、自社製品の囲い込み云々うんぬん以前に、単純に電圧の違うアダプタを使って欲しくないからです。

電子機器は、電圧が規定より高くても、低くても発熱します。電圧が高い場合は想像が付きやすいかもしれません。しかし電圧が低い場合に発熱するのは直感的でないと思います。

厳密な表現ではないのですが、例えば、とある電圧で安定回転するメリーゴーランドがあったとします。電圧が高いとパワーが出すぎてモーターが発熱するイメージですが、電圧が低いとパワーが出ず、重いものを無理に回転させないといけないので発熱する、と想像するとわかりやすいと思います。

つまり、想定した範囲を超えたり、足りなかったりした場合の差が熱になっているのです。

電子機器は電気機器と違い、数ボルトの世界で稼働しています。そんな世界で、CPU が1GHz の場合は 10 億回のオン・オフ(電圧の上げ下げ)、最近のタイプの 2.5GHz の CPU では 25 億回オンオフを繰り返して処理しているのです。(これはパソコンでも同じです)

電圧が高いと、オン・オフ時の高低差も大きくなり、発熱します。電圧が低くても、オン・オフの速度は変えられないので無理が発生し発熱します。そのため、電子機器はたった数ボルトの差でも意外に発熱の原因になるのです。

何はともあれ、ここで大事なのは「正しい機器を使ってくれ」と言うことです。アダプタに関して言えば、純正品をお願いするちゃんとした理由があると言うことです。

もし、アダプタが引越しなどでチャンポン混在してしまい判断に困った場合は、最終手段としてテスターで計測しましょう。

まず、各々のアダプタの出力電圧を測り、本体のラベルにある消費電力を見て、電圧の差が大きいものを消費電力の高いものに割り当てるようにします。

まだ、チャンポンになっていない場合は、AC アダプターに本体の型番などをテプラなどで貼っておくことをおすすめします。対応する本体の型番が記載されていないアダプターは多いです。

2.4 GHzの罠

ここでは、電波法を念頭に置いた話しを少しします。なぜ WiFi や Bluetooth などの 2.4 GHz が便利ならも不安定なのかの基礎知識です。

電気・音・光・電波・電磁波・ノイズ。これらが伝わる時はすべてなみを持ちます。波が伝わる時の特徴をイメージできると、トラブルシュートの役に立ちます。例えば、音の場合、低音は遠くまで届きますが、電波も周波数が低い方が遠くまで飛びます。そして、遠くへ届く変わりに情報量も減ります。

電波も、文字通り「波」であるため各々周波数を持っています。そして重要なのが、「特定周波数帯の振動を発する機器」を使う場合、本来は利用者は免許/許可証が必要なのです。警察無線や救急無線など「国の重要な各種周波数帯を阻害しないため」というのはわかりやすいと思います。

携帯、PHS、WiFi など、周波数によっては無免許でも使える機器がありますが、昔は携帯電話すらも利用者が免許を持たないといけませんでした。携帯電話が肩がけだった時代です。少し前に流行った平野ノラさんの「バブルに憧れる女 美奈子」の「シモシモ〜?」のシーンで持っている「ショルダーホン」と呼ばれる黒いバッグのアレです。

現在は法整備で携帯のキャリアーが代わりに申請してくれています。実は、携帯のアンテナはユーザーで交換できません。キャリアが申請した免許の内容と変わってしまうからなのです。

最近の携帯がアンテナを伸ばさないタイプになっているのも、感度や強度のあるアンテナに違法に交換しづらくするためです。

地下や防音設備のある施設などでは電波が入りづらいため、昔はロッドアンテナタイプのアンテナに変えたりする人が多かったのを覚えてる人もいると思います。十数年前の話しですが、キャバクラのホームページの宣材写真をもらいに行ったら「(ぐ、、、軍用かよっ!)」というようなサイズのロッドアンテナを付けたキラびやかなガラケーを持ったキャバ嬢が出てきたのを思い出しました。

つまり、アンテナを伸ばさないタイプが大半なのは、アンテナの形状(改造のしやすさ)を理由に申請が通りづらくならないように、というキャリアやメーカーの苦肉の策なのです(受信のためにだけにアンテナを長くすることは問題ないのですが、送信のためにアンテナを長くすると規定以上の範囲に電波を発信できるようになるため違法になります)。

さて、携帯に限らず、これらを縛る法律が電波法です。基本的に電波法が取り締まるのは「出力周波数」と「出力強度」の2つの要素です。

そして、「個人スペース内(室内)で使うぶんには、この周波数帯だったら自由に発信しても大丈夫だよ」という、低出力なら自由に使っていい周波数帯の1つが「2.4 GHz」です。

逆に言うと、周波数帯的には OK でも、出力が強すぎる場合や野外での使用は NG となります。

チャラいイベント屋さんとかやりがちなのですが、野外にアクセスポイントを引っ張ってきて設置したり、本館の WiFi を中継機で別館につなげたりするパターンです。規模が小さいからと言っても違法は違法で、あなたが思っている以上に野良電波にうるさい「電波警察」は多いです。ほんとに。下手すると通報され、案件になってしまうこともあります。「敷地内」と「室内」は別物です。

「どうしても野外で使いたい」「室内ではないが敷地内で使いたい」と言う場合は、許可を得るか、室外でも使えるライセンス付きの無線ルーターを使う必要があります。

「でも、室内に設置した WiFi が漏れちゃって、庭でも使えるよ」という場合ですが、「野外や室外でも使えるように創意工夫して WiFi を設置していない」のであれば、セーフです(この違い、わかるね?わからない人は、電波警察に通報され案件になって後で泣くよりプロに相談した方がいいです)。

何はともあれ、WiFi などが最初 2.4GHz が多かったのも「無許可で使える周波数帯」ということに関係していて、 WiFi の普及にも貢献しました。

厄介なのはノイズで、複数の周波数の波を持ってしまうことです。

ノイズは、音楽なら倍音みたいなもので、個性とも言えます。しかし、データ通信の場合は個性のないサイン波を好むため、天敵です。

特に問題なのは、電波を発しない機器からのノイズです。

例えば(WiFi のない)パソコン、冷蔵庫や扇風機なども周波数が関係していることです。というのも、CPU やモーターなど駆動するパーツを持つものは全てノイズと熱を発するからです。 (「電源ノイズ」参照)

そのため、利用者の免許が必要・不必要に限らず、いずれのメーカーもパスしないといけないのが「機器が発するノイズの周波数」です。

「電波を発する機器ではないのに、機器が救急無線の周波数と同じノイズを発していた」など、知らぬ間に周りに迷惑をかけていて通報により警察が来ると言うことにもなりかねません。このような「妨害電波」を防ぐため、メーカーはあれこれと工夫をしているのです。例えばケーブルや筐体のシールド加工(バリヤーを付ける)などです。

このように、メーカーは重要(危険)な周波数帯のノイズは徹底して発しないように改良して、有名な「技適マーク」を取得するのです。

ラズパイを始め、IoT 機器が「技適マークを取得しているか」に、こだわる人を見かけたことがあるかもしれません。それは、設置先が自由・容易であるぶん、意図しない妨害電波を出していた場合に広範囲で迷惑をかけかねないからです。

特に、IoT 機器などに海外製の無線デバイスを使う場合は注意します。国によって許可された(使っていい)周波数帯が異なるため、その国では合法でも日本では違法な周波数帯の出力をしている可能性があるためです。この場合、無線デバイス、つまり「送信・受信を無線で行う機器」と知っているため、意図的に使っているとみなされます。企業の場合、下手すると行政処分される可能性すらあります。

たまに「技適マークを取得しているから野外で利用しても大丈夫」といった意見も聞きますが、基本的にダメです。おそらくですが、最近、母屋と離れでも使えるように野外でも使える WiFi ルーターが出回っているためだと思います。これは携帯などと同じようにメーカーが予め免許の申請をしてくれた機器であるから使えるだけで、技適を受けた電波の弱い WiFi なら使っていいと言うわけではないのです。

さて、問題の周波数ですが、先の「2.4GHz帯」は基本的に検閲外です。つまり、恐れずに言うなら「この周波数帯(2.4GHz帯)のノイズなら発してもいい」とも言えます。

そのため、この 2.4GHz 帯域にノイズを発する機器は意外と多くあります。Bluetooth、Wifi の機器が少ないからといって安心せずに、ノイズを発する機器がないか注意してください。

意外なところでは Lightning ケーブルなどの認証チップ入りの USB ケーブルや、USB ハブでちゃんとシールド加工されていない安物などが原因だったりもします。マニアックなところでは、ライブハウスや施設などで使われる無線マイクや無線シールドなども 2.4GHz 帯付近のものが多くあります。

電源の極性

直流のプラス、マイナスと同じように、交流電源にも極性があります。ホットとコールドです。

ホットが電力会社から流れてくる方で、コールドが地面に接地して逃す方です。そのため、コールド側をアース(Earth)やグラウンド(地面)とも呼ばれます。

厳密には、コールド、アース、グラウンドも各々違います。また、電力会社から来たものは、そのまま電力会社に帰って行きます。そして、地下に接地してあるコイルを近くに置いて変圧したものが家に流れてきます

しかし、一般ユーザーとして必要なのは「逃げる側」です。つまり「どちらがアース側か」を意識するだけで電波系の精密機械は安定性が増すので知っておきたいポイントです。(我々ソフトウェアエンジニアには「どちらが IN で、どちらが OUT か」と流れで捉えると良いかもしれません)

AC 電源(交流)は学校で習ったように、どちらの向きでも動きます。しかし、パソコンや WiFi ルーターなどの精密機器は直流で動いていることを忘れてはいけません。

コンセントの向きが想定していた向きと違う場合、AC アダプタよしなに処理してくれているだけです。この時、電流の流れ(方向)を無理やり変えているためノイズが発生します。潮の流れが変わると波が立つのと同じで、流れどころに迷ったエネルギーがノイズになるのです。

また、電圧が大きく変化すると、その際に発生するノイズも強くなります。これも波と同じです。電子レンジや冷蔵庫の電源タップなどと併用すると顕著です。

そのため、コンセントと機器のアース側を合わせるだけで電流の流れがスムーズになるのでノイズが減る、という理屈です。「逆流させないための配線やコンセント向き」を考えると良いと思います。

コンセント側の極性(ジャック、差し込み孔、凹)

  • 穴の大きい方がアースです。(そもそも壁の裏の電源配線が違う場合の調べ方
  • 3つ穴の場合は、1本だけハブにされているのがアースです。
  • 一般的に正面から見て左側がアースですが、信用してはいけません。

機器側の極性(プラグ、凸)

  • ケーブルに白い線や文字が印字されている方がアースです。
  • 2本飛び出ているプラグのうち「C」「N」「G」「W」の文字が「○」や「△」で根元に書かれている方がアースです。(Cold, Neutral, Ground, White)
  • 2本飛び出ているプラグのうち「△」でアンテナのようなマークが書かれている方がアースです。
  • 2本飛び出ているプラグのうち、片方の先端がキノコ型に大きくなっている方がアースです。
  • 2本飛び出ているプラグのうち、アース線が飛び出ている方がアースです。
  • 3本飛び出ているプラグのうち、1本だけハブにされているのがアースです。

AC アダプタから直接電源プラグが飛び出ているタイプは判断が難しく、私自身、簡単に見極められる方法を見い出せていません。プラグが直接出ているのでケーブルの白線などのようには判断できず、大抵は2本のプラグの形状も同じで、根元のマークもないからです。

テスターを使うにしても注意書きに「+」(プラス)や「ー」(マイナス)が書かれた極性記号の「◇」(菱形)「○」(丸型)の違いでも異なるため、AC アダプタの場合は挿す向きを逆にしてどうかというモヤモヤした判断になります。

一般的に、コンセント・ジャック(差し口)を正面からみて左側が差し込み孔が大きいアース側であることが多いため、アダプタのラベルの向きで左側のプラグがアースだと思うのですが、確証はありません。(簡単な判断方法をご存知の方がいらしたら是非情報求む!)

電源ノイズ

WiFi が電源ノイズや電波ノイズに弱いと言われる一番の原因はノイズによってパケット・データが壊れるからです。それでも通信できているのは、以下の2つの仕組みのおかげです。

  1. データが壊れていたら自動修正する」というコンピューターの仕組み。(誤り検出訂正
  2. 「データが修正できないほど壊れていたら再送する」という TCP の仕組み。

前者の「データの自動修復」ですが、英語ですが以下の動画が、わかりやすく基本概念に詳しいです。

後者は PING を打った時に表示されるエラーです。つまり、大半は前者の「自動修正」で修正されてしまうので想像している以上にデータは壊れていたりするのです。

先にも説明しましたが、昔、CD に多少の傷が付いていても再生できてしまうのを不思議に思った人も多いのではないでしょうか。これは前者の自動修正機能のおかげで、後者の「修正できない場合」のバッファ切れが音飛びになります。

音響マニアが「ハードディスク、ケーブルや電源で音質が変わる」と言っているのを聞いて「スピーカーまでのケーブルはアナログなのでわかるとしても、音源はデジタルなんだから変わるハズないじゃん」と思ったプログラマーも多いと思います。

実は、この自動修正にかかったタイムラグがリアルタイムに変換される波形に微妙に影響を与えてしまうことがあるのです。特に CD はモータを使って盤を回すため、ノイズが大好きなのです。

オーケストラのクラシックの演奏で、有名な指揮者が「どの演奏者がどんな音を出しているか聞き取れている」のと同じように、音響マニアの方々は、その微妙な違いが倍音レベルでわかってしまう絶対音感的な感性を持っているからこだわるのです。

まぁ、いい歳してモスキート音が聞き取れても、私にはその違いがわからないのですが。

閑話休題。

ping でエラーは発生していないのに遅い」場合の一因として自動修復されるレベルのエラーが多発していることがあげられます。自動的に修正されてしまうため気づきづらい問題です。そのため「周りにノイズを発している機器がないか」の確認は重要です。

では、どのような機器がノイズをハッスルしてるかの簡単な見極めは以下の2つです。

  1. 機器内部で電極を激しく切り替えている部品があるか(モーターなど)
  2. 機器内部で電圧を激しく上げ下げする部品があるか(スマホ含む CPU や電子レンジ、冷蔵庫など)

ノイズが発生する原因は細かくはたくさんありますが、主な原因は先述の「電源の極性」にもあった流れが変わったことによる波立ちのノイズです。これらの要素がある機器とは別の系統から電源を取ることをおすすめします。

ここで言う「別の電源系統」とは、違うブレーカーを通すと言う意味で、「ブレーカーを落とした時に一緒に落ちた場合は同じ電源系統である」とも言えます。専用の電柱を引くと言うレベルではありません。

他にも電源ケーブルが輪のように束ねられていて、その上を WiFi ルーターへの LAN ケーブルが通っていたり、電源と LAN ケーブルが一緒に束ねられている場合も要注意です。フレミングの法則で習った仕組みで、電源ケーブルがコイル状態となり磁場が発生するからです。その、磁場が発生する状況で電圧が変わると磁場に波が発生しノイズが乗ります

これらを総称して「電源ノイズ」と言います。

電源ノイズでは、電子レンジや冷蔵庫は有名なのですが、実はパソコンも電源ノイズを多く発しています。ファンのモーターや CPU など全部盛りだからです。パソコン内部では、それらのノイズを踏まえた設計をしているのですが、外部に流れ出る電流に乗ったノイズまでは面倒を見ない、と行ったところでしょうか。

つまり、デジタル機器はモロにノイズの加害者でもあったりするのです。

ノイズによるパケット落ち

元々 TCP/IP は受け取った 1 つのパケット(データを細切れにしたもの)が壊れていた場合、先述した「データの自動修正」を行い「修復できない場合は再送してもらう」と言うパケットが壊れることを前提としたシンプルで力強い設計です。

シンプルであることによりインフラ構築のコストを抑えることができます。そのため、複数ルートを設けることが容易になり、これが後の俗に言うインターネットに繋がります。

そして複数ルートがあると言うことは、一部の中継サーバー(ルーター)が落ちた場合でも別ルートを経由して通信できると言うことです。結果として、戦争や災害や停電によるリスクだけでなく、日常においてもバーストと呼ばれる突発的なノイズを含む過酷な環境をケーブルが経由してもなんとか・・・・通信できるようになっているのです。

つまり、適当(雑)に扱っても通信できちゃうと言うメリットがある反面、意識しないと無駄なロスが発生し速度が犠牲になりやすいと言うことでもあります。

確かに、ちょっとした程度であればパケットの再送自体は問題ありません。しかし、継続してパケットが壊れると再送依頼が増えます。そのぶん、データ(全てのパケット)を受け取りきるのに時間がかかるだけでなく、他のパケットが流れるスペースが減ります。これを「帯域を圧迫する」と言った表現をします。飛行場のベルトコンベアーで、ピックアップされない荷物が永遠と流れるようなイメージです。

やたらと HUB やルーターの通信ランプは激しく点滅しているのに動画がカクカクする。これが「パケット落ち」です。

パケットが壊れる理由の1つに、何度か言及している「ノイズによるパケット落ち」があります。

若干の復習ですが、パケット・データはバイナリ(01 の)データです。つまり「オン」と「オフ」の信号であればパケット・データを伝えることができるということになります。

LAN ケーブルは電圧の「高い・低い」もしくは波の「広い・狭い」で「オン・オフ」の信号として流します。WiFi などの電波も、同様に特定周波数(速度)で電波の「強・弱」もしくは「広い・狭い」を「オン・オフ」とした信号になります。

実は、昔懐かし FAX などは音波の「強・弱」を「オン・オフ」したものです。FAX の場合はプロトコルが違うのでネットには使えませんが、代わりにモデムやカプラという機器で音による通信が可能です。

さて、これらの波にノイズが入るとデータのバイナリの並びが変わるので、パケット・データのチェックサム(ハッシュ値)が合わなくなります。修復を試みるも復元できない場合はデータが壊れたとみなされ、パケットの再送が発生します。これが、電源ノイズや電波ノイズによるパケット落ちです。

また、繰り返しになりますが、パケット落ちしていなくてもデータは壊れている可能性があり、微妙ながらも修復にかかるぶん時間がかかることを念頭に置いてください。

つまり、「何がノイズを発しているのか」「どこでノイズを拾っているのか」を見極めるのが大事なポイントとなります。

コンセントに挟むオン・オフのスイッチの罠

一般的な家庭用ルーターにはオン・オフのスイッチがないため、電源の入れ直しにはアダプターの電源の抜き差しをします。理想はルーターの管理画面から「再起動」を実行することです。しかし、電話での対応の場合、パスワード管理などの問題で面倒なので「コンセントを抜いて、10 秒程度待ってから挿し直してください」と言う案内が多くなります。

問題は、調子が悪いたびに毎回抜き差しするようになることです。根本的な原因の追求や、抜本的な対策が面倒になり「とりま、電源の抜き差し」が増えるパターンです。

その場合、突入電流でルーターが痛みやすくなるだけでなく、差しくちやケーブルが痛みやすくなります。

すると対症療法として、電源タップとコンセントの間に省エネ用にオン・オフができる1個くちのタップを挟むことがあります。

このオン・オフのスイッチ付きのタップを利用すること自体はケーブルを抜き差しするよりはいいのですが、物によってノイズが発生するので注意します。

まずは、タップ自体がノイズを発生している場合があるので、タップを外して安定動作するかを試します。特にタップから先でタコ足配線をしている場合は、タコ足配線が原因なのかタップが原因なのか切り分ける必要があります。1つのコンセントくちからの分配(タコ足)は少なければ少ないほと良いです。

タップの問題の切り分けですが、タップの LED がチラついている場合には注意します。LED は、それ自体がノイズを発生するからです。次に注意すべきなのが、タップのスイッチを切った時にホットとコールドのどちらを切断しているかです。両方切断するタイプであればベストなのですが、大抵どちらかを切断すると思います。

確かに、電源としてはどちら側を切っても動かなくなります。しかしコールド側を切断する向きで利用している場合、スイッチを切ってもホット側の電流が本体の回路を通りスイッチまで行くものの、切断されている(塞き止められている)ので他のルートに流れようとします。この時、電流にノイズが乗ります。

そのため、スイッチを切った時に切断していない側、つまりスイッチを切っても通電する側に「コールド(アース)」のマークを付けておくといいでしょう。これにより、本体に流れる前にき止めることになりノイズが減ります。

木造建築の罠(日本家屋は意外に強敵)

木造だからといって、鉄筋コンクリートの壁より電波が通ると思って舐めてかかると痛い思いをするので注意します。

実は、鉄筋のマンションよりも、木造の建物の方が Wi-Fi の通りが悪いことが多くあります。特に、古い日本家屋のような木造の建物や、高級木材を使った家具内に Wi-Fi アンテナを設置すると顕著です。

木造建築や木造の家具で忘れがちなのが、鉄より電波を通さない身近な物質、つまり「水」を含んだ壁であることです。潜水艦が先端技術の塊と言われるのも「水」という壁があるからです。

厳密には、水は電波を通さないわけではありません。低い周波数でないと通りにくいため、WiFi のような高い周波数だと跳ね返ったり散ったりでノイズだらけになってしまうのです。実際に低い周波数で水でも通る無線通信機器はありますが、速度・ハードウェア・規格・価格の面で、現在の一般用途には向かないと思われます。そのため、現在は「水分を多く含むものは WiFi は通りづらい」と認識していいと思います。

木造建築や木材の家具の場合、持ちや品質の基準の1つに「呼吸」があります。木材における「呼吸」とは、木材が適度な水分を吸収したり放出したりすることを言います。

また、木材には年輪があるためレイヤー構造になっています。これも WiFi が通りづらくなる原因の1つです。断熱も遮音もレイヤー(層)が多ければ多いほど遮蔽されるのと同じです。

そのため、身が締まっていて年輪もはっきりとした、水分を適度に含んだ良い木材を使っている場合は、「水」と「レイヤー構造」により電波の通りが悪くなります。

田舎や実家などの古くからの木造建築に行くと携帯の電波の通りが悪いと感じる理由は、単純に田舎だからと言うより、実は「家がしっかりしているから」という理由も多くあります。その場合、「玄関や屋上に出ると急に携帯がつながった」などの現象で確認できます。

逆にベニヤなどの壁の場合は楽勝で電波を通すので、「どのような材質で壁ができているか」を認識することも大事な切り分け要素になります。

ガラスの罠(おしゃれな部屋は意外に強敵)

最近のマンション/高層タワー/長期不在がちな別荘/大きなテラスドアやベランダドアがあるといった場合は、使用されているガラスに注意してください。

特にフローリングで壁一面が窓ガラスなどの部屋の場合です。フローリングの日焼けを気にしているかもチェック・ポイントです。というのも、それらの場合、たいてい紫外線カット(UV カット)ガラスが使われているからです。

UV ガラスには酸化した亜鉛やチタンが含まれているためか、極端に電波が通りづらくなります。また、青みがかかったガラスも、酸化鉄を多く含むため電波が通りづらいです。青・緑・黄色などの「色がうっすらと付いているな」と思ったら要注意です。

また、ガラスが割れても散らないように、ストッキングの網のようなワイヤーが入っているガラスも注意が必要です。ワイヤーがバリヤーがわりになってしまうのです。意外なほど、その網の隙間を通ってくれません。電子レンジの覗き窓のように、偶然にもワイヤーの網目の間隔が電波を跳ね返してしまうパターンです。WiFi やスマホ時代以前に製造されであろうワイヤー入りガラスに多い体感があります。

高層タワービルで周りに電波を遮るビルがないのに、携帯が通りづらいと感じることがあると思いますが、これは窓ガラスがブロックしているからです。UV カットとワイヤーのダブル・パンチだからです。

そのため、「室内だと WiFi が入るのに庭やベランダに出ると WiFi が入らない」現象が発生します。そして、逆に「庭やベランダだと携帯はつながるのに、室内だと携帯の電波が悪い」という現象になります。

携帯の電波の入りが悪いのか、WiFi の電波が弱いのかも切り分けの1つです。

WiFi から話がそれますが、室内だと携帯の電波が悪い場合、携帯会社を通して(基本的に)1世帯主に1台、外から室内に携帯の電波を引き入れる機器を導入(レンタル)することができます。これは、必ず携帯会社を通して申請 & レンタルする必要があります。

なぜなら電波を発する機器を家に設置することになるため、電波発信局の手続きが必要になり、国の許可(無線局免許状)が必要だからです。携帯会社を通さない場合、アマチュア無線の資格に加え、特殊な手続きが必要になり色々大変です。秋葉原などで購入したものを無免許で勝手に使うと結構痛い目に合います。

確認用コマンド各種

  1. dig コマンド:dig <対象ホスト名> @<DNSサーバーIP>
    DNS の名前解決にかかる時間を測定する(linux macOS

    よくアクセスするドメインがQiitaの例
    $ dig qiita.com @8.8.8.8 | grep sec
    ;; Query time: 40 msec
    $ dig qiita.com @1.1.1.1 | grep sec
    ;; Query time: 5 msec
    $ dig qiita.com @192.168.10.1 | grep sec
    ;; Query time: 3 msec
    
  2. networksetup コマンド:networksetup -getdnsservers <デバイス名>
    現在のネットワーク設定のDNSをコマンドで確認する(macOS

    WiFiのDNS設定の確認
    $ networksetup -getdnsservers "Wi-Fi"
    192.168.10.1
    8.8.8.8
    8.8.4.4
    
  3. nslookup コマンド:nslookup <対象ホスト名>
    実際の名前解決に使われた DNS を確認する(linux macOS

    qiita.comの名前解決に使われたDNSの例
    $ nslookup qiita.com
    Server:     8.8.8.8
    Address:    8.8.8.8#53
    
    Non-authoritative answer:
    Name:   qiita.com
    Address: 54.178.201.169
    Name:   qiita.com
    Address: 54.178.219.247
    Name:   qiita.com
    Address: 52.68.241.143
    

建設業者の電気屋さんに LAN 配線を頼んでいる場合の注意点

壁裏や床下の LAN 配線

LAN 配線や LAN くちのアウトレット1などは弱電工事なので(知識があれば)無免許で誰でもできます。しかし、マルチコンセント2に電源コンセントがある場合は、100V 以上の電源を扱う強電工事になり資格がないと違法になります。そのため、知識があっても電源付きマルチコンセントの場合は電気屋さんに施工をお願いする必要が出てきます。

しかし、電気屋さんは電子屋さんではないため、ルーターなどの精密機械に関する知識は必須ではありません。中小の電気屋さんは死活問題もあり勉強されているケースもありますが、「プログラムができるからハードもできる」みたいな扱いはやめましょう。そのため、「要件」は工事前にきちんと確認する必要があります。

LAN ケーブルの種類

LAN ケーブルには Cat5 や Cat6 といった種類があります。Cat というのは「カテゴリ」の略で、ケーブルの通信速度を示し「カテゴ(Cat5)」「カテロク(Cat6)」などと呼ばれます。数値が高いほど通信速度が高くなり、またケーブルの加工(ケーブルをカットして先っぽを取り付ける作業)が難しくなっていきます。この加工の良し悪しでノイズ比(S/N 比、シグナルとノイズの割合)が決まるとも言われます。また、ケーブルが長ければ長いほどノイズを拾いやすくなるため、短ければ短いほどベストと言われます。

LAN 加工の技術と言えば、10 年くらい前に下町の電気屋さんで LAN ケーブルのカシメ(ケーブルの先っぽを加工する作業)を終えたあと、ノイズ測定器でちゃんと検査しているお兄さんがいました。たいていの電気屋さんは「通電すればいい」程度の確認しかしませんし、大手ゼネコン経由の電気施工会社(電気屋)さんでもほとんど見かけませんでした。

ケーブルの質(カテゴリ)とカシメの質はテレビの 8K 放送のアンテナ線でも同じことが言えるため、今後はケーブルのノイズ検査も可能な会社であるかも業者さんの1つの選択肢になってくるのかもしれません。

同じカテゴリのケーブルでも STP ケーブルと呼ばれるシールド・タイプもあります。シールドとはケーブルの中の配線をアルミホイルの幕で覆ったもので、外部からのノイズをアルミで遮断する(厳密にはノイズを受け取りそのままアース側に逃す)ことでノイズを減らすタイプです。高価ですが効果も高いケーブルです。

どのタイプのケーブルであっても、壁裏・床下・マルチコンセントといった交換が難しい場所の LAN 配線は事前の注意が必要です。

オフィスや新築物件などを建てる際に「ギガビットイーサー」とだけ指定しても意図しない工事がされることが多くあります。スイッチング・ハブだけギガビットにしてケーブルは Cat5(頑張って Cat5e)を平気で使う施工会社が意外に多いので注意しましょう。2018 年ごろから良くなっていますが、LAN ケーブルはメートル単位の箱買いをするため、古い Cat5/Cat5e を処分したがるからです。

ギガ指定した際に「Cat5e でもギガ出ますから」と即答された場合も要注意です。Cat6 より安く、要件も網羅できると判断しているからです。おそらくギガビットとギガバイトの違いすらも間違えると思います。

「ギガ」といった速度指定ではなくケーブルの種類で注文しましょう。コスト的に可能であれば、Cat7 や Cat6系の STP ケーブル(シールド加工されたケーブル)を使うのが理想でしょう。一般家庭であれば Cat6A を入れておけば 10 年(2030 年ごろまで)はなんとか使えるので、無難です。

一度配線してしまうと 5 ~ 10 年はそのケーブル速度のままです。リモート、スマホ、Nintendo Switch、ノートパソコン、IoT(Alexa など)、インターネット TV(光 TV や au テレビなど)、Netflix や Hulu といったネットワーク全盛の現在、しつこいくらい Cat6 以上と言った方がいいです。

「マンションのインターネットが高速契約に変わった」と言われても、さほど速度アップを感じない場合、マンションの基幹ケーブルだけがカテゴリ・アップで高速化され、各部屋のケーブルや HUB はそのまま(MAX 100 メガビットタイプのまま)という可能性もあります。HUB は家主の管轄なので交換すればいいのですが、HUB から各部屋への配線の交換は大幅な工事が必要になります。特に配管にネズミが入らないように限界までケーブルを通す(キチキチにする)のが常であるため、ケーブルの交換ができず外に這わせることになるケースが大半です。

つまり「1 度壁内に引いた配線を、入れ替えるのにどれだけ大変か(コストがかかるか)」を知っておく必要があります。

ネットワーク機器の放熱

設置される場所によってスイッチング・ハブやルーターの発熱には注意が必要です。

天井裏(点検口内)・弱電盤(分電盤・情報分電盤)などの閉鎖空間に設置する場合は、スイッチング・ハブにはメタル筐体の指定をおすすめします。これは、オフィスの弱電盤内や天井裏は一般家庭に比べ熱が篭りやすく、安いプラスチック筐体が使われていると放熱性が悪いため誤動作を起こすことが多くあります。メタル筐体の方が放熱性が良くオフィスにおいては安定性は高いです。(余談ですが、コレガのメタル筐体のルーターに CPU などに使うヒートシンクを付けて改善したことがあります。)

次に、オフィスや事務所の場合、弱電盤内には以下のような機器が設置されることも多いと思います。

  • ONU(終端装置)
  • ルーター
  • HUB
  • アクセスポイント
  • セコムなどの監視系の中継機器
  • NASなどのその他機器

この場合、メタル筐体であっても不安定になることがあります。なぜなら弱電盤から熱が逃げないためです。新規で設置する場合は、あらかじめ弱電盤の上部と下部に放熱用の穴が空いたタイプにしてもらうように理由と一緒に明示しましょう。

また、すでに弱電盤などが設置済みのオフィスに引っ越した場合などは、管理会社に相談すれば、施工会社にドリルなどで開けてもらえるか相談できます。

これも余談ですが、以前施工会社に放熱に注意するように指示したところ、ドリル加工が難しかったのか、ドンキーで買ってきた USB ファンをルーターの USB から電源供給していました。工夫の姿勢には関心したのですが、結局外した方が安定したというオチがありました。

設置エリア内の電源

点検口、屋根裏や弱電盤に引いてもらう電源のコンセントくちの個数と電源系統には注意が必要です。

これらの「放置されやすい場所」にコンセントくちを多く設置することを電気屋さんは好みません。埃による火事を恐れるためです。そのため、予め言われた機器の台数+せいぜい1台程度のコンセントくちが用意されます。

ONU(終端装置)、ルーター、ハブ、WiFiアンテナ、NAS など、設置する機器を十分検討しましょう。後出しジャンケンするとタコ足配線をせざるを得ない結果になります。タコ足は機器の発熱を招きます。逆に過剰に用意しすぎると先の「埃による火事」を招きます。

また、新築であった場合、もしくは可能な場合、キッチン(給湯室)やエアコン類とは別の電源の系統を使うように指定しましょう。電源ノイズはパケット落ちを招きます。

コンセントのアースの配線

アースくち(コンセントのくちが大きいほう)に、きちんとアースが配線されていない、つまり電源の配線が逆の場合がまれによくあるので注意が必要です。

コンセントは交流であるため、どちら向きでも動いてしまうので気付きづらいポイントです。アースを合わせないと電源ノイズが発生しやすくなり、一般の電気機器は大丈夫でも(特に電波系の)電子機器はノイズにすこぶる弱いため、パケット落ちを招きます。

ユーザーが挿す向きを変えれば良いだけなのですが、予め書面で注意しておかないと、建築業界は伝言ゲームなのでアースの向きが重要なユーザーである旨が電気屋さんに伝わりません。営業や電気屋さんからすると、ユーザーが右利きか左利きか程度の認識だからです。
自分でもアースくちはどちらか簡単に確認できるので、一般家庭でもチェックして自分でアース側にマークを付けておくと便利です。コンセントと機器のアースを合わせるところ(ハード面)から原因を潰して行くと切り分けが楽になっていきます。

基本(最初の切り分け)

AC/DC アダプタが同梱品でない場合、同梱品に戻してどうか

原因

AC/DC アダプターに記載されているメーカー、ボルト数、アンペア数、DC プラグ(丸いタイプの本体に挿すくち)のサイズが同じでも、機器ごとに出力される実際の電圧は異なります。

これは、大抵の場合、本体に挿して通電した際の電圧をアダプターに記載しているからです。そのため、ファンなどのモーターのありなしだけでも違うし、良い(速い)チップを使っているかでも消費電力は違います。詳しくは知っておくと助かる基礎知識参照。

WiFi ルーター(以下AP)を再起動してどうか

原因

ルーター(AP)の再起動は、一番手頃、有名、かつ効果的な対処法/対症療法なのですが、同時に一番原因が突き止め難いものです。抜本的な対策ではため、電源や放熱などの要因を潰す本記事の元になった対処法です。

  • ルーターの自動アップデート後、うまく再起動/反映されなかった
  • 他の AP と WiFi のチャンネルが干渉していた
  • 複数モバイル端末からの残骸があった
    • メモリ・オーバーフロー(動画などの通信データのカスがメモリに溜まっていた)
  • DHCP の空きIPがなかった(Web カメラなど同一端末に複数IPが振られることがある。ゴースト・クライアント)
  • 同時接続数切れ(Web カメラなどの WiFi 機器が、古い接続を維持したまま別途つなげてしまうことがある)
  • 熱暴走していた(すぐに再発する可能性大)
  • 電源ノイズなどによりバグっていた(不定期に再発する可能性大)
  • 電圧不足によりバグっていた(不定期に再発する可能性大)

特定クライアントのみの現象であるか

原因

  • 同一機種の中で特定の端末のみの場合は、OS やアプリのアップデート、端末の熱暴走、電圧不足を疑う
  • 特定機種のみの場合は、機器の相性(iOS と旧タイプの BUFFALO の組み合わせなど)を疑う
  • 他のクライアントと設定の違いを疑う(DNSを変更していないか、など)
  • WiFi のアクセスポイントで不要なものが登録されすぎていないか
  • DNS/MTU などの設定が他のクライアントと異なっていることを疑う

接続済アクセスポイントの登録で不要なものを削除してどうか

原因

  • パスワードなしの無料 WiFi などが移動中に接続&登録されたなど、不要なアクセスポイントの登録があふれ、接続の優先順位が狂ったことを疑う。

iOS/macOS の場合、ネットワーク環境を作りなおしてどうか

やり方

  1. [システム環境設定]-[ネットワーク]-[ネットワーク環境] の 「ネットワーク環境を編集」を開く
  2. 「+」ボタンより新規ネットワーク環境を作成し、「自宅LAN」などわかりやすい名前にする
  3. 作成したネットワーク環境を選んだ状態で WiFi をオフ→オンしてどうか
原因

  • WiFi のアクセスポイントで不要なものが登録されすぎていることを疑う
    • アクセスポイントの整理
      1. ネットワーク環境の、右下の「詳細」を開く
      2. 「使ったことのあるネットワーク」一覧で不要なアクセスポイントを削除する
      3. 一覧内で優先度を並び替える
  • DNS の設定が異なっていることを疑う

アクセスポイントの再設定(削除 → 設定)してどうか

原因

  • DNS/MTU などの設定がいじられている(変更されている)ことを疑う

AP のファームウェアアップデート → 再起動してどうか

原因

  • ルーターにパッチがあたっていなかった(アプリケーションの相性不具合)
  • セキュリティ・パッチがあたっておらず、クライアント・アプリケーションがネゴシエーションにタイムアウトしていた

ONU → ルーター → AP の順に再起動してどうか

原因

  • グローバルIPに外部からのアクセスが大量にあった
  • いずれかの機器がバグっていた
  • いずれかの機器が熱暴走していた(すぐに再発する可能性大)

どこかの LAN ケーブルが挟まっていたり噛んでいないか確認してどうか

原因

  • ドアに挟まって皮一枚で繋がっている LAN ケーブルでも、銅線が一本でもつながっていれば遅いながらも通信できたりするので注意

電源関連の切り分け

LAN ケーブルと電源ケーブルを束ねていたら離してみてどうか

原因

  • 束ねたことにより磁場が発生しノイズを拾っていた。
    • どうしても束ねる必要がある場合、シールド付きの LAN ケーブルにするか、アルミ箔シールドのチューブを検討する。配線のしなおしは大変だが LAN ケーブルにアルミ箔を巻いて、スパイラルチューブで固定しても割と効果がある。アース付きコンセント(ネジでアースを止めるタイプ)の場合はアルミ箔を接触させ逃すのも手。その場合、感電注意。よくわからない人はシールド付きの LAN ケーブル(STP タイプ)を選ぶのが吉。

コンセントに直刺ししてどうか(タコ足配線しないでどうか)

原因

  • 容量を食う機器があるなどで、電圧が下がり動作が不安定&発熱している
  • 電源ノイズの多い機器が繋がっている

電源コンセントの挿す向きを左右逆に挿してどうか

原因

  • 機器のノイズはアース(グラウンド)に流れていくため、アースの向きが異なると動作はするもののノイズが逆流してくるものがある。

電源タップに挿さっているコンセントのアースの向きを統一してどうか

原因

  • 他の機器からの電源ノイズによりパケット落ち、もしくはチップの誤作動が発生している可能性がある
    • 向きの合わせ方
      • コンセントくちや電源プラグを見ると片方だけ大きかったり、根元にマークが付いているので同じ向きに合わせる。より正確にはテスターを使う方法があるが、ここでは割愛。

他の電源系列から電源を供給してどうか

原因
  • 同系列の電源系統に電子レンジ、冷蔵庫、空調、LED照明などがあり、ノイズを拾ってきてしまっている
  • 電圧が下がっている

ちょっと時間や作業が必要な切り分け

時間帯によってクライアント数が増えていないか

原因

  • 同じ瞬間の同時接続の台数を超えているため、セッションの取り合いがおきています
    • WiFi ルータの接続数には「瞬間同時接続数」「接続可能台数」「接続登録台数」の3つがあります。
    • マニュアルには接続可能数が記載されていますが、DHCPで割り当てられる台数であったりするので注意。
      一般的に民間機の AP の場合は同じ瞬間に接続できる台数は5〜6台が大半です。ノート + iPhone + iPad + Amazon Fire + Alexa がある場合、端末が1〜2台増えるとセッションの取り合いが発生し(体感的に)不安定になります。その場合は、同機種の AP を増やして、①同じ SSID、②同じパスワード、③異なるチャンネルに設定して増設することをおすすめします。

他のメーカーのWiFiデバイス(クライアント)で試してどうか

原因

  • iOS 端末でのみ再現される場合
    • WiFiルーターのセキュリティ認証を変えてみる
    • OS のアップデートをしてみる
    • DHCP でクライアントの MAC アドレスを登録し IP を固定してみる

HUB やルーターを室外/設置エリアから出してどうか

原因

  • おそらく熱暴走しています。空気がこもらない工夫を考えてください。

HUB やLAN ケーブルを Cat6 以上に交換してどうか(できれば●ギガビット対応のもの)

原因

  • 動画などのストリーム系のデータが増え、パケット詰まりしていた
  • LAN ケーブルが劣化していた
  • LAN ケーブルが電源ケーブルと平行に束ねられてい(てノイズが発生してい)た

マルチコンセント(壁)のLANくちを使わずルーターから AP に別途 LAN を引っ張ってきてどうか

原因

  • 壁内 LAN ケーブルが劣化していた
  • 壁内 LAN ケーブルが電源ケーブルと平行に束ねられてい(てノイズが発生してい)た

WiFiの周波数を 2.4GHz → 5GHz のみに固定してどうか

原因

  • 同一(2.4GHz)周波数帯の他のデバイスの電波やノイズと干渉していた
    ※電波法では、機器が発するノイズの周波数にも規制があり、その中で 2.4GHz 帯は規制が緩いため、この帯域にノイズを発生する機器は多く存在する。(電子レンジ、空調、LED照明、可変照明など)

すでに 5GHz の場合、チャンネルを 34〜48 ch内に固定してどうか

原因

  • チャンネルの自動切り替わりにより気象レーダーを検知してDFS(Dynamic Frequency Selection)機能が働いた
    • 自動設定により AP が空きチャンネルに切り替わった際、空きチャンネルが W53/W65 と呼ばれる 52〜140ch の間のチャンネル帯であった場合、気象レーダーと干渉しないか監視を行うため 1 分以上通信できなくなる。その際にクライアントが他の AP を探しに行ってしまうなど、体感的に不安定に感じてしまう。

複数アクセスポイント(AP)がある場合

各 AP のチャンネルが重ならないように変更してどうか

原因

  • チャンネルが重なっていたため、チャンネル間で干渉していた

各 AP 間の距離を離してしてどうか

原因

  • お互いの電波が強く干渉しあっていた。
    • スペースの問題から離して置けない場合、苦肉の策としてダンボールにアルミ箔を貼って、AP の間に置くだけでも効果がある。

各 AP のチャンネルが被らないようにし SSID とパスワードを統一してどうか

原因

  • 電波の弱い AP (SSID)を掴んだままなため、パケット落ちしている
    • 「HOME-1F」「HOME-2F」などエリアごとに AP の SSID を分けている場合、移動してもクライアントは少しでも繋がる場合は、接続を離さず繋げようとするので、同じ SSID+パスワード であれば、手近の電波の強い AP につなげてくれる。

所感

何故かハードも得意と誤解されがちなソフトウェア・エンジニア。

「パソコン得意なんだろ」という理由だけで、WiFi ルーターの設置をさせられ、「不安定だ」とクレームを受け、出向作業が何故かヘルプデスクになってしまい作業が進まない、でも「知ってる」けど「知らないと言えない」世知辛い IT フリーランサーのためのチェック事項です。

  1. 【アウトレットとは】 建築業界などの場合の「アウトレット」は、配線などの差込口全般のことを言います。主に壁面の電源コンセント、アンテナ、LAN くちなどを指すことが多く「配線の出口」的な意味合いが強いです。"Let it out" と覚えるといいかもしれません。「アウトレットのイメージ」@ Google。ちなみに類語に「タップ」がありますが、タップは電源の延長ケーブルのような壁面でないタイプの配線の出口を言います。和製英語の「テーブルタップ」の略です。

  2. 【マルチコンセントとは】 マルチメディア・コンセントとも呼ばれる。壁面コンセントなどのアウトレットのうち、電源だけでなく、アンテナや LAN 用のくちが付いているタイプのコンセントのこと。「マルチコンセントのイメージ」@ Google

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