はじめに
なかじ氏(@nkjzm)のVtuberハンズオンに参加してしばらく、ノートPCのWebカメラで手軽にVtuberになる方法を調査したり実装したりしていました。
この記事では、それらを導入するための学習リソースを、メリットとデメリットと共にまとめました。
Vtuberを始める方法
事前準備
Vtuberを始めるには、以下の2つのアプリが必要です。
- 表情や体の動きをモデルに同期させるアプリ
- ライブ映像を収録・配信するアプリ
この記事では主に、1.のアプリの特徴についてまとめます。
(ライブ配信やUnityを未経験の方は、先にこちら等で入門するのがオススメです)
1. 表情や体の動きをモデルに同期させるアプリ
方法①: 「FaceRig」を使う
商用ソフトウェアである「FaceRig」を利用する方法です。
導入コストが低かったためか、このアプリを使う方法がこれまで最もスタンダードな手法でした。
実装例
Vtuberテスト①: FaceRig
— Hirosaji (@hirosaji) 2018年3月25日
ノートPCのスペックだと、FaceRigが一番安定する。 pic.twitter.com/RPjo7YXMTh
PC: Surface Pro 4
OS: Windows 8.1
(※モデルはAgate氏のアライさんをお借りしました)
メリット
- 価格が安い(¥1,480)
- 導入コストが低い(DL後すぐに始められる)
- 高いパフォーマンスが得やすい(高スペックPCでなくても、高FPSが安定する)
デメリット
学習リソース
・お手軽にはじめるバーチャルYouTuber(VTuber)になる方法
・FaceRigを使って配信と自作Live2Dモデル使用
・【Facerig/Live2D】使い方とバーチャルYoutuberになる方法
方法②: 「OpenCV」と「Dlib」を使う
Unityで表情認識などの画像処理ができるAsset「OpenCV」「Dlib」を活用したアプリを作成・利用する方法です。
実装例
Vtuberテスト②: OpenCV + Dlib
— Hirosaji (@hirosaji) 2018年3月25日
ラグが酷い...。最適化か高スペックPCが必要だ...。 pic.twitter.com/P6B7Dn8VDk
PC: MacBook Air (13インチ, 2017)
OS: macOS High Sierra
プラットフォーム: Unity 2017.3.1
(※モデルは醤油せんべい氏(@showyousenbei)の鹿島さんをお借りしました)
メリット
- 人やモデルに合わせてパラメータを調整できる
- マルチプラットフォーム対応(デスクトップ, モバイル, Web)
- 画像処理系の機能が拡張しやすい
- エラー画面や情動的な画像の検出とモザイク処理
- SNS映えする画面の検出と自動投稿
- 顕著性マップを利用した文章(説明文等)や画像(広告等)の生成・分析
- など...
デメリット
- 価格が少し高い(OpenCV($95), Dlib($40))
- 高スペックPCや高い最適化技術が必要
学習リソース
- FaceRig無しでも中の人(二次元)になりたい!【Unity × OpenCV × Dlib × Live2D】
- iPhoneXがなくてもアニ文字したいんだ! 【Unity×OpenCV×Dlib】
- UnityとOpenCVとDlibとARでユニティちゃんになってみた facetracking 2018
方法③: 「Face Tracking with ARKit」を使う
iPhoneXと親和性の高いことで注目される「Face Tracking with ARKit」を活用したアプリを作成・利用する方法です。
ちなみに、最近注目を集めるバーチャルライバーが使う「にじさんじ」にも、この技術が使われているようです。
実装例
iPhone X+ARKit+Live2Dがどんな感じに動くかのサンプル
— みっきー@SHT晴風14 (@mzyy94) 2017年11月16日
(音声はPCで再生してるやつを録音したもの)
まだ表情のパラメーターは弄りがいがある感じ pic.twitter.com/xNQZcQhsTY
メリット
- 価格が無料
- 人やモデルに合わせてパラメータが調整できる
- 既に複数のプラットフォーム(Unity, Xcode)で開発報告がある
- Unityならマルチプラットフォーム対応(デスクトップ, モバイル, Web)
- AR, VR系の機能が拡張しやすい
デメリット
- iPhoneXなどのデプスカメラが必要
- 高スペックPCや高い最適化技術が必要
学習リソース
- Unity ARKit PluginのFace Trackingを使ってみる
- 【Unity】ARKitのFaceTrackingでユニティちゃんに変身する
- iPhoneX で Face Tracking with ARKit を実装する
- ARKit の Face Tracking で顔にマスクをつける for iPhone X - 実践編
方法④: 「Intel® RealSense™ SDK」を使う
Intelのデプスカメラに特化した「Intel® RealSense™ SDK」を活用したアプリを作成・利用する方法です。
実装例
Unityちゃん表情追加確認です。 pic.twitter.com/UnKmy9Syar
— 琴葉 葵(偽) (@Hv2RMjHzDyqXVIr) 2017年7月17日
メリット
- 人やモデルに合わせてパラメータを調整できる
- Unityならマルチプラットフォーム対応(デスクトップ, モバイル, Web)
- 表情だけでなく、手や指の動きも同期できる
デメリット
- 対応OSがWindowsのみ(librealsenseを使えばMacでも可?)
- 全機能を使うには専用のカメラ(Intel® RealSense™ Depth Camera)が必要(参考)
学習リソース
- MMD形式キャラクターモデルの表情・頭・位置をウェブカメラで動かす
- RealsenseSDKとWEBカメラでキャラクターになりきる
- RealsenseSDKとWEBカメラでキャラクターになりきる(Live2D編)
方法⑤: 「FaceVTuber」を使う
彗星の如く現れた、超お手軽Webアプリ「FaceVTuber」を利用した方法です。
実装例
Vtuberテスト③: FaceVTuber
— Hirosaji (@hirosaji) 2018年3月25日
解像度は低いけど、無料で手軽で高パフォーマンス。 pic.twitter.com/n72NrQ6ZV2
PC: MacBook Air (13インチ, 2017)
OS: macOS High Sierra
ブラウザ: Google Chrome
(※モデルはキズナアイさんをお借りしました)
メリット
- 価格が無料(2018年3月現在)
- 導入コストが低い(モデルのアップロード後すぐに始められる)
- 高いパフォーマンスが得やすい(高スペックPCでなくても、高FPSが安定する)
- 3Dモデルが利用可能(MMD形式)
デメリット
-
解像度が低い※少しずつ改善されています(ソース) - 機能拡張ができない
- 動作環境がWebブラウザに限られる
学習リソース
2. ライブ映像を収録・配信するアプリ
OBSというフリーソフトを使うのがおそらく主流です。
非常に高機能なフリーソフトなので、特別高度な加工が必要でない限りは、このアプリを使うと良いでしょう。
実装例
これらアプリを組み合わせれば、簡単にVtuber動画を作ることができます。
試しにゲーム実況Vtuberを作ってみる。 pic.twitter.com/LTShP1Vi4b
— Hirosaji (@hirosaji) 2018年3月25日
#(ライブ配信やUnityを未経験の場合)
「はじめに」で書いたVtuberハンズオンの発表資料で一度、導入から配信までの流れに触れておくのがオススメです。
全体の流れを把握できるほか、UnityやOBSなどの代表的なツールの連携を体感することができます。
初めて作ったVtuber。
— Hirosaji (@hirosaji) 2018年3月25日
(https://t.co/LggymLNizgより) pic.twitter.com/gRDkRa6JFd
↑ハンズオン資料だけで、こんなVtuberが作れます。
(Webカメラは使わず、入力音声と同期して口を動かすLipSync機能を活用)
まとめ
この記事では、一般のノート型のような低スペックPCでVtuberになる方法をまとめました。
表にすると、各特徴はこんな感じです。
FaceRig | OpenCV + Dlib | ARKit | RealSense SDK | FaceVTuber | |
---|---|---|---|---|---|
動作環境 | PC(Winのみ) | PC/モバイル/Web | PC/モバイル/Web | PC/モバイル/Web | Web |
開発環境 | - | Win/Mac | Win/Mac | Win(/Mac) | - |
対応モデル | 3D(.dae)/2D | 3D/2D | 3D/2D | 3D/2D | 3D(.pmx) |
導入コスト | 低 | 高 | 高 | 高 | 低 |
解像度 | 高 | 高 | 高 | 高 | 中 |
価格 | ¥1,480 | $95+$40 | 無料 | 無料(専用カメラは有料) | 無料 |
拡張性 | - | 高 | 高 | 高 | - |
動作部位 | 顔 | 顔 | 顔 | 顔/手 | 顔 |
表情の変更 | 可 | 可 | 可 | 可 | 不可 |
あまり機能や解像度を欲張らなければ、低スペックPCでも、一般公開されているモデルを使って手軽にVtuberを始めることができそうです。