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ethernet
ネットワーク設定
IEEE802.3x

ルーターのネットワーク設定にある「LAN側Pause機能」とは

まず、以下は家庭用無線LAN機能付きルーターなどの取扱説明書にある記載ですが、ちょっと何言ってるか分からないと感じた人向けの記事です。

LAN側Pause機能 (初期値:使用する)
 LAN側Pause機能を使用する場合はチェックします。
 LAN側に接続された端末間でフロー制御することができます。

TL;DR

「Pause機能」とは、LAN内で大量にデータを送ってくる端末に転送の一時停止をお願いする機能。
ローカル内(LANポート間)で大量かつ頻繁にデータのやりとりが行われない場合は、設定しなくても大丈夫。

フロー制御とは

落ち着いて考えれば難しくない単語なのですが、「フロー制御」は「流れをコントロールする仕組み」です。

残念ながら「ピッ、お湯はりをします」と話題のIoTで、風呂の制御をする機能でもありません。が、お湯を溜める代わりにデータを溜める事には関係しています。

「フロー制御」の「フロー」はフローチャートなどのフローと同じで「流れ」を意味しています。厳密には「オーバーフロー」のフローと同じ使い方で、データがどこかで溢れるのを防ぐ、もしくは溢れてもなんとかするための仕組みです。

おそらく、この「Pause機能」があるルーターは「ジャンボフレーム」にも対応していると思いますが、いずれもデータ量が大きくなった昨今のネットワーク事情に対応した仕組みです。

Pause機能の前に、フロー制御が必要な事情について軽く説明したいと思います。

例えば、ギガビットの「ちょっぱや」のネットワーク環境を想像してみてください。カテゴリー6以上のLANケーブルとギガビット対応のルーターでネットワークを構築した環境です。ここでは便宜上、スイッチングHUBもルーターとして扱う表記にしますが、最近の新築マンションや、会社などのネットワークでは一般的な環境かもしれません。

そこに10メガビットの低速通信のPCが同じLAN内にあった場合、つまり、ルータまではデータをガンガン受け取れるのにPCへの転送が間に合わない場合を考えます。

大きなデータをリクエストすると、PCへの転送が低速なため、ルーターは受け取っているデータを溜め込みながら少しずつPCへ転送していきます。この時、溜め込んでいるデータを「バッファ」といいます。お風呂の栓を開けたまま、お湯はりをしているイメージです。

しかし溜め込む量より出力する量が少ない場合、そのまま受け取っているとキャパ・オーバーして(溢れて)しまいます。この状態を「バッファ・オーバーフロー」と言います。お風呂以外では、高速道路から一般道へ降りる時の渋滞みたいなイメージですね。

ネットワークの標準的な仕組みとしてバッファが溢れそうになった場合(バッファがオーバーフローしそうな場合)は、思い切って溜まっているデータを削除してしまい、送り元に再送してもらうようにリクエストすることで回避する仕組みがあります。つまり、相手が一生懸命送ったのに、まるごと捨てて落ち着いたら(すっとぼけて)「ゴメンね ♪」と「てへぺろ」して同じものを送り直してもらうテクニックというか手法があります。

厳密には、なるべく無駄のないようにもっと細かく制御が行われているのですが、基本的に、このようなデータの流れをコントロールすることを「フロー制御」といいます。

Jennifer wait!(ちょっと待って)

先ほどの「てへぺろ」されて「何度も同じデータを送り続けてネットワークの渋滞を招く」という状態を回避するために「Pause機能」があります。つまり、「Pause機能」も「フロー制御」の1つなのです。

「Pause」が「一時停止」という意味であるように、バッファがオーバーフローしそうになると、送り手に「ちょっと●秒待った」と知らせることでデータ転送を少しのあいだ止めて待ってもらいます。待たずに送りつけてくる場合は「てへぺろ」テクニックを遂行することになります。

これによって、無駄なデータのトラフィック(流れ)がなるべく起きないよう工夫しているわけですが、基本的に家庭用ルーターの場合「Pause機能」はLAN内でのみ機能します。つまりLAN側のポートにブラ下がっているネットワーク機器に対して使われます。

これが文頭に記載した説明書の「LAN側に接続された端末間でフロー制御することができます」の意味です。

具体的には、「LAN内の端末や機器でバッファがオーバーフローする場合にPAUSEフレームをマルチキャストします」という表現で言われますが、「受け手がテンパると相手の端末に「ちょっと待って!」と叫ぶ信号をLAN内で送受信できるようにします」という意味です。

しかし、このPause機能の設定が「無効」になっている場合、ルーターはLANポート間でこの信号を伝達しません。つまり、LANポート1に繋がった機器が「Pauseフレーム(ちょっと待って信号)」を発しても、LANポート2やLANポート3もしくはWiFiには転送しないので、せいぜいLANポート1にHUBがあれば、HUBに繋げている機器程度にしか伝わりません。ここがこの設定をするか否かのポイントになります。

どのような時に設定すべきか

このPauseフレーム(信号)は、Ethernetの規格(IEEE802.3x)なので、大抵の機器は対応していますが、一般家庭では特別に意識する必要はありません。

しかし、以下のケースには有効な事があるので試す価値はあります。ポイントとしては、ルーターに限らず「LAN内に通信量が多くてテンパりそうな箇所がないか」を中心に考えるといいと思います。

  • ルーターの複数あるLANポートをHUB替わりに使っている
  • LAN内に皆で使っているNASや、メディアサーバー(Nasneなど)がある
  • LAN内にネットワーク・プリンタがあり頻繁に印刷している
  • LAN内の端末(iPad、携帯、ゲーム含む)台数が多くて、なおかつスイッチング・ハブが導入されている
  • ジャンボフレームの設定を「有効」にしていて、端末台数も多い
  • 新旧の端末(ネットワークや処理速度が極端に異なる端末)が混在している

上記に該当するなぁと感じた場合に試す価値はありますが、逆にPause機能を有効にして通信が不安定になったと感じたら、その場合はネットワークの配線の仕方やケーブル自体を再検討するのが良いと思います。

つまり、Pause信号が頻繁に発生したことで不安定になったということなので、どこかで糞詰まり(渋滞)が発生しているということだからです。

その場合は、バッファがすぐオーバーフローしないようにジャンボフレームをオフ(無効)にして回線の占有時間を短くしたり、足を引っ張っている低速なケーブルやNIC(ネットワークボード)がないか、通信を占有している端末がないか、ルーターが熱暴走していないか、などを切り分けていきます。

初夏の所感

最近のマシンはギガビット・イーサーが標準ですが、家庭内のLAN(特に昔の同梱)ケーブルはカテゴリー5(もしくは5e)のものが多く、経年劣化が発生していたり電源と平行して(束ねて)配線されている事が多いため、ノイズなども含めて速度が出ない事が多々あります。

というのも、実は新築でもCat6より安くて作成が簡単な事からCat5が平気で使われていたり、ルーターやHUBなども放熱を考えずに密閉したり、壁内のLANケーブルを電源ケーブルと一緒に束ねたりする事が多くあります。特に、この電源が空調、冷蔵庫や電子レンジなどに使われていたりすると、動きはしますが速度が思いのほか出ません。

HD画像(1K)は遠い昔、今や4Kが普通で、8Kに移行しているこの時代、8Kスカパー!プレミアムを観たい場合はアンテナだけでなくアンテナのケーブルも(シールド加工された上位品と)交換しないとまともに見れないのと同じで、無線より遅いLANケーブルが壁内配線に使われた場合、後々の交換が大変なのは明白です。

しかし、建築工事はコスト(金額と時間)がシビアなので生死にかかわる事以外は「動けばおk」である(要件網羅♪ 嘘は付いてない)事が優先されるので、そもそも要件を定義する設計側が知らないといけない知識の1つになってきています。知識が足りないと竣工後(引渡し後)のクレームを転嫁して電気施工の技術屋さんを泣かせることでしょう。

ネットワークの速度のチューニング(調整)は別の話であるため、住宅の建築・施工におけるネットワーク障害の切り分けは別の記事で書きたいと思いますが、まずはこの記事がPause機能のオン・オフの決定の参考になれば幸いです。

参考元